高野修平×小藥元 記憶に残る広告に欠かせない、2つの要素を語る

三井ガーデンホテルズが昨秋、新たなキャンペーンスローガン「PRESENT LOVE.」を掲げ、「娘から母へホテルを贈る」という内容のショートフィルムを公開した。仕事を機に上京してきた娘が、忙しさのなかで忘れかけていた母との絆を取り戻す、そんな暖かいストーリーをMy Little Loverの“Hello, Again ~昔からある場所~ acoakko ver.”に乗せて描いた映像が、視聴者の涙を誘った。

情報過多社会において、人の記憶に残る広告を生み出すためには、どういった要素が重要なのだろうか? このキャンペーンを、戦略立案から企画、実行まで統括したトライバルメディアハウス内のエンターテイメントマーケテイングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」の高野修平と、高野とともにクリエイティブディレクター / プランナー / コピーライターを務めたmeet&meetの小藥元に、「心を動かす広告の作り方」について語り合ってもらった。

コピーライターというのは、かなりシビアな世界なんです。(小藥)

―高野さんには、先日感覚ピエロとの対談(感覚ピエロと高野修平に学ぶ、音楽とブランド広告の幸せな関係性)でもお話を伺ったので、今日はまず、「小藥さんってどんな人?」ということから伺いたいと思います。Family Mart「Fun&Fresh」やキレートレモン「なりたい人は、わたしの中にいる。」など、様々なブランドスローガンを手がけてきている小藥さんですが、肩書きとしては「コピーライター」でいいですか?

小藥:はい、「マーケティングの戦略を言語化するプロフェッショナル」という意味でのコピーライターだと自分では思っています。最近でいうと、ZOZOTOWNの「ツケ払い」という言葉はすごいコピーだと思うのですが、コピーライターというと、「その言葉の表層だけを取り出して、気の利いた一行や駄洒落を書く人」というイメージで終わってしまっていると思うんです。社会的な認識がまだまだ低い職業だなと、独立して感じています。

小藥元
小藥元

―世間的な「コピーライター」のイメージと、実際の仕事内容には、ギャップがあると感じているのでしょうか?

小藥:実際、街を歩けば8割くらいはどうでもいい「言葉遊び」のようなフレーズが溢れてはいます。あってもなくてもいい言葉です。けれど、本来のコピーライターの仕事は、「今、この企業やブランド、商品は、どういう状況下にあって、どんなコピーを用いることで、どう目立つのか、どの軸で勝てるのか?」ということまで考えなければならない。

企業やブランドの今や未来を提示する、いわば「柱」をつくる仕事も多いです。「単純にどうしたら売れるコンセプト、名前になるのか?」という依頼も。ビジネスのど真ん中に関わる仕事なので、仕事がいつも切実なんですよ。

―実際にやっていることは、コンサルタントに近いのですね。

小藥:コンサルタントであり、コンセプターでもあり、マーケターでもあると思っています。コピーライターは、ただ絵空事のコンセプトを提示する人ではなく、コンセプトという切り口をちゃんと最終のアウトプットに昇華できる、一人二役三役している職種なんです。

しかも、会議やプレゼンの席で、提示したコピーに対して「いや、それはもう考えたんですけど」とか、「すでに思いついていたアイデアです」とか言われてしまったら、僕の価値はゼロです。だからコピーライターというのは、かなりシビアな世界なんですよ。言葉は誰でも使えますし、言葉の数って増えませんからね。池袋PARCOのリニューアル時に作った「変わってねえし、変わったよ。」というコピーも、かなりギリギリの、ありそうでなかった言葉ということになるのかもしれません。

小藥元

―そんなシビアなコピーライターに、なぜなろうと思ったのでしょう?

小藥:2つあります。1つは、高校生の頃、クラスメートが交通事故で亡くなったとき、お通夜に行ってもリアリティーがなくて泣けなかったのですが、帰宅してテレビをつけたら明治生命(現・明治安田生命)のCMが流れていて、そこで使われていた小田和正さんの“言葉にできない”を不意に聴いた瞬間、号泣してしまったこと。そのときに「広告という存在があるんだ」と知りました。

2つ目は、辻仁成さんの『ガラスの天井』(集英社、1997年)という本があって、中身はもう覚えていないのですが、そのタイトルのフレーズの美しさに強く共感と心を掴まれた体験があったんです。こんなにシビアな仕事だというのは、会社に入って真剣にやるなかで初めて知ったことでした。

