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「都市の野生」を描く 淺井裕介インタビュー

「都市の野生」を描く 淺井裕介インタビュー

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:小林宏彰
2010/09/27

マスキングテープとペン、土、ときには葉っぱやホコリをも使い、都市空間に自由奔放に描かれる自然の姿。淺井裕介による生命力あふれる『マスキングプラント』や『泥絵』シリーズは、空間をダイナミックに変容させ、かつその場に宿る何かを浮かび上がらせる。『あいちトリエンナーレ2010』では、かつて日本の3大繊維問屋街のひとつと言われた長者町に登場。不況の波にさらされつつ再生に挑む地域で、象徴的な3つの場所に新作を出現させた。実はその前年に始まっていたこの街との関係、そして制作の舞台裏や、共同制作などを経てつかんだ最新の創作姿勢について聞いた。

(インタビュー・テキスト:内田伸一 撮影:小林宏彰)

まず、これから何かが起ころうとしているのを伝えたかった

─淺井さんは『あいちトリエンナーレ2010』では、古くからの繊維業の街を舞台に新作を発表しています。でも、実はすでに昨年もこの街で作品をつくっていたんですよね。

淺井:はい。トリエンナーレのプレイベント『長者町プロジェクト2009』で、去年の秋に初めてこの街を訪れました。そのときも3ヶ所で作品をつくったんです。このときはトリエンナーレ前の催しなので、街を大きく変えてしまうことなく、まず、これから何かが起ころうとしているのを伝えられたらと思いました。だから比較的「迎え入れるような作品」になった気がします。

「都市の野生」を描く 淺井裕介インタビュー
《室内森/粘土神》2009 撮影:山田亘

─そのときの3つの場所と作品について話してもらえますか?

淺井:まず「純喫茶クラウン」は、創業58年でいまも70歳のおばあちゃんが地元の人のために開いているお店です。ここにテープとペンで『マスキングプラント』の花や木をいくつか控えめに描きました。お客がくつろげる素敵な雰囲気の場所なので、それを壊さないよう、もともとあるテーブルやポスターから僕の描く植物が生えてくるような感じで……。2つ目の「繊維卸会館」では、以前は呉服問屋だった畳の間で、壁一面にテープや粘土で森を描きました。3つ目は通りからよく見える街中のビルの外壁に、窓枠から伸びる『マスキングプラント』を描いたものです。

「都市の野生」を描く 淺井裕介インタビュー
《マスキングプラント・クラウンの樹》2009 撮影:山田亘

─各ロケーションは自分で選んだのでしょうか。

淺井:まず街を歩いて見て回った後に、ここでやれたらと思う場所をリクエストしました。展示室っぽい所よりも、街なかにはみ出していたり、この街の特徴を表したりしている場所がよかった。例えば、周りの建物が更地の駐車場になってしまった結果、むき出しでヌケのあるビルの壁面などが目に止まりました。

─そのひとつを使ったのが先ほどの、ビルに描いた『花窓』という作品ですね。

淺井:はい。命綱のようなロープを付けて窓から外へ体を伸ばし、どの方向にも指先が届く限界まで身体全身を使って描きました。だから出来上がりを見ると、描いた範囲が正円に近いんですけど、自分の手って思っていたより遠くまで届くものだなと感じました。描いた線が植物のように限界を超えて伸びて行くというか。これまでも色々な場所で描いてきたけど、足場を組むとコンディションはどこも同じになってしまうと思っているので、それよりもこの場所の声に答えるように何かをつくってみたかったんです。

「都市の野生」を描く 淺井裕介インタビュー
《花窓》2009 撮影:山田亘

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イベント情報

『あいちトリエンナーレ2010 / Aichi Triennale 2010』

淺井裕介作品展示
2010年8月21日(土)〜10月31日(日)
展示場所:長者町会場の以下3ヶ所
・長者町繊維卸会館 11:00〜19:00(金曜日のみ11:00〜20:00)
・喫茶クラウン 7:00〜17:00(土日祝日は休み)
・丹羽幸株式会社ミクス館 南側空地 18:00〜深夜

プロフィール

淺井裕介

1981年、東京生まれ。1999年に神奈川県立上矢部高等学校 美術陶芸コースを卒業。在学中の壁画制作をきっかけに独学で絵画を始める。テープとペンを自在に操って描く植物画『マスキングプラント』や、現地で採取した泥や土を使用した壁画『泥絵』シリーズなど、屋内外のさまざまな場所に身近な素材を用いて奔放に絵を描いている。『VOCA2009展 大原美術館賞』受賞。

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