デザインとアートのコンペティション『TOKYO MIDTOWN AWARD 2026』受賞作品展が開催中

強く握ると、形を失ってしまう積み木。怒りを飲み込む人の心を鎮めるガム。名前の由来から、目の前の相手をひとりの人として見つめ直すきっかけをつくる名刺。これらは、東京ミッドタウンが開催する『TOKYO MIDTOWN AWARD 2026』のデザインコンペで選ばれた作品だ。

デザインとアートのコンペティション『TOKYO MIDTOWN AWARD 2026』の受賞・入選作品を紹介する展示『TOKYO MIDTOWN AWARD 2026 EXHIBITION』が、10月9日から11月8日まで六本木で開催されている。

今年のデザインコンペのテーマは「Care」。身体もしくは感情への配慮、人と人との関係性への配慮――「Care」という言葉から、これほど多様な表現が生まれるのはなぜなのか。テーマを応募者自身が設定したアートコンペの作品も含め、全16点の受賞・入選作品を鑑賞できる展示となっている。

『TOKYO MIDTOWN AWARD』は、“「JAPAN VALUE(新しい日本の価値・感性・才能)」を創造・結集し、世界に発信し続ける街” をコンセプトに掲げる東京ミッドタウンが、次世代を担うデザイナーやアーティストの発掘と支援、その先のコラボレーションを目的に2008年から開催しているコンペティション。デザインコンペとアートコンペの2部門で構成され、19回目となる今回は計1,579点の応募が集まった。

会場では、各部門のグランプリを含む全16点の受賞・入選作品を展示。会期中は来場者の投票によって「東京ミッドタウン・オーディエンス賞」を決定する一般人気投票も実施される。

公共空間のなかで、社会と個人をつなぐアートコンペ

アートコンペはパブリックスペースであるプラザB1を舞台に、場所を生かしたサイトスペシフィックな作品を募集。計295作品の応募のなかから、審査を経た6作品が最終審査に進んだ。作家たちは公共空間で誰がどのように作品と出会うのかを想像しながら、二次審査から最終展示に至るまで作品を大きく進化させたという。アート部門では応募者自身がテーマを立てて作品を発表した。

グランプリは、德本道修の映像作品《Wave Goodbye, Waves》。作家が暮らす福井県敦賀市で起きている、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉と、継承者のいない仏壇を処分する法要「魂抜き」の急増という2つの現象を重ね合わせた。原発をめぐる議論を賛成・反対の二項対立ではなく、地域社会や家系の記憶の問題を巻き込んだ現実として重層的にとらえ直す試みだ。審査では、作家自身の問題意識を公共空間で発信する強い覚悟が高く評価された。

準グランプリは、空襲で家族を失った曽祖父の戦争PTSDを出発点に、戦争トラウマの世代間伝達をテーマとした山中春海の《Who is sitting there?》。あたかも土中の不発弾を覗き込むように映像を見る装置と、実際に置かれた空席の椅子によって、鑑賞者は土中の死者のような視点で恐怖を追体験する。

優秀賞は、「都市のなかの一人ひとりの噴水は、例えばスタバのコップの中にあるのではないか」という仮説から出発した平松可南子の《噴水(cafe cup)》。カフェカップ内部の小さな流動を、連続する絵画面による立体として可視化した。本作は2026年アートコンペのパートナー企業である三井デザインテックが選出する「パートナー賞」も受賞し、同社本社での作品展示が決まっている。そのほか、ファイナリスト3点を加えた計6点を展示する。

準グランプリ《Who is sitting there?》山中春海
優秀賞《噴水(cafe cup)》平松可南子

アートコンペの審査員は金澤韻(現代美術キュレーター)、丹原健翔(作家 / キュレーター)、山出淳也(アートプロデューサー)、山田紗子(建築家)、脇田玲(アーティスト / 慶應義塾大学教授)の5名。脇田は「生成AIの急速な進歩のなか、人間が自分の手でものを作ることの価値が揺らいでいるような感覚がありましたが、この審査を通してその雲は綺麗に晴れていく実感がありました」と総評を寄せている。