音楽は、「歌詞」と「メロディー」、そしてそれを歌う「人」という、3つの掛け算になるわけで、言葉1つのときよりも人に届くパワーがある。(小藥)

―そういう思いがあって、大学卒業後、2005年に博報堂に入社されたと。

高野:実は(小藥)元さんとは、15年来の付き合いなんです。当時、僕は映画監督志望の大学2年生で、映画学校に通いながら、いろんなところに赴いては「ノーギャラでいいので、映像を作らせてください」と営業をかけていて。そんななかで紹介されたのが、大学4年生の元さんでした。

以来ずっと仲良くさせてもらっていますが、お世辞でもなんでもなく、元さんは僕の憧れの人です。博報堂に入って1年目で『TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞』を獲得するのですが、それが「戦争を4度体験したジーンズ」という古着屋のコピーで。

小藥:よく覚えてるなあ(笑)。

高野:なぜ覚えているかというと、その古着屋さんへの営業に僕も連れて行かれたから(笑)。当時まだ無名のコピーライターだった元さんが、自分でカメラマンやデザイナーをアサインし、コピーを書いて『TCC』に応募して。それで賞を獲ったのを見て、「この人は本当にすごいな」と思ったんです。そのままどんどん先へ行ってしまったから、いつか絶対に一緒に仕事をしたくて頑張ってきたところもあるくらいです。

左から:高野修平、小藥元
左から:高野修平、小藥元

―小藥さんは、2014年に独立し、「meet&meet」を設立されたあと、Kis-My-Ft2“KISS & PEACE”の歌詞も手がけられていますよね。

小藥:最初は彼らのアルバム『KIS-MY-WORLD』(2015年)のコピーライティングを依頼されていたのですが、「KISS & PEACE」というコピーを提示したら、「そのタイトルで歌詞を書いてほしい」と言っていただいて。競合だったのですが(笑)。

―コピーを書くのと、歌詞を書くのは、近い感覚があるのでしょうか?

小藥:字数がほぼ決まっているメロディーに言葉をつけるというのは、コピーライティングの仕事とは違いましたね。なので、最初は戸惑いがありました。音楽というのは、「歌詞」と「メロディー」、そしてそれを歌う「人」という、3つの掛け算になるわけで、言葉1つのときよりも人に届くパワーがあると知ってしまいましたね(笑)。

たとえば、オバマ大統領が「Yes, we can」と言うのと、一般の誰かが「Yes, we can」と言うのとでは、言葉のパワーや重みが全然違うじゃないですか? 「その言葉を、誰が言うのか?」ということは、言葉を考える上ではすごく大事なんですよ。つまり、キスマイが歌うことで、受け取られ方がまったく変わってくるんですよね。

僕に求められているのは、伝えたいことを、伝わる言葉に変換することなんです。(小藥)

―では、お二人が初めて一緒に手がけることになった、三井ガーデンホテルズの施策について聞かせてください。

高野:三井ガーデンホテルズとのお仕事が始まったのは、今から2年前なのですが、今年キーワードとして挙げられていたのは「デジタル」と「将来の売上」でした。これまでの三井ガーデンホテルズは、OOH(交通広告や屋外広告など)やテレビCMなど、比較的オーソドックスな広告展開が主だったんです。

今回は「デジタル」を軸にリブランディングを展開すること、ホテルのブランドコピーにある「記憶に残るホテル」を今一度生み出していくこと、最後に「明日の売上」ではなく「将来の売上」を作っていくこと、それらを目的に一緒に活動させていただくことになりました。

左から:高野修平、小藥元

―その3つの目的を掲げた理由は、どういう背景があったからなのでしょうか?

高野:三井ガーデンホテルって、ある場所ではビジネスホテルだったり、ある場所ではラグジュアリーホテルだったりして、均一ではないんです。その土地に根付いたホテル作りをしていらっしゃいます。ただ、世間的には比較的ビジネルホテルのイメージが強く、それを変えたい。そのためには、広告のあり方も変えていきたいという思いがあったようでした。

それを聞いたとき、統合的なキャンペーンを実施するにあたって、出発点と帰着点となる言葉が必要になると思いました。じゃあ、誰にお願いしようという話になったとき、真っ先に元さんの顔が思い浮かんだんです。「ようやく一緒に仕事をする日がきました」と連絡しました(笑)。

雑誌広告「手書きのパン屋編」
雑誌広告「手書きのパン屋編」

―その「出発点」「帰着点」となる言葉が、「PRESENT LOVE.」になった経緯は?

