特集 PR

現代演劇を更新する天才・藤田貴大、次の一手は名作の逆再生

現代演劇を更新する天才・藤田貴大、次の一手は名作の逆再生

『ロミオとジュリエット』
インタビュー・テキスト
徳永京子
撮影:中村ナリコ 編集:宮原朋之

何かを変える方法は主にふたつある。古いものを壊してゼロから始めることと、新しい要素を持ち込むこと。マームとジプシーの作・演出家である藤田貴大はラディカルな後者だ。文学、漫画、ファッション、音楽を、これまでの演劇との関係とはまったく違う角度と深さで取り入れて演劇を更新している。シェイクスピアに初めて取り組む『ロミオとジュリエット』には、マームとジプシー作品ではお馴染みとなった山本達久に加え、石橋英子、須藤俊明という強力なミュージシャンが顔を揃えた。独自のこだわりと好奇心を心の中に飼う柔軟な曲者たちは、柔らかくジャンルの境界線を溶かしていく。

やりたいのは、藤田貴大の頭の中がどうなっているのか、それを具現化してみたいってことなんです。(山本)

―マームとジプシーはこれまで様々な音楽家と積極的に作品を作ってこられましたが、2015年以降の『ヒダリメノヒダ』『書を捨てよ町へ出よう』『あっこのはなし』の3作品連続上演と『MUM & GYPSY in Saitama』は山本達久さんに集中しています。クレジットも「音楽」や「演奏」ではなく「出演:山本達久」だったりと、舞台上でドラムを叩く以上の役割を託されているように感じます。

藤田:達久さんはここ何年かで一番距離が近い人と言うか、気が合うんです。地元の先輩に9割バカな話しかしない達久さんに超そっくりな人がいて。だからかな(笑)。

山本:知らねーわ(笑)。

藤田:音楽の話をすると、ドラムという楽器は特殊だと思っていて、『書を捨てよ町へ出よう』(以下『書を捨てよ』)はそこをこだわって作りました。当時、達久さんとよく話をしながら、ドラムは旋律を生まないということをかなり意識しながら作っていましたね。

左から:山本達久、藤田貴大、須藤俊明、石橋英子
左から:山本達久、藤田貴大、須藤俊明、石橋英子

山本:もう少し説明すると、いわゆるメロディーを持った曲を聴いたとき、そのメロディーを知っていても知らなくても、何かしらの強いイメージを観客が持つと思うんです。『書を捨てよ』ではそれを排除したいという話を二人でしていたんです。で、ほんとに時々、バート・バカラック(米国の作曲家)だったりガムラン(インドネシアの民族音楽)だったり、そういう強烈な印象を持つ音楽をわざと使って、ドラムや電子楽器の生演奏だけの時とのコントラストで『書を捨てよ』を作っていったんです。

―『書を捨てよ』は、シーンごとに俳優たちが工事現場の足場のようなセットを舞台上で組み立てては解体することを繰り返していて、空間全体がシャープな運動をしているように見えました。でも物語とは分離していなかった。そのふたつを結びつけていたのはドラムの音だったんですね。

藤田:映画『書を捨てよ町へ出よう』(1971年、監督:寺山修司)をもとにしたんですけど、あの映画を現代とつなげるために、ドラムの音のリズムがすごく有効だと思ったんです。ドラムでいろんなことができることを達久さんに教えてもらったし、まだまだ一緒にやれることがあると思っています。

藤田貴大

RooTS Vol.03 寺山修司生誕80年記念 『書を捨てよ町へ出よう』 (2015年)東京芸術劇場 シアターイースト 撮影:引地信彦
RooTS Vol.03 寺山修司生誕80年記念 『書を捨てよ町へ出よう』 (2015年)東京芸術劇場 シアターイースト 撮影:引地信彦

―それで今回『ロミオとジュリエット』でも迷わずオファーを?

藤田:『ロミオとジュリエット』を演出すると決めたときから、達久さんと一緒にやりたいと考えていました。参加ミュージシャンのキャスティングも達久さんにしてもらったら絶対におもしろいだろうと思って、お任せしました。

山本:藤田くんから話を聞いて、すぐ石橋英子さんと須藤俊明さんだなと思いました。

―山本さんはどういう点でこの二人だとピンときたんでしょうか?

山本:藤田くんがやっているのは演劇って呼ばれていますが、あんまり俺はよくわからないと言うか、どうでもいいと思っています。やりたいのは、藤田貴大ワールドみたいなもので、藤田くんの頭の中がどうなっているのかが知りたい、それを出来る限り、具現化してみたいってことなんです。

『cocoon』(2012年、2015年、原作:今日マチ子、上演台本・演出:藤田貴大)を観て「こんな複雑なものをどうやって頭の中で組み立てているんだ?」って驚いたんです。そういうものを引き出して、少しでも具現化したい。それを一番出来るのがこの組み合わせだと思ったんです。

