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さわひらきインタビュー 本当に動かしたいものは映像の外にある

さわひらきインタビュー 本当に動かしたいものは映像の外にある

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:佐々木鋼平

まだ30代ながらすでに15年以上にわたる海外での活動キャリアを持つ映像アーティスト、さわひらき。10代でイギリスに留学した彼は、大学院生時代の作品で注目されて以降、ロンドンを拠点に着実に活躍の場を広げてきた。そんな彼の過去の作品から最新作までを展示する大型個展『さわひらき Whirl』が、『神奈川国際芸術フェスティバル』のプログラムのひとつとして、神奈川県民ホールギャラリーで2012年10月23日から11月24日まで開催される。そこで、さわのこれまでの活動を振り返り、これからを語るSkypeインタビューをお願いした。

高校3年の時、入院してしまったせいで美大受験を逃し、どうにかなるだろうって、後先あまり考えずにロンドンの美術大学を受験しました。

―さわさんは、ずっと海外で活動していますが、高校生までは金沢育ちだそうですね。イギリスに渡ったきっかけは?

さわ:もともと日本の美大へ行こうと受験勉強を始めたんですが、それがストレスになったのか……高校3年生のときにお腹の具合を悪くして入院するほどになり(苦笑)、受験する機会を逃してしまったんです。浪人を覚悟していたとき、ロンドンの大学でグラフィックデザインを学んでいた姉が「こっちに来れば」と言ってくれて。それで、彼女の通うユニバーシティ・オブ・イースト・ロンドンを受けたら合格して、じゃあ行ってみようということになりました。

―学期が日本と違うから、その年のうちに受験できたんですね。でも当時、10代のアーティスト志望で、いきなり渡英って大胆ですね。日本で翌年受験する選択肢はなかった?

さわ:美大進学を決めたのは、ものを作るのが好きだったのに加え、ときどき上京しては見に行っていた現代アートの展覧会や、その界隈にいる人たちの自由さに惹かれたところもあると思います。だからとにかく、早くその「自由な人たち」に仲間入りする勉強を始めたかったんでしょうね。後先あまり考えずに行動しちゃう年頃ですし、どうにかなるだろうって、その状況を自然に受け入れました。英語がろくに話せなかったのは、やっぱり苦労しましたけど。

さわひらき
さわひらき

―大志を抱いての渡英というより、わりと自然体なんでしょうか(笑)。ところで、さわひらき=映像作家のイメージもありますが、大学で専攻したのは彫刻ですね。

さわ:最初の1年は絵画や写真などひと通り基礎をやって、2年目から絵画・彫刻・テキスタイルのどれかを選ぶんです。もともと立体物を作るのが好きだったから、彫刻にしました。でも古典的な彫刻を教わるというより、わりと自由でしたね。先生にも映像を作る人がいて、僕も8mmフィルムで撮影した映像を取り入れた立体作品を作ったりしました。

―そこから、今のような映像メディアを軸にした作品へ、本格的に舵を切った転機は?

さわ:大学卒業後に友人の作品制作の手伝いで、コンピューターの映像編集ソフトに初めてじっくり触れたときです。空間に加えて時間も扱える映像の感覚が、僕のやりたいことに一番しっくりくると気付いて。後に進学した大学院(スレード・スクール・オブ・ファイン・アート)でも彫刻専攻でしたが、より映像を用いるようになりました。

イギリスの若手アーティストの登竜門『New Contemporaries』で入賞したことで、ニューヨークと東京のギャラリーから声をかけてもらった。

―出世作『dwelling』の誕生もその時期ですね。アパートの一室を無数の小さな飛行機が飛び交うこの映像が、以降の活躍につながったとか。

さわ:はい。イギリスの若手アーティストの登竜門的な『New Contemporaries 2002』で入賞することができて、それが今お付き合いしている、ニューヨークと東京それぞれのギャラリーから声をかけてもらうきっかけにもなりました。

『dwelling』2002
『dwelling』2002

―その後の『Going Places Sitting Down』では友人の部屋を舞台に、今度は小さな木馬がひそやかに動き出すなど、初期作には共通点も多いですね。現実と非現実の交差みたいな評もありますが、実は飛行機も木馬も、ご自身の幼いころの記憶とつながっているかも、とのお話もあったかと思います。

さわ:「こういう感覚や風景ってあったな」という個人的なイメージを、「それってどういうことなんだろう」と考えるところから、作品制作が始まることが多いですね。それを一言でいえば「記憶」になるのでしょうけど、その言葉だけでは説明しづらいところも感じます。

『Going Places Sitting Down』2004
『Going Places Sitting Down』2004

―『dwelling』からは10年が経ちましたが、時間を経た後にあらためて気付くことなども?

