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橋本晶子が信じる絵の力。人の意識を遠くへ飛ばす、豊かな世界

橋本晶子が信じる絵の力。人の意識を遠くへ飛ばす、豊かな世界

『shiseido art egg』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

「プロジェクションマッピングのような視覚性の強い表現がありますけど、それらと比較しても、絵が持つ『人の意識を遠くへ飛ばす力』『その飛び方の方法の豊かさ』は負けてない」

―橋本さんは、絵から入ってインスタレーションに移行しつつ、でも先ほど話されたように日本画への執着もあって、どこかにつねに絵というものへの意識をお持ちですよね。橋本さんが考える「絵」って、どういうものなんでしょうか?

橋本:難しいですよね。『shisedo art egg』にはインスタレーションとして応募してますし(苦笑)。いちばんしっくりくるのは「風景」や「ランドスケープ」という言い方です。

いまのところ、絵について私が思っているのは「絵とは遠くを見るためのもの」だということです。絵の虚構性に注目しつつ、絵のかかる壁があり、その向こう側には次の空間がある、みたいなところから現在のような作品を作り始めました。そこで意識しているのは「観ているものは果たして本当なのかどうか」。それこそまさに絵の問題ですよね。そこがスタート地点です。

―「遠くに行く」という話もありましたが、絵が一種の媒介になっている?

橋本:媒介という言葉は感覚的に近い感じがします。二次元の絵って、素朴な表皮みたいなものですけど、ここにいる私たちを遠くへ行かせることを示唆するものでもあると私は思います。それって単純なことですけど、それを意識するたびに、私は「絵ってすごい!」と思っています。

いまは写真だけじゃなくて、たとえばプロジェクションマッピングみたいな視覚性の強い表現がありますけど、それらと比較しても、絵が持っている「人の意識を遠くへ飛ばす力」「その飛び方の方法の豊かさ」は負けてないと思っています。私が紙の表面をちょっとこすっただけでしかない絵によっても何かが起こる、っていうのはすごいことですよね。

橋本晶子

―映像やプロジェクションマッピングなどの技術は日々進化して、人間の目をわかりやすく圧倒させてくれますが、瞬間のインパクトに力をかけているぶんだけ飽きちゃいますよね。その点、優れた絵や文章は噛めば噛むほど経験が持続するところがあります。

橋本:それから絵と個人の関係性も面白いですよ。たとえば、ドアの外側と内側にポスターを貼るときに、外側はちょっと公共性のある、誰から見られてもよいものを選ぶじゃないですか。それに対して、内側は本当に自分が好きなもの、毎日見たいものを貼ると思うんです。内側に貼られたものは、当然毎日目にすることになるし、それが経験として個人に影響を及ぼしていく。そういう内と外に私は関心があるんだと思います。

それから、最近気にしているのは「手元」のことで、それは今回の展示にも反映してくる気がしています。

―手元?

橋本:この数か月は、捉えきれないことがたくさん起きましたよね。そのなかで、大きいことに私自身も飲み込まれてしまった感じがあって、まったく遠くにいる人の怒りが、気を抜くと自分を攻撃してるように思ってしまったりする。ネットを見ていると本当にそういう気分になってしまいます。

そういう大きなうねりのなかにいるけれど、それでも実際に自分が見ているのは、手元とその周辺なんですよね。そこにふとあるようなものを作りたいという気持ちがあります。自粛時はすごく小さな道の絵を描いていたんですが、それをぽんとテーブルの上に置いてみたらどうか、とか。コップの下に隠しておいたらどうだろう、とか。

―個人と社会の関わり方は、いまの時代はとくに難しいです。橋本さんの話からそのことを思いました。

橋本:さっきも言ったように、鑑賞者には作品や展示をどう思ってもらっても構わなくて。ただ、私が作ったもので、自分がここにいる、ってことは感じてほしいとは思っていて、いろんな考えを持っている人たちの、その周囲の風景を作る人として自分はありたい、という感じでしょうか。

予約制になって、その自然さは少し薄れるかもしれないですけど、むしろ予約するって行為によって「自分がここにいる」という感覚は増す気もします。それは案外悪いことではないな、とも思うんですよね。

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イベント情報

『shiseido art egg 14th』
橋本晶子展

2020年10月30日(金)~11月22日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日 11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料
事前予約制

作家によるギャラリートーク
橋本晶子展

作家本人が会場で自作について解説するギャラリートークを、各展覧会開始後に資生堂ギャラリーの公式サイトにてオンライン配信いたします。

※ご予約は10月23日(金)から開始となります。

プロフィール

橋本晶子(はしもと あきこ)

1988年東京都生まれ。2015年武蔵野美術大学大学院 造形研究科修士課程 日本画コース修了。東京都在住。主な活動として、『Yesterday's story』Cite internationale des arts(2018年 / パリ)個展、『It' soon.』Little Barrel(2018年 / 東京)個展などがある。

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