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物語を音楽で綴り続ける、マルチクリエイターsasakure.UK

物語を音楽で綴り続ける、マルチクリエイターsasakure.UK

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:中村ナリコ
2014/12/16

「人と人でないものの共存」というテーマや、「人ではないものとどう接するべきか」というところに焦点をあてて曲を作っていることはずっと変わっていません。

―これまでの作品でも、SF的なテイストであったり、ひとつの世界観を元にした楽曲を集めて作品を作ってきたわけですよね。でも、今回はゼロから新しいものを作ろうと思ったということでしょうか?

sasakure.UK:ゼロと言うとニュアンスが変わっちゃうかもしれないですけど、新しいことを始めようとは思ってました。でも、自分の中にある大きなコンセプト、信念は変わってないんです。今回のアルバムは中学校が舞台で、前作よりも身近な世界がモチーフになっているんですけど、「人と人でないものの共存」というテーマや、「人ではないものとどう接するべきか」というところに焦点をあてて曲を作っていることはずっと変わっていません。

―アルバム『摩訶摩謌モノモノシー』は、今語っていただいたようにひとつのストーリーに基づくアルバムですよね。これはどういうところから始まっているんでしょうか?

sasakure.UK:まず、身近な世界をモチーフにするということで、自分の経験をアウトプットしようと思ったんです。とはいっても、怪物やアヤカシには会ったことはないんですけど(笑)。ただ、中学校時代、高校時代の繊細な感覚を思い起こして、そこを元にしていこうと。そうして最初にプロットを書き始めました。

―曲よりプロットが先だったんですね。

sasakure.UK:最初に背景を考えて、物語の流れと舞台を作って、最後に曲を作りました。プロットを練るのに時間がかかったんですよね。2か月くらいかけて、どういうキャラクターにするかを深いところまで考えていきました。ひとつの街を舞台に、そこで生活する人々が何を思っているのか、どういう行動をするのかを考えてまとめていったんです。

―ミュージシャンと小説家を両方やるような制作ですね。それは自分のやり方としては自然なものでした?

sasakure.UK:そうですね。自分はストーリーから曲を作るということを重視しているので、今回も自分自身のセオリーをもとに作品として構築していきました。

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―そこで妖怪が登場する物語にしたのは、どういう意図があったのでしょうか?

sasakure.UK:妖怪というか、「人であらざるもの」ということで「アヤカシ」と呼んでるんですけど。人と人でないものがどう共存するのか、それを日本を舞台にして描いていくならこれがしっくりくるだろうと思ったんです。

―しかも、それが思春期の物語になっている。

sasakure.UK:普段から曲を作るときに、昔の日記やノートを開いて読んだりするんですよね。昔に書いた詩とか、拙い日記とか、そういうものを読み返すことで、当時の繊細な感覚を頭の中に呼び起こすんです。そういうところから登場人物の行動をイメージしてますね。

下地を練り固めて作ったものには深みが生まれるんですよね。そういうものが好きだし、自分が目指しているところもそこだと思うんです。

―アルバムのストーリーはどういう構成になっているんでしょう? 1曲目の“ア(マ)ヤカシ・ダイアリィ feat. ピリオ”は少年の話ですけど、この人が全編の主人公ではないですよね。

sasakure.UK:全曲登場人物は変わりますね。1曲で話は完結するんですけど、みんな同じ街の中の人々で、それぞれの物語が繋がっているんです。

―3曲目の“トドノツマリ様”の歌詞には、日本語ではない、記号のような言語が書かれてますけれども。

sasakure.UK:これは造語なんです。不思議な得体の知れない生き物を表現したくて、自分でオリジナルの言葉をデザインしました。でも、ちゃんとこの記号にはルールがあって、実は翻訳出来るようになっているんですよ。

―オリジナルな言語を作るって、かなり中二感ありますね(笑)。

sasakure.UK:そうそう、授業中によくやりましたよね(笑)。ああいうワクワクする感じを思い出しながら書いていったんですけど、実際やってみると思ったよりも大変でした。