小藥:僕に求められているのは、伝えたいことを、伝わる言葉に変換することなんです。同時に「企業の価値」と「生活者の価値」の両方を、常に探します。

三井ガーデンホテルズには、たくさん価値があるんですけど、本当に彼らが言いたいことってなんだろうと。何回か泊まらせてもらいつつリサーチしていくと、他のホテルよりも「きめ細かいサービス」が三井ガーデンホテルにはあったんですね。たとえばベッドメイキングひとつ取ってもそうですし、朝食のあとコーヒーがテイクアウトできるのもそう。様々な場面で上質なサービスを感じました。

―ホテル側からお客様に「PRESENT LOVE.」が実践されていることを、実体験として感じられたんですね。

小藥:それで、あるとき、娘さんとお母さんらしき人が、朝食を食べているのを見かけたんです。その風景が「すごくいいな」と思い、自分なりにストーリーを想像したんですよね。「上京して来た女の子が、お父さん、お母さんに対してホテルを贈る」というのはどうかなと。

きめ細かいサービスを伝えたいし、それを娘とお母さんのストーリーに落とし込みたい。なおかつ、修平と一緒に仕事をするなら「音楽」も効果的に使った企画を組み立てたい。その3つの要素の真ん中に置くことのできる言葉はなにかな? と考えたときに、「ホテルからお客様へ愛を贈る、お客様からお客様へ愛を贈る」という意味を込めて、「PRESENT LOVE.」が頭に浮かびました。

雑誌広告「黒い傘と透明な傘編」
雑誌広告「黒い傘と透明な傘編」

―そこから、映像を始め、いろいろな施策に広がっていったと。

小藥:僕は言葉を考えるとき、常に「言葉がどう広がっていくか?」ということを意識しています。もし「PRESENT LOVE.」という言葉を採用してもらえたら、そこからどんな展開が考えられるかまで、クライアントに説明するんです。たとえば、「母の日にこんなプロモーションプランを組み立てることもできますよ」とか。

そうすると、クライアントの頭のなかに、「PRESENT LOVE.」という言葉から様々な絵が浮かんでくる。言葉がどんどん一人歩きして、価値がどんどん高くなっていくわけです。それに加えて、「ありがとうを、会いたいに代えて。」「贈り物のようなサービスをこれからも。」という2種類の言葉も用意しました。

残念ながら「オールターゲット」でマーケティングしたものは、どのターゲットにも刺さらない。(高野)

―今回、テレビ・映画館・ウェブで流れたショートフィルム「PRESENT LOVE. FILM」の音楽に、My Little Lover(以下、マイラバ)を起用した経緯は?

高野:ホテルだから、当然、日本の方も外国の方もあまねく、老若男女に利用してほしいのですが、残念ながら「オールターゲット」でマーケティングしたものは、どのターゲットにも刺さらない。それはホテルに限った話ではありません。

なので、今回施策をやる前にワークショップなども実施して、関係者全員が納得できる解を見つけて走り出す必要がありました。その結果、今回の施策は「30代から40代の女性」を第一プライオリティターゲットと定めたんです。

―なるほど。

高野:それで考えたのが、デジタルとマスメディアを統合したキャンペーンの中心軸として「PRESENT LOVE.」という言葉があり、同時に「PRESENT LOVE.」を象徴する企画を1つ作る必要があるということ。それを中心に置いて、あらゆる文脈でキャンペーンを組み立てていこうと考えたんです。

結果、元さんと話し合い、「娘が母にホテルを贈る」というショートフィルム「PRESENT LOVE.FILM」を提案し、制作することになりました。で、その層にアピールする音楽を考えた結果、最も相応しいと思ったのがマイラバでした。

―相応しいと考えられた理由は、「時代性」だけではないと思うのですが、いかがでしょう?

高野:僕は、「30代から40代の女性」というターゲットをクラスタとして発想するのではなく、「30代から40代の女性」を言い換えるとどんな音楽やアーティストになるかという、「ターゲットの音楽化」といった手法を用いるんです。

今回は、ダイレクトにターゲットの心を動かすために、ショートフィルムの音楽が重要なピースとなると考えました。akkoさんの「女性として」「母」としての姿はきっと、ターゲットの方々には深く共感できるのではないかと。ありとあらゆるアーティストのなかで、マイラバが最も明確に浮かび上がってきたんです。

akkoさんも、ショートフィルムの脚本を読んで、「これは“Hello, Again”だね」って言ってくれていた。(高野)

―マイラバのなかでも、“Hello Again”を選んだ理由は?

