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アートを超える「アーホ!」のパワー 倉本美津留×長谷川依与

アートを超える「アーホ!」のパワー 倉本美津留×長谷川依与

インタビュー・テキスト
坂口千秋
撮影:豊島望

大勢の前で作品を発表することに躊躇してしまうけど、別にどんなネガティブなことを言われてもいい、振り切って見せたほうがいいって思えるようになりました。(長谷川)

―倉本さんのお話を聞いていると、愛のこもったキュレーターみたいな仕事だな、って思います。

倉本:アーティストって、インスピレーション重視で作っている人も多いから、説明するための人が必要だと思うんです。人間って、初めての経験に直面すると、面白いと思う前に恐怖感を覚えてしまいます。自分が理解できないことが起こると、「ああ嫌だ」「めんどくさい」「見ないふりしよう」となって、もっとひどいとバッシングになる。新しいものを受け入れるよりも、知ったふりして拒否するほうが楽ですからね。面白ければ面白いものほど、すぐに大絶賛されることはないんじゃないかなと思うんです。だから、面白いと感じた人間が「これはすごい!」って声を大きくして言わないとだめなんですよね。僕はそういう役目だと思ってやらしてもらってるんですけど。

『SICF15』グランプリ 山本優美『存在の感触 —キャミソールー』
『SICF15』グランプリ 山本優美『存在の感触 —キャミソールー』

『SICF15』準グランプリ 菅本智『Non-verbal communication』
『SICF15』準グランプリ 菅本智『Non-verbal communication』

長谷川:いろんな人に作品を見てもらうのって、怖いけどすごく大事ですよね。私、美大を卒業してからすぐに就職して、2年間は作品を全然作ってなかったんです。でも、人に観てもらえる作品をもう1度作ろうと思って『SICF』に応募したら、本当にいろんな人が自分の作品を観て、意見を言ってくれて。「ああ、人に作品を観てもらって、何かを返してもらうのってこんなに嬉しいことだったのか」と思えたんです。それでやっぱり自分は作品を作り続けていこうと、今は会社をやめて、大学の研究室で働きながら制作しています。

倉本:そうだったんですか。発表して本当に良かったですね。

長谷川:恥ずかしいんですよね、より大勢の人前で発表するのって。ネガティブなことを言われるのが怖いから躊躇するんですけど、恥をかいたほうがいいんだなって。別に何を言われてもいい、振り切って見せたほうがいいなって思えるようになりました。

倉本:絶対そう! そして、たった1人でも「すごい!」という人がいたら、それを信じるべきです。もしゼロだったらやめたほうがいいですけどね(笑)。

左から:倉本美津留、長谷川依与

―その1人になっているのが倉本さん。

倉本:おせっかいなんですよね、昔から。面白い才能があるのにくすぶっている人を見るのがすごく嫌なんです。「このすごさを世間はなんでわからないんやー!?」って。お笑い芸人もそう。面白い奴ほど最初は認められないから、「オレがやらんと!」って、勝手に焦ってしまう(笑)。

半世紀以上生きてきて、相当いろんなものを見て蓄積されていますから、そんな自分が「なんじゃこれ!?」って思えたものは、ある種の答えなんです。(倉本)

―長谷川さんは昨年の『SICF15』に出展して『浅井隆賞』を受賞、今年の『SICF16』では、昨年の受賞者展示枠として参加されます。この1年の間には、他のアートフェアにも招待されたそうですが、『SICF』と他のアートフェアの違いってありましたか?

長谷川:昨年の『SICF15』を観てくれたギャラリストの方に声をかけていただいて、『ART NAGOYA』というアートフェアに出品しました。ホテルのフロアを貸し切って、それぞれの客室に展示するイベントだったんですけど、部屋に飾れるようなスマートなアート作品を販売する雰囲気の中で、1人だけ綿棒が刺さった巨大な人体像をバスルームに展示していて、相当浮いてましたね(笑)。でも、バスルームみたいなプライベート空間にたくさんの人を巻き込むことができたのは収獲でした。

『SICF15』会場風景
『SICF15』会場風景

倉本:同じアートフェアでも、それぞれ全然雰囲気が違いますもんね。でも、観に来てくれた人に新しい体験を促せたわけだから、大事だと思います。

長谷川:『SICF』はその逆で、出展者のジャンルもすごく多彩で、そもそも買えるのか、部屋に置けるのかどうかもわからないような作品がいっぱい展示されている状態がすごく面白い。必ず作家もいるからすぐに話もできるし、自分にとっては得るものがかなり大きかったですね。

倉本:昨年の『SICF15』も「うわ、何これ? めっちゃ『アーホ!』やん!」って思えるアーティストが何人もいて、グランプリを受賞した山本優美さんとか、過去の受賞者もすでに何人か番組に出てもらっています。大規模な国際美術展とかも観に行ったことがあるけど、広い会場で「アーホや!」と思えたアーティストはたった1人しかいなかった。だからどれだけ『SICF』の取れ高があるねん! って(笑)。今年は審査員でもあるので、時間をかけて丁寧に観ていきますよ。

『SICF15』会場風景
『SICF15』会場風景

―倉本さん流の面白いものを見つけるコツってありますか?

倉本:ぱっと見て、足が勝手に止まるかどうかですね。これまで半世紀以上生きてきて、僕もいろんなものを見て蓄積されていますから、その自分が「なんじゃこれ!?」って思えたものは、ある種の答えなんです。

―人よりもまず作品を観る?

倉本:そうです。作品を観てなんか引っかかったら、なんでだろう? って理由を考えたり、作家本人に話を聞いたりして、「やっぱり僕の目に狂いはなかった!(笑)」ってことも多いです。

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イベント情報

『SICF16』

A日程:2015年5月2日(土)、5月3日(日・祝)
B日程:2015年5月4日(月・祝)、5月5日(火・祝)
会場:東京都 青山 スパイラルホール
時間:11:00~19:00
審査員:
倉本美津留(放送作家)
佐藤尊彦(BEAMSプレスマネージャー)
紫牟田伸子(編集家、プロジェクトエディター)
三木あき子(キュレーター、元パレ・ド・トーキョーチーフキュレーター)
皆川明(mina perhonen デザイナー)
岡田勉(スパイラル チーフキュレーター)
料金:一般700円 学生500円

プロフィール

倉本美津留(くらもと みつる)

放送作家。「ダウンタウンDX」Eテレのこども番組「シャキーン!」などを手がける。こんなの見たことない!という感覚をもたらしてくれるアート作品を、大阪弁の褒め言葉とかけて「アーホ」と提唱。同タイトルのアート番組も企画構成している。これまでの仕事に「ダウンタウンのごっつええ感じ」「M-1グランプリ」「伊東家の食卓」「たけしの万物創世記」他。またミュージシャンとしても活動。近著に「明日のカルタ」など。

長谷川依与(はせがわ いよ)

1988年東京生まれ。武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒業。『SICF15 浅井隆賞』受賞。インテリアデザイン、インスタレーションの分野で制作をするアーティスト。人間の目に見える要素だけでなく、不可視な部分に発想の原点を持ち、人間の内側と外側の考察を通して、人間を表現する作品を制作している。

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