世界への復讐のつもりだった amazarashiインタビュー

なぜamazarashiの音楽は、まるで渇望に似たような熱を持って迎えられているのだろうか。

amazarashiは2010年にメジャーデビューし、それから3枚のミニアルバムと、1枚のフルアルバムをリリース。メンバー自身は一切姿を見せることのないまま、やり場のない感情や社会の不条理を抉り出す言葉の力、映像表現も含めた圧倒的な表現力で支持を広げている。昨年からは透過スクリーンを用いた特殊な演出のライブを行い、映像と音楽が濃密にリンクするような独自のライブ表現も高い賞賛を集め始めた。熱狂的なファンが、日を追うごとに増えてきているのだ。

そんな彼らが早くも、昨年11月の『千年幸福論』に続くアルバム『ラブソング』をリリースした。そこには、かつてなく優しく、体温が直接伝わってくるかのような楽曲が収録されている。そして同時に、今も変わらず世間に横たわる欺瞞を鋭く突き刺す告発の言葉も並んでいる。

CINRAでも度々取り上げてきたamazarashiだが、このタイミングで初めて中心人物・秋田ひろむへのメールインタビューが実現し、彼の生の声を届けられることになった。今も青森県むつ市に住む彼が、何を考え、この新作に至ったのかを探る。

受け取った手紙の返事は書かなきゃな、という気持ちです。

amazarashiが今、一体どれほどの熱量でファンからの支持を集めているのか。それを説明するのにてっとり早いのは、彼らのライブがここまで全てソールドアウトしている、という事実だろう。昨年6月に行われた初ライブのチケットは、発売開始からたった1分で完売。今年1月には早くも渋谷公会堂のステージに立っている。その模様については以前にもレポートしたが、今までに感じたことのない、現実感覚が揺るがされるような体験だった。メンバー自身の姿は幕の向こうにぼんやりと見えるだけ。ステージ前面に透過スクリーンを、そして後方にも別のスクリーンを配し、投射された映像世界の中で演奏が繰り広げられる。

渋谷公会堂のステージで、秋田ひろむは「誰にも期待されてなかった人間が、なんとか踏ん張って、しがみついて、このステージに立てた」と語っていた。そんな自分の表現が、目の前の人達に届いていることを実感した時の彼の感情は、どういうものだったのだろうか。

秋田:嬉しかったです。ステージ上では緊張もあってか、あまり実感はなかったんですが。しばらくしてからやって良かったなと思いました。

2010年、ミニアルバム『爆弾の作り方』でメジャーデビューしたamazarashiの作品には、「僕等は常に武器を探してる それがナイフじゃないことを祈る」(“爆弾の作り方”)という歌詞が象徴するように、社会への強い違和感、鬱屈や攻撃性が、ありありと現れている。では、不気味なてるてる坊主のキャラクターと共に描きだされてきたその表現の「原点」とはどういうものだったのか。そして、それを形にしたことは、彼にとってはどういう経験になったのだろう。

秋田:生きていく中で降り掛かる悲しみ苦しみを雨に例えて、雨曝しと名付けました。そこから自分を肯定していくような歌を作りたいという願いを込めて。そこからイメージしてのてるてる坊主です。amazarashiの攻撃的な歌は、世界への復讐のつもりだったんですけど、それが何故か受け入れられたりして、良く分からないです。でも、抱え込んでいた自分の汚い部分を吐き出すのは大事だったと思います。

amazarashi
amazarashi

昨年リリースの1stアルバム『千年幸福論』は、世の中で「当たり前とされていること」の虚飾をはぎとり、自分にとっての幸福を再定義するというテーマを持って作られたアルバムだった。そして、新作『ラブソング』も、その延長線上にある作品だ。初期にあった寓話的で内面的な歌詞は少なくなり、聴き手へ直接訴えかけるようなコミュニケーションを志向するポップ性を持った曲が中心になっている。

秋田:『千年幸福論』は「こうしたら僕は幸せだと思うよ」というアルバムで、それを前提として、「だから僕はこんな感じでやって行きますよ」というのが『ラブソング』のような気がします。ライブをやったことは、曲作りにも影響はありました。歌詞を書く時にリスナーを意識したりしました。お客さんと顔を合わせてしまったので、そうなったんだと思います。あと、人と接する機会が増えて来て、そういう所からの気持ちの変化もあります。受け取った手紙の返事は書かなきゃな、という気持ちです。

未来に期待出来ない時代ですが、それを受け入れてはじめて次に進めるんじゃないかと思ってこのアルバムを作りました。

アルバム『ラブソング』には、昨年以降に作られたという新曲、全10曲が収録されている。ギターとピアノを主体にしたドラマティックな曲調、熱を持った秋田ひろむの歌声という、音楽性の核の部分は何も変わっていない。ジャケットのキャラクターや、これまでメディア芸術祭など様々な場所で評価を集めたSFアニメ風のミュージックビデオ、CDへの詩集の封入など、表現手段にも大きな変化はない。それでも、聴き終えた感触には、それまでの作品とは確実に異なる温かさがある。

2011年3月11日の東日本大震災直後に「詩」として発表されていた“祈り”を筆頭に、新作には震災以降の社会状況が強く反映されているようだ。それぞれの曲について話を伺った。

―アルバムの表題曲“ラブソング”は「愛を買わなくちゃ 急いで買いに行かなくちゃ」と歌っています。「愛」をテーマにした曲でこういう言葉が出てきた理由は?

