
角舘健悟の『未知との遭遇』青葉市子編
角舘健悟の『未知との遭遇』- テキスト・編集
- 金子厚武
- 撮影:小林光大 編集:川浦慧、今井大介(CINRA.NET編集部)
Yogee New Wavesの角舘健悟がいま会ってみたい人と自らコンタクトを取り、様々なロケーション / シチュエーションでの対話を試みる連載『未知との遭遇』。第4回目のお相手は、今年活動10周年を迎えた音楽家の青葉市子。
この連載初の音楽家同士の組み合わせということもあり、今回は2人によるセッションを開催。電話やリハーサルを経て、すでに同じ空気を感じていたという2人は、喫茶店での対談後、会場となる早稲田奉仕園のスコットホールへ。
本番ではもともと予定になかったという角舘のピアノ演奏に青葉が寄り添ったり、青葉のクラシックギターに角舘が色を添えたり、素晴らしい歌と演奏を聴かせてくれた。自己と他者が溶け合っていくような一日のドキュメントを、インスタライブでの生配信も行った映像とともにお届けする。
連載:角舘健悟の『未知との遭遇』
「Yogee New Waves」のボーカルとして活躍する角舘健悟が「未知との遭遇」をテーマに、様々な世界の未知なるアーティストと出会い、ものづくりや表現について対話し、「FUSION」することで、新しい創作物を生み出します。その過程をドキュメントし、カルチャーを愛する皆さんと一緒に応援し、楽しんでいく連載企画です。
この連載の取材では、2人に誰も関与しません。カメラマンが近づいて撮影をする場面はありますが、編集者も、マネージャーも、ライターも、基本的には別行動で、2人のやり取りはピンマイクでの録音にのみ収められます。通常のインタビューとも、対談取材とも異なる、クリエイター同士のおしゃべりを、そのままお楽しみください。
ここから遡ること3時間、2人はスコットホール近くでお茶をしていた。
会場近くの喫茶店でお茶をしながら
青葉:よろしくお願いします。
角舘:お願いします。
青葉:あんまりマイクつけたことない、こういうの。
角舘:ねえ。これをつけてると、文字起こしをしてくれる人がラクだから。昨日は寝れましたか?
青葉:昨日はね、熟睡でした。スパイスが効いたのか、あのカレーを食べた後からずっとこの辺が熱くて、重くて(2人は前日にリハーサルをし、角舘おすすめのカレーを一緒に食べている)。いつもアラームで起きるんですけど、アラームの前に起きました。

青葉市子(あおば いちこ)
音楽家。1990年1月28日生まれ。2010年にファーストアルバム『剃刀乙女』を発表以降、これまでに6枚のソロアルバムをリリース。うたとクラシックギターをたずさえ、日本各地、世界各国で音楽を奏でる。12月2日、「架空の映画のためのサウンドトラック」として、最新作『アダンの風』を発表する。
角舘:すごい、いいことじゃないですか。
青葉:2分くらい前に(笑)。
角舘:俺は全然寝れなくて。2時半ごろに寝て、5時半ごろに起きて、そっから8時くらいまで寝つけなくて。で、また寝て、11時すぎくらいに起きました。
青葉:いつもそうやって分けて眠るんですか?
角舘:いや、好きで分けてるわけではないですけど、なんか起きちゃうときがある。

角舘健悟(かくだて けんご)
1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成、ボーカルを担当。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』でデビュー。昨年、3rdアルバム『BLUEHARLEM』、12月に『to the MOON e.p.』をリリース。最新作は今年7月にシングル『White Lily Light』を発表。全国各地の野外フェスの出演やアジアを中心に海外公演を重ねる。バンド活動の傍ら、テレビ番組・TVCMのナレーションなど活動の場を拡げる。音楽、ファッションの両面で厚く支持されている。
(食事と飲み物が届く)
青葉:このマグカップね、実家にあるのと同じでした。
角舘:ほんとですか。
青葉:だからちょっと嬉しくて。
角舘:有名なやつなんですかね?
青葉:いや、わからないです。どこのでしょうね……日本って書いてある。ノリタケだ、ノリタケ(日本の食器メーカー)。母がこの食器を出すときにノリタケって言ってるの、いま思い出した。
角舘:すごい偶然だね。
青葉:ね。いただきます。
角舘:知らなかったな。こんないいところがあるなんて。
青葉:カウンターのうえに古い絵葉書がたくさん貼ってあります。
角舘:ほんとだ。あ、玄米のおにぎり食べました。
青葉:お、よかったです。
角舘:美味しかったです。生姜と胡椒? なんでしたっけ?
青葉:生姜と胡椒の塩漬け。純胡椒って名前で売ってるんですけど、あとなんだっけ、出汁か。
角舘:出汁ね~。どうやって作り方を知ったんです?
