特集 PR

「見えないものを見る」ためには 八谷和彦インタビュー

「見えないものを見る」ためには 八谷和彦インタビュー

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:小林宏彰
2011/07/01
  • 0

他人の目から眺めたこの世界や、伝説上の生き物たち、または見知らぬ誰かの綴る日常の独白。いずれにも共通するのは、本来は「見えないもの」だということ。八谷和彦はそれらを人びとに体感可能なメディアアートとして世に送り出してきた。彼の作品のなかでもコミュニケーションツール的なシリーズに位置づけられるこれらの試みはしかし、本人いわく「わかりあえない、という事実をわかりあう」地点からスタートしているという。想像するのが楽しいものもそうでないものも含め、「見えないもの」があふれるこの時代。6月2日から、SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアムにて開催中の展覧会『魔法かもしれない。-八谷和彦の見せる世界のひろげかた-』で、彼は何を見せてくれるのだろう。

肉眼では無理でも、何かを通せばそこにあるものが見えてくる

─まずは最新個展『魔法かもしれない。-八谷和彦の見せる世界のひろげかた-』について教えてください。「見えないものを見る」がコンセプトだとか。

八谷:最初に、この会場に合う展示として自分の作品でどんなものができるかを考えました。この映像ミュージアムには、僕の個展会場にいたるまでのフロアにも、映像の技術史にまつわる常設展示があるんです。その流れに沿う意味も込め、「ディスプレイ」を意識して構成しました。

「見えないものを見る」ためには 八谷和彦インタビュー
八谷和彦

─ディスプレイって、「見えないものを見る」というより、テレビはもちろんスマートフォンなど、いまや日常生活の「見る」行為に溶け込んだ存在では?

八谷:そうですね。でも今回は、頭に装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使ったり、赤外線の電光掲示板システムや液晶の原理を利用した「Invisible display」とでも言うべきもの――肉眼では無理だけど、何かを通せばそこにあるものが見えてくる仕組み――を使ったりしています。

─それらがどれも「見えないものを見る」体験型作品というわけですね。

八谷:僕のデビュー作とも言える『視聴覚交換マシン』は、HMDを使って文字通りふたりの体験者の視覚と聴覚をリアルタイムで入れ替えるものです。今回は、決まった時間帯(水、土、日曜、祝日)に実体験できます。実際に装着してハグし合ったり、ジャンケンしたり、以前はキスチョコを互いに食べさせるっていう課題にトライしてもらったこともあります。

視聴覚交換マシン体験ワークショップ風景
視聴覚交換マシン体験ワークショップ風景

─未来の飲み会ゲームかも(笑)? 異性同士でトライすれば、小説やマンガの永遠のモチーフ「男女入れ替わりモノ」の現実版みたいなことにもなりそうです。

八谷:もともとは1993年に生まれた作品で、今回は現在の機器を使ったリメイク版です。いまならテレビ電話やiPhoneのFaceTimeを利用しても似たようなことができちゃいそうですが、ゴーグルをつけて本来の視覚を完全に遮断したうえで…というのはやはり独特の体験になると思いますよ。

─視聴覚が入れ替わったまま触り合えるというのも、楽しい反面、身体感覚からアイデンティティを直接揺さぶられそうでもあります。

八谷:誰とやるのかによっても、感じ方が異なる体験になるでしょうね。以前、ふたり組のいっぽうに、車椅子の方が参加したこともあります。車椅子でしかできない技って言うのかな、クルクル回転したりして、相手の人はびっくりしていました(笑)。逆にその車椅子の人は、立って歩くときの視界の揺れを「この感覚久しぶりだ~」と楽しんでいましたね。

2/3ページ:「わかりあえやしない、という事実をわかりあう」が出発点

Page 1
次へ

イベント情報

『魔法かもしれない。―八谷和彦の見せる世界のひろげかた―』

2011年6月2日(木)~9月4日(日)
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム
時間:9:30~17:00(入場16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日) ※8月15日(月)は臨時開館
料金:大人500円 小中学生250円(常設展示も観覧可)

ホリデー•ワークショップ
『視聴覚交換マシンを体験しよう』

会期中の水・土・日曜日、祝日に開催
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム3F 未来映像ゾーン
時間:13:00~16:00
料金:無料(要映像ミュージアム入館料)
定員:20組40名(先着順)

夏休み特別ワークショップ
『自分だけの「フェアリーファインダー」を作ろう』

2011年8月14日(日)13:00~16:00
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム3F ワークショップルーム
定員:10名(小学生~中学生対象・小学校低学年は保護者同伴)
料金:無料(要映像ミュージアム入館料)

アーティストトーク

2011年8月28日(日)14:00~16:00
会場:埼玉県 川口市 SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ1F HDスタジオ
出演:八谷和彦
定員:100名
料金:無料(要映像ミュージアム入館料)

プロフィール

八谷和彦

1966年佐賀県出身。発明の日(4月18日)生まれのメディアアーティスト。九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)画像設計学科卒業。コンサルティング会社勤務時代から個人TV放送局『SMTV』などのユニークな活動を行う。その後独立し作家活動を本格化させる。『視聴覚交換マシン』をはじめとするコミュニケーションツール・シリーズ、またパーソナルフライトシステム『オープンスカイ』などに見られる、映画・アニメに登場する夢の乗物を具現化したようなものなど、機能を持った発明品的作品が多い。メールソフト『ポストペット』の開発者でもあり、関連ソフトウェア開発とディレクションを行なうペットワークス社取締役も務める。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

edda“不老不死”

<私というバケモノが 生まれ落ち>というフレーズで始まる、不老不死の主人公の悲しみや無力感から死を願う楽曲のPV。歌うのは、その歌声に儚さと透明感を同居させるedda。ファンタジックながらもどこか暗い影を落とす楽曲世界と、ドールファッションモデルの橋本ルルを起用した不思議な温度感のある映像がマッチしている。(山元)