高野:マイラバのすべての曲の歌詞を読んだところ、“Hello Again”がピッタリだったんですよ。有名な曲だから選んだわけでもなく、過去を回顧しているわけでもなく、ターゲットが動く音楽を追求して三井ガーデンホテルズのリブランディングに寄与する音楽、そして最も歌詞がフィットする曲が、これだったんです。

“Hello Again”を久しぶりに聴いて「懐かしいなあ」と思う気持ちと、物語の軸である母を思い出すことは似てると思ったし、まさに音楽は記憶を掘り起こすものなので、“Hello Again”から「記憶を呼び覚ます」といった心情を生み出せたらと思いました。そして、それはまさに“Hello Again”の歌詞にも表れています。

高野修平

―あえてリアレンジバージョンを起用したことには、なにか狙いがあったのでしょうか?

高野:今回、オリジナルバージョンではなく『acoakko』(2008年)に収録されたアコースティックアレンジがよかったんです。どんな広告においても、アレンジと、脚本の内容や世界観とのリンクの深度が重要になってくる。今回の「PRESENT LOVE.FILM」に関しては、音楽起点に脚本が生まれていった形となっています。アコースティックバージョンを聴いたとき、書いていた脚本が一気に花開いたのを覚えていますね。

そして、可能であれば、これをさらに突き進めて新しいバージョンとして世に出したいと思いました。三井ガーデンホテルズが新しくリブランディングするのと同様に、この国民的ソングも今一度新たに生まれ変わることで、相互の文脈や価値を強めることができるのではと。同時にマイラバのファンの人にも、「このアレンジは聴いたことがない」と驚いてもらえるものにしたかったんです。

―三井ガーデンホテルズとマイラバの両方にとって、価値を生み出せる方法を考えたと。

高野:マイラバの所属事務所である烏龍舎に行って、「リアレンジをお願いしたいです」と伝えたところ、マイラバとしても、「acoakkoバージョンを知っていてくれたことが嬉しい」と言ってくださって。akkoさんも、ショートフィルムの脚本を読んで、「これは“Hello, Again”だね」って言ってくれていたそうです。

しかも、タイミングよくマイラバがデビュー20周年で旧譜のリプロデュース作品(『re:evergreen』)をリリースしたり、ライブをしたり、まさに稼働する時期だったんですよ。企画を作っていると、ときどきこうやって、すべてのタイミングがバシッとハマる瞬間があるから不思議だなと思います。

「なるほど、発見、使える、便利、お得」といった論理的訴求と、「嬉しい、悲しい、泣ける、笑える」といった情緒的訴求の両輪が回ってこそ、意味がある。(高野)

―ショートフィルムの発信方法に関しては、どういった考えがあったのでしょうか?

高野:まず、シネアド(映画館でのCM)をやったのには、大きな理由がありました。映画館って、音楽と映像を見せるには、最高の場所なんです。ある調査によると、ブランド想起が最も高いのはシネアドと言われるくらいなので、あの大画面と音響、そして没入させる空間で「PRESENT LOVE.FILM」を上映することは、まさに「将来の売上」を作っていく上で重要だと考えました。ターゲットが観るであろう映画や上映劇場の選定なども気を配りましたね。

あと、映画館だけでなく、マイラバのビルボードライブ(ライブレポート:My Little Loverは更新していく。だからこそ変化しない名曲の輝き)も三井ガーデンホテルズとしてタッグを組ませていただき、大阪と東京の両方で、ライブの冒頭に映像を流させてもらったんです。akkoさんも泣いたと言ってくださって、嬉しかったです。

―ショートフィルムに対する世間の反応、反響を、どのように感じていますか?

