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モノブライトの10年の活動から学ぶ、嫉妬や劣等感との向き合い方

モノブライト『Bright VerSus Tour』
テキスト
黒田隆憲
編集:矢島由佳子
モノブライトの10年の活動から学ぶ、嫉妬や劣等感との向き合い方

「比較」から生まれる負の感情は、すべて前進するためのガソリンに変えてきた

普通に考えて、「嫉妬」というのは決して心地いい感情ではないし、誰かに嫉妬して悶々とするなんてことはできればしたくない。それに、他人と自分を「比較」して一喜一憂する行為とも、可能な限り無縁でいたい。なんて思いながら、ついつい人は嫉妬したり、比較したりしてしまう生き物。「自分は自分、人は人」、そんなふうに心から思えれば、気持ちも楽になれるはずなのに。

モノブライトは、そんなドロドロとした人間の感情を、持ち前の「ベリーポジティブシンキング」によってエネルギー源に昇華しながら前へ前へと進み続けてきたバンドだ。何しろ、デビュー10周年を記念し、今年10月にリリースされたセルフカバーアルバムのタイトルが、『VerSus』である。「対比」「比較」という意味そのままに、ファンにとって馴染みのレパートリーをあえて取り上げ、「現在進行形のモノブライト」としてリアレンジ。新曲を披露するよりもっと分かりやすい形で、過去の自分たち、作品、活動と対峙(対決)させ、「今が一番面白い」ということを証明してみせているのだ。

2011年発売時に発表されたミュージックビデオ 今年発表された、同曲のミュージックビデオ

10年経っても、周りのバンドに嫉妬心を抱く

2016年10月に行ったCINRA.NETのインタビューで、桃野陽介(Vo,Gt)は次のように語っていた。

桃野:「比較」っていう意味のVSで言うと、さっきも話した他のバンドへの嫉妬っていうのは個人的にかなり大きい。未だに他のバンドが羨ましかったり、妬ましかったりする。それはデビューから10年経っても変わらなくて、この「羨ましがる人生」って一体何なんだろうって思いますね。

でも、嫉妬するからこそ「じゃあ、自分には何があるんだろう」って考えるし、悔しすぎて羨ましすぎて、真似したくもなる。そのVSが自分としては大きいですね。VS自体がモチベーションなのかもしれない。

『数々の窮地を知るモノブライトだからこそ語れる、人生の進化論』より)

モノブライトの「VS精神」が炸裂されたのが、10月20日より全国5か所で行われた対バンツアー『Bright VerSus Tour』である。福岡、広島では絶景クジラ、名古屋では鶴、仙台ではD.W.ニコルズをそれぞれ対バン相手として迎え、ガチンコ勝負を繰り広げた。筆者が目撃した最終日、11月3日の東京・新代田FEVERには、神戸出身の4人組バンド・ドラマチックアラスカが登場。開場BGMとして流れていたXTCのアルバム『Nonsuch』(1992年)を爆音で吹き飛ばし、煮えたぎるような演奏でフロアを汗だくにした。

ドラマチックアラスカ 撮影:古溪一道
ドラマチックアラスカ 撮影:古溪一道

酸いも甘いも噛み分けた三人だからこそ掴んだ「エロさ」が炸裂

迎え撃つモノブライトは、KENSUKE.A(Dr / SISTER JET)と、村上奈津子(Key / WONDERVER)をサポートメンバーに擁した5人編成。ここ最近のライブでは、カルメラのホーンセクションを招いてブラスロック風のアレンジで“踊る脳”や“JOYJOYエクスペリエンス”などを演奏していたが、今回は再びシンプルな編成で真っ向から挑む。

モノブライト 撮影:古溪一道
モノブライト 撮影:古溪一道

本編12曲に、アンコールで3曲。およそ1時間強のステージを観ていて、とにかくその「エロさ」に幾度も悶絶しそうになった。「みんなの汗、全部舐めたいぐらい最高の夜!」だとか、「ライブっていうのは、行き着くところみなさんとセックスしているようなもの。もっともっと、音楽でセックスしたい!」だとか、下ネタを連発している桃野のMC「だけ」を指しているわけでは決してない。モノブライトの演奏そのものが、とてつもなく官能的なのだ。

