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プロはどうやって聴いている?知って得する音楽リスニングガイド

曽我部 恵一

オーディオテクニカが40年間の開発技術を集結して作った高解像度再生ポータブルヘッドホン「ATH-MSR7」の発売を記念してスタートするこの連載企画。第1回にお迎えしたのは、弾き語り、バンド、ときにはフィーチャリング参加と、さまざまな形態で音楽活動を行い、レーベル「ROSE RECORDS」のオーナーとしても音楽を世に送り出している曽我部恵一さん。その数々の作品はCDだけでなくレコードが作られることも多く、作品によってはハイレゾ配信や、CD-Rでリリースが行なわれることもあります。レコード愛好家としても知られる曽我部さんは、いちリスナーとしてはどのように音楽を捉えているのでしょうか。時代によって移り変わってきたリスニング環境も踏まえつつ、これまでとこれからの音楽との付き合い方をお伺いし、小さな工夫でより音楽を深く味わえるリスニング方法を教えてもらいました。テキスト:タナカヒロシ 撮影:豊島望

曽我部 恵一(そかべ けいいち)

1971年生まれ、香川県出身。ミュージシャン。ROSE RECORDS主宰。ソロだけでなく、サニーデイ・サービスなどで活動を展開し、歌うことへの飽くなき追求はとどまることを知らない。プロデュースワーク、執筆、CM・映画音楽制作、DJなど、その表現範囲は実に多彩。下北沢のカフェ兼レコード店CITY COUNTRY CITYのオーナーでもある。2014年10月21日、サニーデイ・サービスとして4年半ぶりのニューアルバム『Sunny』をリリース。

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オーディオテクニカ「ATH-MSR7」とは?

音楽を愉しみたいすべての人たちへ。
オーディオテクニカ独自の音響テクノロジーを結集し、ハイレゾ音源が正確に再現可能。開発者たちによって「いい音とは何か?」について考え抜かれ、「原音再生」「高解像度」「高レスポンス」が徹底追及されたポータブルヘッドホン。

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21歳で気付いた「音質」の価値

曽我部さんが初めて自分のお小遣いでレコードを手にしたのは中学1年の頃。その記念すべき1枚は、ロックバンドの代名詞的な存在であるThe Rolling Stonesだったそうです。さすがミュージシャン! と思わず唸ってしまうチョイスですが、実はこんな裏話が。

曽我部:その頃からすでに、ミュージシャンとか、画家とか、アーティストになろうと思ってたんですよ。だから、後々「最初に買ったレコードは?」と訊かれるだろうなと思って、1枚目はThe BeatlesかThe Rolling Stonesにしようと思ったんです(笑)。それでレコード屋さんに行って、どっちにしようか迷ったときに、ジャケが不良っぽくてかっこよかったThe Rolling Stonesのベスト盤を選びました。

中学2年でSex Pistolsなどのパンクロックと出会った曽我部さんは、それまでエンターテイメントとして聴くものだと思っていた音楽が、精神的な部分と結びついた表現であるということを知って価値観が一変。友達とパンクロックのコピーバンドを始めることになります。その後、大学進学で上京し、在学中にサニーデイ・サービスを結成。21歳でデビューしてから、楽曲の「音質」にも意識を向けるようになったそうです。

曽我部:もともとは、ラジオで流れる曲をカセットに録音して聴くことに満足しちゃってた世代だから、音質を意識したことはなかったんです。気にするようになったのはプロになってから。それまでは普通の「レコーディングスタジオ」で録ったら、誰でもかっこいい音になると思っていたんですよね。でも、それがいまいち思い通りにならない。それで「はっぴいえんどのこの音はどうやって作るんだろう? なんでこの人たちみたいにかっこいい音にならないんだろう?」と思って、調べ始めたんです。

自分の「好きな音」を探す道中に
味わい深い音楽の嗜み方が見つかる

それからはリスナーとしても、部屋に吸音材を貼ったり、家具の位置を変えたり、「いい音」を追求して試行錯誤するようになり、それは現在も続いているという曽我部さん。しかし、いちプレイヤーとしてリスナーにどんな環境で音楽を聴いてほしいか質問をすると、意外な答えが返ってきました。

