コラム

紅白出場の櫻坂46、『Nobody's fault』が描く未来への一歩

紅白出場の櫻坂46、『Nobody's fault』が描く未来への一歩

テキスト
原友昭
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

グループの「新生感」を打ち出す始まりの楽曲“Nobody's fault”

それが表題曲であるという意味において櫻坂46の始まりの楽曲である“Nobody's fault”は日本語にすると「誰のせいでもねえ」を意味する。センターに選ばれた森田ひかるは、欅坂46時代にも2019年末の『CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ 2019 → 2020』での“黒い羊”と、今年10月にリリースされた欅坂46のベストアルバム『永遠より長い一瞬 ~あの頃、確かに存在した私たち~』の収録曲“10月のプールに飛び込んだ”でセンターを任せられており、2期生の中で唯一センターを経験している。

冒頭から<この世界を変えようなんて><自惚れてんじゃねえよ>とべらんめえ口調で畳み掛ける“Nobody's fault”では、<勝手に絶望してるのは 信念がないからだってもう気づけ!>といった命令形や、<生き方を改めようなんて できるわけないって逃げるのか?>といった疑問形、いずれも二人称もしくは自分自身に向けた歌詞と共鳴するようなダンスに、ロングスカートの特性を活かした振付を採り入れるなど、ミリタリー風制服の膝丈スカートや、パンツルックが特徴的だった欅坂46に対してビジュアル面での変化も見られる。

森田ひかるがセンターを務める櫻坂46“Nobody's fault”MV

「自由への渇望と絆」をテーマに佐渡島で撮影された“Nobody's fault”のMVは、「薄明」「船の汽笛」といった「始まり」をイメージさせるモチーフにはじまり、<もう一度 生まれ変わるなら>という歌詞にあわせて衣装が制服からロングスカートに切り替わり、欅坂46のオマージュと思しきシーンを盛り込みながら、最後は青空のもと櫻の花びら舞う坂道を駆け上がっていく、というように「新生感」を打ち出している。胸元で作る三角形のポーズは、11月29日に配信された菅井友香の『SHOWROOM』によると「坂道から未来を覗いている」という意味が込められているという。

森田ひかる個人PV『革命前夜』予告編(櫻坂46『Nobody's fault』TYPE-D収録)

「全員で、輝ける、未来へ。」のメッセージと呼応する“なぜ 恋をして来なかったんだろう?”

「なぜ」と「恋」の間の「 」が“Nobody's fault”の歌詞<一つが残る椅子取りゲーム>における「椅子」のように見えなくもない“なぜ 恋をして来なかったんだろう?”のMVでは、鐘の音と共に櫻の花びら舞う螺旋階段を舞台に、<まるで盛りのついた猫だ>と恋することを<今までずっと バカにしてた><私>が恋をしましょうと、疾走感ある楽曲と共に<微笑み>を振り撒きながら、<盛り上がり中>の<私>をときに冷笑的な眼差しで眺め、ときにマリオネットように佇む周囲をやがて笑顔にしていく姿が描かれる。<私>が周囲を解放していく姿は欅坂46の“アンビバレント”を彷彿とさせる。

藤吉夏鈴がセンターを務める櫻坂46“なぜ 恋をして来なかったんだろう?”MV

MV後半部、カメラワークが瞬時に切り替わり、中盤では眠っていたメンバーたちを「主人公」のように次々と映し出していくシーンは、<恋は主人公になるべきよ><そばで見ている観客より><幸せは 参加すること>、つまり、観客であるより積極的に主人公であれ、という歌詞内容と呼応して、「全員で、輝ける、未来へ。」に通じるエールになっているように見える。『EX大衆』2021年1月号の増本綺良へのインタビューによるとMVではひとりひとりキャラクターが設定されていたというが、「全員で、輝ける、未来へ。」の未来とは、誰か、何か、によって与えられるのではなく、「輝く」が自動詞であるように各々が自ら主人公になることによって辿り着くことのできる場所なのだろう。

藤吉夏鈴個人PV『藤吉さんを笑わせたい』予告編(櫻坂46『Nobody's fault』TYPE-C収録)

進化していくグループの先を見据える“Buddies”

最年少15歳の山﨑天がセンターを務める“Buddies”のMVでは、<真っ青な空><季節の風><花の香り><緑の木々><漏れる日差し><大地>といった歌詞が表す「自然」と、新宿や渋谷に聳える高層ビルという「人工物」とが、「反射するビルの窓」「ビルの窓から漏れる明かり」「太陽の逆光」「蛍光灯」「白い衣装」「薄明」「床の返照」「川の照り返し」「夕日」「笑顔」といった「光」の属性の多用によって、まさしく“Buddies”が「仲間」を歌うように調和している。

調和の中、<生きよう><歩こう><未来へ>と繰り返し歌われることで、ここからよりよい未来へと向かってもう一度新たな物語が始まることを予感させる“Buddies”のMVは、ドローン空撮による映像の雄大さもあって、10月18日深夜放送の『そこ曲がったら、櫻坂?』で「変化ではなく進化していきたい」と語った山﨑天のグループ全体を見渡すような頼もしさを描いているようである。

山﨑天がセンターを務める櫻坂46“Buddies”MV

“Nobody's fault”との関係で言えば、“Nobody's fault”の<この世界を変えようなんて>の世界が「悪い状態の世界」、“Buddies”の<Yo! 世界は何も変わっちゃいない>の世界が「よい状態の世界」であるとするならば、“Buddies”の「世界」とは、“Buddies”の衣装が「未来的」であるように、“Nobody's fault”の三角ポーズから見える未来なのかもしれない。<全てを奪った嵐は もう通り過ぎた>のだ。

山﨑天個人PV『蒼天』予告編(櫻坂46『Nobody's fault』TYPE-C収録)

あらゆる色となる可能性を秘めた、未来を切り開く「白」

ここまで見てきた3曲は異なる表現方法においてそれぞれの色を出しながら、いつの日か満開となった未来へと向かう第一歩を描いていると言えるだろう。グループカラーの何色にでも染まれる「白」とは、やがて赤だとか青だとか緑だとかの特定の色に染まるのではおそらくなく、あらゆる色となる可能性を内に秘めながら、新たな挑戦の中で新たな色となることで未来を切り開いていく、そういう「白」なのだろう。

『第71回NHK紅白歌合戦』では、井上梨名と関有美子が出演した12月21日放送の『ゆうがたパラダイス』によると26人全員で“Nobody's fault”が披露される。26人でパフォーマンスされる“Nobody's fault”が櫻坂46のどのような色を見せてくれるのか、同放送で「櫻坂の全員で出るという意味をみなさんにお伝えできたらいいなと思います」と語った関有美子の言葉を噛み締めながら当日を待ちたい。

櫻坂46ロゴ
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