レビュー

「歌いたかったら、俺の曲は最高だ」。ノエル・ギャラガーがツアーでOasisの曲を歌い続ける理由

宇野維正
「歌いたかったら、俺の曲は最高だ」。ノエル・ギャラガーがツアーでOasisの曲を歌い続ける理由

Oasisの兄貴、ノエル・ギャラガーが日本にやってくる

いよいよ4月6日、大阪フェスティバルホール公演を皮切りに、ノエル・ギャラガーの日本全国ツアーがスタートする。Oasis時代からアルバムをリリースする度に来日公演を欠かしたことがなく(厳密に言うとOasisの2度目の来日公演は『(What's The Story) Morning Glory?』リリースの2か月前だったので、リリース後に世界中でOasis現象が巻き起こっていた時期のツアーだけは日本で見ることができなかったが)、ソロデビュー作となった前作『Noel Gallagher's High Flying Birds』ではショーケースライブとフェス出演を合わせて実に3度も来日。そういう意味ではレア感こそないものの、前作からの長いインターバルに応じて今回の来日公演は約3年振りということで、この機会を待ち望んでいたノエルファンは少なくないだろう。

ノエル・ギャラガー
ノエル・ギャラガー


1stアルバムのリリース&ワールドツアーは、自信満々ではなかった

日本先行発売の5日後、3月2日に本国英国にてリリースされたNoel Gallagher's High Flying Birdsの2ndアルバム『Chasing Yesterday』は当然のようにUKチャートで初登場1位。英国内で2015年に入ってからの最速最多セールスを記録中で、リスナーからの相変わらずの絶大なる信頼と支持を証明したかたちだ。

2ndアルバムを制作する際にノエルにかかっていたプレッシャーは、相当大きかったに違いない。実際のところ、元有名バンドの中心人物のソロの真価が問われるのは2枚目のアルバムからだ。1枚目はどんな作品であれ注目が集まるし、バンドのときとの音楽的な差異だけでも語るべきポイントがある。1枚目のソロアルバムというのは、かつて在籍していたバンドのニューアルバムの余韻の中で聴かれるのだ。ソロデビュー作のリリースの前に筆者がインタビューしたとき、ビッグマウスで知られるあのノエルにしては意外なほど、自身のソロとしてのキャリアの成功に自信満々ではなかったことが強く印象に残っている。最新インタビューで、当時のことをノエルはこう振り返っている。

何かを期待してたわけじゃなく、ただやってみて……成り行きに任せてみようと思ってた。だから最初は小さなクラブから始めて、だんだん大きな会場に移動し、ついにはアリーナに到達したってわけだ。今まで経験した中で最長のツアーのひとつだった。15か月だからな。毎晩本当に楽しい夜を過ごせたけど、それはたぶん……オーディエンスに期待感があったせいか俺が何も期待してなかったせいなのか知らないが、たまたまそうなっただけで、終わったときはやってやったぞって感じだった。毎晩シンガーとしてステージの真ん中に立つことには苦痛だと思ってたよ。でも回数を重ねるにつれ、本当に本当に楽しくなってきたんだ。

つまり、ノエルに本当の意味でのソロアーティストとしての自負と確信が生まれたのは、1stアルバムをリリースした後、世界各国の要望に応えるかたちで結果15か月も続いたワールドツアーの最中だったのだ。1stアルバムのリリースから『Chasing Yesterday』の完成まで、約3年半というOasis時代を含めても最長のインターバルを必要としたのも、それを考えるとよく理解できる。紆余曲折を経て初のセルフプロデュース作となった『Chasing Yesterday』では、随所にモダンなリズムや管楽器の大胆な導入が図られ、ソングライターとして、レコーディングアーティストとして、これまでとは異なるノエルの音楽的野心に満ちた一面が顔を覗かせている。


Oasis時代の楽曲は、どのようにジャパンツアーのセットリストに組み込まれるか?

一方、ノエルにとってある種の「縛り」となっているのが、ライブのセットリストをソロの楽曲とOasisの楽曲を組み合わせなくてはいけないことだ。前回のツアーでは、1stアルバムの曲だけで90分以上のライブをするには曲数が足りないという事情もあったわけだが、この3月から北アイルランドでキックオフしたばかりの2度目のワールドツアーでも、前回と同じようにセットリストの重要なパートをOasis時代の楽曲が担っている。そこには、オーディエンスの要求に応えなくてはならないというノエルのエンターテイナーとしての責任感もあるに違いないが、それ以上に大きいのは「『みんなが知ってるOasisのいい曲』は全部俺が書いたんだ」というプライドだろう。そして、その「縛り」と「プライド」は、現在のところソロになってからノエルが作る楽曲の「重し」として、ポジティブな意味で作用している。『Chasing Yesterday』の楽曲群が持つ有無を言わせぬ重厚感、聴けば聴くほどに味わいが増してくるコクのようなものは、ライブでOasis時代の曲が浮きすぎないギリギリのラインを狙い澄ましたことによって生み出されているように思えるのだ。


