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決して安住しないダンスの求道者 北村明子インタビュー

決して安住しないダンスの求道者 北村明子インタビュー

インタビュー・テキスト
乗越たかお
撮影:西田香織
2012/09/10

自分とは違う存在と本気で向かい合って作品を作っていく

―そもそも今回の『To Belong – dialogue -』プロジェクトは、どんなきっかけで始まったんですか?

北村:私自身が、7年前からインドネシアの伝統武術であるプンチャック・シラットを習い始めたというのもありますが、2010年頃から、私が教鞭を執っている大学の研究も兼ねて、インドネシアの伝統舞踊に関わる人々をインタビュー取材して回っていたんですね。その時に出会った人の中でピンと来たのが、今回出演するダンサーのマルチナス・ミロトでした。彼はインドネシアの伝統舞踊の重鎮、さらにコンテンポラリーダンスのパイオニアでもあるサルドノ・W・クスモという人の弟子で、80年代にはインドネシアのコンテンポラリーダンスの旗手と言われた人です。話を聞いていると、彼も新しい挑戦に大変意欲的で、私もレニ・バッソを休止して、これまでと違う人たちとやらなければ意味がないと思っていましたので、コラボレーションの話が進んでいきました。

©Witjak Widhi Cahya
©Witjak Widhi Cahya

―コラボレーションは初めからうまくいきましたか?

北村:Skypeで打ち合わせをしている間は快調でしたが、実際に稽古場で会って、身体を動かし始めると苦難の連続でした(笑)。言葉だけで話している間はコンセプトを理性的に話し合えるんですけど、身体の動きとなると、もう理性とは全く違うんですね。たとえば私は常に身体と空間の関係性を考え、「身体一つでパッションに至る」という作り方はこれまでしてこなかった。でもインドネシアの伝統舞踊では、「神々と身体の統一」というのが、ダンスにとって外せない大きな要素としてあります。だから私が振り付けを提案するとミロトは「ここには心がない。これはダンスじゃない」ということになるわけですよ(笑)。

―その溝は埋まりそうですか?

北村:本当に大変な思いをしていますが(笑)。だけどこうやって自分とは違う存在と本気で向かい合って作品を作っていくというのが、このプロジェクトの意義でもあります。今でやっと70%くらいまできたかな、という感じですが、この先作品がどんどん変化しながら完成していくことが自分でも楽しみです。

©Witjak Widhi Cahya
©Witjak Widhi Cahya

―今回ドラマトゥルク(作品に関する資料的なリサーチやアドバイスを担当する人)としてインドネシアの音楽家スラマット・グンドノの名前がありますね。

北村:グンドノさんとの出会いは大きかったですね。彼は本来パフォーマーなのですが、「ダラン」という語り部でもある方です。ユーモアの中に毒を混ぜて、社会風刺をするような歌を即興で歌ったりもします。彼の歌と演奏を初めて聴いたとき、言葉の意味もわからないのに何故か号泣してしまったんですよ。これまでの自分のダンス作品はテーマから出発して、物語性を排除したある意味抽象的な世界を作ってきましたが、今回は「ダンス創作をインドネシアの土地で聞いた語りから始めてみたい」と思い、ダランとして活躍するグンドノさんとのコラボレーションが重要だと感じました。今作品では映像での出演になります。

―他の出演者はどういった方たちですか?

北村:もう一人のインドネシアのダンサー、リアントは、バニュマス地方の五穀豊穣を願う「レンゲル・ダンス」の舞踊家です。彼は華やかな女形、ダイナミックな男形、さまざまなキャラクターの踊りをこなします。そしてリチュアル(儀式、祭礼的)なトランスダンスも彼の踊りの背景としてとても重要な要素です。日本人の出演者は、「カンパニー マリー・シュイナール」などで活躍中の今津雅晴さん、04年以降のレニ・バッソにずっと出演してくれていた三東瑠璃さん、ニューヨーク留学からもどった新進気鋭のダンサー西山友貴さん、という、実力のある方々ばかりです。

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イベント情報

インドネシア×日本 国際共同制作公演
『To Belong ―dialogue―』

2012年9月21日(金)〜9月23日(日)
会場:東京都 三軒茶屋 シアタートラム
料金:一般3,500円 当日3,800円

2012年9月25日(火)OPEN 19:40 / START 20:00(受付開始19:15)
会場:兵庫県 新長田 Art Theater dB Kobe
料金:一般 2,500円 当日 2,800円 学生 2,000円

構成・振付・演出:北村明子
ドラマトゥルク:石川慶
音楽・音楽監修:森永泰弘
音楽提供:スラマット・グンドノ
出演:
北村明子
マルチナス・ミロト
今津雅晴
三東瑠璃
リアント
西山友貴

プロフィール

{アーティスト名など}

振付家・ダンサー、信州大学人文学部准教授。早稲田大学入学後、ダンスカンパニー「レニ・バッソ」を結成。95年文化庁派遣在外研修員としてベルリンに留学。2003年『Enact Oneself』が、『The Independent Weekly』紙、ダンス・オブ・ザ・イヤーに選ばれたほか、代表作『finks』が、モントリオール『HOUR』紙、05年ベストダンス作品賞を受賞。海外のダンスカンパニーへの振付も意欲的に行うほか、演劇、映画、オペラなど他ジャンルへの振付も行っている。2010年からソロ活動を開始。11月Artzoyd企画、マルチメディアコンサート『The Black Particles』(CENTRE D'ENGHEIN LES BAINSにて世界初演)への振付・出演し、ダンサー、振付家として高い評価を得ている。

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