特集 PR

Daichi Yamamotoと高校生のラップ談義。音楽の自由を10代に学ぶ

Daichi Yamamotoと高校生のラップ談義。音楽の自由を10代に学ぶ

GAKU
インタビュー・テキスト
渡辺志保
撮影:北原千恵美 編集:久野剛士、CINRA.NET編集部

PCが一台あれば、年齢やキャリアに関係なく誰でも音楽活動をはじめられる時代。かつては「プロにお願いする」ところからはじめなくてはいけなかったものが、どんどん手軽になった。そんな時代を象徴するジャンルとして、ヒップホップがある。

そんななか、10代がクリエイティブの原点に出会うことができる学びの集積地「GAKU」で、ヒップホップのミュージシャンが楽曲の制作から配信までをレクチャーする講義『Beat, Flow and Promotion』が開催された。

実際に10代の生徒たちが楽曲を完成させていく場において、どんな新しい変化や刺激が生まれたのか。講師として参加したラッパーのDaichi Yamamotoと、生徒として参加した高校3年生のryota sakamotoに講座を振り返ってもらいつつ、現代におけるヒップホップの価値についても語ってもらった。

左から:Daichi Yamamoto、ryota sakamoto
左から:Daichi Yamamoto、ryota sakamoto

「こうでないといけない」というルールがない、ヒップホップの精神を感じた。(sakamoto)

―まず、今回のGAKUの講義『Beat, Flow and Promotion』に生徒として参加されたsakamotoさんにお話をうかがいたいと思います。現在はおいくつですか?

sakamoto:いまは17歳で、高校3年生です。都内の高校に通っています。

―受講したきっかけは?

sakamoto:母がネットで見つけてきて「(受けたら)いいんじゃない?」って勧めてくれたんです。それで、「面白そうだな」と思って応募しました。

もともと、ぼくが小さいころから家や車では、モータウン系のブラックミュージックなどが流れていたんです。当時は、「なんで日本の流行っている音楽じゃないのかな?」と思っていたんですけど、いまになって考えてみると、それで良かったなと思っています。だから、親の音楽の趣味に影響されているところもあると思います。

ryota sakamoto(リョウタ サカモト)<br>2021年、GAKUの『Beat, Flow and Promotion』を通じて、楽曲“garbage”を発表した。
ryota sakamoto(リョウタ サカモト)
2021年、GAKUの『Beat, Flow and Promotion』を通じて、楽曲“garbage”を発表した。

―音楽活動はしていたんですか?

sakamoto:いえ、一人でちょっとだけギターを弾いていた程度で、曲をつくったことはなくて。今回の講座を通して、はじめてやってみたんです。

―Daichi Yamamotoさんは、講師のオファーがあったとき、どんなお気持ちでしたか?

Daichi:うれしかったです。以前に一度、京都の立命館大学で教えている友人から講師を頼まれたことがあったんです。それが楽しかったんですよね。生徒からフレッシュな刺激を受けたり、教えてもらうこともたくさんあって。なので、今回も「やりたいな」と思って引き受けました。

Daichi Yamamoto(ダイチ ヤマモト)<br>1993年京都市生まれのラッパー、美術家。日本人の父とジャマイカ人の母を持つ。18歳からラップとビートメイキングをはじめ、京都を中心にライブを行う。2019年、1stアルバム『Andlles』をリリースし、高い評価を獲得。また、2012年からロンドン芸術大学にてインタラクティブアートを学び、アートの領域でも活躍する。
Daichi Yamamoto(ダイチ ヤマモト)
1993年京都市生まれのラッパー、美術家。日本人の父とジャマイカ人の母を持つ。18歳からラップとビートメイキングをはじめ、京都を中心にライブを行う。2019年、1stアルバム『Andlles』をリリースし、高い評価を獲得。また、2012年からロンドン芸術大学にてインタラクティブアートを学び、アートの領域でも活躍する。

―今回は10代限定の講座で、参加者は中高生でした。大学の講義とはまた違った点もありましたか?

Daichi:そうですね。中高生のほうが真面目というかシャイというか、おとなしめな印象ですね。あと悩んだのが、どこまで口を出すべきか、という点。人によって良し悪しが違うので、「どっちがいいですか?」って聞かれても、「どっちもいいよ」と答えることも多くて。

Daichi Yamamoto『WHITECUBE』を聴く(LINE MUSICを開く

―あくまで生徒の個性を大事にしながら、という感じでしょうか。

sakamoto:受講前は、韻の踏み方とかをガチガチに教えてくれるのかなと思っていたんですけど、Daichiさんがおっしゃるみたいに、自分の個性ややりたいことの背中を押してくれている感じがありました。

でも、よくよく考えたら、ヒップホップってそういう文化ですよね。「こうでなきゃいけない」みたいなものはあまりなくて。それもまた、一般的な音楽教室と違って面白いなと思いました。

―実際に講義はどのようなプロセスで進んでいったんですか?