さわ:あの頃は、本来ないはずのものをそこに置くことで生まれる空気感や意味を扱い続けていたのかな、と今は感じます。「displacement(置き換え、転移)」って言葉があるんですが、それに興味があったんだなって。さらに言えば「それって僕自身のことじゃん」とも気付いたんです。日本の美大に進学するつもりだったのが、気がつけばロンドンで暮らしている自分。いるはずじゃなかった場所に不意に置き換えられた自分、その環境で見た空気感が当時の作品にあるのかなって。言葉にすると直球でベタですけど、そこで何かが見えた感じはありました。

―ロンドンでの生活も、最初の頃と今とではまた違うでしょうね。

さわ:近すぎると見えないものもあるから、10年後にはまた、今やっていることについて何か気付くかもしれませんね。僕は今35歳で、もうすぐ人生の半分はイギリスで暮らしていたことになります。そうなると日本とイギリスの暮らし、どちらが「置き換え」かもわからない。するとまた違うことが起こるのかなとも思います。

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イベント情報

『第19回神奈川国際芸術フェスティバル』

2012年9月15日(土)〜11月24日(土)
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホール、KAAT神奈川芸術劇場、神奈川県立音楽堂
第19回神奈川国際芸術フェスティバル

今後開催されるプログラム
『さわひらき Whirl』

2012年10月23日(火)〜11月24日(土)
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー
時間:10:00〜18:00(土曜は19:00まで)
休館日:会期中無休
料金:一般700円 学生・65歳以上500円
さわひらき Whirl | 神奈川県民ホールギャラリー

『ウィーン国立歌劇場「フィガロの結婚」』
2012年10月20日(土)15:00〜
2012年10月23日(火)17:00〜
2012年10月28日(日)15:00〜
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホール大ホール
指揮:ペーター・シュナイダー
演出・美術:ジャン=ピエール・ポネル
音楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
出演(予定):
カルロス・アルバレス
バルバラ・フリットリ
アニタ・ハルティッヒ
アーウィン・シュロット
マルガリータ・グリシュコヴァ
料金:S席59,000円 A席52,000円 B席45,000円 C席38,000円 D席29,000円 E席18,000円 F席14,000円 エコノミー券10,000円 学生券8,000円
『ウィーン国立歌劇場「フィガロの結婚」』

『ウィーン国立歌劇場 小学生のためのオペラ「魔笛」』
2012年10月26日(金)18:00〜
会場:神奈川県 横浜 KAAT神奈川芸術劇場ホール
指揮:パウル・ヴァイゴルト
演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
出演(予定):
イル・ホン
カルロス・オスナ
アルビナ・シャギムラトヴァ
アレクサンドラ・ラインプレヒト
甲斐栄次郎
ヴァレンティーナ・ナフォルニータ
ヘルヴィック・ペコラーロ
料金:
小学生2,500円
大人(中学生以上)1階椅子席9,000円 2階椅子席8,000円 3階椅子席7,000円
※3階椅子席は大人のみ
『ウィーン国立歌劇場 小学生のためのオペラ「魔笛」』

『宮本亜門演出 マダムバタフライX 〜プッチーニのオペラ「蝶々夫人」より』
2012年11月10日(土)、11月11日(日)、11月14日(水)、11月17日(土)、11月18日(日)各日15:00〜
会場:神奈川県 横浜 KAAT神奈川芸術劇場ホール
作曲:ジャコモ・プッチーニ
構成・演出:宮本亜門
編曲:山下康介
出演:
嘉目真木子
与儀巧
田村由貴絵
大沼徹
鈴木純子
吉田伸昭
ほか
料金:S席8,500円 A席7,000円 B席5,500円 C席4,500円 高校生以下1,000円 U24(24歳以下)4,250円 シルバー(満65歳以上)8,000円
『宮本亜門演出 マダムバタフライX 〜プッチーニのオペラ「蝶々夫人」より』

プロフィール

さわひらき

1977年石川県生まれ、ロンドン在住。2000年、ユニバーシティ・オブ・イースト・ロンドン卒業。03年、スレード・スクール・オブ・ファイン・アートで美術学修士号取得。『Hako』(チセンヘール・ギャラリー、ロンドン、07年)など個展多数。08年は同展がスペインのカハ・デ・ブルゴス芸術センターへ巡回。他、国立新美術館『アーティスト・ファイル2008』展などに出展。

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Billie Marten“Milk & Honey”

Lapsleyが19歳なら、こちらのBillie Martenはイギリス出身の17歳。若ければいいってもんではないですが、若さゆえの繊細で儚い歌声と、少しでも触れたら消え去ってしまいそうな脆くて危うい音楽に引き込まれます。でも、音楽とPVがギャップあり過ぎて……なんだか微笑ましい(笑)。(柏井)