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羊文学・塩塚が語る、愛と許し 聴き手の「よりどころ」となる歌を

羊文学・塩塚が語る、愛と許し 聴き手の「よりどころ」となる歌を

羊文学『ざわめき』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
羊文学

塩塚の原点は、思春期に感じた世の中への疑問。彼女が今、苛立ちの向こう側で歌うのは「許し」の感覚

―デビュー当時は、高校生の頃に感じていた人間関係などのフラストレーションが創作の動機になっていましたが、大学生になって、徐々に視点が外に開かれて、他人を認めることもできるようになってきた。そんななかで完成したのが『若者たちへ』という作品だったかと思うのですが、実際創作の動機はどのように変化してきましたか?

塩塚:最初の頃は、マイナスのことをマイナスにぶつけるような表現が多かったんです。

でもそれだと、このままじゃ続かなくなると思って、デビューEPの『トンネルを抜けたら』(2017年)に入っている“Step”を作った頃から、プラスの気持ちとか、自分が見たものや聞いたものから曲を作る方法に変わりました。それが20歳くらいですね。

羊文学『トンネルを抜けたら』収録曲(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

塩塚:マイナスな気持ちから、殴り書きのように曲を作るのも人間らしくていいと思いますけどね。実際、今回のEPにもそういう曲は入ってるんですけど、そうじゃない曲のほうが増えました。

―『きらめき』は「女の子」をテーマに、「本当の自分を認める」ことに挑戦した作品で。マイナスな気持ちをグッと内側に向けるというよりも、プラスのエネルギーを発しているようなEPでしたよね。

塩塚:『きらめき』のときはそうだったんですけど、今回の作品は「自分を認める」というよりは、自分も含めて、「みんなダメでも大丈夫だぜ」みたいな感じっていうか(笑)。

羊文学“あたらしいわたし”を聴く(Apple Musicはこちら

塩塚:明確なテーマというわけではないんですけど、「許し」の感覚を描きたくて。羊文学の曲を聴いて、「このままでいいんだ」って思ってくれたらなって。

私も「これでよかったのかな?」って思うことがよくあるから、そういうときに「これでよかった」って思いたかったんですよね。「諦めがつく」ってことにも近いのかもしれないけど……「こうやっていくしかないし、大丈夫」って、聴いた人が感じてくれたらいいなって思います。

―「許し」の感覚は、以前からモエカさんのなかで大きなテーマのひとつなのでしょうか?

塩塚:私は幼稚園と中高がキリスト教教育の学校に通ってたんです。キリスト教徒というわけではないんですけど、毎朝聖書を読んだり、賛美歌を歌ったりして、「よりどころになるもの」をキリスト教のなかに見ていたというか。それを信じる / 信じないの問題ではなく、そういう「よりどころ」が日常生活のなかにあるのはいいことだなと思うんですよね。

塩塚モエカ

―そういった感覚を歌にしているのはなぜなのでしょう? 「このままで大丈夫」って思えるような、何らかの「よりどころ」となるものが今の時代には必要なんじゃないかと感じますか?

塩塚:今ってことで言うと、「寛容さ」みたいな話はみんながしていると思うんです。Netflixでも『クィア・アイ』とか『セックス・エデュケーション』とか、ちょっと前まではみんなが語らなかったことがどんどん表に出てきて、それが当たり前になってきている。

そういうポジティブなパワーはすごく感じるんですけど、私が言っていることは、「そういう世界で取り残されてしまったらどうするのか?」という話で……今の時代、というよりもう少し根本的な話のような気もします。

羊文学『若者たちへ』収録曲(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

―君島大空さんとは以前から交流があると思うんですけど、彼の音楽にも「許し」の感覚があると思っていて(参考記事:君島大空が求める「ギリギリ、音楽」。繊細な芸術家の脳内を覗く)。YouTubeに動画がアップされていますけど、モエカさんと君島さんとuamiさんの3人で、七尾旅人さんの“サーカスナイト”をカバーされていますよね。

塩塚:はい。

―旅人さんも「取り残されてしまった側に対する許し」を表現している人だと思っていて、この3人と旅人さんに一本の線を感じたんですよね(参考記事:七尾旅人が歌い続けてきたこと 名もなき人生を照らす音楽家の20年)。

塩塚:たしかに、「取り残された側」みたいな感覚は私自身にもあります。もともと家が厳しくて、いい人生っていうのは、いい大学を出て、いい会社に入ることだって教えられてきたし、学校にもそういう子が多かったんです。そういうなかで感じた疑問から私の表現はスタートしていて、それが「許し」の感覚にも繋がっているのかなと思います。

―それは大きいかもしれないですね。

塩塚:でも、今は社会的にも少しずつ変わってきているなとも思います。生き方の選択肢が広がっていて、フリーランスにしても、昔よりずっと働きやすくなっていますよね。

あと、音楽をやっていて思うことなんですけど、周りの大人たちが結構めちゃくちゃっていうか(笑)、すごく自由で。音楽活動を通じて、自分が思っていたものとは違う大人の世界が見えたんです。だから、高校生の頃に感じていた苛立ちからは一歩抜け出せたんですけど、とはいえ根っこにある感覚は変わっていない。そのバランスのなかで音楽を続けているんだと思います。

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リリース情報

羊文学『ざわめき』
羊文学
『ざわめき』(CD)

2020年2月5日(水)発売
料金:1,540円(税込)
PECF-1178 felicity cap-325

1. 人間だった
2. サイレン
3. 夕凪
4. 祈り
5. 恋なんて

イベント情報

『felicity live 2020』

2020年3月12日(木)
会場:東京都 渋谷 WWW X

出演:
七尾旅人
羊文学
ROTH BART BARON
料金:4,000円(ドリンク別)

プロフィール

羊文学
羊文学(ひつじぶんがく)

塩塚モエカ(Vo,Gt)、ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)からなる、柔らかくも鋭い感性で心に寄り添い突き刺さる歌を繊細で重厚なサウンドにのせ、美しさを纏った音楽を奏でる3人組。2012年結成。2017年に現在の編成となり、EP3枚、フルアルバム1枚、配信シングル1曲、そして2019年12月にクリスマスシングル『1999 / 人間だった』をリリース。生産限定盤ながら全国的なヒットを記録。2020年2月5日に最新EP『ざわめき』のリリース、そのリリースより先行してのワンマンツアー(1/18大阪・梅田シャングリラ、1月31日東京・恵比寿LIQUIDROOM)はSOLD OUTに。2020年、しなやかに旋風を巻き起こしていきます。

関連チケット情報

2020年3月12日(木)
felicity live 2020
会場:WWW X(東京都)

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