―4曲目“tig-hug feat. GUMI”はどうでしょう? これは「イチジク」という女の子が主人公なんですよね。

sasakure.UK:そう。その主人公の女の子にとある事件が起こって、その事件から身体が思うように動かなくなってします。そういう心と身体の葛藤を描いた曲です。1曲目の少年とその女の子はすごく仲が良くて、事件前はよく一緒に話をした関係なんですよ。

―つまり、この動画に登場している男の子は、“ア(マ)ヤカシ・ダイアリィ feat.ピリオ”で歌われている少年ということなんですね! そして次の曲、“ネコソギマターバップ”にはどんなストーリーが?

sasakure.UK:これは猫又の女の子が主人公です。その子が普通の人間の振りをして社会を生きていく、その大変さを楽天的に捉えて曲にしている。

―なるほど。だから曲の途中に“猫踏んじゃった”のフレーズが出てくるんですね。曲全体に、ピアノや管楽器の音、飛び道具のような音が散らばっていて面白い1曲ですが、特にあのフレーズが出てくる部分は印象的でした。

sasakure.UK:あれは自分の遊び心ですけど、猫又の女の子というのをイメージしたときに、最初に“猫踏んじゃった”をアレンジしたいなっていう思いつきがあったんです。

―その後、別の世界に迷い込んだかのようなインスト曲があり、そして“ポンコツザワールド”にストーリーは展開していきますね。

sasakure.UK:これは夢を食べちゃうバクの女の子がモチーフになっているんです。人の夢を食べないと生きていけないんだけど、想っている人もいて、その相手に対する心の葛藤もある。音のことで言うと、この子はゲームが得意という設定なので、そういう夢の感覚を8ビットの感覚と重ねあわせてアレンジしています。

―単にストーリー、プロットを考えるだけじゃなくて、それがどういう曲調にするかを考える出発点にもなっているわけですね。ストーリーも、音楽も、全部を一人で作るのって、ぶっちゃけ大変じゃないですか?

sasakure.UK:大変です(笑)。ビデオの絵コンテも自分で描いてますからね。今回はプロットだけで2か月ぐらいかかってしまったし。でも、下地を練り固めて作ったものには深みが生まれるんですよね。そういうものが好きだし、自分が目指しているところもそこだと思うんです。

―目指しているものというのは?

sasakure.UK:やっぱり、物語性を持った音楽が好きなんですよね。自分らしい音楽を突き詰めていくと、ひとつの大きな世界観になる。それを作ることが大事なんです。

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リリース情報

sasakure.UK 『摩訶摩謌モノモノシー』(CD)
sasakure.UK
『摩訶摩謌モノモノシー』(CD)

2014年12月17日(水)発売
価格:2,160円(税込)
UMA-1049

1. ア(マ)ヤカシ・ダイアリィ feat. ピリオ
2. 君が居なくなった日
3. トドノツマリ様 feat. lasah
4. tig-hug feat. GUMI
5. ネコソギマターバップ feat. 重音テト
6. 回ル想ヒ
7. ポンコツザワールド feat. IA
8. sorekara

プロフィール

sasakure.UK(ささくれ ゆーけい)

福島県出身。作詞・作曲・編曲の全てをこなすサウンド・プロデューサー。幼少時代、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に多大な影響を受けて育つ。学生時代には男声合唱を学びながら、木下牧子、三善晃といった作曲家や、草野心平、新美南吉などの詩人・文学作家の作品に触れるようになり、この頃から独学で創作活動を開始。時代を越えて継承されてゆく寓話のように、物語の中に織り込められた豊かなメッセージ性を持つ歌詞と、緻密で高度な技術で構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。また、楽曲のコンセプトや世界観をもとに自らイラストや映像の制作も手掛けている。矢野顕子のアルバム『飛ばしていくよ』(2014年)にトラックメイカーとして参加、ゲーム『モンスターハンター』や『ストリートファイター』の公式REMIXを手掛けるなど、近年では様々なジャンルのクリエイターとのコラボレーションも企画・監修している。

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