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生ける伝説の素顔に迫る 喜多郎インタビュー

生ける伝説の素顔に迫る 喜多郎インタビュー

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:高見知香
2013/12/25

『銀河鉄道999』のときから松本零士先生のファンでした。『1000年女王』のサントラを作り終えたときは、車の中で聴きながら何度も泣きましたよ(笑)。

―僕は今年44歳なんですけど、喜多郎さんを意識したのはアニメ映画『1000年女王』のサントラが最初なんです。

喜多郎:あれは、自分でもすごく好きな作品なんです。『銀河鉄道999』のときから松本零士先生のファンでしたから。当時、僕はサントラを作り終えて、映画本編の音声のみのトラックを譲ってもらったんですね。要はセリフと音楽、それからSEだけの音源なんですけど、それを車の中で聴きながら何度も泣きましたよ(笑)。あのサントラは、メインテーマが出来上がったときから、映像が音楽に引っ張られていくような、そんな感覚がありました。そうなると、何分の1秒単位で映像と音楽を合わせるとか、そんな細かいことをしなくても映像の方が勝手に音楽に合ってくるんですよね、ホントに(笑)。

―そういった手応えは、ゴールデングローブ賞で作曲賞を獲得した、オリバー・ストーン監督の『天と地』(1993年)の音楽監督を手がけたときにも感じましたか?

喜多郎:感じましたね。あの映画は最初べトナムで撮影を始めたんですけど、当時はまだベトナム戦争の傷跡が残っており、反米意識も高かったので大変でした。ロケ中に、「ここから先は入っちゃダメだ!」って現地の人に銃を突きつけられたこともありましたよ。オリバー監督含め、みんなホールドアップさせられた。その後、ロケ地をタイに移したんだけど、僕は何もすることがなくて、ビールを飲みながら2週間くらい撮影や編集作業をずっと眺めてました(笑)。それでアメリカへ帰って、すぐメインテーマを作り上げて監督に送ったら、「Congratulations!(おめでとう!)」っていうFAXが送られてきて。あれはどういう意味だったのか(笑)。それ以来、監督とは今でも仲良くさせてもらっていますね。

―もしかしたらオリバー・ストーン監督は、「これは、ゴールデングローブ賞を獲得できるぞ!」って確信していたのかもしれませんね(笑)。ところで喜多郎さんは、毎年夏にオールナイトの無料イベントを富士山でおこなっているそうですね。

喜多郎:もうかれこれ24年くらいかな。ここ15年くらいはずっと御殿場口の5合目でやっていました。日没から夜明けまで約12時間かけて、ただひたすらみんなで太鼓をドンドコ叩くイベントなんです。お日様が富士山の向こう側に沈むと、反対側の空に満月が登ってくる。太鼓の音は波動なので、感謝の意をこめてそれを大地に捧げています。ただ去年は大震災の影響もあってやらなかった。5合目って標高が高いので、風向きによっては放射線量が高くなってしまうことがあるんですね。イベントには子供たちも沢山来るから、これは嫌だなと思って今年は長野県でやりました。今後はしばらく長野県でやることになるでしょうね。

僕の音楽はα波が出ているって昔から言われていて、少なくとも聴いていて闘争的な気分にはならないはず(笑)。それが人々と自然との調和に役立てば嬉しいです。

―さて、今秋リリースされた最新アルバム『Final Call』ですが、今作はどういう経緯で制作されたのでしょうか。先日、第56回グラミー賞「最優秀ニューエイジアルバム賞」に、なんと通算15度目(!)となるノミネートを果たしたというニュースも入ってきました。

喜多郎:去年、名古屋市科学館のプラネタリウムで、開館50周年記念の2日間限定プログラムを催すことになって、その音楽を担当したんですね。それがベースになっているので、いつもよりさらにスペーシーなサウンドになっています。この地球から宇宙へと旅立ち、再び帰ってくるというような、物語仕立ての展開にもなっていますね。

―空港のアナウンスでアルバムが始まり、最後は波の音で終わる。文明から旅立ち、自然の源である海へ戻っていくというテーマ性も感じました。

喜多郎:そうですね。ちなみに空港のアナウンスは、自分でフィールド録音して集めました。各国の空港でアナウンスを200サンプルくらい録って、最終的にその中から20個くらいを使ったんです。だから、どこの空港のアナウンスなのか、よく聴けば分かる人もいるかもしれないです(笑)。

―『Final Call』には、「最終通告」という意味もあります。「人はもっと自然と調和しなければ、本当にこの惑星はダメになってしまう」という、喜多郎さんの強い危機意識が反映されたタイトルでもあるのでしょうか。

喜多郎:本当にね、地球の上での人々の争いなんて、宇宙から見れば取るに足らない小さなこと。僕たちはもう少しステップアップして、もう一度自分たちを考え直す必要があるんじゃない? って思いますね。

喜多郎

―やはり大震災・原発事故についての想いもアルバムには込められていますか?

喜多郎:もちろんです。特に原発事故は収束するまであと100年、200年……相当時間がかかりますよね。ただ、原発について「No」って言い切ってしまうのは簡単です。この人間社会がもっと成熟していくための方法を、みんなで真剣に考えなければならない、我々の精神から変えていかなければならないと思いますね。僕は、音楽という「見えない力」でその手助けをしたいんです。音は波動だから、人の身体に浸透し、気付かないうちに影響を与えていく。僕の音楽はα波が出ているって昔から言われていて、少なくとも聴いていて闘争的な気分にはならないはず(笑)。僕の音楽の中にある、東洋哲学的な要素とα波が、人々と自然との調和に役立てば嬉しいですね。

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リリース情報

喜多郎<br>
『Final Call』(CD)
喜多郎
『Final Call』(CD)

2013年9月4日発売
価格:3,150円(税込)
YZDI-10106

1. Final Call
2. Jupiter's Beam
3. Yo-en
4. Shadow Of The Moon
5. Traveler
6. Valley Of The Spirit
7. After Glow
8. Wind From The Desert
9. Moment Circle
10. Whispering Shore
11. Solar Eclipse

プロフィール

喜多郎(きたろう)

1953年生まれ、愛知県豊橋市出身。作曲家。オリバー・ストーン監督による映画『天と地 (Heaven & Earth)』(1994年)でゴールデングローブ賞作曲賞受賞。2001年、米音楽界最高峰であるグラミー賞受賞、これまでにノミネート15回。自然環境からインスピレーションを取り入れた独自のクリエイティブな作品は世界中で高い評価を受けている。毎年夏には富士山の5合目太郎坊駐車場にて、日没から夜明けまで約12時間かけた無料イベント『富士山讃歌』を行っている。これは年に一度、大地への感謝の気持ちを表現したファンと一体になったイベントである。2006年に、アメリカのコロラド州からカリフォルニア州セバスタポウルに移住。2013年秋、ニューアルバム『Final Call』をリリース。第56回グラミー賞「最優秀ニューエイジアルバム賞」にノミネートされている。

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