たとえば不協和音ギリギリの音を辿りながら、うねうねと蛇行する“JOYJOYエクスペリエンス”のギターリフ。ねっとりとした歌メロとの絡みは、サビの浮遊感や開放的なハーモニーをより際立たせる。転調し、リズムが倍になる後半はエクスタシーへとまっしぐら。松下省伍(Gt)がチョーキングを奏でた瞬間、フロアから歓声が上がった“20th Century Lover's Orchestra”も、どこまでも堕ちていくような気だるい演奏に、腰のあたりがズシンと重たくなるような「いやらしさ」がある。かと思えば“愛飢えを”では、ファンキーなグルーヴでオーディエンスを揺らす。出口博之(Ba)の、まるで点描画のような幾何学的なフレージングはファンクだけでなくポストロックからの影響も強く感じた。

ポロシャツにメガネ、黒スキニーという、いわばナードな出で立ちでガムシャラにギターをかき鳴らし、早急なビートを繰り出していた「童貞っぽさ」全開のパフォーマンスは、もはや遠い過去。抑制の効いた演奏で焦らしに焦らし、「ここぞ」というところでスパークする緩急自在な演奏力は、30歳を過ぎ、酸いも甘いも噛み分けた三人だからこそ掴み取ることができたものだろう。

桃野陽介 撮影:古溪一道
桃野陽介 撮影:古溪一道

松下省伍 撮影:古溪一道
松下省伍 撮影:古溪一道

出口博之 撮影:古溪一道
出口博之 撮影:古溪一道

それでも、まだまだ「未完成だ」と自ら歌い上げる

もちろんそれは、「円熟」や「老成」などといった安易な道へ進むものでは決してない。しゃくり上げるようなボーカルが、DEVOら1970年代テクノ~ニューウェイヴを彷彿させる“テクノロジックに抱いて”をはじめ、The Cureの狂気を封じ込めたような“デイドリームネイション”、80年代ニューロマンティックを思わせる“OYOVIDENAI”など、思春期の「音楽愛」をそのまま結晶化させた楽曲もある。何より“未完成ライオット”の、10年経っても「未完成」な荒々しさには、清々しいほどの感動を覚えた。

今が一番面白いと思うから、昔の曲をやっても新しく聞こえるんじゃないか、僕らのデビューシングル「未完成ライオット」を今やったら完成しちゃうんじゃないかという、絶対的自信確信から生まれた作品なので、コレ聴いたらライブ見たくなっちゃうよ☆

アルバム『VerSus』のプレスリリースに、このようなコメントを残していた桃野。いやいや、完成どころか楽曲にもバンドにも、まだまだ「のびしろ」があると言わんばかりの演奏ではないか。過去の自分たち、オーディエンス、対バン、今の音楽シーン、あらゆることに対して「VerSus」を仕掛け、そのたび新陳代謝を繰り返してきたモノブライト。嫉妬や劣等感、コンプレックスですら燃料にするその強靭な生命力を、まざまざと見せつけられるような一夜だった。

イベント情報

『Bright VerSus Tour』

2016年11月3日(木・祝)
会場:東京都 新代田 FEVER
出演:
モノブライト
ドラマチックアラスカ

リリース情報

モノブライト『VerSus』
モノブライト
『VerSus』(CD)

2016年10月12日(水)発売
価格:1,800円(税込)
kiraku records. / ASCU-2007

1. 未完成ライオット(VerSus Ver.)
2. DANCING BABE(VerSus Ver.)
3. あの透明感と少年(VerSus Ver.)
4. デイドリームネイション(VerSus Ver.)
5. 踊る脳(VerSus Ver.)
6. COME TOGETHER(VerSus Ver.)

プロフィール

モノブライト
モノブライト

2006年に桃野陽介(Vo)を中心に、松下省伍(Gt)、出口博之(Ba)の北海道の専門学校時代の同級生で結成。UKロックシーンを背景にした、感情と刹那がたたずむ音像は桃野陽介というシンガーソングライターの手によって、ひねくれポップロックへと変遷していく。その象徴ともいえる作品、『未完成ライオット』で2007年にメジャーデビュー。これまでオリジナルフルアルバムとしては2013年にリリースされた『MONOBRIGHT three』などを筆頭にして6作品を発表。さらに、精力的なライブ活動と共に2014年にはZepp Tokyoでのワンマンライブも開催。2015年6月のツアーをもって、結成当初のメンバーでもあったドラムが脱退。夏にはそれぞれのソロ活動を経て、同年10月に新体制での再始動を発表。2016年4月20日、アルバム『Bright Ground Music』をリリース。

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