Daichi:最初に、それぞれがつくったビートを聴かせてもらったんですが、その時点で、みんなの個性、ペースが全然違ったんですね。

たとえばsakamotoくんは、ラップを乗せる段階で、まだビートを調整中だったので、「とりあえず、鼻歌でもいいからラップを入れてみようぜ」って言った気がします。……それで声を乗せながら、ビートもつくっていったんだっけ?

sakamoto:そうですね。

Daichi:別の生徒さんは先にリリックが完成していたので、ビートに合わせながら、「ここはもうちょっとタイトにリズムを刻んだほうがいいんじゃない?」など、ラップのアドバイスをしながら進めて。

sakamotoくんには、「メロディーからリリックを書いてみたら?」という話をしました。

sakamoto:Daichiさんに「鼻歌でもいいから」って言われたときに、「作曲ってこうやって考えていくんだな」と、大きな発見だったんです。

Daichi:sakamotoくん、最初にメロディーをつくったときに、全然歌詞を歌ってくれなくて。

sakamoto:恥ずかしかったので(笑)。

Daichi:ぼくも恥ずかしかったんですけど、「こんな感じで!」って、先にぼくが大きな声で歌って見せたら、それを参考にしながらすっごくいい独自のメロディーをsakamotoくんが歌ってくれて。それに「すげえ!」って、鳥肌が立ったんです。そのまま「それで行こうぜ!」って盛り上がっちゃって。

左から:Daichi Yamamoto、ryota sakamoto

―Daichiさんが一方的に教えるわけではなく、一緒につくっている感じがしますよね。レコーディングの際はどうでしたか?

Daichi:そのときにはsakamotoくんも堂々と歌っていて、すごいなと思いましたね。技術面に関して指導することもありませんでした。

しかも録ったテイクに対して「ここが違う」ということもちゃんと把握していて。「もう1回録り直してもいいですか?」と意見を言ったりして、そこも感心したな。

sakamoto:イメージしていたリズムどおりに歌うことが特に難しくて、プロのアーティストの方はすごいなと思いました。録った音を聴かせてもらったら「違うな」と感じてしまって、そこはすごく苦労しました。

ryota sakamotoが講座で作成した作品“garbage”MV

Page 1
次へ

リリース情報

GAKU

10代の若者たちが、クリエイティブの原点に出会うことができる「学び」の集積地。アート、映像、音楽、建築、料理など、幅広い領域で、社会の第一線で活躍するアーティストやデザイナー、先進的な教育機関が、10代の若者に対して、本質的なクリエイティブ教育を実施する。10代の若者が、本物のクリエイターと実際に出会い、時間を過ごし、ともに考え、試行錯誤をしながらクリエイションに向き合うことで、まだ見ぬ新しい自分や世界、すなわち、原点のカオスに出会うことを目指す。ディレクターには、writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)のデザイナー山縣良和を迎え、世界的評価を受けるファッションスクール「ここのがっこう」、カルチャーウェブメディアCINRAによるオンラインラーニングコミュニティ「Inspire High(インスパイア・ハイ)」などが集まり、感性、本質的な知識、自己と他者の原点を理解する精神を育むプログラムを構成する。

Beat, Flow and Promotion

GAKUのプログラムとして、合同会社CANTEENが企画および運営を手がける講座。講座にはビート制作の講師としてPARKGOLF、Qunimune、Tomggg、ラップ制作の講師としてASOBOiSM、Daichi Yamamoto、gummyboy(Mall Boyz)、ビデオ制作の講師としてPennacky、Yaona Sui(Mall Boyz)らシーンの最前線で活躍する現役アーティストが参加。隔週全11回のクラスを通じて、ビート制作、ラップ、ビデオ撮影、デジタル配信、著作権処理、プロモーションまでヒップホップアーティストに必要な知識や制作過程を一貫して学ぶことができる。

プロフィール

Daichi Yamamoto(ダイチ ヤマモト)

1993年京都市生まれのラッパー、美術家。日本人の父とジャマイカ人の母を持つ。18歳からラップとビートメイキングをはじめ、京都を中心にライブを行う。2019年、1stアルバム『Andlles』をリリースし、高い評価を獲得。また、2012年からロンドン芸術大学にてインタラクティブアートを学び、フランスのワイン会社とコラボしたアート作品『Dégorgement』や、Pongのバー操作を声の高低で行う『Voice Pong』を制作するなど、アートの領域でも活躍する。

ryota sakamoto(リョウタ サカモト)

2003年東京生まれ。2021年、講義「Beat, Flow and Promotion」を通じて、楽曲“garbage”を発表した。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像 1

    THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像

  2. 中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿 2

    中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿

  3. 『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」 3

    『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」

  4. ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも 4

    ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも

  5. A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること 5

    A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること

  6. 地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る 6

    地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る

  7. 林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着 7

    林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着

  8. 『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか 8

    『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか

  9. ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開 9

    ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開

  10. 『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察 10

    『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察