特集 PR

Ken Yokoyamaが意識する、死と感謝。挫折や抑うつからの生還

Ken Yokoyamaが意識する、死と感謝。挫折や抑うつからの生還

Ken Yokoyama『4Wheels 9Lives』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:横山マサト 編集:矢島由佳子

「今回のアルバムは、死ぬことばっかり歌ってるなと思うんですよ」(横山)

―今回の歌に感情や表情が出てるのは、歌詞で自分の内面を描いていることも大きいように感じました。

横山:そうですね。今回の歌詞は『The Cost Of My Freedom』(2004年発売、1stアルバム)に近いというか、ちょっとパーソナルなところに戻った気がするんです。

「世の中もっとこうしよう」みたいに外に向けて歌ったり、政治的な事象を絡めて歌うときの気持ちと、自分の内面を歌うときの気持ちってやっぱり少し違うんですよね。自分のことを歌うときの方が心が痛いというか、身を切る作業に近い。そうやって自分の感情を乗せることが、歌の説得力であり、楽曲そのものの説得力に繋がったんじゃないかなっていう気はしてます。

横山健

―とくに印象的なのは多くの曲で死生観が描かれていることで、それが「9Lives」というタイトルにも繋がったのかと思うのですが。

横山:今回のアルバムの歌詞を見ると、死ぬことばっかり歌ってるなと思うんですよ(笑)。でもそれは当然のことで、僕、今51歳になって、しかも世の中がこういう状況で、「いつまでできるのかな?」って、自然と考えてしまうんですよね。

ロックンロールは70歳になっても80歳になってもできると思うけど、僕にそれができるという保証はどこにもないわけで、体力も落ちてきてるし、歳をとってきたのは感じるんですよ……すごい太っちゃったし(笑)。

Jun:あはははは。

横山:でも、死ぬことを歌うというのは、それだけ生きてる今を鮮明に捉えて歌うということだと僕は思ってるんです。今回のアルバムにはそれが描かれてるんじゃないかと思います。

―「9Lives」は「A cat has nine lives=猫に九生あり」からきていて、「容易には死なない、しぶとく生き残る」という意味ですもんね。

Jun:個人的なことを言うと、レコーディングが1か月後にあるときとかにバイクに乗ってると、「今事故ったらレコーディングできないから、事故るにしてもせめて録ってから事故りたい」とか思うんですよ(笑)。

横山:レコーディング終わるといつも言うよね。「これで俺が死んでも音は世に出る」って。

Jun:そういうことをよく考えるから、健とも似たところはあるのかもしれない。

横山:わかる。ツアーに出るときとかって、「もうこれで帰ってこれないかもしれない」とかよく思うんですよ。若いときはそんなこと思わなかったけど。

―今の話は1曲目の“I’m Going Now , I Love You”の歌詞にも通じているように思います。<行ってくるよ 愛してる もしオレが戻ってこなかったら><お前はオレを 忘れてくれ>という部分からは、「死」を連想することもできるなと。

横山:この曲を1曲目にしたのは楽曲がストレートだからっていうのが大きいんですけど……もしかしたら、この曲を1曲目に置くことで世界観を提示したかったのかもしれない。

歌詞は読んでくれた一人ひとりが解釈するものだと思うので、僕自身も解釈者の一人として言いますけど、僕のなかでこの主人公はやっぱり帰ってこないんですよ。きっと死ぬんでしょうね。そういう雰囲気があるから、1曲目からいきなりガツンと喰らうというか。

―わかります。

横山:タイトルだけ見るとかわいいじゃないですか? 「行ってくるよ、愛してる」ですもん。

今回の歌詞はツラッと読むとポップなラブソングが多いと思うんです。ただ、狙いとしてあったのは、ポップに見せておいて、言いたいことは他の行に忍ばせてあったりするんですよね。たとえば、“Angel”はものすごくラブソングに見えるじゃないですか? でもこの曲で一番言いたいのは、<オレは体が感じるままに動く まるで誰も見ていないかのように踊るのさ>なんです。自分が自分であれ、ということですね。

「Thank you」をストレートに歌いたくなった

―ラストナンバーの“While I’m Still Around”も非常に印象的で、<いつ永遠のさよならになるかわからないから 生きてるうちに「ありがとう」を言わせてくれ>というラインは、とても素直に言葉を紡いでいると感じました。

横山:今回の語りかけ方はキャリアのある50代のミュージシャンならではのものだと思うんですけど、この曲はその最たるものだと思います。

なぜ今このタイミングで自分の半生を振り返って、感謝を伝えるような歌詞を書いたのかというと、もし次がなかったら後悔すると思ったからで。なので、それを言葉にしてみました。僕が仮に80歳まで生きてこの歌詞を見返したときに、「青いこと言ってらあ」で済めばそれでいいんですけどね。

横山健

―<本当に大切なことは音楽の良し悪しじゃないんだ 音楽でみんなと繋がることができたかなんだ>も周りへの感謝から出てきた言葉だと思うのですが、物理的にも、心の距離的にも、人と人が遠ざけられている時代だからこそ、よりグッとくるものがあるなと。

