朝吹真理子の長編小説『ゆめ』が11月4日に刊行される。
古来から創作の源泉となってきた「夢」。8年ぶりの長編小説となる同作では、著者自身のファミリーヒストリーを契機のひとつに、目覚めとともに消えてしまう夢を通して、現実と非現実、生と死、記憶と身体の境界へと踏み込んでいく。
夢とうつつ、過去と現在、個人と歴史が交錯し、人類が繰りかえしてきた厄災が一人の少年の夢へと流れ込んでいく。その先に浮かびあがるのは、人間の悲惨さと、その果てにある思いがけない滑稽さ。これまでの朝吹作品のイメージをくつがえす力強い筆致で描かれる、壮大な形而上学小説だという。
さらに今回、朝吹真理子自身が初めて装丁を手がけた。故・大江健三郎の直筆原稿の一部をコラージュし、画家の佐藤允、ファッションデザイナーの堀内太郎らの協力を得て仕上げた。
【あらすじ】
子供の頃から、おたがいに見た夢を交換していた姉の麦と弟の太郎。眠りのなかで同じ海辺を歩き、夢のなかで何度も出会ってきた二人は、大人になり、麦は東京の出版社で働き、太郎は弘前の病院で医師として暮らしている。
離れて暮らすようになっても続いていた二人の夢は、やがて太平洋戦争下の大磯へとつながっていく。そこで現れるのは、音楽学校を出ながら戦争の時代に閉じ込められた令嬢・あやめ。
現代の東京と弘前、戦時下の大磯と平塚。夢とうつつ、現在と過去が重なり合うなかで、麦、太郎、あやめの記憶と欲望は、しだいにひとつの深い場所へ流れ込んでいく。
麦が、あやめが、そして太郎が見ているのは、誰の、何の夢なのか――。
【村田沙耶香の推薦文】
なにかの破裂を感じた。小説という概念に知らず感じていた膜なのか、自分の精神が入った袋の皮なのか、とにかく、なにかが、決定的にばしゃりと破れた。
たぶん、この小説はいつか人を殺すと思う。この小説に殺されることを、ぼうっと夢見ている。「ころす」という言葉も破裂して、この小説が破いた膜の外に立っている。
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