秋田:最近の歌のラブソング至上主義に対しての皮肉です。みんな毎日色んな事を考えて生きているはずなのに、恋愛の歌一辺倒になってしまっているのは、結果的に愛の価値を下げていると思います。

―“ナモナキヒト”は、曲調も言葉もとても優しい曲になっていますが、このアルバムにおいてはどういう位置づけの曲でしょうか?

秋田:この曲は渋公の直後に作ったのですが、amazarashiに関わってくれる人達に感謝して作った歌です。アルバムの中では“ラブソング”の陰に対しての光の歌だと思います。

―“アポロジー”では「ごめんなさい ちゃんといえるかな?」と歌っています。この言葉にはどんな思いがこもっているのでしょうか?

秋田:amazarashiの歌の原動力は、世界に対する恨みつらみが多かったんですけど、それを続けていても気持ちは晴れないだろうなと思ったのがきっかけです。落ち込む事や苦しい事を世界のせいにしてもしょうがないですし、世界はあるがままにあるだけですから、そこで自分がどうするかの方が重要かなと思って作った歌です。

―“祈り”は震災直後に書かれた直接的な言葉を曲にしたものになっています。これをこのアルバムに収録したのはなぜでしょうか?

秋田:“祈り”は始めから曲もついていて、もっと早めにリリースしたかったのですが、それも難しくて、だったらちゃんと作り込んで良いタイミングで出すべきだなと思っていました。後半の歌詞を追加したのですが、大事な人の無事を祈る歌から、もっと多くの人が共感出来る様な祈りの歌にしたつもりです。

―「もう知らないふりはできないよ 僕らは知ってしまったから」と歌う“ナガルナガル”や、「何もないことが幸せだと思うよ 僕らを悩ませる面倒くさい事が」「生活の為には背に腹変えられず」と歌う“ハルルソラ”など、アルバムには原発事故に端を発する社会状況と価値観の変容も、強く影響を与えているように感じるのですが、いかがでしょうか?

秋田:いつも普段感じた事を歌にしているのですが、原発事故やそれによる不安などが、もう僕の普段の事になっているんだと思います。

―それを踏まえて、“ハルルソラ”がアルバムの中でも最も明るく軽やかな曲調になっているのは何故でしょうか?

秋田:青森に多くある原発とその関連施設についての歌です。それによって救われる人がいるのは分かっているんですが、故郷の風景や生活をリスクとして差し出すまでの事だろうか、と思います。

amazarashiの音楽は、その時々の時代の空気を強く反映したものだ。多くの人が見て見ぬふりをしているもの、できることなら目をそらしていたいと思っているだろうもの、それに光を当てるアートだ。だからこそ、amazarashiの音楽は強く求められているのだと思う。メールの最後で、彼に「2012年という今の時代の空気をどう捉えているか?」という質問を投げかけた。彼は、こう答えてくれた。

秋田:時代の空気とか意識していた訳ではないんですが、僕がこの時代に生まれてしまったからこそ出来るべくして出来たアルバムだと思います。未来に期待出来ない時代ですが、それを受け入れてはじめて次に進めるんじゃないかと思ってこのアルバムを作りました。

イベント情報
amazarashi LIVE TOUR 2012『ごめんなさい ちゃんといえるかな』

2012年6月30日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:大阪府 心斎橋 BIG CAT
料金:前売4,500円 当日5,500円
※チケットは完売

2012年7月1日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:愛知県 名古屋 Electric Lady Land
料金:前売4,500円 当日5,500円

2012年7月8日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 Zepp DiverCity TOKYO
料金:前売4,500円 当日5,500円

2012年8月10日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:福岡県 福岡イムズホール
料金:前売4,500円 当日5,500円

リリース情報
amazarashi
『ラブソング』初回限定盤

2012年6月13日発売
価格:2,800円(税込)
Sony Music Associated Records / AICL-2380

1. ラブソング
2. ナガルナガル
3. セビロニハナ
4. ナモナキヒト
5. ハレルヤ
6. アイスクリーム
7. アポロジー
8. カラス
9. ハルルソラ
10. 祈り
[特典]
・CD-EXTRAで“祈り”のフラッシュコンテンツ収録
・amazarashi TOUR 2012『ごめんなさい ちゃんといえるかな』7月8日東京公演のUstream生配信視聴コードが可能なエクスクルーシブID封入
・スリーブケース仕様

amazarashi
『ラブソング』通常盤

2012年6月13日発売
価格:2,500円(税込)
Sony Music Associated Records / AICL-2381

1. ラブソング
2. ナガルナガル
3. セビロニハナ
4. ナモナキヒト
5. ハレルヤ
6. アイスクリーム
7. アポロジー
8. カラス
9. ハルルソラ
10. 祈り

プロフィール
amazarashi

青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2012年6月、2ndアルバム『ラブソング』をリリース。



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