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僕が感じてきた空気感が作品にある そこでなにかが見えた感じはありました

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さわひらきインタビュー 本当に動かしたいものは映像の外にある

インタビュー・テキスト:内田伸一 撮影:佐々木鋼平(2012/10/22)

まだ30代ながらすでに15年以上にわたる海外での活動キャリアを持つ映像アーティスト、さわひらき。10代でイギリスに留学した彼は、大学院生時代の作品で注目されて以降、ロンドンを拠点に着実に活躍の場を広げてきた。そんな彼の過去の作品から最新作までを展示する大型個展『さわひらき Whirl』が、『神奈川国際芸術フェスティバル』のプログラムのひとつとして、神奈川県民ホールギャラリーで2012年10月23日から11月24日まで開催される。そこで、さわのこれまでの活動を振り返り、これからを語るSkypeインタビューをお願いした。

PROFILE

さわひらき
1977年石川県生まれ、ロンドン在住。2000年、ユニバーシティ・オブ・イースト・ロンドン卒業。03年、スレード・スクール・オブ・ファイン・アートで美術学修士号取得。『Hako』(チセンヘール・ギャラリー、ロンドン、07年)など個展多数。08年は同展がスペインのカハ・デ・ブルゴス芸術センターへ巡回。他、国立新美術館『アーティスト・ファイル2008』展などに出展。

高校3年の時、入院してしまったせいで美大受験を逃し、どうにかなるだろうって、後先あまり考えずにロンドンの美術大学を受験しました。

―さわさんは、ずっと海外で活動していますが、高校生までは金沢育ちだそうですね。イギリスに渡ったきっかけは?

さわ:もともと日本の美大へ行こうと受験勉強を始めたんですが、それがストレスになったのか……高校3年生のときにお腹の具合を悪くして入院するほどになり(苦笑)、受験する機会を逃してしまったんです。浪人を覚悟していたとき、ロンドンの大学でグラフィックデザインを学んでいた姉が「こっちに来れば」と言ってくれて。それで、彼女の通うユニバーシティ・オブ・イースト・ロンドンを受けたら合格して、じゃあ行ってみようということになりました。

―学期が日本と違うから、その年のうちに受験できたんですね。でも当時、10代のアーティスト志望で、いきなり渡英って大胆ですね。日本で翌年受験する選択肢はなかった?

さわ:美大進学を決めたのは、ものを作るのが好きだったのに加え、ときどき上京しては見に行っていた現代アートの展覧会や、その界隈にいる人たちの自由さに惹かれたところもあると思います。だからとにかく、早くその「自由な人たち」に仲間入りする勉強を始めたかったんでしょうね。後先あまり考えずに行動しちゃう年頃ですし、どうにかなるだろうって、その状況を自然に受け入れました。英語がろくに話せなかったのは、やっぱり苦労しましたけど。


さわひらき
さわひらき

―大志を抱いての渡英というより、わりと自然体なんでしょうか(笑)。ところで、さわひらき=映像作家のイメージもありますが、大学で専攻したのは彫刻ですね。

さわ:最初の1年は絵画や写真などひと通り基礎をやって、2年目から絵画・彫刻・テキスタイルのどれかを選ぶんです。もともと立体物を作るのが好きだったから、彫刻にしました。でも古典的な彫刻を教わるというより、わりと自由でしたね。先生にも映像を作る人がいて、僕も8mmフィルムで撮影した映像を取り入れた立体作品を作ったりしました。

―そこから、今のような映像メディアを軸にした作品へ、本格的に舵を切った転機は?

さわ:大学卒業後に友人の作品制作の手伝いで、コンピューターの映像編集ソフトに初めてじっくり触れたときです。空間に加えて時間も扱える映像の感覚が、僕のやりたいことに一番しっくりくると気付いて。後に進学した大学院(スレード・スクール・オブ・ファイン・アート)でも彫刻専攻でしたが、より映像を用いるようになりました。


イギリスの若手アーティストの登竜門『New Contemporaries』で入賞したことで、ニューヨークと東京のギャラリーから声をかけてもらった。

―出世作『dwelling』の誕生もその時期ですね。アパートの一室を無数の小さな飛行機が飛び交うこの映像が、以降の活躍につながったとか。

さわ:はい。イギリスの若手アーティストの登竜門的な『New Contemporaries 2002』で入賞することができて、それが今お付き合いしている、ニューヨークと東京それぞれのギャラリーから声をかけてもらうきっかけにもなりました。


『dwelling』2002
『dwelling』2002

―その後の『Going Places Sitting Down』では友人の部屋を舞台に、今度は小さな木馬がひそやかに動き出すなど、初期作には共通点も多いですね。現実と非現実の交差みたいな評もありますが、実は飛行機も木馬も、ご自身の幼いころの記憶とつながっているかも、とのお話もあったかと思います。

さわ:「こういう感覚や風景ってあったな」という個人的なイメージを、「それってどういうことなんだろう」と考えるところから、作品制作が始まることが多いですね。それを一言でいえば「記憶」になるのでしょうけど、その言葉だけでは説明しづらいところも感じます。


『Going Places Sitting Down』2004
『Going Places Sitting Down』2004

―『dwelling』からは10年が経ちましたが、時間を経た後にあらためて気付くことなども?

さわ:あの頃は、本来ないはずのものをそこに置くことで生まれる空気感や意味を扱い続けていたのかな、と今は感じます。「displacement(置き換え、転移)」って言葉があるんですが、それに興味があったんだなって。さらに言えば「それって僕自身のことじゃん」とも気付いたんです。日本の美大に進学するつもりだったのが、気がつけばロンドンで暮らしている自分。いるはずじゃなかった場所に不意に置き換えられた自分、その環境で見た空気感が当時の作品にあるのかなって。言葉にすると直球でベタですけど、そこで何かが見えた感じはありました。

―ロンドンでの生活も、最初の頃と今とではまた違うでしょうね。

さわ:近すぎると見えないものもあるから、10年後にはまた、今やっていることについて何か気付くかもしれませんね。僕は今35歳で、もうすぐ人生の半分はイギリスで暮らしていたことになります。そうなると日本とイギリスの暮らし、どちらが「置き換え」かもわからない。するとまた違うことが起こるのかなとも思います。


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