高野:このショートフィルムを見た人が、すぐに「さあ、三井ガーデンホテルへ泊まりに行こう」とはならないかもしれない。特に今の時代は価格やスペックなどは、もはやコモディティ化してしまって、差別化要因は見出しづらい。でも多くの場合、「なるほど、発見、使える、便利、お得」といった論理的訴求(Information Marketing)と、「嬉しい、悲しい、泣ける、笑える」といった情緒的訴求(Heart Marketing)の両輪が回ってこそ、意味があるのかなと思っています。

そのなかで、今回で言うと「言葉」と「音楽」はその象徴でした。この「PRESENT LOVE.FILM」が見た人の記憶に残り、いつか友達や親御さんと旅行へ行くときなどに、「あ、そういえば」と想起してもらえればいい。そのために、まずはイメージ作り、ブランディングとしての打ち出しが必要だったんです。

―直接的な売上につなげるよりも、まずは「心を動かす広告」を打つ。それは、小藥さんが最初におっしゃっていた明治生命のCMに心を打たれたエピソードにも通じますよね。

小藥:確かにそれも大切なのですが、もうひとつ僕が意識したことは、三井ガーデンホテルで働く人たちが、その言葉にどれだけ動かされるか? それだけ信じられるのか? ということなんです。

小藥元

―というと?

小藥:ホテルスタッフの方々が、どれだけ自分たちのホテルに誇りを持てるか。また、日頃からのお客様へのサービスを「PRESENT LOVE.」とネーミングしたことで、仕事への向き合い方がどう変わっていくのか。いわば、インナーマッスルを鍛えるようなイメージなんですよね。

みなさんの心のなかに「PRESENT LOVE.」が、言葉でいちいち言わなくても浸透してくれたら嬉しいなと。コピーライターの仕事は、クライアントとそのお客様、両方が心から信じられる言葉を作ることなのだと今は思っています。

長く続いているブランドのCMを顧みると、音楽が世界観を構築していることが多いに気づかされます。(小藥)

―企業のイメージを変えるだけでなく、そのなかの人たちの意識改革まで行うわけだから、コピーライティングというのはものすごく重要であり、そこに音楽を掛け合わせることで、さらにパワーが生まれるわけですね。そういう意味で、高野さん率いるトライバルメディアハウスのModern Age/モダンエイジは、今後どのような役割を果たしていくと、小藥さんは思いますか?

小藥:僕が「言葉」を武器にしているように、修平は「音楽」が武器であり、それをベースにコミュニケーションを設計することができます。これまで「音楽」と「マーケティング」を掛け合わせるということを、標榜している人が実はひとりもいなかった。だから彼は今、注目を浴びているのではないかと思います。

長く続いているブランドのCMを顧みると、音楽が世界観を構築していることが多いに気づかされます。サントリーさんの「金麦」しかり、「そうだ 京都、行こう。」も自然とあのメロディーが聴こえてきますよね。それをコミュニケーションする力や、ダイレクトにコーディネートする力が、修平にはあるわけですから、それは強いですよね。

左から:高野修平、小藥元

―たしかに、印象深いCMは、音楽と言葉の両方が記憶に残っているケースが多いです。

小藥:それともう1つ、人と人って、結局は信頼関係や情熱でつながっているんですよね。「お前がそこまで言うなら信じるよ」と思ってもらえるのは、かなり有利になる。修平と仕事して分かったのは、明らかに修平が言うからマイラバも乗ってくれたということ。ちゃんと情熱が伝わっていて、それはすごいことだと思いました。

―高野さんが音楽の力を心から信じているからこそ、クライアントに対しても説得力があるのでしょうね。

小藥:そうだと思います。そういう説得力がなければ、プレゼンしたところで絶対に採用されない。今回のマイラバも、感覚ピエロのときも、その他もそうだと思うのですが、彼らの音楽のどこがいいのか、それがクライアントにどんなメリットがあるのか、ちゃんと説明ができる。だから、価値が重なる部分を相手も見出してもらえるのでしょうね。

情報大爆発の時代だからこそ、心に訴えかける最も強力な武器は「言葉」と「音楽」であるような気がしています。(高野)

小藥:あと、修平はデジタルに詳しいところも強みですよね。そこをカバーできるのは、クライアントにとっても心強いのではないかと。今回は、マスマーケティングだけではなく、デジタル中心に設計した果てにマスマーケティングがあった。この連動感や細かいケアがあってこそ、クライアントは安心するのではないかと思います。

高野:基本スタンスは「デジタル」ですが、今回はテレビCMや雑誌広告、シネアドなど、マスマーケティングの領域も元さんと一緒に実施することができました。

これからも、ブランドマーケティングと音楽マーケティングを掛け合わせることで、新しいマーケティングやコミュニケーションの形を作れたらなと思います。音楽を軸に、マスもデジタルも、王道も感覚ピエロと立命館大学のような飛び道具も、手法ニュートラル、メディアニュートラルで設計していきたいなと。ブランドと音楽の融合は、もっとたくさんの可能性があるのではないかと思っています。

