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曽我部恵一インタビュー 引き伸ばされた日常、虚無感の先をめがけ

曽我部恵一インタビュー 引き伸ばされた日常、虚無感の先をめがけ

曽我部恵一『永久ミント機関』『LIVE IN HEAVEN』『戦争反対音頭』
インタビュー・テキスト
田中亮太
撮影:池野詩織 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

ライブもフェスもままならない、レジャーもない引き伸ばされた宙ぶらりんな日常で、音楽のリアリティはどこにあるのか?

曽我部恵一

―“戦争反対音頭”では、Daft Punkの“One More Time”がひとつ下敷きにあったとおっしゃっていたじゃないですか。“永久ミント機関”にはそういう参照点ってありますか?

曽我部:コード進行とかを参考にしようと思って、シティポップのいろんな曲を聴いてたかな。あと歌謡曲のロングエディット。1980年代、12インチシングルというフォーマットの黎明期だった頃に、歌謡曲も12インチで出てた時期があって。なぜか森進一が“Summer Time”のカバーを12インチで出したりとか。

―たしかに洋邦問わず1980年代の12インチシングルって、ロングエディットみたいなやつが入ってますもんね。

曽我部:そうそう、入ってる(笑)。キョンキョン(小泉今日子)の“ヤマトナデシコ七変化”も12インチがあるんですけど、それとか最高にエレクトロでいいんですよ。キョンキョンの語りも入っていて、最高なんです。そういう歌謡曲が引き伸ばされて8分とかになってる感覚が面白いなあと思って。つまり歌謡曲を無理やりダンスミュージックにしてるんだよね。

小泉今日子“ヤマトナデシコ七変化(Long Version)”を聴く(Apple Musicはこちら

大石:引き延ばされるっていう表現、面白いですね。今まさに日常が強制的に引き延ばされてるというか、区切りとなるような季節の行事もないので、ずっと変わらない日常がダラーっと続いていく感じがするんですよね。

曽我部:季節感もなくなっちゃいましたしね。

大石:ある意味ずっと家にいるので毎日が週末みたいな感じもするし。

曽我部:のっぺりした日常のなかで音楽を出すことの虚無感はめちゃくちゃあるんですよね。「新曲とか出す意味あんの?」みたいな(笑)。

新曲って「これ、ライブの1曲目でやるんだろうな」とか、そういう聴き方があるじゃないですか。「でも今、ライブないじゃん!」って。僕らの活動はライブとどこか切り離せない面があるし、サニーデイの『いいね!』もライブで演奏することを考えながら作ったんです。

サニーデイ・サービス『いいね!』を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

曽我部:だから今、めっちゃ盛り上がる曲とかを出しても「(仮)」みたいな感覚があるというか、「いつかフェスでやるんだろうな」って感じがある(笑)。その「(仮)」みたいな感覚がずっとあるから、リアリティを持つ音楽って何なんだろうってすごく考えるし、めっちゃくちゃ踊れる曲を作っても踊らせる現場がないじゃんって思わざるをえない。受け手も同じだと思うんですよね。「これライブで聴きたいなあ」って今はならないんじゃないかな。

この先、状況が戻ったとしても、感覚は変わったままかもなと思ったりもします。「今を生きる」っていうことが人生のいちばんの重要事項だと思うんですけど、今はそういう気持ちになれないですよね。むしろ今が早く過ぎ去ってほしい、みたいなさ。

「これがもう一生続きます」だったら今を生きるでいいんだけど、「来月はちょっと戻ってるかも」みたいな状況でみんな暮らしてるじゃん。だから、今を生きよう! 今日を生きよう! この瞬間に輝くんだ! っていうメッセージは無効でしょ。ロックでもテクノでも、音楽はそれが最重要事項だったわけじゃん。でも「それ、今みんな求めてる?」って。だから何をやっても抜けが悪いんですよね。

大石:そうですね。今は2020年だけど、これは2020年なのか2030年なのかよくわからない現実をずーっと生きてるっていうか、生かされてるというか。引き延ばされている感覚ばっかりで、来年が来るのかどうかもよくわからない。

曽我部:誰もが味わったことがないような、宙ぶらりんな感じですよね。

曽我部恵一“戦争反対音頭”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

大石:リアリティのある音楽とはどんなものだろうと考えざるをえないですよね。

曽我部:すごく模索しています。こういう状況がもう少し続くだろうから、そのなかででも音楽を出さなきゃと思ってるし、音楽をやりたい。「ライブもできないですよ」「踊れませんよ」っていうなかで、じゃあリスナーと繋がる部分は何なのか? ということを考えていますね。

大石:そっか、曽我部さんはラップなり音頭なりハウスなり……いろんなフォーマットを使いながら、どこにリアリティがあるのかを見つけようとしているんでしょうね。

曽我部:でも、まだ掴めない。

大石:ライブがないと、リアリティを実感する瞬間もないわけじゃないですか。

曽我部:そうなんですよ。でもリスナーがリアリティを感じられるものこそが新しい音楽だと思うんですよ。こういう状況だからこそだけど、それはライブ感とはすごく離れたものかもしれないと思いますね。熱はあるんだけど、内に向かっていくようなエネルギーを持ったもの。でも、どこからかボンッて出てくると思いますよ、これがコロナ以降のリアリティだなって音楽が。

曽我部恵一
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リリース情報

曽我部恵一『永久ミント機関』
曽我部恵一
『永久ミント機関』(限定盤12インチ)

2020年10月16日(金)発売
価格:1,870円(税込)
ROSE 253

[SIDE-A]
1. 永久ミント機関

[SIDE-B]
1. MELTING 酩酊 SUMMER

曽我部恵一『戦争反対音頭』
曽我部恵一
『戦争反対音頭』(限定盤7インチ)

2020年10月16日(金)発売
価格:1,100円(税込)
ROSE 254

[SIDE-A]
1. 戦争反対音頭

曽我部恵一『LIVE IN HEAVEN』
曽我部恵一
『LIVE IN HEAVEN』(限定盤LP)

2020年10月16日(金)発売
価格:2,970円(税込)
ROSE 255X

[SIDE-A]
1. 野行性
2. フランシス・ベーコンエッグ
3. 文学
4. mixed night

[SIDE-B]
1. Gravity Garden
2. Big Yellow
3. 花の世紀

曽我部恵一
『LIVE IN HEAVEN』(限定盤CD)

2020年10月16日(金)発売
価格:2,200円(税込)
ROSE 255

1. 野行性
2. フランシス・ベーコンエッグ
3. 文学
4. mixed night
5. Gravity Garden
6. Big Yellow
7. 花の世紀

プロフィール

曽我部恵一
曽我部恵一(そかべ けいいち)

1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。1990年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト / ギタリストとして活動を始める。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル『ギター』でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント / DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス / ソロと並行し、形態にとらわれない表現を続ける。2020年8月、『永久ミント機関』『LIVE IN HEAVEN』『戦争反対音頭』を立て続けに発表。10月にはこれら3タイトルを「2020年夏の3部作」と銘打って限定プレスでフィジカルリリースした。

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