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サニーデイ・サービス曽我部の純情と歌。成熟を拒み、走り出せ

サニーデイ・サービス曽我部の純情と歌。成熟を拒み、走り出せ

サニーデイ・サービス『いいね!』
インタビュー・テキスト・編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)

2020年3月19日に配信リリースされたサニーデイ・サービスの新作『いいね!』には、正体不明な巨大なエネルギーがみなぎっている。このエネルギーは一体何だろうか。瑞々しい生命力や無鉄砲な肯定感、というような言葉で言い表せそうなそれは、初めて音楽に夢中になってしまったときに「何じゃこりゃー!!!?」と脳内に閃光が走ったときの記憶を思い起こさせる。

今回の取材で、曽我部恵一は「走り出したくなるような何か」という表現を繰り返し使って話してくれた。その言葉から考えても『いいね!』を形作るエネルギーは、一言でいえば「初期衝動」というようなものなのかもしれない。でも僕はそんなありきたりな言葉で片付けたくない。歳を重ねて知識や経験が身に付いていくのと反比例するように、純情は失われ、好奇心は錆つき、情熱は冷めていく……生きるということは得てして不可逆なものだが、曽我部恵一は力づくで、この世の法則を捻じ曲げるようにして、まだ青く未熟な魂がロックンロールの洗礼を受けたときの一瞬のきらめきを取り戻そうとしたのではないか。今作にあるエネルギーは、曽我部恵一という音楽家の巨大な魂が、好奇心と情熱に燃える純情な少年の心に立ち返ろうとする過程で生成されたものなのだと僕は思っている。

そんなことまでして曽我部恵一は何を歌っているのか? 彼は、我々聴き手に全身全霊で「元気ですか?」と投げかけているのである。「走り出せ!」「目を覚ませ!」と伝えようとしているのである。曽我部恵一は言う、「僕、音楽はコミュニケーションだと思ってるんです」。2020年4月、東京。空はこんなに青く澄み渡っているというのに、僕らはお互いの自室を繋ぎ、ディスプレイ越しに話をした。

サニーデイ・サービス<br>1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。フォーク、ネオアコからヒップホップまでを内包した新しい日本語のロックは、シーンに衝撃を与えた。現在までに13枚のアルバムをリリース。どの作品もバンド像を更新し続ける創造性/革新性に満ち、グッドメロディに溢れる。今日に至るまで、国内外で揺るぎない支持を集め続ける。最新作『いいね!』が3月19日に先行配信され、5月22日にはCDとアナログ盤がリリースされた。
サニーデイ・サービス
1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。フォーク、ネオアコからヒップホップまでを内包した新しい日本語のロックは、シーンに衝撃を与えた。現在までに13枚のアルバムをリリース。どの作品もバンド像を更新し続ける創造性/革新性に満ち、グッドメロディに溢れる。今日に至るまで、国内外で揺るぎない支持を集め続ける。最新作『いいね!』が3月19日に先行配信され、5月22日にはCDとアナログ盤がリリースされた。

「今はやれることやろうって感じですよ。で、とりあえず毎日カレー作ってます」

―今、曽我部さんはどんなふうに過ごされているのでしょうか?

曽我部:カレー屋さんをはじめたので、今はそこに勤めに出てますね。10時とかから仕込みの手伝いをやって、20時くらいまで営業したあとにミーティングをやって、家に帰るのは22〜23時ぐらい。帰ったらもう寝るって感じです。お店は、基本的にはテイクアウトなんですけど、カレー作ったり、接客したり、呼び込みしたり、何だかんだずーっと動いてますよ。

―ミュージシャンとしてはどんな心持ちの日々ですか?

曽我部:うーーーーーん。僕は人間としてという気持ちしかないですから、「ミュージシャンとして」っていうのはちょっとよくわかんないです。ライブがことごとく延期・中止になって表現の場がないし、それにカレー屋さんをせっかく準備してきたわけだから、今動かさないとダメだろってことで動かしてます。今はやれることやろうって感じですよ。で、とりあえず毎日カレー作ってます。

曽我部恵一のInstagramより。「カレーの店・八月」は4月10日より、下北沢にて営業を行っている(お店のInstagramを見る

「自分の感情に振り回されていない音楽を作りたかった」――新ドラマーを迎えた新作『いいね!』リリースまで裏側

―3月に新しいドラマーとして大工原幹雄さんを迎えたアルバム『いいね!』がリリースされました。このアルバムはすごく晴れやかさがあって、それが逆に寂しさを思い起こさせるというか、少なくともこれまでのサニーデイ・サービスにはないタイプの作品で。前作『the CITY』(2018年)までとは明らかに違うモードに移行しているし、だからこそ曽我部さんが今どんなことを考えているのかすごく気になるんです。そもそも、前作と今作の間に1枚アルバムを作ろうとされていたんですよね? そのお蔵入りになった作品から、“Christmas of Love”(2018年)だけがリリースされたということだそうですが。

曽我部:うん。それは頓挫したっていうか、完成させられなかったんですよ。

―振り返ってみて、その理由はどんなところにあると考えていますか?

