15分一本勝負のプレゼンに各界大物が参戦『IDFT』レポート

猪子寿之、茂木健一郎、しりあがり寿も名を連ねる、日本デザインフォーラムとは……?

日比野克彦(アーティスト)や、梅原猛(哲学者)が理事や顧問に名を連ね、会員には、猪子寿之(チームラボ代表)、サエキケンゾウ(ミュージシャン)、佐藤可士和(デザイナー)、しりあがり寿(漫画家)、茂木健一郎(脳科学者)、森本千絵(アートディレクター)といった、ジャンルも個性もバラバラなクリエイターたちが参加する一般社団法人日本文化デザインフォーラム(以下JIDF)。彼らが、毎年テーマを掲げて主催するシンポジウム『INTER-DESIGN FORUM TOKYO』をご存じだろうか。

『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2015 江戸端会議 THE FUTURISM OF PAX TOKUGAWANA』
『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2015 江戸端会議 THE FUTURISM OF PAX TOKUGAWANA』

昨年は「江戸端会議 THE FUTURISM OF PAX TOKUGAWANA」をテーマに、「江戸の文化」から未来に応用できるアイデアを2日間にわたってトーク&ディスカッションした同イベント。2016年はガラリと趣を変え、「carpe diem(今を摘め)」をテーマに、西麻布のSuper Deluxeで3回に分けて開催されている。今回は、11月18日に開催される『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.3』を前に、7月15日に行われたVOL.2の様子を紹介しよう。

「一人の人間のなかには、誰もが世界のすべてと同じくらいの深い『何か』がある」(黒川)

六人のプレゼンテーターが、それぞれ15分という持ち時間で、フリートーク&プレゼンテーションを行うのが今年度の『INTER-DESIGN FORUM TOKYO』のスタイル。この日のステージに登壇したのは、国際的な建築家の伊東豊雄、2020年『東京オリンピック・パラリンピック』エンブレムのデザイナー野老朝雄、女優の木内みどり、コメディアンの松元ヒロ、作家の山田真美、チベット出身の政治学者ペマ・ギャルポといった、JIDF人脈ならではのバラエティーに富んだ豪華な面々。

『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.2』野老朝雄のプレゼンテーション
『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.2』野老朝雄のプレゼンテーション

テーマである「carpe diem(今を摘め)」は、紀元前1世紀の古代ローマの詩人ホラティウスの詩から引用されたフレーズ。直訳すれば「一日の花を摘め」という意味になり、「明日のことは信用せず、今を生きる」ことへの警句として伝えられている。

JIDFの代表幹事を務める建築家の黒川雅之によれば、今回語られるのは六人の「今、話したい旬のこと」。

黒川:一人の人間のなかには、誰もが世界のすべてと同じくらいの深い「何か」があるといつも思います。ましてや『INTER-DESIGN FORUM TOKYO』の出演者は、さまざまな分野でトップレベルの活躍をされている方ばかり。だから今年は大きなテーマを設けて議論するのではなく、「あなたが興味のある、今すぐに話したいことを15分間何でもしゃべってください」とオファーしたんです。そうすれば、自ずとその人たちから「深い世界」が濃縮されて出てくるんです。

「じつはほとんどの大事なことは、15分で話せる」(黒川)

蓋を開けてみれば、黒川の目論見は見事に的中したと言えるだろう。六人のプレゼンテーターが摘んできた、多様で刺激的な「今」は、ステージの上に乗ることによって、さらに影響を与え、響き合っていた。女性が自らの性器について語るモノローグを聞かせた木内みどりや、テレビでは絶対に放送できない政治ネタで会場を爆笑の渦に巻き込んだ松元ヒロの芸は、ニュースで耳にしたような「今ならでは」のタブーを感じさせるライブ感があった。

『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.2』松元ヒロのプレゼンテーション
『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.2』松元ヒロのプレゼンテーション

また、そんな現場のライブ感に触発され、用意してきたプレゼンを手放して即興で話すという、まさに「今」を体現したプレゼンテーターもいた。この夜の5番手として登場した伊東豊雄は、2番手のペマ・ギャルポによるチベット仏教美術の話に触発され、人類学者の中沢新一がチベット仏教建築について書いた文章を引用しながら、「人工と自然の折り合いをどうつけるのか?」という、震災以降にわれわれが突きつけられた大命題について、真摯に言葉を紡いだ。

黒川:じつはほとんどの大事なことは、15分で話せると思うんです。ただ、非常に濃密な15分として話せるようになるためには、2時間のプレゼンテーションよりも準備が大変です。だから即興で話すのは意外とすごく難しいんです。

と、15分という持ち時間についての理由を明かす黒川。そのため、『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016』で重視したのが、プレゼンテーターたちがリラックスして話せる「自由な雰囲気・状況」を設定することだったという。たしかに、会場も昨年までのようなホールではなく、アンダーグラウンドな雰囲気もあり、客席との距離も近いSuper Deluxeを選んだことがプラスに働いているのは間違いない。

『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.2』伊東豊雄のプレゼンテーション
『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.2』伊東豊雄のプレゼンテーション

「人間はもっともっと揺れながら、瞬間瞬間の『今』を熱烈に生きればいい」(黒川)

この夜を振り返って黒川は、次のような感想を述べた。

黒川:普段活動されるフィールドもまったく違うプレゼンテーターの皆さんが集まって、どんな話をされるのか、その瞬間まで私もわからなかったのですが、この「計画性のなさ」をイベントのなかに取り込む感覚は、すごく現代的で新しいやり方だとも思いました。

人間が考える計画性なんてたかが知れている。固まってブレない人間なんて最悪です。人間はもっともっと揺れながら、瞬間瞬間の「今」を熱烈に生きればいい。だから今年の『INTER-DESIGN FORUM TOKYO』は、全体のストーリーは作らずに、ただ選んだ人の「今」を信頼するというかたちを取りました。それが今日のような活気を呼ぶのだと思います。

社団法人日本文化デザインフォーラム(JIDF)の代表幹事を務める建築家の黒川雅之
社団法人日本文化デザインフォーラム(JIDF)の代表幹事を務める建築家の黒川雅之

『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.3』チラシ
『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.3』チラシ(イベントの詳細はこちら

回を重ねるごとに熱を帯びるトーク&プレゼンテーション「carpe diem(今を摘め)」。いよいよ11月18日に開催されるVOL.3では、田中康夫(作家、政治家)、浅田彰(批評家)、マリ・クリスティーヌ(異文化コミュニケーター)、古賀健太(教育シンクタンク「GAKKO」ファウンダー)、十一代長左衛門・大樋年雄(陶芸家)、魔法つかいKOJIこと木村公治(プロマジシャン)という、これまで以上にジャンルも個性もバラバラな6名が登壇。どんな話が飛び出すのか、目の前の人物が「今を生きる」瞬間をぜひ間近で体感してほしい。

イベント情報
『INTER-DESIGN FORUM TOKYO 2016 VOL.3』

2016年11月18日(金)19:00~
会場:東京都 西麻布 Super Deluxe
出演:
マリ・クリスティーヌ
古賀健太
十一代長左衛門・大樋年雄
田中康夫
浅田彰
木村公治
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク、軽食込)



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