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初のアニメ監督に挑んだ岩井俊二が語る、トライ&エラーの楽しさ

初のアニメ監督に挑んだ岩井俊二が語る、トライ&エラーの楽しさ

インタビュー・テキスト
小林英治
撮影:永峰拓也
2014/09/18
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映画監督としてのみならず、小説、音楽などマルチな分野で才能を発揮するクリエイター・岩井俊二。これまでにもインターネット上での作品発表やデジタル機材のいち早い導入など、新しい技術やメディアを積極的に自らの表現に取り込んできた彼が、初めての短編アニメーション『TOWN WORKERS』を監督し、ウェブサイトで限定公開するというニュースが突如入ってきた。

初めてのアルバイトで誰もが経験する心の動きと成長の様子を描いた3つのショートストーリーはいかにして完成したのか。「20年前からやりたかった」というアニメーション技法・ロトスコープへのこだわりとその制作過程、さらに彼のクリエイションに対する姿勢について話を聞いた。

初期のアニメって、今は存在しなくなった見慣れない動きが結構あるんですよ。高畑勲さんの『太陽の王子 ホルスの大冒険』でも、どう見ても今のジブリアニメにはない動きをしているんですよね。

―今回、ついにと言うか、初めての短編アニメ—ション作品を監督されることになった理由から伺わせてください。

岩井:アニメ作品をやってみたいというよりも、昔からずっと絵は描いていて、それを動かしてみたいという思いが強くありました。ただ、自分にはアニメ監督としてのノウハウも知識もなかったので、あまり現実的には考えていなかったんです。ただ、アメリカのラルフ・バクシというアニメ作家が、実写で撮影した映像をトレースするロトスコープという方法ですごい作品をたくさん撮っていて、20年ぐらい前に彼の『アメリカン・ポップス』という作品を観たときに、「あっ、これやりたいな」って素直に思ったんですね。動きが美しいというのが最初のインパクトとしてあって、グラフィック的にもきれいでしたし、その頃から自分がアニメを作るならこの方法がいいなと思っていました。

『TOWN WORKERS』第1話『初めての潮の香り』
『TOWN WORKERS』第1話『初めての潮の香り』

―岩井さんは、過去の作品でロトスコープを部分的に試していますよね。

岩井:2002年のワールドカップのときに、『六月の勝利の歌を忘れない』というサッカー日本代表のドキュメンタリー作品を撮ったんですが、その中で試合のシーンを描いたのが最初です。時間がなかったので、充分な仕上がりとは言えない状態ではありつつ、このやり方は使えるなと1つの光明も見えました。

―その次が2009年に横浜開港150周年記念作品として脚本とプロデュースを担当された『BATON』でしょうか。

岩井:『BATON』は役者をキャスティングした上で、ロトスコープをやろうというアイデアが最初からあり、監督をお願いした北村龍平さんもアニメに結構詳しくて、アメリカの制作チームを連れてきて作りました。そこで手応えを掴むと同時にいろんな問題も見えてきて。

『TOWN WORKERS』第2話『君の夢を読む』
『TOWN WORKERS』第2話『君の夢を読む』

―と言うのは?

岩井:要するに元は実写なので、リアルになり過ぎるところがなかなか解消できなかったのと、描き手によって絵のクオリティーに差が出てしまったり、ロトスコープでやったことがすぐにわかる仕上がりになってしまう。その問題さえクリアできれば、普通のアニメーションを自由に作る感じで、普遍的に使える技法になるんじゃないかと思っていたんです。

―岩井さんが数あるアニメ—ション技法の中で、ロトスコープに反応されたのはどうしてだったんでしょうか。

岩井:ロトがいいと言っても、絶対的にいいと思っているわけじゃなくて。初めて見た瞬間はホントに目から鱗というか、まったく新しく見えたというのもあったし、逆に慣れてしまえば、その動きに新しさを感じなくなるというのも当然あると思います。ただ、いわゆる日本のアニメ作品を観て、自分でもやってみたいとか、憧れたことはあまりなくて、スタジオジブリのアニメも好きですけど、それを自分でやってみたいと思ったことはなかった。でも、ラルフ・バクシの作品を観たときはやってみたくなったんです。どうやってるんだろう? っていう疑問もあったし、実写をなぞってるわけだから自分にもできるんじゃないかなって。あと、普通のアニメがあまり描けていない動きの生々しさだったり、持っている世界観の独特さというか。

岩井俊二
岩井俊二

―アニメはたくさん観られているんですか?

岩井:詳しくはないですけど、『白蛇伝』(日本初のカラー長編アニメ映画 / 1958年)とか初期のアニメって、今は存在しなくなった見慣れない動きが結構あるんですよ。そういうのに反応してしまうことが多くて。昔は映画のためにアニメーターの人たちが、ああしたいこうしたいって時間と手間を惜しまずに作っていたというのもあるんでしょうけど、高畑勲さんが作ったアニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)でも、ヒロインのヒルダっていう女の子の動きが、どう見ても今のジブリアニメにはない動きをしているんですよね。

―面白いですね。そのときは上手く実現した動きだったのが、その後誰にも受け継がれずにそのままになってしまったんですね。

岩井:ヒルダの動きもすごく新鮮で、ひょっとしたらこれもロトなのかなと思ったくらい。やっぱりアニメの動きって、どうしてもパターン化されてしまうと思うんですよ。それにあまり興味が湧かないのかもしれない。だから、そうじゃない動きを見るとハッとなるというか、自分が引っかかる動きが、わりとロト的な動きに多かったんでしょうね。

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岩井俊二監督作品『TOWN WORKERS』

第一話「初めての潮の香り」
第二話「君の夢を読む」
第三話「この長い道程のため」

リリース情報

ヘクとパスカル<br>
『ぼくら』
ヘクとパスカル
『ぼくら』

2014年9月24日(水)から配信限定発売
REM / SPACE SHOWER MUSIC

1. ぼくら

プロフィール

岩井俊二(いわい しゅんじ)

1963 年、宮城県仙台市生まれ。1988年よりドラマやミュージックビデオ、CF等、多方面の映像世界で活動を続け、その独特な映像は「岩井美学」と称され注目を浴びる。1993年、フジテレビのオムニバスドラマ『if もしも』の一作品として放送された『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』はテレビドラマとしては異例の『日本映画監督協会新人賞』を受賞。1995年『Love Letter』で映画監督としてのキャリアをスタート後、数々の作品を発表。代表作に1996年『スワロウテイル』、2001年『リリイ・シュシュのすべて』、2004年『花とアリス』、2010年『New York, I Love You』、2012年『ヴァンパイア』など多数。同年、NHK『明日へ』復興支援ソング『花は咲く』の作詞を手がけ『岩谷時子賞特別賞』を受賞。2013年、音楽ユニット「ヘクとパスカル」(メンバー:岩井俊二 / 桑原まこ / 椎名琴音)を結成。2014年1月クールのテレビ東京ドラマ24『なぞの転校生』で脚本、プロデュースとして初の連ドラに挑戦し、「ヘクとパスカル」のデビュー曲”風が吹いてる”が起用され話題となる。

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