ちなみに、前回のツアーで演奏されたOasis時代の主な楽曲(長期的にセットに組み込まれていた楽曲)は“(It's Good) To Be Free”“Supersonic”“D'Yer Wanna Be A Spaceman?”“Talk Tonight”“Half The World Away”“Little By Little”“Don't Look Back In Anger”など。今回のツアーでは現在のところ“Don't Look Back In Anger”は鉄板として、その他に“Fade Away”“Digsy's Dinner”“The Masterplan”“Champagne Supernova”などが演奏されている(前回から大幅に選曲を変えてきたそのサービス精神に拍手!)。大合唱のための予習をくれぐれも忘れないように。また、前回の日本公演では、「日本のファンはこれが好きなんだろ?」というMCに続いて“Whatever”がワールドツアーにおいて初披露され、その後のツアーのセットリストに組み込まれていったという経緯もあったので、今回も何かのサプライズに期待したいところ。

「歌いたかったら、俺の曲は最高だ」

最後は、今回の日本ツアーについて語ってくれたノエルの言葉で締めよう。

俺はダンスも出来ないし、曲間で面白い話をするわけでもない。でも、歌いたかったら、俺の曲は最高だ。そういうことさ。俺は観てて面白いショーをするようなタイプじゃないからな。俺はそこにいる人たちに曲を演奏するためにショーをやる。俺は本当に恵まれてるんだけど、俺の曲を好きな人たちはただ好きってだけじゃなくて、とんでもなく大好きでいてくれる。きっと前回よりもいいショーになるはずだよ。前は俺も自分が何をやってるか分かってなかったけど、今はもう分かってるから(笑)。

ノエル・ギャラガー

リリース情報

Noel Gallagher's High Flying Birds『Chasing Yesterday』初回限定日本盤(2CD)
Noel Gallagher's High Flying Birds
『Chasing Yesterday』初回限定日本盤(2CD)

2015年2月25日(水)発売
価格:3,132円(税込)
SICP-4395/6

[DISC1]
1. Riverman
2. In The Heat Of The Moment
3. The Girl With X-Ray Eyes
4. Lock All The Doors
5. The Dying Of The Light
6. The Right Stuff
7. While The Song Remains The Same
8. The Mexican
9. You Know We Can't Go Back
10. Ballad Of The Mighty I
[DISC2]
1. Do The Damage
2. Revolution Song
3. Freaky Teeth
4. In The Heat Of The Moment(Remix)
5. Leave My Guitar Alone(ボーナストラック)

Noel Gallagher's High Flying Birds
『Chasing Yesterday』通常日本盤(CD)

2015年2月25日(水)発売
価格:2,592円(税込)
SICP-4397

1. Riverman
2. In The Heat Of The Moment
3. The Girl With X-Ray Eyes
4. Lock All The Doors
5. The Dying Of The Light
6. The Right Stuff
7. While The Song Remains The Same
8. The Mexican
9. You Know We Can't Go Back
10. Ballad Of The Mighty I
11. Leave My Guitar Alone(ボーナストラック)

イベント情報

『Noel Gallagher's High Flying Birds Japan Tour 2015』追加公演

2015年4月6日(月)
会場:大阪府 フェスティバルホール
料金:9,000円

2015年4月7日(火)
会場:大阪府 フェスティバルホール
料金:9,000円

2015年4月9日(木)
会場:広島県 広島文化学園HBG ホール
料金:9,000円

2015年4月11日(土)
会場:福岡県 ZEPP FUKUOKA
料金:9,000円(ドリンク別)

2015年4月13日(月)
会場:愛知県 名古屋 ZEPP NAGOYA
料金:9,000円(ドリンク別)

2015年4月15日(水)
会場:東京都 九段下 日本武道館
料金:9,000円

2015年4月16日(木)
会場:東京都 九段下 日本武道館
料金:9,000円

プロフィール

ノエル・ギャラガー

1991年にイギリスはマンチェスターにて結成された、英国史上ビートルズ以来の最強ロックグループと評されるOasisのメインソングライター/シンガー/ギタリスト。2009年8月にノエルがOasisを脱退し、バンドは惜しまれつつもその軌跡にピリオドを打つ。そして2011年秋、ノエル・ギャラガー待望のソロ・プロジェクト【Noel Gallagher's High Flying Birds】が始動。1stアルバム『Noel Gallagher's High Flying Birds』は、日本で10月12日に発売され、オリコン洋楽アルバムランキング1位、全英アルバムチャートも1位を獲得。翌2012年は1月に続き、5月にも武道館公演を含む2度目の単独来日公演を大成功させ、さらに7月にはフジロック2日目のヘッドライナーとしても来日を果たした。そして2014年、遂にノエル・ギャラガーが再始動。最新アルバム『Chasing Yesterday』は、UKで3月2日発売されたが、日本が世界に先駆け2月25日に発売。

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