左から:高野修平、小藥元

―デジタルとマスの融合が、今後ますます重要になっていくなかで、「音楽」と「言葉」の力こそ、欠かせない要素になっていくと。

高野:デジタルとマスの両方をやってみて思ったのは、デジタルが加速していく時代のなかで、「言葉」の力も「音楽」の力もますます高まっていくということ。つまり、より一層「言葉」と「音楽」はマーケティングにおいて重要な要素となってくる。

今回の施策において、ショートフィルムの他にもテレビCMや雑誌、シネアド、SNS、コンテンツマーケティング、ライブ、戦略PR、宿泊プラン、ホテルの部屋作りなど、まさにマーケティング全域をやらせていただいたなかで、「PRESENT LOVE.」という言葉が出発点であり、帰着点としてできたのはよかったです。まさに元さんの言う通り、言葉が広がっていった感覚がありました。情報大爆発の時代だからこそ、心に訴えかける最も強力な武器は「言葉」と「音楽」であるような気がしていますし、未来もあると思っています。

―今後もお二人からどんな「記憶に残る広告」が生まれるのか、楽しみにしています。

高野:今回、元さんを始め、多くのスペシャリストと組んで「PRESENT LOVE.」プロジェクトを手がけることができました。これからも「PRESENT LOVE.」は続いていきます。今年は始まりの年でしたけど、来期はもっと「PRESENT LOVE.」が広がっていくといいなと思います。

そして、またいろいろなプロフェッショナルな方と組んで、お客様の課題を解決し、誰かの人生を少しでも変えるようなものを作っていけたらいいなと思いますね。それが「広告」だと思います。

会社情報
Modern Age/モダンエイジ

マーケティングデザインカンパニー「トライバルメディアハウス」内にある、エンターテイメントマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」。音楽からエンターテイメント全般を支援するエンターテイメントに特化した日本初のマーケティングレーベル。エンターテイメント業界だけではなく、エンターテイメントを活用して、企業やブランド戦略やマーケティング支援も行う。これまでも多くのナショナルクライアントにエンターテイメントを融合させたマーケティングコミュニケーションをプロデュースしている。また、エンターテイメント業界では、テレビ局、音楽配信会社、音楽レーベル/メーカー、観光、スポーツ団体、アミューズメント施設など、デジタルにとらわれないメディアニュートラルでマーケティングコミュニケーションをプロデュースしている。

プロフィール
高野修平 (たかの しゅうへい)

エンターテイメントマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」レーベルヘッド。コミュニケーションデザイナー / クリエイティブディレクター。音楽を中心にエンターテイメント業界へのマーケティングを支援しつつ、ブランドとエンターテイメントを掛け合わせるコミュニケーションデザインが専門領域。日本で初のソーシャルメディアと音楽ビジネスを掛けあわせた著書『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代-』、『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』を執筆。メディア出演、講演、寄稿など多数。2014年4月18日に3冊目となる『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング-戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-』を上梓。また、THE NOVEMBERSのコミュニケーションデザイン、クリエイティブディレクターも担当している。M-ON番組審議会有識者委員。尚美学園大学非常勤講師。

小藥元 (こぐすり げん)

コピーライター。1983年1月1日生まれ。早稲田大学高等学院ー早稲田大学卒業後、2005年(株)博報堂入社。2014年8月「meet&meet」設立。meet Inc. 代表取締役。東京コピーライターズクラブ会員。これまでの主な仕事に、サントリーこくしぼりプレミアム「きょうは、幸福につかろう。」、JEANS MATE「ジーンズは、まだ青い。」、川崎市「Color's Future!いろいろって、未来。」、Family Mart「Fun&Fresh」、キレートレモン「なりたい人は、わたしの中にいる。」などのブランドスローガン開発、仙台PARCO2「オトナ考えるPARCO。」などのブランドコンセプト開発、Pana Home「artim」、モスバーガー×ミスタードーナツ「MOSDO!」、コメダ珈琲店「ジェリコ」などのネーミング開発など、数多くの言葉を軸としたコミュニケーション設計を手がける。企業のビジョン・ミッションステートメント開発も数多い。

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