横山:ミュージシャンだから楽曲の良し悪しを追求するのは当たり前のことですけど、本質はそこじゃないんですよね。僕たちが生み出したものでどれだけの人と繋がることができたのか、僕たちの作品をその人の人生のサウンドトラックに入れてもらえたのか、どれだけ人の生活を彩れたのかが大事で、パンクロックは結局そこだと思うんですよ。

初期パンなんて技術的にもひどいもんで、ゴリビス(Gorilla Biscuits)の1st(『Gorilla Biscuits』1988年発売)も声とかひっくり返ってるし、「これ録り直しできなかったの?」とか思うけど、でもそこにグッときて、人生のサウンドトラックになるんですよね。

―前回の取材(2020年9月)で「今はユナイトが難しい時代だから、まずは一人ひとりが生き延びて、その先でもう一度ユナイトできたら」という話をしたと思うんですけど、一人ひとりが生き延びていく上でも、誰かとの繋がりを感じられることはとても重要なことで。演奏にしても、歌にしても、「人間」が感じられる音楽というのは、人生のサウンドトラックとして、その役割を果たせるとも思いました。

横山:ユナイトか孤独かの二極論ではないということだと思うんです。人が生きていく上で人の存在は欠かせないわけで、やっぱり一人じゃ生きていけないですから。

横山健
Page 3
前へ 次へ

リリース情報

Ken Yokoyama
『4Wheels 9Lives』(CD+DVD)

2021年5月26日(水)発売
価格:3,850円(税込)
PZCA-91

[CD]
1. I'm Going Now , I Love You
2. 4Wheels 9Lives
3. Spark Of My Heart
4. Have Hope
5. Helpless Romantic
6. Cry Baby
7. MyParadise
8. Angel
9. Forever Yours
10. On The Sunny Side Of The Street
11. Without You
12. While I'm Still Around

[DVD]
1. I'm Going Now , I Love You
2. Cry Baby
3. Out Alone
4. Still I Got To Fight
5. Angel
6. Forever Yours
7. Woh Oh
8. Helpless Romantic
9. While I'm Still Around

Ken Yokoyama
『4Wheels 9Lives』(CD)

2021年5月26日(水)発売
価格:2,750円(税込)
PZCA-92

1. I'm Going Now , I Love You
2. 4Wheels 9Lives
3. Spark Of My Heart
4. Have Hope
5. Helpless Romantic
6. Cry Baby
7. MyParadise
8. Angel
9. Forever Yours
10. On The Sunny Side Of The Street
11. Without You
12. While I'm Still Around

イベント情報

『SATANIC CARNIVAL 2021』

2021年6月5日(土)、6日(日)
会場:山梨県 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

6月5日出演:
バックドロップシンデレラ
The BONEZ
Dizzy Sunfist
Fear, and Loathing in Las Vegas
マキシマム ザ ホルモン
NAMBA69
Northern19
ROTTENGRAFFTY
SiM
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
Survive Said The Prophet
Suspended 4th
WANIMA

6月6日出演:
04 Limited Sazabys
10-FEET
Age Factory
Coldrain
G-FREAK FACTORY
ハルカミライ
HAWAIIAN6
HEY-SMITH
Ken Yokoyama
MONGOL800
NOISEMAKER
SHADOWS
TOTALFAT
Paledusk(O.A.)

プロフィール

Ken Yokoyama
Ken Yokoyama(けん よこやま)

Hi-STANDARD、BBQ CHICKENSのギタリストである横山健が2004年に始動させたバンド。2004年、アルバム『The Cost Of My Freedom』でKen Yokoyamaとしてバンド活動を開始。現在のメンバーは横山健(Vo,Gt)、南英紀(Gt)、Jun Gray(Ba)、EKKUN(Dr)。2021年5月26日に7thフルアルバム『4Wheels 9Lives』をリリースする。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 長岡亮介と巡る『隈研吾展』 ネコに教わる「心地よさ」のヒント 1

    長岡亮介と巡る『隈研吾展』 ネコに教わる「心地よさ」のヒント

  2. 美術を学び直して、はやく人間になりたい! / 美術のトラちゃん 2

    美術を学び直して、はやく人間になりたい! / 美術のトラちゃん

  3. 解体迫る中銀カプセルタワービル・カプセル保存のためのクラファン実施中 3

    解体迫る中銀カプセルタワービル・カプセル保存のためのクラファン実施中

  4. K-POP歌手でありバーチャルなウサギ、APOKIとは?本人らが語る 4

    K-POP歌手でありバーチャルなウサギ、APOKIとは?本人らが語る

  5. 別府の街に多様な人々が集う。老舗劇場に見る「生きやすい場所」 5

    別府の街に多様な人々が集う。老舗劇場に見る「生きやすい場所」

  6. セカオワFukaseが描く初絵本『ブルーノ』10月刊行、直筆サイン入り特装版も 6

    セカオワFukaseが描く初絵本『ブルーノ』10月刊行、直筆サイン入り特装版も

  7. 伊賀大介×篠崎恵美×森永邦彦 「花と服」から得られる自己肯定感 7

    伊賀大介×篠崎恵美×森永邦彦 「花と服」から得られる自己肯定感

  8. キングレコード民族音楽シリーズ全150タイトルのハイレゾ配信がスタート 8

    キングレコード民族音楽シリーズ全150タイトルのハイレゾ配信がスタート

  9. 中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿 9

    中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿

  10. 『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」 10

    『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」