
角舘健悟の『未知との遭遇』青葉市子編
角舘健悟の『未知との遭遇』- テキスト・編集
- 金子厚武
- 撮影:小林光大 編集:川浦慧、今井大介(CINRA.NET編集部)
「私たちね、カメラロールが似てる」(青葉)
角舘:なにが好きですかね? 市子さんは。
青葉:お茶は一緒ですね。毎日ハーブティーを淹れて飲んでる。
角舘:ナンヨウブダイですか?
青葉:そうしますか。
角舘:お茶、ナンヨウブダイ……あとなにが好きです?
青葉:海。
角舘:海はすぐ描けるな。ナンヨウブダイも海に入れます。
青葉:はい。海をこの引きの感じで描くのいいですね。ちゃんと砂浜まであって、魚もいる? ふわあ~、可愛い。もう一個はじゃあね、いまパッと思い浮かんだのは、飛行機の窓から見た外の景色でした。
角舘:あ~。あれは最高だよね。
青葉:必ず窓側の席を取るようにしてます。
角舘:俺も好きですよ。上からわーって見てて、雲の影が大地に落ちているときとか。
青葉:あるある。
角舘:日常的な小さな事象がでっかくなってるだけって気がして、すごくワクワクするんだよね。
青葉:田んぼとかでさ、こういう景色を見るじゃないですか、上から。ここの下にいる人はいま陰ってるけど、もうすぐしたら光くるよ、とか思いながら上から見てます。
角舘:あはは。それはなかなかあれですね、優しい世界観ですね。
青葉:生きていながらこの視点でいられることが驚きですね。
角舘:そうなんですよね。
青葉:飛行機って本当にすごいところにいるなっていつも思います。いまポンって外に出たらマイナス何十度なんだよなとか。
角舘:それ思う。沖縄とか石垣島とかなら、下が海バージョンだったりするじゃない? それで、海に影が落ちてるのとかもさ、地面にいたら絶対に気づかなくて、空の上からじゃないと気づけない。すごい時間だよね、あれは。
青葉:こういう話をする人あんまり周りにいなかったかも。大好きな景色のことをここまで細かく共有する人がいて嬉しい。
角舘:iPhoneのなかにいっぱいあるよね。
青葉:あります(笑)。動画で。あとね、飛行機自身の影が雲に映って見えるときがあって。つまり、自分の後ろに太陽があるからその影が雲に映るってことなんだけど。太陽がこっちにあって、窓から見てて、自分の飛行機が映ってる。そのときにね、ブロッケン現象って言うんですけど、その周りにね、円の虹ができるの。
角舘:マジで?
青葉:そう! ヨーロッパから帰ってくるときによく見えるんだけど、今回奄美に行くときも見えて、ブロッケンがとってもきれいなんですよ。
角舘:なんでそんなことが起こるんでしょうね?
青葉:条件があって、自分の背後に太陽があり、水蒸気が多い状態でないと見えない。(画像を探す)あった! 見て! ほら。
角舘:俺これInstagramで見ていいね押してる。これ本当にすごいよね。しかも頭にさ、虹があるように見えて。
青葉:これはね、雲自身と自分が近いとその円がどんどん集中していくんだけど、もっと飛行機と雲が遠い場合は飛行機の影が小さいからガバッと囲ってくれるの、虹が。レンズみたいだよね。これを見つけるとハッピーな気持ちになります。
角舘:今年の夏過ぎくらいに二重の虹がズバッと出る日があったよね。
青葉:見逃しました、それ。見たかったあ。
角舘:その日、たしかすごい凹んでて。なんかもう、なんだよっていう気持ち。もうなんとかしてよっていう気持ちになってるときに出てきて、すごく助かった記憶がある。(画像を探す)これ。
青葉:これはすごいね~。
角舘:俺、車を停めて、吸い寄せられるように、虹の麓まで行ってみようって思って歩いて。行こうとしたけど、途中でやめたのかな。
青葉:8月13日。
角舘:8月13日だね。たまたま、1日前にこういう写真撮ってたの。俺のTシャツなんだけど。そういうことがあるんだなって。
青葉:こういうことがちょこちょこあるのが生きていて面白いと思う。ピピって考えたことが現実に現れたりとか、その人のことを考えてたら、その人から連絡がくるとかあるじゃないですか。
角舘:それこそ市子さんがヨギーを知って、帰ってきて。
青葉:そう! あのときすごかった。1月ですね。大分の撮影から帰ってきて、その撮影の間ずっと“Summer of Love”を聴いていて。それで、渋谷駅でもう夜遅かったけど、乗り換えてるときも聴いてたら、目の前から健悟さんが現れて。「市子さ~ん!」って(笑)。いま聴いてた人だし、ずっと画面で見てた人が「あれ?」って。
角舘:ちなみにその日、俺渋谷で飲んでて、たまたま市子さんの話してた。
青葉:え、そうだったの?