曽我部:あの、何でもいいですね。こだわる人はこだわればいいし、お金をかけなくても「好きな音」っていうのがあればいいと思うんです。結局、いい音っていうのは人それぞれですから。美しい、美しくないの判断が人それぞれであることと一緒で、絶対的なものはないんですよね。ガレージで録っているような作品でも、「音質は最悪だけど、このレコード最高じゃん」っていうものも世の中にはいっぱいあるから。

言われてみれば、好きな絵や好きな服が人それぞれ異なるように、いい音が人それぞれなのは当然のこと。ましてや音楽は自分が楽しむもの。どんな音で聴いても、誰かに迷惑をかけるものでもありません。先の愚問に代わって、曽我部さんがどんな音楽の聴き方で楽しんでいるのか、質問させてもらいました。

曽我部:ここ数年は、好きなレコードを当時の最初のプレスで聴きたいという欲求になってきてて、ファーストプレスを集めたりしてますね。あと、ステレオとモノラルがあったらモノラルを探す。特に1960年代後半あたりはモノラルの末期で、作り手もモノラルで育っているから、本人たちはモノラルのミックスで作品を最終確認するんですよね。これは自己満足の世界かも知れないけど、「俺はこれだけ好きなんだぞ」っていう喜びもあるし、アーティスト本人がOKを出したであろう音で聴きたいんです。

その一方で、高音質音源として近年話題のハイレゾも楽しんでいるという曽我部さん。

曽我部:この前、Yes(1969年デビューのプログレッシブロックバンド)のハイレゾ音源を聴いたんですけど、「こんなにいい音で作ってたんだ!」っていう強烈な驚きがあったんです。ハイレゾはレコーディング段階からレートの高い、高音質で録音しているイメージがあったんですけど、テープで録音してた昔の作品でも、マスターテープの状態がいいものをハイレゾ音源にすると、すごい再現度で、レコーディング現場にいるような体験ができるんですよね。アナログのオリジナル盤とはまったく違う楽しみがありました。

レコードとハイレゾ、正反対な聴き方に感じるかもしれませんが、「どちらもあって初めて文化的にいい状態」だと曽我部さんは言います。そのいい例が、曽我部さんも衝撃を受けたニール・ヤングの作品だったそうです。

曽我部:今年『A Letter Home』というカバー集が出たんですけど、コインを入れてメッセージを録音するとその場でレコードが出てくるという、1940年代にアメリカで流行った機械のなかでレコーディングしているんです。だから音質はものすごく悪いんですけど、これがすごくいい。それとは別に、そのブースのなかに別のマイクを置いて、きれいな音で録ったものも高音質でダウンロードできるようになっていて、両方を楽しめるんですよね。いまのリスニング環境を逆手に取ったエンターテイメントだなと思いました。

作り手にとっても、聴き手にとっても
「好き」を選べる状態こそが成熟文化の賜物

曽我部さん自身も今年9月、氷の洞窟での弾き語りを録音したハイレゾ音源『氷穴EP』をリリース。その一方で、10月にサニーデイ・サービスでリリースしたアルバム『Sunny』は、CD、配信、レコードの3形態でリリースしました。作り手としては、現在の音楽環境に対して、どのようなことを感じているのでしょうか。

曽我部:確かにハイレゾの音質は素晴らしいですけど、やっぱりレコードのよさもあるし、これで世の中がハイレゾ一辺倒になるかといえば、そうはならないと思います。でも、そこを俯瞰して見られているいまは、文化として成熟しているんじゃないかな。選べる状態であってほしいですよね。たとえばライブって2時間とかやったりするから、CD1枚(最大80分収録)には入らない。それはハイレゾで配信しても面白いかもしれないし、作り手にとってはいろんな可能性が見えますよね。

作品によって最適な方法で聴かせていきたいという曽我部さん。今後はそうした想いも汲み取りながら作品を聴けば、より音楽を聴く楽しみが増すに違いありません。

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