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高野修平×小藥元 記憶に残る広告に欠かせない、2つの要素を語る

高野修平×小藥元 記憶に残る広告に欠かせない、2つの要素を語る

トライバルメディアハウス
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:矢島由佳子

akkoさんも、ショートフィルムの脚本を読んで、「これは“Hello, Again”だね」って言ってくれていた。(高野)

―マイラバのなかでも、“Hello Again”を選んだ理由は?

高野:マイラバのすべての曲の歌詞を読んだところ、“Hello Again”がピッタリだったんですよ。有名な曲だから選んだわけでもなく、過去を回顧しているわけでもなく、ターゲットが動く音楽を追求して三井ガーデンホテルズのリブランディングに寄与する音楽、そして最も歌詞がフィットする曲が、これだったんです。

“Hello Again”を久しぶりに聴いて「懐かしいなあ」と思う気持ちと、物語の軸である母を思い出すことは似てると思ったし、まさに音楽は記憶を掘り起こすものなので、“Hello Again”から「記憶を呼び覚ます」といった心情を生み出せたらと思いました。そして、それはまさに“Hello Again”の歌詞にも表れています。

高野修平

―あえてリアレンジバージョンを起用したことには、なにか狙いがあったのでしょうか?

高野:今回、オリジナルバージョンではなく『acoakko』(2008年)に収録されたアコースティックアレンジがよかったんです。どんな広告においても、アレンジと、脚本の内容や世界観とのリンクの深度が重要になってくる。今回の「PRESENT LOVE.FILM」に関しては、音楽起点に脚本が生まれていった形となっています。アコースティックバージョンを聴いたとき、書いていた脚本が一気に花開いたのを覚えていますね。

そして、可能であれば、これをさらに突き進めて新しいバージョンとして世に出したいと思いました。三井ガーデンホテルズが新しくリブランディングするのと同様に、この国民的ソングも今一度新たに生まれ変わることで、相互の文脈や価値を強めることができるのではと。同時にマイラバのファンの人にも、「このアレンジは聴いたことがない」と驚いてもらえるものにしたかったんです。

―三井ガーデンホテルズとマイラバの両方にとって、価値を生み出せる方法を考えたと。

高野:マイラバの所属事務所である烏龍舎に行って、「リアレンジをお願いしたいです」と伝えたところ、マイラバとしても、「acoakkoバージョンを知っていてくれたことが嬉しい」と言ってくださって。akkoさんも、ショートフィルムの脚本を読んで、「これは“Hello, Again”だね」って言ってくれていたそうです。

しかも、タイミングよくマイラバがデビュー20周年で旧譜のリプロデュース作品(『re:evergreen』)をリリースしたり、ライブをしたり、まさに稼働する時期だったんですよ。企画を作っていると、ときどきこうやって、すべてのタイミングがバシッとハマる瞬間があるから不思議だなと思います。

「なるほど、発見、使える、便利、お得」といった論理的訴求と、「嬉しい、悲しい、泣ける、笑える」といった情緒的訴求の両輪が回ってこそ、意味がある。(高野)

―ショートフィルムの発信方法に関しては、どういった考えがあったのでしょうか?

高野:まず、シネアド(映画館でのCM)をやったのには、大きな理由がありました。映画館って、音楽と映像を見せるには、最高の場所なんです。ある調査によると、ブランド想起が最も高いのはシネアドと言われるくらいなので、あの大画面と音響、そして没入させる空間で「PRESENT LOVE.FILM」を上映することは、まさに「将来の売上」を作っていく上で重要だと考えました。ターゲットが観るであろう映画や上映劇場の選定なども気を配りましたね。

あと、映画館だけでなく、マイラバのビルボードライブ(ライブレポート:My Little Loverは更新していく。だからこそ変化しない名曲の輝き)も三井ガーデンホテルズとしてタッグを組ませていただき、大阪と東京の両方で、ライブの冒頭に映像を流させてもらったんです。akkoさんも泣いたと言ってくださって、嬉しかったです。

―ショートフィルムに対する世間の反応、反響を、どのように感じていますか?

