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SMTKが鳴らす、ルール破壊の音楽精神 荘子itが嗅ぎ取り、言葉に

SMTKが鳴らす、ルール破壊の音楽精神 荘子itが嗅ぎ取り、言葉に

SMTK『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』
インタビュー・テキスト
小熊俊哉
編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

歴史や文脈に敬意を払いつつ、今の時代にいかにして刺激的な音を鳴らせるか。手法もバックグラウンドも異なる両者の共通認識

―でも、それを今聴いてもいいと思えるかどうかが問題だったりしますよね。

荘子it:そうなんですよ。フリージャズが目指していた新しさが、さして真新しくない時代が来てしまったわけで。でも、もはや理論的には新しくない音楽でも、サンプリング感覚で取り入れたり、ビートに乗せたりすると、新しい響きを見つけだすこともできるんですよね。かつてのコンテクストに対する反動として生まれた音楽を、それが無効化した現代で、文脈を共有していない人たちに向けていかに面白く提示できるか。そういうことを僕はやろうとしてます。

セロニアス・モンク“Brilliant Corners”からサンプリングしたフレーズをトラックの随所で聴くことができる

松丸:Dos Monosのアルバムに、オーネットのサンプルをずっとループしてる曲があるじゃないですか。あそこを使う人はいないと思うし、メチャクチャいいですよね。他にも、マイルスが「俺の音楽をジャズと呼ぶな、ソーシャル・ミュージックなんだ」と語ってるインタビューを使っていたり、ジャズの文脈をしっかり理解しているところにも共感しました。

荘子it:マイルスやオーネットも、普通の人からしたらどうでもいい存在じゃないですか。そこでコンテクストを共有していない人にも面白がってもらうために、文脈を一度引き剥がしちゃうんですよ。

今の話でいうと、マイルスが「ソーシャル・ミュージック」と言ってるところだけ抜き出してそのあとSiriに喋らせたり、「キャラ的に面白くしちゃうことで、元ネタがわからなくても楽しめるようにしよう」と。

Dos Monos“EPH”を聴く(Apple Musicはこちら

荘子it:アニメの『ポプテピピック』やMADドラえもんもそうですよね。無数のパロディーが散りばめられていて、一般的な感覚だとほとんどの元ネタがわからないけど、乱発されるとよく知らない人でもなんか面白くなってくる。そんなふうに、普通の人にはポップスとして楽しんでもらいつつ、自分のなかでハイコンテクストな構築をする喜びを勝手に感じています。

―Dos Monosがフリージャズをサンプリングの手法で再解釈しているのに対し、SMTKはアカデミックな素養をもつメンバーが生演奏で今できることを提示しているとも言えますよね。そこにはどういう狙いがあるのでしょう?

松丸:個人的な意見としては、荘子itさんの話と少し似ている気がします。フリージャズを知ってもらうためのいい入り口というか、ハイエナジーかつ圧倒的なサウンドで、ライブをやったら体が自然と動くような音楽をやることで、言葉(歌詞)を使わなくても文脈や魅力を伝えられるのかなって。

SMTK“Where is the Claaaapstaaack??”を聴く(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

石若:自分とフリージャズの出会いでいうと、以前もCINRAで話したように、小学5年生のときに出会った日野皓正さんが「中学校卒業したら、俺のバンドに入れよ」って言ってくれたのがプロになるきっかけで(関連記事:石若駿という世界基準の才能。常田大希らの手紙から魅力に迫る)。

2005年くらいまでは日野バンドはハードバップ的な音楽をやってたんですけど、数年後にいきなりフリーになったんです。その頃日野バンドメンバーだった金澤英明さん(Ba)、石井彰さん(Pf)とのBoys Trioのツアーの移動中に、ポール・ブレイ、オーネットやチャーリー・ヘイデン、菊地雅章さんの音楽を教えてもらって。でも、いざ自分がプロのドラマーになったら、そういう音楽を同世代とやる機会がなかったんですよね。そのなかで、契や徳ちゃんには、自分のなかのフリージャズの演奏法に共鳴するものを感じられたんです。

荘子it:二人とも、ジャズの先生や師匠筋からしっかり受け継いでいると。それで気の合う仲間が集まってるのはいいっすね。僕もそういう出会い方をしたかった(笑)。

石若:どんどん一緒にやろう!