山本達久

『cocoon』(2015年) 撮影:橋本倫史
『cocoon』(2015年) 撮影:橋本倫史

藤田:僕はそれまで二人をまったく知らなかったわけではないんです。須藤さんには以前レコーディングでお世話になっていたし、英子さんも『書を捨てよ』を観に来てくれたときに「一緒にやりたい」と思って、達久さんと話していたので、今回のチームはすごくうれしいです。

Page 1
次へ

イベント情報

『ロミオとジュリエット』

2016年12月10日(土)~12月21日(水)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場プレイハウス
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
上演台本・演出:藤田貴大
出演:
青柳いづみ
あゆ子
石川路子
内堀律子
花衣
川崎ゆり子
菊池明明
小泉まき
後藤愛佳
西原ひよ
寺田みなみ
豊田エリー
中神円
中村夏子
中村未来
丹羽咲絵
吉田聡子
石井亮介
尾野島慎太朗
中島広隆
波佐谷聡
船津健太
山本達久

プロフィール

藤田貴大(ふじた たかひろ)

北海道出身。劇作家・演出家。マームとジプシー主宰。2011年6月~8月にかけて発表した三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で『第56回岸田國士戯曲賞』を26歳で受賞。今までに様々なジャンルの作家と共作を発表。2013年「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。」で初の海外公演を成功させる。2013年8月漫画家・今日マチ子原作「cocoon」を舞台化。

山本達久(やまもと たつひさ)

1982年10月25日生。drummer。2007年まで地元山口県防府市bar印度洋を拠点に、様々な音楽活動と並行して様々なイベントのオーガナイズをするなど精力的に活動し、基本となる音楽観、人生観などの礎を築く。現在では、ソロや即興演奏を軸に、Jim O'Rourke/石橋英子/須藤俊明との様々な活動をはじめ、カフカ鼾、石橋英子ともう死んだ人たち、坂田明と梵人譚、Denki Udon、プラマイゼロ、オハナミ、NATSUMEN、石原洋withFRIENDSなどのバンド活動多数。ex.芸害。青葉市子、UA、カヒミ・カリィ、木村カエラ、柴田聡子、七尾旅人、長谷川健一、phew、前野健太、ヤマジカズヒデ、山本精一、Gofishなど歌手の録音、ライブサポート多数。演劇の生伴奏・音楽担当として、SWANNY、マームとジプシーなど、主に都内を中心に活動。2011年、ロンドンのバービカンセンターにソロパフォーマンスとして招聘されるなど、海外公演、録音物も多数。

石橋英子(いしばし えいこ)

茂原市出身の音楽家。いくつかのバンドで活動後、映画音楽の制作をきっかけとしてソロとしての作品を作り始める。その後、6枚のソロアルバムをリリース。各アルバムが音楽雑誌の年間ベストに選ばれるなど高い評価を受ける。ピアノをメインとしながらドラム、フルート、ヴィブラフォン等も演奏するマルチ・プレイヤー。シンガー・ソングライター、セッション・プレイヤー、プロデューサーと、石橋英子の肩書きでジャンルやフィールドを越え、漂いながら活動中。最近では七尾旅人、ジム・オルーク、ジョン・ダンカン、前野健太、星野源、などの作品やライブに参加する他、演劇や映画音楽も手掛ている。またソロライブと共に、バンド「石橋英子withもう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子)」としてもライブを行う。4thアルバム「imitation of life」、そして2014年リリースの最新作「car and freezer」は米・名門レーベル「Drag City」から全世界発売。2016年春にMerzbowとのDUO作品を世界的な電子音楽レーベルEditions Megoからリリースした。

須藤俊明(すどう としあき)

ミュージシャン/録音エンジニア。1971年生まれ。MELT-BANANA、THERMO、奇形児などのドラマーとして、そしてGOMES THE HITMAN、HARCO、長澤知之などのベーシストとして活動を経て、近年はジム・オルーク、石橋英子、ヤマジカズヒデ、柴田聡子、山本精一、大江慎也など、パンク、アヴァンギャルドからフォーク、ポップスまで幅広い音楽に関わっている。2005年、自身が率いるバンドMACHINE AND THE SYNERGETIC NUTSの2ndアルバムは米・レコメン系/前衛ロックのレーベル「Cuneiform Records」よりリリースされた。2015年には自身も参加するバンド、ナスカ・カーのレーベルより、マルチ・インストィルメントによるソロ・アルバム「mobile suite」をリリース。映画「新撰組オブ・ザ・デッド」の音楽をヤマジカズヒデ、高橋浩司と共に担当。ウミネコ・カレー店主のバンド、uminecosoundsのメンバーでもある。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

Got a minute ? 動画これだけは

Suchmos“PINKVIBES”

Suchmosがアルバム『THE KIDS』より“PINKVIBES”のPVを公開。山田健人(dutch_tokyo)との久々のタッグとなるこの映像。余裕すら感じるシュアな演奏シーンやふとした表情が絶妙なバランスで映し出される。燃え盛るピンクの炎と、それに向けるメンバーの強い眼差しを見ると、Suchmosがこれからどんな風景を見せてくれるのか期待が高まる。(飯嶋)