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HARAJUKU PERFORMANCE +(PLUS)鼎談

HARAJUKU PERFORMANCE +(PLUS)鼎談

テキスト
但馬智子
写真:小林宏彰

いまはもうリアルというのはみんなあまり追求していなくて、やはり演劇として何が本当に面白いかというのをみんな考えてる(柴)

:『HARAJUKU PERFORMANCE+(PLUS)』でやる『反復かつ連続』は2年前ぐらいからやっている作品で、時間や構造を自由にいじっていいんじゃないかという発想でつくった初めての作品です。役者も、最初からずっと同じでもう3年ぐらいやっているのですが、これからも長くやっていけたらいいな、と思っています。

女の人の一人芝居で家族の朝食風景をやるという、これもさほど新しくない感じですが、いちど時間をバラバラにして、一人で5人の登場人物を演じています。ナマで見ると本当に5人が見えているような気になってくる。その5人のレイヤーが重なっていく感じが、見ている人に想像しながら楽しんでもらえるし、最後には、だれもいなくなった舞台にも人がいるように見えたりする…そういう作品なんです。

『反復かつ連続』
『反復かつ連続』(撮影/青木司)

和田:僕が『反復かつ連続』を見て、いいなと思ったのはまさに最後のシーン。最後におばあちゃんが出てきますが、それまで音という要素が前面に出ていたのに、最後に音では表現されないレイヤーが登場する。日常的な風景の中に、目に見えないレイヤーが存在するということにハッとさせられました。会話をパーツに分けてレイヤーとして見る面白さだけで見ればそれまでですが、そこに日常世界を組み込んできたことに演劇性というかリアルなメッセージがあるということを僕は感じた。

小沢:「リアル」という言葉を、ここ数年演劇業界では重要なこととして捉えていたようだけど、「演劇は本当にリアルじゃなければいけないのか?」、という問いかけはしてもいいんじゃないかと考えています。「リアル」という言葉をどう定義づけるか、という問題はあるにせよ、ここでは現実をトレースし、そしてそれを表象代行していくということを「リアル」と言うならば、別にそのことだけが演劇が向かうべき方向ではないんじゃないかなという気もしているんですよ。

:「リアル」論争をやるとたいへんなことになっちゃうと思うんですが(笑)、ここ数年の流れのひとつには、やっぱり前の時代からの反動があったんだと思うんです。演劇のダイナミズムに依ったものが前の時代には多くて、僕がちょうど演劇をやり始めた数年前ぐらいからその反動が起こってきて、もっと演技が生身で感じられる感覚とか、ナマで見ている世界の面白さを演劇で伝えられないのかということをみんな模索していた。いまその成果がだんだん実ってきているだと思うんです。で、逆にいまは、日常では大声で叫ばないけど舞台で大声で叫ぶのって面白いよね、とか、飛び跳ねる人間の身体や能力みたいなものって可能性があるよね、とかみんな思ってるんじゃないか。でも、かといって別に大声でしゃべる演劇には戻らなくて、自分たちが持っている生身の感覚を無視しないで、一方で遠い絵空事とすることもなく、なにか接点があるようにつくる。それなら演劇としてできるなと。だから、いまはもうリアルというのはみんなあまり追求していなくて、やはり演劇として本当に何が面白いかというのをみんな考えてる。で、結果的にすごくリアルにはできるんだけど、あえてちょっと変な部分を残していたり、リアルっぽいけどリアルじゃない芝居が増えてきているんじゃないかと思います。

HARAJUKU PERFORMANCE +(PLUS)鼎談

僕は携帯やパソコンなどテクノロジーが好きなんですが、パソコンがあることによって、演劇でできることが単純に増えるなと思うんです。『反復かつ連続』は、パソコンがあって、音楽を編集するソフトや録音するマイクも安く買えて、そういうのがあったからできた作品とも言えます。もちろんなかったらなかったで別のことを考えたかもしれませんが、身近なテクノロジーの発達によって、奇跡や魔法みたいなものを目の前で見せたいという欲求が満たせる気がするし、単純にメカが増えることでやれることがどんどん増えていく感じがする。

あと、僕たちの世代は、YouTubeなどのおかげで過去のものも現在のものも一緒くたに見ることができる。過去の作品もたったいま生まれた作品もぜんぶ同じで、いまここあるものとして並列になるし、過去のものも新しい感覚として見たり見せたりすることができる。つまり、和田さんのオープンリールなどがパソコンと合体することによって、もう一回復活するというか、新しい感覚として見せることもできる。テクノロジーのおかげでなんか面白くなってくるな、というのがありますね。僕の作品はとくにPCやメカがあってはじめて発想ができる作品なので、素直にこの年代に生まれてよかったなあと思います。

和田:そうですね。僕は、70年代のロックも大好きだし、近年のエレクトロニカも好きでよく聴いていますが、古い/新しいという感覚が溶解して、純粋にいいなあと思うものとして並列に存在している。

小沢:つまり、はじめからすべてが並列にあるものとして生きている世代ということですか?

