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夢眠ねむが東京都写真美術館へ。アイドルを終える「時代の必然」

『小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家 vol. 15』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)
夢眠ねむが東京都写真美術館へ。アイドルを終える「時代の必然」

アイドル・夢眠ねむ(以下、ねむきゅん)がでんぱ組.incからの卒業、そして芸能活動引退を発表したのは今年10月のこと。この10年間のアイドル文化、オタク文化の大きな変化をある意味で象徴する彼女からの突然の卒業宣言は、多くのファンやクリエイター、そして彼女に憧れてデビューしたアイドルたちを大いに驚かせている。卒業後は、本屋のオープン、たぬきゅん(彼女が創作したキャラクター)のプロデュースを行うと発表しているものの、その具体的な内容は謎のままだ。

今回、CINRA.NETでは東京都写真美術館で開催中の展覧会『小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家 vol. 15』展の鑑賞レポートに当人を招くことになった。メジャーデビュー直後の2011年にも、同館を訪ねたことのある彼女は(参考記事:でんぱ組.inc 夢眠ねむと行く『見えない世界のみつめ方』展)、1970年代後半から1980年代に生まれたアーティストたちの作品をどう見るのだろうか? 平成の終わりとともに、アイドルとしての役割を終え、新たな進路に立つねむきゅんに話を聞いた。

ねむきゅんと展覧会を回る。LGBTQの議論が進んだ「未来の家族像を映す」森栄喜

この『小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家 vol. 15』展がテーマとするのは、個人が感じるリアリティー、個人のアイデンティティー、そして個人の思いだ。5人の参加作家は1970年代後半から1980年台前半に生まれた日本人たちだが、それぞれのバックボーンや立ち位置は微妙に異なっている。海外を拠点に活動する者、写真を通して日本の厳しい現実に目を向ける者、あるいは作品を通じて自身のアイデンティティーと向き合う者もいる。

最初の部屋で登場する森栄喜は、パートナーであった男性と過ごした日々をとらえた写真集『intimacy』(2013年)で『木村伊兵衛写真賞』を受賞したアーティストだ。自然の柔らかな光やしっとり湿ったような闇のなかでとらえるパートナー=被写体に向けられる森の眼差しからは、慈しみや愛、そして情動も感じられる。

このようなスナップ的な写真で高い評価を受けた森だが、近年は社会性の強いプロジェクト型のシリーズを多く手がけている。今回出品されている「Family Regained」(2017年)は、未来の家族像をテーマにした作品だ。友人や知人の家を訪ね、まるで自分も家族の1人であるかのように「家族写真風の記念写真」を撮影する。

森栄喜『Family Regained』
森栄喜「Family Regained」より 2017年 発色現像方式印画 作家蔵

LGBTQの議論が進み、同性パートナーのさまざまな権利を認める自治体や企業が増えつつある昨今、もしかすると親が2人とも男性 / 女性であったり、3人以上の親がいるような家族も普通になるかもしれない。そんな未来を想像して、このシリーズは作られている。

ねむきゅん:森さんの作品はInstagramで知っていたんですけど、ちゃんと作品を見るのは初めて。「赤」がすごく鮮やかですね。

夢眠ねむ
夢眠ねむ

彼女が指摘したように、『Family Regained』の近作の多くは、ビビッドな赤色に彩られている。急な作風の変化に写真関係者からは驚きの声もあがったというが、森はそこに「血のつながり」や「最初は違和感のあったものが次第になじんでいく」という心象を反映させているのだという。

写真のほかにも、屋外広告などに使われる透過性のある布素材にプリントした新作も配置され、部屋全体が柔らかな赤の光に包まれているのも作家の意向だ。

ねむきゅん:展覧会に来たりすると、作品のテーマも気になるんですけど、どんな素材を使っているのかとか、裏側がめちゃくちゃ気になっちゃうんですよね。私も美大で卒業制作なんかを経験してきたので(笑)。布1枚にしても、自分なりに「これじゃなきゃだめだ!」って譲れないこだわりがあって、そこに気づいてもらえると嬉しかったりする。

本展を担当した学芸員の伊藤貴弘が、作家と一緒に理想の素材を手芸店で探し求めたというエピソードを聞いて、ねむきゅんは「伊藤さんは、寄り添い型のキュレーターなんですね……!」と意味深なコメント。

夢眠ねむ
夢眠ねむ
夢眠ねむ
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イベント情報

『小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家 vol.15』

2018年12月1日(土)~2019年1月27日(日)
会場:東京都 恵比寿 東京都写真美術館 2階展示室
休館日:月曜(ただし、12月24日(月)および1月14日(月)は開館、12月25日(火)と1月15日(火)は休館)、年末年始12月29日(土)から1月1日(火)は休館
開館時間:10:00~18:00(木・金曜日は~20:00、ただし年始特別開館 2019年1月2日(水)・3日(木)は11:00~18:00、4日(金)は10:00~18:00)

料金:一般700円 一般団体560円、学生600円 学生団体480円、中高生・65歳以上500円 中高生・65歳以上団体400円
※小学生以下および都内在住・在学の中学生、障害手帳をお持ちの方とその介護者は無料、団体料金は20名以上
※第3水曜日は65歳以上無料
※2019年1月2日(水)は観覧無料、3日(木)は2割引


作家とゲストによる対談

細倉真弓 × 磯部涼(ライター)
2018年12月22日(土)15:00~16:30

2019年1月11日(金)18:00~19:30
ミヤギフトシ × 岡田利規(演劇作家、小説家)

2019年1月19日(土)15:00~16:30
森栄喜 × ブブ・ド・ラ・マドレーヌ(アーティスト)

森栄喜による朗読パフォーマンス
『せっかちな未来 / An Impatient Future』
2019年1月18日(金)18:00~18:15(予定)

展覧会担当学芸員によるギャラリートーク
会期中の第2・第4金曜日14:00より担当学芸員による展示解説を行います。

リリース情報

夢眠ねむ『夢眠時代』
夢眠ねむ
『夢眠時代』

2018年11月21日(水)発売
価格:3,000円(税込)
FCC-86651

1.魔法少女☆未満
2.ユメミる惑星
3.コズミックメロンソーダマジックラブ
4.あのね…実はわたし、夢眠ねむなんだ…♡
5.あるいは夢眠ねむという概念へのサクシード
6.ナイフ
7.あたしの最後のラブソング
8.おやすみ世界きゅん。
9.蛍の光(PandaBoY REMIX feat.夢眠ねむ)2018
10.魔法少女☆未満 2018

夢眠ねむ『まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集』
夢眠ねむ
『まろやかな狂気2 夢眠ねむ遺言集』

2018年12月20日(木)発売
価格:1,620円(税込)

プロフィール

夢眠ねむ
夢眠ねむ(ゆめみ ねむ)

でんぱ組.incのメンバー。キャッチフレーズは「永遠の魔法少女未満」。アキバと世界を繋ぐ新しい時代のスーパーアイドル!映像監督やコラム執筆等、ジャンルに関係なくカルチャーを結ぶポップアイコンとして活躍の幅を広げている。

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