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眉村ちあきと観る工芸。止められない想像力。炸裂、眉村流鑑賞法

眉村ちあきと観る工芸。止められない想像力。炸裂、眉村流鑑賞法

東京国立近代美術館工芸館『パッション20 今みておきたい工芸の想い』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

東京・皇居周辺には多くの歴史的建築、文化施設があります。そのなかでも特に古い歴史を持つのが東京国立近代美術館工芸館。1910年(明治43年)に建てられ、重要文化財に指定された旧近衛師団司令部庁舎を保存活用した同館では、まるで明治時代にタイムスリップしたかのようなレトロなムードが味わえます。工芸の名品を数多く所蔵している美術館だけあって、内装も豪華。なかには人間国宝の作家がつくったベンチもあって、なかをふらりと歩くだけでも楽しい気持ちがたかまります。

しかし、この館ともじつはもうすぐお別れ。工芸館は、その機能を石川県金沢市に移すことが決定しています。3月8日まで開催中の『パッション20 今みておきたい工芸の想い』展は、この建物で行う最後の展覧会なのです。

そんなメモリアルな展覧会を今回、訪ねる人は、弾き語りトラックメイカーアイドルとして独創的な活動を続ける眉村ちあきさん。ユニークな楽曲だけでなく、ファンとなぜか地引き網を行うイベントを自ら企画、決行するなど、音楽だけではない四方八方に広がるクリエイションを手がけている彼女は、工芸館最後の展覧会に何を思うのでしょうか?

冒頭の屋外展示作品から、眉村流の鑑賞法が炸裂

この日の東京は雲ひとつない晴天。眉村さんも朝早い時間にもかかわらずハイテンションでこの場所へやってきました。テンションが高まりすぎて、上着を裏返しに間違えたまま来てしまったのもチャーミングです。

眉村:やっちゃいました(笑)。アートを見ることはけっこうあるんですけど、工芸を真剣に見るのは今日がはじめてなんです。ちょっと緊張してるのかも。

眉村ちあき<br>東京都出身。弾き語りトラックメイカーアイドル・兼(株)会社じゃないもん代表取締役社長兼カリスマ。趣味ゴミ拾い、マンガみたいな生活を送っている。目標はビルボード全米1位。2020年1月8日、ニューアルバム『劇団オギャリズム』をリリースした。2020年2月より眉村ちあき2ndツアー「劇団オギャリズム」がスタート、4月3日には豊洲PITでのワンマンライブが行われる。
眉村ちあき
東京都出身。弾き語りトラックメイカーアイドル・兼(株)会社じゃないもん代表取締役社長兼カリスマ。趣味ゴミ拾い、マンガみたいな生活を送っている。目標はビルボード全米1位。2020年1月8日、ニューアルバム『劇団オギャリズム』をリリースした。2020年2月より眉村ちあき2ndツアー「劇団オギャリズム」がスタート、4月3日には豊洲PITでのワンマンライブが行われる。
東京国立近代美術館工芸館『所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い』<br>2019年12月20日(金)~2020年2月28日(金)<br>※新型コロナウイルス感染防止対策のため、2/28(金)をもって閉幕。工芸館の東京での活動は2/28(金)まで
東京国立近代美術館工芸館『所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い』
2019年12月20日(金)~2020年2月28日(金)
※新型コロナウイルス感染防止対策のため、2/28(金)をもって閉幕。工芸館の東京での活動は2/28(金)まで

さっと着替え直した眉村さん。企画を担当した研究員の今井陽子さんの案内で、まずは館の外へ。重厚なレンガ造りの建物の前には、タコのようにも植物のようにも見える、巨大な金属のオブジェ。

眉村:かわいい! 触ってもOKなんですね?

眉村ちあき

そう言って、オブジェに向かって突進。あちこちに開いた穴から中を覗き込んだり、手を突っ込んでみたり。穴に向かって、「えんだ~!(<And I~>)」と、ホイットニー・ヒューストンの名曲“I Will Always Love You”を熱唱してみたり。

穴に向かって「えんだ~!」
穴に向かって「えんだ~!」

眉村:中を見ると超キレイで星空みたい。これはみんな覗いたほうがいいやつですよ!

眉村ちあき

あちこちに開いた穴から射し込む光で、まるで宇宙空間のようにきらめくオブジェの内部。この『果樹園 ー 果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実』を作ったのは橋本真之。あちこちに開いた穴からオブジェの内部に手を突っ込んで、外側からカナヅチで叩き、同時に内側から金属の塊で叩ききかえすことで、このなめらかなかたちを作っているのだといいます。

館内部では制作過程を紹介した映像も上映されていて、この作業の地道さ、繊細さが伝わってきます。作家はこの手法でほぼ40年作品を作り続けているとか。

眉村:根気強さも含めて、いつまでも見入っちゃいますね。楽しそう。飽き性だけど、私もやってみたい!

