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導かれてここまで来た 窪塚洋介インタビュー

導かれてここまで来た 窪塚洋介インタビュー

インタビュー・テキスト
島貫泰介
2013/07/08

自分を表現するいろんな手段が目の前にあるから、その瞬間に最大限遊ぼうとしている。

―イサム・ノグチはとても複雑な人生を歩んできた芸術家です。特に第二次世界大戦前後はアメリカと日本の狭間で自分のアイデンティティーを求めていた。窪塚さんの初主演作である『GO』も、若者が2つの国の間で自分の居場所を探す映画でしたが、今回イサムを窪塚さんが演じるというのは、運命的な気がします。

窪塚:『GO』も、朝鮮と日本の間で揺れる話でしたね。こないだ、スヌープ・ドッグのドキュメンタリーを観てたんですけど、スヌープがボブ・マーリーについて語っていて。ボブ・マーリーの生い立ちもイギリスとジャマイカの板挟みなんですよ。

―お父さんとお母さんの国籍が?

窪塚:そうです。ジャマイカに来たイギリス人の金持ちが地元の女の子をつかまえて、ボブ・マーリーが生まれるんだけど、すぐに親父はいなくなっちゃう。葛藤の中で、音楽だけが彼の心のよりどころだった。イサムにしても、手先が器用で、彫刻の天才とかミケランジェロの再来とか学校で言われてたけど、第二次世界大戦になると自分から日本人の抑留所に志願して入る。でも、日本人からは「こいつスパイなんじゃないか」と言われて、ここにはいられないと思ったら、アメリカ人からは「お前は日本人なんだから、いろ!」と言われて、出してもらえなかった。いろいろ不条理な目に遭わされた中で、表現することや、生きてることを世の中に刻むってこと、そういうところにさらによりどころを見つけるのかなと。

―日本でもアメリカでもなく、芸術によりどころを見つけたんですね。

撮影:尾嶝太
撮影:尾嶝太

窪塚:俺はボブ・マーリーやイサムのように国籍に関する葛藤はないけど、共鳴できるところがある。「役者がレゲエDJやりやがって」とか「なんで役者が歌ってんだよ」とか言われるんですけど、そういうこと自体がパワーになるというか。戦争があるから反戦するパワーが生まれてくるみたいに、葛藤とかネガティブなものもプラスに変えていけるし、それは大きい力になるから。

―陰と陽みたいな関係ですね。

窪塚:そういうバランス感覚は、きっとイサムにもあったと思うんです。彼の美術作品を見ると、空間を把握するセンスがすごく高い人だから、目に見えるものと目に見えないものとのバランスも、絶対取っていたはずで。対マスとか、対時代とか、形のないものに対する感性がすごく研ぎ澄まされていたと思うんですよ。父親(野口米次郎)も、西洋と東洋の融合を標榜していて、イサムはある意味申し子みたいに生まれてきましたよね。『iSAMU』の準備はこれから始めるところだけど、もっと彼のエピソードに触れたいし、実際に作ったものも出来る限り生で見たいと思ってます。まだ1冊の本も読んでない。

―最近イサムの作品に光が当てられる機会が多くあって、『ET IN ARCADIA EGO 墓は語るか』(武蔵野美術大学 美術館・図書館)や、『サイト―場所の記憶、場所の力―』(広島市現代美術館)などの展覧会でも、軸になる作家として紹介されています。

窪塚:いま展示が見られるんですか?

―はい。イサムってやっぱり変わった人で「爆撃で大地を彫刻して、公園を作りたい」とか言ってるんですよ。例えば『クロノス』っていう彫刻作品では、ギリシャ神話に登場する神さまをモチーフにしていますが、『クロノス』は自分の権力を子どもに奪われるという予言を受けて、5人の息子を食べてしまうという神話が土台になっている。イサムが「父との葛藤」という主題に反応して作品を制作したことも、運命的なものを感じますよね。しかも、この作品を作った年は父親の野口米次郎が亡くなった年でもあって。

窪塚:イサムのエピソードを読むと、父親が結構冷たい感じですよね。イサムと母親が日本に訪ねてきたときには、もう別の家庭を持っていたでしょう?