曽我部:自分の感情に振り回されていない音楽を作りたかったんですよ。それができたのが今回の作品かなって思っていて。

サニーデイ・サービス“Christmas of Love”を聴く(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

―今年の元日に“雨が降りそう”という曲がミュージックビデオが公開されましたが、本作には収録されていないですよね(後に配信シングルとしてリリースされた)。

曽我部:“雨が降りそう”は、自分の感情や内面が濃厚に入ってて。曲としてはすごくいいものができたと思ってたんですけど、今回はそこからは離れたかったんです。離れたかったというか、あの曲からスタートしたって感じです。寂しさとか悲しさ、怒りがダイレクトに出る必要はあんまりないのかなって。

サニーデイ・サービス“雨が降りそう”を聴く(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

―では実際、どういったところから『いいね!』は形になっていったのでしょう?

曽我部:とっかかりは“センチメンタル”って曲で、それを作ったのが2019年のお正月くらい。そのときは「春はとっくに終わったのにね」っていうタイトルにしてたけど、すごくいい曲できたなって思ってて、そこからアルバムを作ろうって意識が芽生えたんですよ。

でもなかなかアルバムにはできなかったというか、この曲がどういいのかっていうのがわからなくて。曲が何を映し出してるのか、自分の何を語ってるのかわからないと説得力に欠けるじゃないですか。だからアルバムの選曲から外しちゃったんですよ。

サニーデイ・サービス“センチメンタル”を聴く(Apple Musicはこちら

曽我部:そのあとに“雨が降りそう”とか、いろんな曲が生まれて。そうやって作りはじめて、結局、今回のアルバムで最後に録ったのは“センチメンタル”だったんです。

去年のお正月から今年のお正月くらいまでの約1年間は、“雨が降りそう”に至る何かをずっとやってたんです。たくさん曲を作って自分の感情のいろんなものを切り取ってきて、最初のところに戻った感じだった。

―時間をかけて感情を整理するように作った“雨が降りそう”が、アルバムに収録されなかった。そこに今作を紐解くヒントがありそうです。

曽我部:“雨が降りそう”が出たあと、10曲とか12曲とかを並べてアルバムにまとめてみたんだけど、どれを聴いてもこういうのを作るつもりじゃなかったんじゃないかって気持ちになってきて。「ちょっと待って」って一度全部取り下げたんですよ。

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リリース情報

サニーデイ・サービス
『いいね!』初回限定盤(CD+DVD)

2020年5月22日(金)発売
価格:3,300円(税込)
ROSE-249DX

[CD]
1. 心に雲を持つ少年
2. OH!ブルーベリー
3. ぼくらが光っていられない夜に
4. 春の風
5. エントロピー・ラブ
6. 日傘をさして
7. コンビニのコーヒー
8. センチメンタル
9. 時間が止まって音楽が始まる

[DVD]
2020年1月4日 江ノ島オッパーラにて行われたワンマンライブより9曲 / 50分を収録

サニーデイ・サービス
『いいね!』通常盤(CD)

2020年5月22日(金)発売
価格:2,750円(税込)
ROSE-249

1. 心に雲を持つ少年
2. OH!ブルーベリー
3. ぼくらが光っていられない夜に
4. 春の風
5. エントロピー・ラブ
6. 日傘をさして
7. コンビニのコーヒー
8. センチメンタル
9. 時間が止まって音楽が始まる

サニーデイ・サービス
『いいね!』(LP)

2020年5月22日(金)発売
価格:3,300円(税込)
ROSE-249X

[SIDE-A]
1. 心に雲を持つ少年
2. OH!ブルーベリー
3. ぼくらが光っていられない夜に
4. 春の風
5. エントロピー・ラブ

[SIDE-B]
1. 日傘をさして
2. コンビニのコーヒー
3. センチメンタル
4. 時間が止まって音楽が始まる

プロフィール

サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービス

1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。フォーク、ネオアコからヒップホップまでを内包した新しい日本語のロックは、シーンに衝撃を与えた。現在までに13枚のアルバムをリリース。どの作品もバンド像を更新し続ける創造性/革新性に満ち、グッドメロディに溢れる。今日に至るまで、国内外で揺るぎない支持を集め続ける。最新作『いいね!』が3月19日に先行配信され、5月22日にはCDとアナログ盤がリリースされた。

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