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あの人の音楽が生まれる部屋

パスピエ

緻密に構成されたマジカルでポップな楽曲、顔を見せない謎めいたビジュアルイメージ、そして、1度聴いたら耳に焼き付いて離れない女性ボーカルの声が魅力の5人組バンド、パスピエ。ドビュッシーの楽曲から取ったという、不思議な響きを持つバンド名と共に、その存在は日本の音楽シーンの中で急速に大きくなっています。芸大出身のキーボーディスト、成田ハネダさんがすべての楽曲を手がけ、ボーカルの大胡田なつきさんがアートワークを担当。一見、どこにも隙のないコンセプチュアルなパブリックイメージから、「突然現れた謎の頭脳音楽集団」などと評されることも多い彼らですが、実は数々の紆余曲折を経て今に至ります。幼い頃から自分の表現方法を模索していた大胡田さん、クラシックとロックの融合に試行錯誤を繰り返していた成田さん。そんな二人はどのようにして出会い、パスピエという世界観を作り上げたのでしょうか。都内某所にある彼らのリハーサルスタジオを訪ね、その道のりについて語ってもらいました。

テキスト:黒田隆憲 撮影:豊島望

パスピエ

パスピエ

2009年に成田ハネダ(Key)を中心に結成。バンド名はフランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。卓越した音楽理論とテクニック、1970年代~2000年代まであらゆる時代の音楽を同時に咀嚼するポップセンス、ボーカルの大胡田なつきによるMusic Clipやアートワークが話題に。2011年に1stミニアルバム『わたし開花したわ』、2012年に2ndミニアルバム『ONOMIMONO』をリリースし、ロングセールスを記録中。2013年3月に初のシングル『フィーバー』をリリースし、6月にメジャー1stフルアルバム『演出家出演』を発表。2015年7月、通算4枚目のシングル『裏の裏』をリリース。12月22日には武道館ワンマンを控えている。

http://passepied.info

漫画家を目指していた大胡田と
クラシックピアノ少年だった成田

パスピエの機材

静岡県出身の大胡田なつきさんと、神奈川県出身の成田ハネダさん。二人はそれぞれ、幼い頃からピアノを習うなど音楽に親しんでいました。大胡田さんは音楽だけでなく、絵を描くのも大好きだったそうです。

大胡田(Vo):小学校の頃は、漫画家になりたいと思ってました。親が手塚治虫の作品を集めていたので、『ブラックジャック』とかを読んでましたね。その頃から「表現」には興味があって、「自分にとっての表現方法は漫画だろう」って当時は思ってました。

成田(Key):僕は姉がピアノを弾いているのを見て、自分もやってみたいと思って5歳のときに習い始めました。大学に入るまではクラシック一辺倒で、コンクールや大会にもたくさん出場しました。みんなが野球やサッカーをやっていた頃に、僕はずっと家でピアノの練習。なので学生時代の悔いとしては、部活動をやっていないことなんです。ピアノを辞めようと思ったことは、1度もなかったですね。それが自分の存在価値というか、「自分の表現方法ってこれだよな」って思っていたんでしょうね。

成田をクラシックの違和感から解放させた
ロックの魅力とは?

大胡田(パスピエ)

高校を卒業し、東京藝術大学に合格した成田さん。音楽学部器楽科でピアノを専攻し、ベートーヴェンやバッハの楽曲を演奏するなど、相変わらずクラシック漬けの日々を過ごすはずでした。しかし、大学1年目の冬に友達と『COUNTDOWN JAPAN』へ行き、ロックの洗礼を受けたのです。

成田:ピアノを始めて15年以上経ち、なんとなくクラシックの現状に対する疑問を感じていたんですよね。僕は「自己表現」としてピアノを演奏してきたし、それをいろんな人たちに届けたいと思ってやっていたはずなのに、「なぜクラシックのコンサートって全員がドレスアップしなきゃいけないんだろう」とか、「クラシックだと、作曲家に比べて演奏家の知名度はなぜこんなに低いんだろう」とか、そんなことを考え始めていたんです。そのタイミングでロックに出会い、「ああ、こういう自由な表現方法があるんだ」と。ロックミュージシャンは、それぞれオリジナル曲を持っていて、切磋琢磨し合いながらフェスで共演しているわけじゃないですか。その場に自分も入っていきたいって強烈に思ったんです。

一方、大胡田さんは、高校卒業後に上京したものの、しばらくは自分自身の表現方法について模索していました。上京のきっかけは、「東京で一旗揚げよう」といった野心ではなく、都会という未知な場所に身を投じることで、何かやりたいことが見つかるのではないかという思いからでした。そんな大胡田さんの「アウトプットへの強烈な希求」はどこから来るのでしょうか。

大胡田:私は小さい頃から人と接したり、話したりすることが結構苦手で……。いつも幼稚園に「行きたくない!」って泣き叫んでいたらしいんですね(笑)。その頃に、言葉以外で人に気持ちを伝えられる手段って何かないかなと思って、初めて手にした表現が絵を描くことだったんですよ。そこで初めて人に受け入れられたというか、賞を獲ったり、友達に「上手だね」って言ってもらったりしたことで、「こうやってコミュニケーションが取れるんだ」と思えた。それが動機になっているのかもしれないですね。

成田が大胡田に抱いた第一印象は
「アバンギャルド過ぎる」

成田(パスピエ)

CDショップでふと手に取ったNUMBER GIRLのアートワークと、彼らのサウンドに惹かれた大胡田さん。それまで書きためていた歌詞を「バンドで歌いたい!」と思い立ってバンド活動を始めた頃、成田さんもまた、クラシック畑からロックシーンへと身を投じていました。しかし、失敗と挫折が続きます。バンドを組んでデモテープを制作し、レコード会社とつながりができても、思うようなライブができずに話は頓挫。グルーヴの生み出し方やセットリストの組み方、ステージ上での身体表現など、クラシックとは全く違うロックの難しさを痛感していました。そんな二人が一緒にバンドを組むことになったのは、成田さんが新たなボーカルを探していたときでした。

成田:その前にも1度会っていたんですけど、そのときは大胡田の佇まいがあまりにもアバンギャルド過ぎて、お断りしたんですよ。なんていうか……「自分を分かってくれないやつとは関わらない」オーラが出てた(笑)。

大胡田:すみません(笑)。都会に出てきたばかりで、みんなが敵のように見えて……そんな時期があったんです。

成田:そのあと、「バンドを組むのはこれが最後にしよう」と思ったときに、今度は僕の方から大胡田を誘いました。やっぱり、どこか引っかかってたんですよね。声もものすごく特徴的だし、自分には足りないフロントマンとしての存在感もあって。あと、天然そうに見えて(笑)、意外と色々考えてる。「今、自分はこの位置にいて、こういうことをやったら面白いんじゃないか」みたいな自己プロデュース能力が彼女にはあった。だから今もこうして続いているんじゃないかと思いますね。

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