―その一方で、米次郎は母親のレオニーに仕事を紹介したりもしていて、結構複雑な関係なんですよ。さらに父親だけでなく母親も強烈で、真っ当な仕事に就こうとしていたイサムに「お前は芸術家になれ」と言っていたらしくて、両親の間で板挟みになっていた。イサムって、結果的に日本人にもアメリカ人にもなれなかったという感じがします。それを反映しているのか、ニューヨークにある『レッドキューブ』とか、作品もすごくアンバランスな構造のものが多い。

窪塚:面白い人ですよね。やっぱりそういう風に作品に出てきちゃうんですね。

―表現者としていろいろな要素を抱えていた人だなと思います。窪塚さん自身も、「窪塚洋介」っていう名前だけじゃなくて、「卍ライン」だったり「空水」だったり、いろんな名前を持っていますよね。共感する部分がありますか?

窪塚:イサムって、彫刻も庭もデザインもやってましたけど、何をやるにしても、たぶん自分の中で切り替えてなかったと思うんですよ。ただ咲く花が変わっているだけで、根っこは実は一緒というか、この根っこにこんな花も咲くんだ、花が咲かないのもあるんだ、っていう感じだったと思うんですよね。俺もそれにすごく近くて。1つのマインドを持った自分がいて、そこに映画があったり、舞台があったり、レゲエDeeJayがあったり、映像ディレクションがあったりするけど、別にそんなに切り替えてるわけじゃない。すごくシンプルに言うと、大事なのは自分がドキドキ出来るかっていうところだから。そういうとらえ方でいうと、ノグチもきっと分けてないですよね。自分を表現するいろんな手段が目の前にあるから、その瞬間に最大限遊ぼうとしている。

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イベント情報

パルコ劇場40周年記念 パルコ・プロデュース公演
『iSAMU〜20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語〜』

原案・演出:宮本亜門
脚本:鈴木哲也、宮本亜門
出演:
窪塚洋介
美波
ジュリー・ドレフュス
小島聖
大森博史
ボブ・ワ―リー
犬飼若博
神農直隆
植田真介
天正彩
池袋遥輝
ほか

東京公演
2013年8月21日(水)〜8月27日(火)全9公演
会場:東京都 渋谷 パルコ劇場(渋谷パルコパート1 9F)
料金:一般7,800円 U-25チケット4,000円(25歳以下対象)

神奈川公演
2013年8月15日(木)〜8月18日(日)全4公演
会場:神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 ホール
料金:S席6,800円 A席4,500円 高校生以下割引1,000円(枚数限定) U24チケット3,400円 (24歳以下、枚数制限、S席のみ) シルバー割引6,300円(65歳以上、枚数限定)

高松公演
2013年8月30日(金)19:00開演(18:30開場)
会場:香川県 サンポートホール高松 3階 大ホール
料金:一般6,000円 会員5,500円

プロフィール

窪塚洋介(くぼづか ようすけ)

1979年生まれ。俳優、歌手。1995年テレビドラマ『金田一少年の事件簿』でデビュー。2000年ヒットドラマ『池袋ウエストゲートパーク』での怪演で注目される。映画『GO』では史上最年少で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。2006年から卍LINEの名義でレゲエDeejayとしても活動。アルバムを4枚リリースしている。2010年1月蜷川幸雄演出『血は立ったまま眠っている』で舞台初挑戦。2013年8月、宮本亜門演出による舞台『iSAMU』に出演予定。今年秋には映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』が控えている。

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一聴・一見すると繊細に織られたアンサンブルに柔和な印象を抱く。が、極太のベースがリズムとメロディの両方を引っ張っていく様は超アグレッシヴでもある。観客も含めて会場に漂う空気は一貫して緩やかなものでありながら、なによりも3音の鋭い合気道を存分に楽しめるライブ映像だ。ビルドアップした低音に歌心を置くスタイルはまさに今だし、音の余白も心地いい。ポップとエッジィの両極をあくまで愛嬌たっぷりに鳴らす台湾出身の3ピースバンド、その魅力を1カット1カットが十二分に伝えている。(矢島大地)

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