「現在の音楽シーンでみんなが無意識的に縛られている制約や不自由さに対しての批評として、あえてフリージャズという言葉を使っている」(荘子it)

―フリージャズの話をずっとしてきましたけど、SMTKの音楽はフリージャズで括れるものではなくて。エレクトロニックミュージックを生演奏で再現したような曲もあるし、音響的なアプローチも垣間見せていて、これまでにない音楽を作ろうという意思が伝わってきます。

松丸:僕からすると、フリージャズというスタイルを再現したくてSMTKをやっているわけではないんですよね。文脈を受け継ぐのは大事だけど、フリージャズをただのスタイルとして解釈するのは危ないと思うんですよ。

石若:たしかに。

松丸:それよりは、4人のバックグラウンドとか、それぞれの人間的な部分を組み合わせたものが、結果的にそういう音楽になったというほうが自然かなって。もちろん、その歴史はリスペクトしているし、学ぶべきところは学んで、自分たちの音楽に活かしているつもりですけど。

SMTK“SUPER MAGIC TOKYO KARMA”を聴く(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

荘子it:今さらフリージャズを普通にやることにさしたる文化的意義もないわけで、影響を受ける部分はあるにせよ、そのままやってもしょうがないっていうのは、僕らに共通してある認識じゃないかな。

松丸:そう思います。SMTKにはフリージャズと程遠い構成をした曲もあれば、ポップスやミニマル的な曲もあるけど、どれもSMTKの音だとわかると思うんですよね。

荘子it:フリージャズは和声やリズムの既成概念を否定するところに革新性があったわけですけど、ヒップホップやロックの四分で刻まれたビートに吟味すべき可能性がまだまだあったりするわけで。だから、フリージャズがある特定の時代において否定しなければいけなかったものへの禁欲を、殊更にやり直す必要はないというか。SMTKの音楽もビートがしっかり鳴っているし、そこを否定していないところに、括弧付きではなく本来の意味でのフリーを感じますね。

松丸:そこは僕らも目指してます。

荘子it:Dos Monosも音楽的な部分というより、現在の音楽シーンでみんなが無意識的に縛られている制約や不自由さに対しての批評として、あえてフリージャズという言葉を使っている感じです。

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リリース情報

SMTK『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』
SMTK
『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』(CD)

2020年5月20日(水)発売
価格:2,750円(税込)
APLS-2005

1. SUPER MAGIC TOKYO KARMA
2. 3+1=6+4
3. Otoshi Ana feat.荘子it
4. Let Others Be the Judge of You
5. Where is the Claaaapstaaack??
6. ドタキャン
7. My Country is Burning
8. すって、はいて。
9. 長方形エレベーターとパラシュート

SMTK『SMTK』
SMTK
『SMTK』(CD)

2020年4月15日(水)発売
価格:1,650円(税込)
APLS-2004

1. Snack Bar
2. AAAAA
3. In the Wise Word of Drunk Koya
4. ホコリヲハイタラ

プロフィール

SMTK(えすえむてぃーけー)

ドラマーの石若駿が自身の同世代のミュージシャン達を集め結成したバンド。2018年8月に初ライブを行う。最初のライブはドラムの石若駿、ギターの細井徳太郎、ベースのマーティ・ホロベックの3人で行われる。同年10月、新宿ピットインでのライブにてサックスの松丸契が参加、以後現在の編成となる。2019年には『東京ジャズ』や『TOKYO LAB』といったイベントにも出演。2020年4月15日に1stEP『SMTK』、同年5月20日に1stフルアルバム『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』をリリース。

Dos Monos(どす ものす)

荘子it(Trackmaker,Rapper)、TaiTan(Rapper)、没(Rapper,Sampler)からなる、3人組ヒップホップユニット。荘子itの手がける、フリージャズやプログレのエッセンスを現代の感覚で盛り込んだビートの数々と、3MCのズレを強調したグルーヴで、東京の音楽シーンのオルタナティブを担う。結成後の2017年には初の海外ライブをソウルのHenz Clubで成功させ、その後は、『SUMMER SONIC』などに出演。2018年には、アメリカのレーベル「Deathbomb Arc」との契約・フランスのフェス『La Magnifique Society』、上海のフェス『SH△MP』への出演を果たすなど、シームレスに活動を展開している。2019年に満を持して初の音源となる1stアルバム『Dos City』をリリースした。

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