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アートを超える「アーホ!」のパワー 倉本美津留×長谷川依与

アートを超える「アーホ!」のパワー 倉本美津留×長谷川依与

インタビュー・テキスト
坂口千秋
撮影:豊島望

アート、デザイン、映像、ファッション、インスタレーションなど、ジャンルを横断する公募で選出された若手クリエーター100組が、青山のスパイラルホールに一堂に会する『スパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル』(以下『SICF』)。今年で16回目を迎える『SICF』は、多種多様な表現に溢れるだけでなく、展示ブースで作り手と話ができて、気に入れば買うこともできる、若手作家のパワーを直に感じられる賑いが特徴。新しい才能を発掘しようと各業界の目利きが集まる場としてもすっかり定着しています。

ゴールデンウィーク恒例の『SICF』開催を前に、『SICF』の審査員でフジテレビの人気アートバラエティー番組『アーホ!』を企画構成している、放送作家の倉本美津留さんと、昨年の『SICF』が縁で『アーホ!』に出演したアーティスト長谷川依与さんの対談が実現。『SICF』での出会いから、アートとアーホの話、果ては地球平和の未来を担うミッションまで、クリエイティブ戦士の意識を覚醒させる宇宙スケールのアート談義となりました。

「こんなん見たことない!」っていう、アートを超えるような作品のことを「アーホ!」と呼んでいます。(倉本)

―倉本さんは、2014年の『SICF15』で作品を観たことがきっかけで、長谷川さんに『アーホ!』の出演依頼をしたそうですが、アートフェアはよく観に行かれるんですか?

倉本:面白いアーティストは常に探していて、アート関係のイベントもいろいろチェックしています。『SICF15』は、『アーホ!』の目利きのスタッフが観に行ってくれたんですけど、会場で撮ってきた作品写真を一目見て、「これはなかなかのアーホや……!」と、すぐ長谷川さんに連絡を取って番組に出てもらったんです。

長谷川:はい。「アカスリ」を全身スーツのようなかたちに縫い合わせて、約1万本の綿棒を突き刺した『bristle』という作品で、着ている人の呼吸に合わせて綿棒がフワフワ揺れたり、飛び跳ねると逆立った体毛みたいに綿棒が立ち上がったり、人が着ることによって完成する作品でした。

『SICF15』浅井隆賞 長谷川依与『bristle』(展示風景)
『SICF15』浅井隆賞 長谷川依与『bristle』(展示風景)

―ちなみに、倉本さんの言う「アーホ!」の基準ってなんですか?

倉本:「こんなん見たことない!」っていう、既存のアートを超えるような作品のことを「アーホ!」と呼んでいます。番組でも同じ作品を紹介させてもらったのですが、パッと見て伝わるキャッチーな良さがあって、放送後の反響も大きかったです。『bristle』が面白いなと思ったのは「アカスリ」と「綿棒」っていう、身近な日用品を組み合わせて、あそこまでの作品にしてしまったところ。どちらも誰もがよく目にするものなのに、その組み合わせを発見してアートにした人間は世界中であなた一人。アカスリも綿棒もびっくりしているわけですよ。「え! オレら今何されてんの!?」って。

長谷川:以前から、綿棒や洗濯バサミといった、どこでも手に入る同じかたちの既成品をつなげて造形を作りたいと思っていました。でも、ただ綺麗なだけじゃつまらなかったんです。シュールさが欲しいし、ものが本来持っていた機能も変えたくて、いろいろ試作を繰り返してました。

倉本:綺麗なだけじゃダメ、そこは大事ですね。あと、アート作品だけど壊れてもかまわない、っていうスタンスがいいなと思ったんです。

左から:倉本美津留、長谷川依与
左から:倉本美津留、長谷川依与

長谷川:あれはアカスリに綿棒を刺しただけでできています。

倉本:止めてないから、抜け落ちてもすぐ直せる。

長谷川:最初はくっつけようとしたんですけど、接着剤が綿棒に染み込んで黄色くなっちゃったんです。デザインって接合部が重要で、そこにこだわりがあったし、できるだけワンアクションで成立する方法がないかと、タイツなど網目のある素材に片っ端から綿棒を刺していったんです。それでたまたまアカスリの穴と綿棒のサイズがぴったりハマったという……。

倉本:やっぱりいろいろ試行錯誤があったんですね。僕がアート作品の大事なポイントだと思っているのは、「シンプル・イズ・ストロング」なんです。わかりやすくて力強い、コンセプトがはっきりしていること。長谷川さんの場合は、いらない要素を排除していくことで、作品の強さを引き出していますよね。

長谷川:作りながら考えていった部分もありました。当初はもっとファッションやプロダクトデザインに寄った、カッコいいイメージの作品だったんですが、『SICF』や『アーホ!』の反応を経て、結果的にはどのカテゴリーにも収まらないわけのわからない作品になったと思っています。

『SICF15』浅井隆賞 長谷川依与『bristle』
『SICF15』浅井隆賞 長谷川依与『bristle』

倉本:だからいいんですよね。見る人間が作品から勝手にザワザワしたものを感じて、それが他の人にも伝わっていくということだから。まさにアートっていうか、「アーホ!」やなあって思う。綿棒とアカスリもアート作品になれて「やったー!」って喜んでると思うよ。『SICF』のお客さんの反応はどうでしたか?

長谷川:『SICF』ってブースも出品者も多いし、ちゃんと観てもらえるのかなって心配していたんです。でも、始まってみればいろんな年齢のお客さんがひっきりなしに話しかけてくれました。海外の方もけっこういらしていて、遠くから「シャイニー! シャイニー!」って叫びながら外国の人が近付いてきて、何を指しているのかと思ったら、『bristle』に光があたって、綿棒が白く輝いていたみたいで(笑)。

倉本:外国人にも老若男女にも、ちゃんと作品の魅力が伝わっていたんですね。まさに作品の持つ力ですよ。

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イベント情報

『SICF16』

A日程:2015年5月2日(土)、5月3日(日・祝)
B日程:2015年5月4日(月・祝)、5月5日(火・祝)
会場:東京都 青山 スパイラルホール
時間:11:00~19:00
審査員:
倉本美津留(放送作家)
佐藤尊彦(BEAMSプレスマネージャー)
紫牟田伸子(編集家、プロジェクトエディター)
三木あき子(キュレーター、元パレ・ド・トーキョーチーフキュレーター)
皆川明(mina perhonen デザイナー)
岡田勉(スパイラル チーフキュレーター)
料金:一般700円 学生500円

プロフィール

倉本美津留(くらもと みつる)

放送作家。「ダウンタウンDX」Eテレのこども番組「シャキーン!」などを手がける。こんなの見たことない!という感覚をもたらしてくれるアート作品を、大阪弁の褒め言葉とかけて「アーホ」と提唱。同タイトルのアート番組も企画構成している。これまでの仕事に「ダウンタウンのごっつええ感じ」「M-1グランプリ」「伊東家の食卓」「たけしの万物創世記」他。またミュージシャンとしても活動。近著に「明日のカルタ」など。

長谷川依与(はせがわ いよ)

1988年東京生まれ。武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒業。『SICF15 浅井隆賞』受賞。インテリアデザイン、インスタレーションの分野で制作をするアーティスト。人間の目に見える要素だけでなく、不可視な部分に発想の原点を持ち、人間の内側と外側の考察を通して、人間を表現する作品を制作している。

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