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幸せを掴むための覚悟 ネイチャーフォトグラファー・山形豪

幸せを掴むための覚悟 ネイチャーフォトグラファー・山形豪

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:高見知香
2013/11/22

アフリカの大自然と野生動物との営みを、一瞬のシャッターチャンスを逃さず捉えるネイチャーフォトグラファー・山形豪。過酷な自然に生きる動物たちの伸び伸びとした姿態や緊張感に溢れた表情は、都会に暮らす私たちがけっして目にすることの出来ない美しさに満ちている。

日本に生まれながら、日本人には馴染みの薄い第三世界、アフリカを中心に海外生活を営んできた山形豪は、なぜネイチャーフォトグラファーになったのか。野生動物たちを撮った写真で、私たちに何を語りかけようとしているのか。フジフイルム スクエアで開催中の写真展『生(ライフ)〜写真がとらえる野性〜』への参加を機に、世界を股にかけて活躍する写真家の視点から、失われゆく世界の大自然と日本の今、動物を撮るということについて、お話を聞いた。

ネイチャーフォトは日本に限らず、それだけで食べていくことはほぼ不可能なんです。

―アフリカの大自然や動物を撮影する、ネイチャーフォトグラファーの方にインタビューさせていただくのは初めてなので、今日は興味津々でお話を伺わせていただきます。

山形:あはは、そうですか。こちらこそ、お手柔らかにお願いします(笑)。

―今、山形さんは、日本とアフリカをどの程度の間隔で行き来されているんですか?

山形:僕の場合、だいたい1年のうち9か月は婚礼カメラマンなどの仕事で取材費を蓄え、残りの3か月でアフリカに行って、すっからかんになって帰ってくる、その繰り返しです(笑)。ネイチャーフォトは日本に限らず、それだけで食べていくことはほぼ不可能なんです。そんなに作品が売れるジャンルでもありませんし、1枚撮るためにかなりのお金と時間が掛かります。たとえば、南アフリカに3か月撮影に行くと、100万円くらいの経費が必要ですが、撮った写真を全国誌の見開きグラビアに使っていただいても、数十分の一が回収できるかどうかなんですよね(苦笑)。

喉を潤すチャクマヒヒ マシャトゥ動物保護区/ボツワナ ©山形豪
喉を潤すチャクマヒヒ マシャトゥ動物保護区/ボツワナ ©山形豪

―そうなんですね。逆にそんな環境でもアフリカでの撮影を続けられている山形さんに興味が湧いてくるのですが、経歴を拝見すると、幼少からのほとんどを中米やアフリカといった第三世界の国で暮らされていて、日本にはいなかったという……。

山形:はい。生まれは群馬県ですが、父親が昆虫学者で、JICA(国際協力機構)で働いていまして、2歳半から幼稚園までを中米のグアテマラで過ごしたんです。で、小学校入学前に一度日本に帰国した後、入学式の翌日くらいには再びグアテマラに飛び立ち(笑)、さらに3年ほど過ごしました。小学4年生で東京に戻りましたが、5年生の後半からは、今度は西アフリカのブルキナファソ、中学3年間はトーゴでした。トーゴは元フランスの植民地で、国中を見渡しても日本人がほとんどいない国。さらにそこの田舎で、地元のキリスト宣教団の学校に通い、フランス語で授業を受けていました。

山形豪
山形豪

―いずれも、日本ではあまり聞き馴染みのない国ばかりですが、そんな中、高校受験からは日本に戻られたそうですね。でも、大丈夫だったんですか……?

山形:いや、もう大変でしたね(笑)。中学3年の夏に帰国して、東京の公立中学に転入したんですが、育ってきた環境が全然違うから完全に浮いているし、どうしても異質なものとして扱われるから、いじめも酷いし。受験シーズン真っ盛りだから、学力的にも全くついていけない。で、これからいったいどうするんだ? ということになり、唯一進学できそうだったICU高校(国際基督教大学高校)に進学したんです。

―ICU高校は、帰国子女の人が生徒の大半をしめる学校ですよね。

山形:ただ、ICUのような環境でも、僕は全く馴染めませんでした(笑)。帰国子女とはいえ、ほとんどがアメリカやイギリス帰り、せいぜい西ヨーロッパかオーストラリアです。いじめこそありませんでしたが、第三世界の国で育ってきた僕とは、そもそも価値観が全然違った。また、スペイン語とフランス語しか話せなかったので、生徒の多くが日常的に英語を話す環境には、どうしても馴染めず。そんな感じだったので、大学に進学する気にもなれず成績も最低レベル。常に違和感を感じていましたね。

イカナゴを巣に持ち帰るニシツノメドリ ファーン諸島/イングランド ©山形豪
イカナゴを巣に持ち帰るニシツノメドリ ファーン諸島/イングランド ©山形豪

―日本という単一化された世界の中では居場所がなくて、本当に苦痛だったんですね。

山形:まさにそうでしたね(苦笑)。でも、高校3年の終わり頃、父親のタンザニア赴任が決まったんです。物心ついたときからずっと昆虫学者の父について遊んでいたので、世界のどこにいようと自然さえあれば楽しかった。ところが日本には居場所だけでなく、その自然すらない。将来のビジョンも持てなかった僕は、「アフリカに戻れる」という一心で、喜んで父についていきました。ネガティブな日本での思い出、その反動が僕をアフリカに駆り立てたんですね。

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イベント情報

『FUJIFILM SQUARE 企画写真展「生(ライフ)〜写真がとらえる野性〜」』

2013年11月15日(金)〜12月4日(水)
会場:東京都 六本木 東京ミッドタウン・ウェスト フジフイルム スクエア
時間:10:00〜19:00(入館は18:50まで)
出展作家:
鍵井靖章
前川貴行
松本紀生
山形豪
料金:無料

『写真でとらえる野性』トークショー
2013年11月30日(土)14:00〜15:30(開場13:30)
会場:東京都 六本木 東京ミッドタウン・ウェスト フジフイルム スクエア2F
出演:
鍵井靖章
前川貴行
松本紀生
山形豪
定員:150名(要事前予約)
料金:無料

プロフィール

山形豪(やまがた ごう)

1974年、群馬県高崎市生まれ。少年時代を中米のグアテマラや西アフリカのブルキナファソ、トーゴといった国々で過ごす。1993年国際基督教大学高校を卒業後、タンザニアへ渡り、現地のインターナショナルスクールでIB(インターナショナル・バカロレア)を履修する傍ら自然写真を撮り始める。1995年イギリス、イーストアングリア大学開発学部入学。在学中も休みを利用して何度も東アフリカを訪れる。1998年大学を卒業し帰国。フリーの写真家として活動を始める。2000年以降、頻繁にアフリカ南部を訪れ、野生動物や風景、人々の写真を撮り続けながら、サファリのガイドとしても活動中。近年ではインド亜大陸にもフィールドを広げている。日本自然科学写真協会(SSP)会員。2005年『エプソンカラーイメージングコンテスト』ヒューマンライフフォト部門グランプリ受賞。

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