青葉:適当。閃きです。
角舘:閃き?
青葉:そう。なんか10時くらいに起き始めて、今日は長いし、もしどっかにご飯食べに行けなかったときのために、すぐ食べれるものがあるといいなって思って。あ、ご飯炊こうって。たまにやるんです、現場で。ご飯を2合くらい炊いて持って行くの。
角舘:みんな喜ぶよね。でも、心配性ですね?
青葉:心配性かもね。
角舘:けど、いいことだと思いますよ。
青葉:食べること、飲むこと。飲むってお酒じゃなくて、飲み物ね。水分があること、寒くならないことみたいなのは、いつも大事にしてるかもしれない。お腹空いてる人って、本当に元気ないじゃない?
角舘:そうね。僕らバンドだと、全員お腹空いてて、レコーディング終盤戦の深夜1時とかまじでヤバい。目もきてるし、お腹も減っている。お腹空いてるからこそ、謎に元気だったりして。
青葉:それはありますね。あと、ライブの前にたくさん食べすぎると本番グーって寝ちゃうみたいな。
角舘:ライブ前はできるだけ食べないようにしてるかな。
青葉:うん、私もそれは一緒かも。ただ現場のスタッフさんで本当になにも食べないでやってる人とかいるじゃない。そういうときにこう、ハイって。
角舘:おにぎり?
青葉:ハイ、パスって。これ食べてって。
角舘:それいいな。けど、スタッフさんとかいっぱいいるなかで、市子さんは1人だからさ、その人たちが自分のために動いてくれているわけだしね。それは俺もすげえ意識するようになった。去年より今年は。
青葉:ソロのライブのときじゃなくて、ヨギーの現場でもってこと?
角舘:そうだね。なんか、相手のことを思ったもん勝ちというか、メンバー4人のことを思ってる10人というよりは、10人が俺のことも考えてくれているっていう考えにしたら、もっと動けるようになったかな。挨拶するとか。
青葉:挨拶はするでしょ(笑)。
角舘:もちろんもちろん。でも照明さんとか含めたらさ、2~30人いるわけで。
青葉:そうですね、ホールとかだと。
角舘:それで、常設のスタッフさんとかには挨拶をしないこともあったけど、「お疲れです」「ご苦労さんです」「よろしくお願いします」とか言うと、みんなこうやっぱ、士気がちょっとずつ上がっていく。
青葉:ステージの上でもちゃんとエネルギーを発揮しないといけないけど、ステージの上だけじゃなくて、現場ごと引っ張っていかないといけない位置に私たちはいるなって思ってて。そういう姿がスタッフさんたちにも伝わると、相乗効果になって、その日がみんなにとってもいい日になる。
角舘:うん。
青葉:いい音楽やったぜってだけじゃなくて、そこに立てるためにはいろんな人が動いてるわけで、丸ごと1個の星になれたらいいなっていうのは、場数を踏んでわかっていったことで。まだ気づいてないこともたくさんあるとは思うんですけど、できるだけみんなをちゃんと持ち上げていきたいとは思っている。エンターテイナーだよね、私たち。
角舘:そうだね。
プロジェクト情報
- 連載:角舘健悟の『未知との遭遇』
-
「Yogee New Waves」のボーカルとして活躍する角舘健悟が「未知との遭遇」をテーマに、様々な世界の未知なるアーティストと出会い、ものづくりや表現について対話し、「FUSION」することで、新しい創作物を生み出します。その過程をドキュメントし、カルチャーを愛する皆さんと一緒に応援し、楽しんでいく連載企画です。
プロフィール
- 青葉市子(あおば いちこ)
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音楽家。1990年1月28日生まれ。2010年にファーストアルバム『剃刀乙女』を発表以降、これまでに6枚のソロアルバムをリリース。うたとクラシックギターをたずさえ、日本各地、世界各国で音楽を奏でる。弾き語りの傍ら、ナレーションやCM、舞台音楽の制作、芸術祭でのインスタレーション作品発表など、さまざまなフィールドで創作を行う。活動10周年を迎えた2020年、自主レーベル「hermine」(エルミン)を設立。体温の宿った幻想世界を描き続けている。12月2日、“架空の映画のためのサウンドトラック”として、最新作『アダンの風』を発表する。
- 角舘健悟(かくだて けんご)
-
1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成、ボーカルを担当。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』でデビュー。昨年、3rdアルバム『BLUEHARLEM』、12月に『to the MOON e.p.』をリリース。最新作は今年7月にシングル『White Lily Light』を発表。全国各地の野外フェスの出演やアジアを中心に海外公演を重ねる。バンド活動の傍ら、テレビ番組・TVCMのナレーションなど活動の場を拡げる。音楽、ファッションの両面で厚く支持されている。