テーマは「Care」。日常のふるまいからケアをとらえ直すデザインコンペ

19回目となるデザインコンペのテーマは「Care」。分断が叫ばれ、誰もが不安を抱える現代において、他者を思いやる豊かな想像力を体現するようなデザインを募集し、計1,284点の応募が寄せられた。

グランプリに輝いたのは、秋本美鈴の《やわらかい積み木》。幼い子どもが味噌汁の豆腐を潰さないよう手で口へ運ぶ姿から、触れるものに合わせて無意識に力を変える身体の感覚に着目した作品だ。誰もが親しんだ積み木に、強く握ると潰れてしまうほどの柔らかさを与えることで、壊れやすさに気づいて力をゆるめる小さな身体反応を通して、ケアの感覚を呼び起こす。

審査員でプロダクトデザイナーの倉本仁は、審査のなかで「そもそもデザインは、すべてケアからできているのではないか」という議論も生まれたと振り返りつつ、同作を「誰もが知る普遍的な感覚と新鮮な視点を見事に結びつけた作品」と評した。なお本作は、2026年デザインコンペのパートナー企業であるRipple Collectiveが選出する「パートナー賞」も受賞。秋本には同社のアブダビのスタジオへの招聘、展示や共同プロジェクトの機会が提供される。

準グランプリは、アンガーマネジメントにおける「我慢する側の負担」に着目し、怒りの瞬間をユーモアで包み込む田中健太郎と辻村慶太の《仏の顔ガム》。

優秀賞は、名刺に名前の意味や由来を添えることで、仕事で出会う相手を「一人の人間」として見つめるきっかけをつくる軽米かおると砂田肇の《由来名刺》が受賞した。そのほかファイナリスト7点を加えた計10点を展示する。

同じテーマから、対象やとらえ方の異なるさまざまな作品が生まれており、展示を眺めているだけでも楽しい。ケアの可能性にあらためて思いを馳せる機会となった。

準グランプリ《仏の顔ガム》田中健太郎 / 辻村慶太
優秀賞《由来名刺》軽米かおる / 砂田肇

デザインコンペの審査員は倉本仁(プロダクトデザイナー)、菅野薫(クリエイティブディレクター / クリエイティブテクノロジスト)、中村拓志(建築家)、廣川玉枝(クリエイティブディレクター / デザイナー)、山田遊(バイヤー)の5名。

受賞後も続く支援。商品化サポートやイベントでの起用も

東京ミッドタウンは、受賞者・入選者の成長を継続的に支援している。デザインコンペでは受賞作品の実現化サポートやイベントでのデザイナー起用を、アートコンペでは東京ミッドタウンからの作品制作委託やワークショップの開催などを通じて、受賞者が活躍できる場をつくってきた。

2008年の開始以来、計20作品が商品やイベントという形で実現。今後もラインナップは増えていく見込みだ。

《おはなしおりがみ ORIGAMI TALE》遠藤可奈子(Tokyo Midtown Award 2014デザインコンペ受賞者)
《世界の心臓》小林万里子(六本木アートナイト2025出展、Tokyo Midtown Award 2014アートコンペ受賞者)

来場者の一票で決まる「オーディエンス賞」

『TOKYO MIDTOWN AWARD』では、年度ごとにオリジナルのトロフィーを制作している。今年度はデザインコンペの審査員を務める菅野薫が企画・ディレクションを手がけ、デザイン・製作をsecca(上町達也+柳井友一)が担当した。

また、『TOKYO MIDTOWN AWARD 2026 EXHIBITION』の展示期間中は、来場者による一般人気投票を実施。展示作品のなかから「東京ミッドタウン・オーディエンス賞」を決定する。投票結果は11月下旬に『TOKYO MIDTOWN AWARD』の公式サイトで発表される予定だ。

『TOKYO MIDTOWN AWARD 2026』トロフィー
東京ミッドタウン・オーディエンス賞(過去の様子)
イベント情報
TOKYO MIDTOWN AWARD 2026 EXHIBITION

会期:2026年10月9日(金)から11月8日(日)
会場:東京ミッドタウン プラザB1
展示作品:『TOKYO MIDTOWN AWARD 2026』デザインコンペのファイナリスト9組(10作品)および、アートコンペのファイナリスト6組による全16作品を展示


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