眉村ちあき

「あんまり細かく作りすぎるとよくないよ、って深いなあ~って思います。音楽作っている自分にとってもよくわかる言葉」

2階にある館内の展示室へ。「家にこんな場所があったらいいな。毎日お姫様ごっこ!」と一目見て気に入った階段をのぼり、最初のコーナーである「日本人と『自然』」の部屋に向かいます。

眉村ちあき

眉村:なんだこの亀、尻尾が長すぎる!

尻尾のように見えるのは、甲羅や尻尾に付着した藻。むかしむかし、亀は長生きすると尻尾がどんどんのびて縁起がよいと思われていたそうで、この香川勝広の『銀製置物 蓑亀之彫刻』も吉祥(幸福、繁栄の兆し)の置物として作られたのかもしれません。

最初に眉村さんが興味を持ったのは、こちらの亀の置物 / 香川勝広『銀製置物 蓑亀之彫刻』(1908年)
最初に眉村さんが興味を持ったのは、こちらの亀の置物 / 香川勝広『銀製置物 蓑亀之彫刻』(1908年)
眉村ちあき

このコーナーでは、そういった日本に伝わってきた自然観をテーマにした作品を展示しています。壺の表面に巣のなかの百舌(モズ)のヒナを覗く鳩を執拗に造形した『鳩桜花図高浮彫花瓶』と、モダン&シンプルにおしゃれにまとめた『色入菖蒲図花瓶』がどちらも初代宮川香山によって作られたように、多様な美的感覚が紹介されています。

眉村ちあき
初代宮川香山『鳩桜花図高浮彫花瓶』(1871~82年頃)
初代宮川香山『鳩桜花図高浮彫花瓶』(1871~82年頃)

眉村:自分の家に置くなら亀だけど、好きなのは鳥の巣のごちゃっとした感じかも。仮面ライダーのベルトみたいな感じが大好きなんですよね。明治時代にはこういう工芸品を通して、いろんな「日本」が発信されていたんだなあ……。

「バッタは正直嫌い……」 / 山下恒雄『戦野』(1969年)
「バッタは正直嫌い……」 / 山下恒雄『戦野』(1969年)

この部屋では日本人の人間観を反映するものとして数々の人形も展示されています。精巧でリアルなつくりの平田郷陽『桜梅の少将』から、手作り感あふれる竹久夢二の『ピエロ』『少年』まで、姿かたちもさまざま。

人形師のシーンでは、この作風の違いを巡って口論が起こることもしばしばだったそうで、歯の一本一本まで彫った『桜梅の少将』は「リアルすぎてかえって芸術性を損なうのでは」と批判されたそう。

平田郷陽『桜梅の少将』(1936年)
平田郷陽『桜梅の少将』(1936年)
眉村ちあき

眉村:夢二は「人形はあんまり細かく作りすぎるとよくないよ」って言ったそうですけど、深いなあ~って思います。音楽作っている自分にとってもよくわかる言葉。

歌もうますぎると人の心に響かないってことよくあるんです。ビブラートを効かせすぎても「はいはい上手だね」で終わっちゃうなんてよくある話で。へたくそでも素朴でもよいから、その人なりの味があって魂が込もっているのがよいと思うんです。

竹久夢二『少年』(1926~34年頃)、『ピエロ』(1926~34年頃) / ともに個人蔵
竹久夢二『少年』(1926~34年頃)、『ピエロ』(1926~34年頃) / ともに個人蔵

夢二の弟子である堀柳女も、当初は布をくわえて悔しがるような表情のちょっと「演技過剰」な人形を作っていましたが、後年「若い頃は感情表現を出せばよいと思っていましたが、そうではなかったんですね」と言って、抽象性の高い作風へと向かっていったそう。悩み方も成長の仕方も、人形師とミュージシャンのあいだには通じ合うところがあるかもしれません。

上原美智子『たてわく 白』(2004年) / とても薄いの手織りの絹布に魅入ってしまう
上原美智子『たてわく 白』(2004年) / とても薄いの手織りの絹布に魅入ってしまう
足がかゆいわけでなく、あまりの薄さに自分のストッキングをつまんでその違いを確かめてみる眉村さん
足がかゆいわけでなく、あまりの薄さに自分のストッキングをつまんでその違いを確かめてみる眉村さん
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イベント情報

『所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い』
『所蔵作品展 パッション20 今みておきたい工芸の想い』

2019年12月20日(金)~2020年2月28日(金)
会場:東京都 竹橋 東京国立近代美術館工芸館
時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(2月24日は開館)、2月25日
料金:一般250円 大学生130円
※新型コロナウイルス感染防止対策のため、2/28(金)をもって閉幕。工芸館の東京での活動は2/28(金)まで。
(2020/2/28追記)

プロフィール

眉村ちあき(まゆむら ちあき)

東京都出身。弾き語りトラックメイカーアイドル・兼(株)会社じゃないもん代表取締役社長兼カリスマ。趣味ゴミ拾い、マンガみたいな生活を送っている。目標はビルボード全米1位。2020年1月8日、ニューアルバム『劇団オギャリズム』をリリースした。2020年2月より眉村ちあき2ndツアー「劇団オギャリズム」がスタート、4月3日には豊洲PITでのワンマンライブが行われる。

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