高野:このショートフィルムを見た人が、すぐに「さあ、三井ガーデンホテルへ泊まりに行こう」とはならないかもしれない。特に今の時代は価格やスペックなどは、もはやコモディティ化してしまって、差別化要因は見出しづらい。でも多くの場合、「なるほど、発見、使える、便利、お得」といった論理的訴求(Information Marketing)と、「嬉しい、悲しい、泣ける、笑える」といった情緒的訴求(Heart Marketing)の両輪が回ってこそ、意味があるのかなと思っています。

そのなかで、今回で言うと「言葉」と「音楽」はその象徴でした。この「PRESENT LOVE.FILM」が見た人の記憶に残り、いつか友達や親御さんと旅行へ行くときなどに、「あ、そういえば」と想起してもらえればいい。そのために、まずはイメージ作り、ブランディングとしての打ち出しが必要だったんです。

―直接的な売上につなげるよりも、まずは「心を動かす広告」を打つ。それは、小藥さんが最初におっしゃっていた明治生命のCMに心を打たれたエピソードにも通じますよね。

小藥:確かにそれも大切なのですが、もうひとつ僕が意識したことは、三井ガーデンホテルで働く人たちが、その言葉にどれだけ動かされるか? それだけ信じられるのか? ということなんです。

小藥元

―というと?

小藥:ホテルスタッフの方々が、どれだけ自分たちのホテルに誇りを持てるか。また、日頃からのお客様へのサービスを「PRESENT LOVE.」とネーミングしたことで、仕事への向き合い方がどう変わっていくのか。いわば、インナーマッスルを鍛えるようなイメージなんですよね。

みなさんの心のなかに「PRESENT LOVE.」が、言葉でいちいち言わなくても浸透してくれたら嬉しいなと。コピーライターの仕事は、クライアントとそのお客様、両方が心から信じられる言葉を作ることなのだと今は思っています。

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会社情報

Modern Age/モダンエイジ
Modern Age/モダンエイジ

マーケティングデザインカンパニー「トライバルメディアハウス」内にある、エンターテイメントマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」。音楽からエンターテイメント全般を支援するエンターテイメントに特化した日本初のマーケティングレーベル。エンターテイメント業界だけではなく、エンターテイメントを活用して、企業やブランド戦略やマーケティング支援も行う。これまでも多くのナショナルクライアントにエンターテイメントを融合させたマーケティングコミュニケーションをプロデュースしている。また、エンターテイメント業界では、テレビ局、音楽配信会社、音楽レーベル/メーカー、観光、スポーツ団体、アミューズメント施設など、デジタルにとらわれないメディアニュートラルでマーケティングコミュニケーションをプロデュースしている。

プロフィール

高野修平(たかの しゅうへい)

エンターテイメントマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」レーベルヘッド。コミュニケーションデザイナー / クリエイティブディレクター。音楽を中心にエンターテイメント業界へのマーケティングを支援しつつ、ブランドとエンターテイメントを掛け合わせるコミュニケーションデザインが専門領域。日本で初のソーシャルメディアと音楽ビジネスを掛けあわせた著書『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代-』、『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』を執筆。メディア出演、講演、寄稿など多数。2014年4月18日に3冊目となる『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング-戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-』を上梓。また、THE NOVEMBERSのコミュニケーションデザイン、クリエイティブディレクターも担当している。M-ON番組審議会有識者委員。尚美学園大学非常勤講師。

小藥元(こぐすり げん)

コピーライター。1983年1月1日生まれ。早稲田大学高等学院ー早稲田大学卒業後、2005年(株)博報堂入社。2014年8月「meet&meet」設立。meet Inc. 代表取締役。東京コピーライターズクラブ会員。これまでの主な仕事に、サントリーこくしぼりプレミアム「きょうは、幸福につかろう。」、JEANS MATE「ジーンズは、まだ青い。」、川崎市「Color's Future!いろいろって、未来。」、Family Mart「Fun&Fresh」、キレートレモン「なりたい人は、わたしの中にいる。」などのブランドスローガン開発、仙台PARCO2「オトナ考えるPARCO。」などのブランドコンセプト開発、Pana Home「artim」、モスバーガー×ミスタードーナツ「MOSDO!」、コメダ珈琲店「ジェリコ」などのネーミング開発など、数多くの言葉を軸としたコミュニケーション設計を手がける。企業のビジョン・ミッションステートメント開発も数多い。

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