和田: 並列もそうですが、もうひとつには継承だと思うんです。僕は過去に生まれたさまざまな、自分が「かっこいい」と思うものに影響を受けている。それは音楽だったり映画だったりするんですが。それと同時に、いまの世の中に新しい道具や概念がどんどん出てきたときに、その過去の「かっこいい」ものにそれらを取り入れていくと、突然新しい感覚みたいなものが誕生したりする。つまり、過去のいいものを継承しつつ、そこにそれまで関係なかったものがコラージュされ、ドッキングされていくということで、既存のものの寄せ集めから自分の表現をつくるひとつのブリコラージュとでも言えるものが生まれるんです。これとこれが結びつくなとか、関係を見つけて組み合わせていく楽しさ、そしてそこからものを生み出す感覚というかチャンスが、情報時代の僕らの世代にはあるんじゃないかなあと思います。

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イベント情報

HARAJUKU PERFORMANCE + (PLUS) 2009
『HARAJUKU PERFORMANCE+2009』

2009年12月19日(土)、20日(日)、22日(火)、23日(水)
会場:ラフォーレミュージアム原宿

ロマンチカ・スペシャル公演
横町慶子 SOLO ACT VOL.01『かわうそ』

2009年12月19日(土)19:00
2009年12月20日(日)15:00 / 19:00
作・演出:林巻子
主演・振付:横町慶子
音楽監督:菊地成孔
声の出演:田口トモロヲ
料金:前売4,000円 当日4,500円

ロマンチカ・スペシャル公演
横町慶子 SOLO ACT VOL.01『かわうそ』

2009年12月19日(土)19:00
2009年12月20日(日)15:00 / 19:00
作・演出:林巻子
主演・振付:横町慶子
音楽監督:菊地成孔
声の出演:田口トモロヲ
料金:前売4,000円 当日4,500円

『パフォーマンスライブ』

2009年12月22日(火)19:30
2009年12月23日(水)13:00 / 18:00
出演:
黒田育世
はむつんサーブ
生西康典
contact Gonzo
トーチカ
柴幸男
Open Reel Ensemble
山崎広太
料金:前売3,500円 当日4,000円

主催:ラフォーレ原宿
企画制作:ラップネット、日本パフォーマンス/アート研究所
キュレーター:小沢康夫(日本パフォーマンス/アート研究所)

プロフィール

柴幸男<

1982年生まれ。愛知県出身。劇作家・演出家・ままごと主宰。青年団演出部所属。日本大学芸術学部在学中に「ドドミノ」で第2回仙台劇のまち戯曲賞を受賞。日常の機微を丁寧にすくいとる戯曲と、ループやサンプリングなど演劇外の発想を持ち込んだ演出が特徴。全編歩き続ける芝居(「あゆみ」)、ラップによるミュージカル(現代口語ミュージカル「御前会議」)、一人芝居をループさせて大家族を演じる(『反復かつ連続』)など、新たな視点から普遍的な世界を描き出す。東京を拠点に、地方公演やワークショップ活動など精力的に行っている。

和田永

1987年生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科在籍中。旧式のオープンリール式テープレコーダーを楽器として演奏するパフォーマンス・グループ 「Open Reel Ensemble」を主宰する一方、ミュージシャンとしても活動し、ギター、ピアノ、打楽器、電子楽器を演奏する。各種楽器を駆使して音楽/音響作品を多数制作。新作のパフォーマンス作品「Braun Tube Jazz Band」で第13回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞。

小沢康夫

プロデューサー、日本パフォーマンス/アート研究所代表。2003年、企画制作会社プリコグ設立。2008年に代表を退き、後進に譲る。同年、日本パフォーマンス/アート研究所を設立。コンテンポラリーダンス、現代美術、現代演劇、メディアアート、音楽など既存のジャンルにこだわることなく、独自の観点でプロデュースする。ラフォーレ原宿30周年企画「HARAJUKU PERFORMANCE + Special」、金沢21世紀美術館「二十一世紀塾」、美学校「超・日本・パフォーマンス論」、ヨコハマ国際映像祭2009オープニングパフォーマンス「停電EXPO」、「Postmainstream Performing Arts Festival 2010」など。

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