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安藤裕子が映画ヒロインに初挑戦、遂にたどり着いた憧れの世界

安藤裕子が映画ヒロインに初挑戦、遂にたどり着いた憧れの世界

インタビュー・テキスト
藤田ひとみ
撮影:豊島望
2014/10/07

かつては炭鉱の町として栄え、近年は日本を代表するワイン産地として注目を集める、北海道・空知(そらち)のぶどう畑を舞台に、三島有紀子監督(代表作『しあわせのパン』(2011年))が描くハートウォーミングドラマ『ぶどうのなみだ』。ワイナリーを営んでいる兄弟、アオ(大泉洋)とロク(染谷将太)が亡き父より受け継いだ、ぶどうの木と小麦畑にて、ストーリーは繰り広げられていく。挫折を経験し地元に帰った兄・アオは、現代の「黒いダイヤ」と呼ばれる葡萄、ピノノワールの醸造に情熱を注いでいた。そこにある日、不思議な魅力を持つ女性エリカがキャンピングカーで現れる。おいしい料理で楽しくワインを飲むエリカと、悔しさ、優しさ、悲しさを織り交ぜながら、アオは次第に距離を縮め変化していく……。

監督を務めた三島有紀子と、歌手として昨年デビュー10周年を迎え、今作では辛い過去を抱えながらもパワフルに生きるエリカ役を演じた安藤裕子に、話を訊いた。歌手として知られる安藤裕子は、じつはデビュー前には映画の世界に憧れ、『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)にも出演。そんな彼女にとって、今作が歌手デビュー後初の演技作品となる。三島監督が開いた、安藤裕子の新たな扉とは? それは、歌手・女優としてだけでなく、女性としての扉でもあったようだ。

安藤さんの歌っている姿って、勇ましいガニ股なんですよね(笑)。その姿が、大地に立つエリカ像とオーバーラップしました。(三島)

―シンガーソングライター安藤裕子にとって初めての映画出演ということですが、監督は安藤さんのどういった部分に魅力を感じて今回の起用に至ったのでしょうか?

三島:以前から曲を聴いていて、安藤さんが書く歌詞の世界は、自分が書くシナリオの世界観を、きっとすぐに理解していただける近いところにあるんじゃないかと思っていたんです。それに安藤さんの歌っている姿って、勇ましいガニ股なんですよね(笑)。その姿が、大地に立つエリカ像とオーバーラップしました。しかも安藤さんはちょっと巫女的な要素もあって、天から下ろしてきた何かを憑依させて歌っている印象もありますよね。大地のエネルギーをぐわっと自分のもとに吸い上げて、天からのエネルギーを全身に浴び、両方の力を自分の中で結実させている。それは私の中でエリカという人のイメージにぴったりでした。

―あえて、女優ではなく、ミュージシャンである安藤さんを起用した、ということには、何か理由があったのでしょうか?

三島:元々、ミュージシャンの方々に対する尊敬の念がすごく強いんですよね。ミュージシャンって、セッションの天才だと思っていて、芝居もセッションなんですよ。相手が投げてきた芝居を、受けて返せるかどうかなので、表現力や技術よりも、それができる人が私の中ではクオリティーが高いんです。もちろん役者さんもそれをやってくださいますけど、ミュージシャンは演技の経験がなくてもそれができると信じている部分が私の中にあるので、基本的に私が作る映画にはいつもミュージシャンの方にも出てもらっています。そんな中でも、安藤さんは、エリカというキャラクターと詞の世界が近かったんですよね。

―イキイキとされていましたもんね、安藤さん演じるエリカは。

三島:今年の『モントリオール映画祭』で、この作品も上映してもらったんですけど、モントリオールの観客は、日本映画をたくさんご覧になっている方が多く、日本人女優もよく知られているので、「この誰も知らない輝く女優は誰なんだ!」って話題になったんですよ。「Yuko Andoというシンガーソングライターなんだ」と、いまはしっかり覚えてもらいました。

―エリカ登場シーンの「土かぶるよ!」って言いながらスコップで土を掘り起こす姿は、私もぐっと鷲掴みにされました。

安藤:そのシーンから撮り始めたので、撮影最初のシーンなんです。自分で観るとめちゃめちゃ緊張してるのがわかります(笑)。

©2014『ぶどうのなみだ』製作委員会
『ぶどうのなみだ』 ©2014『ぶどうのなみだ』製作委員会

―エリカは樹木のような人ですよね。緑豊かな大地と、空の青さを、一心につなぐ存在。作品の中では、兄であるアオ(大泉洋)は青い服・青い車に乗っていて、緑と書いてロク(染谷将太)と読む弟がいる。そこに赤い服を身にまとったエリカが現れ……と、三原色を効果的に用いていますね。

三島:アオは、知的というか悪く言えば頭でっかちな男で、指揮者になるという夢で一度挫折を経験し、次の夢こそはとワイン作りに向かってがむしゃらに情熱を注いでいる人なんですけど、その姿は青い空にただひたすら向かって育つぶどうの木のようで、青色のイメージだったんです。そしてエリカは大地を感じさせる力強さを持っています。潜在的に芯として持っているエネルギーを感じてもらえるよう、イメージカラーを赤にしました。静かに運命を受け入れるロクは、いろんな色を抱擁する力のある生成色。三人が並ぶと、青赤白のトリコロールになり、ぶどう畑の生命感あふれる緑の背景の前で、最も美しくなる配色となりました。

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イベント情報

『ぶどうのなみだ』

2014年10月4日(土)から北海道先行公開、10月11日(土)から全国ロードショー
監督・脚本:三島有紀子
音楽:安川午朗
出演:
大泉洋
安藤裕子
染谷将太
田口トモロヲ
前野朋哉
りりィ
きたろう
大杉漣
江波杏子
配給:アスミック・エース

プロフィール

三島有紀子(みしま ゆきこ)

大阪府出身。18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後NHKに入局。『NHKスペシャル』『トップランナー』など「人生に突然ふりかかる出来事から受ける、心の痛みと再生」をテーマに一貫して市井を生きる人々のドキュメンタリー作品を企画・監督。11年間の在籍を経て独立後、『刺青~匂ひ月のごとく~』で映画監督デビュー。オリジナル脚本で監督を務めた『しあわせのパン』は、同名小説も執筆し、ともにヒットを記録した。次回作『繕い裁つ人』(主演・中谷美紀)は来年1月公開予定。

安藤裕子(あんどう ゆうこ)

神奈川県出身。2003年シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。2005年、月桂冠のTVCMソングに「のうぜんかつら(リプライズ)」が起用され、一躍話題に。2010年にリリースした5thアルバム『JAPANESE POP』が、ミュージックマガジン年間ベストアルバムJ-POP部門1位を受賞。自身の作品ではすべてのアートワーク、メイク&スタイリングをこなし、ミュージックビデオの監督も手がけるなど、楽曲制作だけに留まらない多才さも注目を集めている。ミュージシャンとしてデビュー後は、本作が本格的な演技初挑戦となる。

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