インタビュー

GEZANマヒト談話・後編。希望を歌う覚悟と、己に潜む怪物を語る

GEZANマヒト談話・後編。希望を歌う覚悟と、己に潜む怪物を語る

インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:山谷佑介 

<幸せになる それがレベルだよ>。最新作『狂(KLUE)』の終曲、“I”で、マヒトはこう歌い切る。インタビュー前編でも「新たなレベルミュージック」という言葉を何度も使っていたマヒトだが、その答えをあまりに簡潔に、そして強烈な説得力をもって掲げている。

お互いにお互いの存在を愛し、心から笑い合える日がくるように。たったそれだけの理想のためにGEZANは歌い鳴らし、轟音と人間の蠢きを巻き込んだBPM100のダブミュージックで「踊れ、何からも解き放たれた本来の自分を取り戻せ」とアジテートするのだ。一人に立ち返るからこそ人への優しさと寛容さを手にできると、そう告げるための「人間解体」のアルバムだ。

後編となるこのインタビューでは、冒頭に挙げた“I”や、今作の中核を担う“東京”を切り口にして、人間・マヒトの内面を覗いた。『全感覚祭』を経て実感した自分の役割と、影響力。その一方で、自身の内面に横たわるあまりに巨大なブラックボックスに怯える心――優しさの在りかを問い続ける理由を、生きることを偏愛する背景を、真っ向から聞く。

この世界をどれくらい素晴らしいと思えているかのパーセンテージにかかわらず、「素晴らしい世界だ」って歌える側の人間でいたいと思った。

マヒトゥ・ザ・ピーポー<br>GEZAN(げざん)<br>2009年、大阪にて結成。自主レーベル「十三月」を主宰する。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主催フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。2020年1月29日に、アルバム『狂(KLUE)』をリリース。
マヒトゥ・ザ・ピーポー
GEZAN(げざん)
2009年、大阪にて結成。自主レーベル「十三月」を主宰する。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主催フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。2020年1月29日に、アルバム『狂(KLUE)』をリリース。

―インタビュー前編の最後に、ご自身の中のレベルミュージック観と、それによって今の世界を超えた後のイメージを語ってくれましたよね。それで言うと、“東京”と“I”は、マヒトさんがこの世界に対して叫び続ける理由と理想が直接的に伝わってくる歌だと思ったんです。

マヒト:うん。

―今までは、人と世界を歌う中にマヒトさん自身が含まれるっていう俯瞰の視点が強かったけど、自分が何を信じて、なんで歌っているのかまで踏み込んだ曲になっていると感じて。特に“I”の<ちゃんと笑うんだよ / そのために生まれてきたんだもの><幸せになる それがレベルだよ>という言葉がとても強いんですけど、どういうところからこの歌は出てきたんですか。

マヒト:『Silence Will Speak』や『Tribe Called Discord』のタームでアメリカの原住民の人と会って、本当の意味で相容れない世界を見たことで、じゃあ俺が暮らしている街にはどれだけの許容量があるのか考えたんだよね。それで、今自分が暮らす街はどうなんだ? っていうことが今回のテーマになっていったんだけど……だからこそ、“I”がなかったらこのアルバムは成立しなかったなと思っていて。

GEZAN『Silence Will Speak』を聴く(Spotifyを開く

―それはどういう意味で?

マヒト:今この世界をどれくらい素晴らしいと思えているかのパーセンテージにかかわらず、俺は「素晴らしい世界だ」って歌える側の人間でいたいと思ったんだよね。こんなにヘイトに塗れて人が傷つけ合っている世界に絶望して終わるのは簡単だし、ヘイトで自分を動かすのは安易なこと。だからこそ、<ちゃんと笑うんだよ>っていう綺麗事を歌えなきゃ駄目だと思った。

―これまでも語ってくれた現実へのシビアな視線と同時に、マヒトさんが持っている希望とはどういうものなんですか。

マヒト:街や世界だけじゃなく、自分達一人ひとりがそもそも混乱した存在なわけだよね。体の中にも大量の菌がいっぱいいて、独りぼっちでも一人になれないっていう矛盾を最初から抱えてる。それなのに、矛盾とか不完全さを徹底的に排除しようとする大きな流ればかりが強まっていて。それに飲み込まれないようにするためには、まず自分が孤独になって、混乱や不安定さこそが自分たちを形成してるんだと個々が認識することが大事で。それこそが、お互いを許し合って尊重し合う世界のための希望だと思う。

マヒト:逆に言えば、誰もが不完全な生き物なんだから、一人ひとりの孤独に向けて放った歌じゃないと、人間の内側には飛ばないと俺は思っていて。「みんな」っていう曖昧なものに向けても、それもただカテゴリーを作って、人を塊にしているだけで。……何より、「みんな」みたいなものに向けられた音楽には俺自身が救われてこなかったから。いつだってそうなんだよ、奮い立たせてくれるのは、個人と個人の間の体験や、たった一人からの贈り物なんだよね。

だから今回は、ヘッドフォンの中から、その人の一番干渉できない孤独な部分に向けて鳴らすイメージだった。これも祭りの話に戻っちゃうんだけど、櫓の周りでみんなで踊って同じことやって、っていうのは一見没個性っぽく思えるけど、それって実は孤独な世界に入って、自分を解放していくことだと思うのね。

―没入して、自分を解放して、「みんな」っていう曖昧な主語から解き放たれる。

マヒト:そう。いかにして「みんな」とか「私たち」みたいな主語を解体していくかって部分にも、レベルっていう言葉はかかってる。そのための「踊る」っていう行為だと思うんだよね。それが、“I”で歌っていることと繋がるというか。

これまでに歌ってきた曲は、簡単に言ってしまえば、自分と世界の混乱をそのまま描いてきた感覚が強い。でもこうして生きている以上、たった数パーセントだとしても美しい世界だって歌える自分じゃなかったら、表現する意味がないんだよね。たとえば「俺はこんなに不幸だ」っていう様をシェアしながら「お前もしんどいよな、頑張ってるよな」っていう応援歌を作るミュージシャンが人気だったりするけどさ、それだけじゃ生きている意味がないと思うから。

2019年10月13日『SHIBUYA全感覚祭-Human Rebelion-』でGEZANは3回のライブを行った

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リリース情報

『狂(KLUE)』(CD)
GEZAN
『狂(KLUE)』(CD)

2019年1月29日(水)発売
価格:3,080円(税込)
JSGM-34

1. 狂
2. EXTACY
3. replicant
4. Human Rebellion
5. AGEHA
6. Soul Material
7. 訓告
8. Tired Of Love
9. 赤曜日
10. Free Refugees
11. 東京
12. Playground
13. I

ツアー情報

『十三月presents GEZAN 5th ALBUM「狂(KLUE)」release tour 2020』

2020年2月13日(木)
会場:北海道 札幌 BESSIE HALL

2020年2月17日(月)
会場:青森県 弘前 Mag-Net w / 踊ってばかりの国

2020年2月19日(水)
会場:山形県 酒田 hope

2020年2月20日(木)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

2020年3月18日(水)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2020年3月19日(木)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE

2020年4月1日(水)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

プロフィール

GEZAN
GEZAN(げざん)

2009年、大阪にて結成。自主レーベル「十三月」を主宰する。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主催フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。そして、1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。

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