角舘:そう。俺もそうだけど、歌うたいって不思議な生き物だよねっていう話になって、相手の人も青葉さんに会ったことある人で、彼女はやっぱり素敵な人ですよね、そうですよねって。そんな話をして、じゃあ、お疲れ様でしたって言って、「うわ、市子さんだ!」みたいな。
青葉:自撮りしたもんね。そういうことが日常でポツポツ、日々のご褒美みたいに散らばっているなかに生きてるって思うと、あ、長生きしようって思います(笑)。
(画像を見せ合う)
角舘:これは8月に北海道に行ったときのやつです。雲海がフニフニしたんですよ、ちょっと見てもらってもいいですか?
青葉:層になってる。波打ってますよね。
角舘:なんでなんでしょうね。
青葉:これ見て。
角舘:すごっ。
青葉:これはびっくりした。
角舘:これは写真ではなくて、視覚として出てるってこと?
青葉:そう。まさにこのまんまで、巨大すぎる虹の輪が太陽の周りを囲ってて、これはね、阿寒に行くとき。冬は70cmの氷が張るから上を歩けるんですけど。
角舘:この間の配信のときの印象的なカットに近いですね。月がブワーって。
青葉:なんて言うんですか、ああいう現象。カメラのレンズで……。
角舘:フレア現象。同じものを感じますね。なんか円って気持ちいいよね。
青葉:円はいいね。
角舘:多分おんなじような写真をいっぱい撮ってるんだろうなって思いますよ。
青葉:私たちね、カメラロールが似てる。
青葉:お気に入り。昔飼ってたネズミです。
角舘:あら、可愛い。
青葉:フガフガ言ってる。これはおじいちゃんとおばあちゃん。
角舘:見して見して。めちゃくちゃ健康そうだね。
青葉:ビール飲んでるしね(笑)。
角舘:若い。肌がきれいだね。
角舘:これが俺のばあちゃんですね。社交ダンスずっと踊ってて。
青葉:えー、素敵だなあ。
角舘:力がすごいんですよ。合気道みたいな。やーって(笑)。ばあちゃん可愛いんだよね。
青葉:嬉しそう。おばあちゃん。とっても。よきね~。
プロジェクト情報
- 連載:角舘健悟の『未知との遭遇』
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「Yogee New Waves」のボーカルとして活躍する角舘健悟が「未知との遭遇」をテーマに、様々な世界の未知なるアーティストと出会い、ものづくりや表現について対話し、「FUSION」することで、新しい創作物を生み出します。その過程をドキュメントし、カルチャーを愛する皆さんと一緒に応援し、楽しんでいく連載企画です。
プロフィール
- 青葉市子(あおば いちこ)
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音楽家。1990年1月28日生まれ。2010年にファーストアルバム『剃刀乙女』を発表以降、これまでに6枚のソロアルバムをリリース。うたとクラシックギターをたずさえ、日本各地、世界各国で音楽を奏でる。弾き語りの傍ら、ナレーションやCM、舞台音楽の制作、芸術祭でのインスタレーション作品発表など、さまざまなフィールドで創作を行う。活動10周年を迎えた2020年、自主レーベル「hermine」(エルミン)を設立。体温の宿った幻想世界を描き続けている。12月2日、“架空の映画のためのサウンドトラック”として、最新作『アダンの風』を発表する。
- 角舘健悟(かくだて けんご)
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1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成、ボーカルを担当。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』でデビュー。昨年、3rdアルバム『BLUEHARLEM』、12月に『to the MOON e.p.』をリリース。最新作は今年7月にシングル『White Lily Light』を発表。全国各地の野外フェスの出演やアジアを中心に海外公演を重ねる。バンド活動の傍ら、テレビ番組・TVCMのナレーションなど活動の場を拡げる。音楽、ファッションの両面で厚く支持されている。