特集 PR

「ポストポップス時代」を牽引するcero、決定打的な傑作を語る

「ポストポップス時代」を牽引するcero、決定打的な傑作を語る

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2015/05/28

3.11の地震があって、いろいろ言ってたのに、結局忘れて生きてるっていう。特に東京では、実際に巻き戻ったように生きれちゃってるわけですよね。(高城)

―ちなみに、ceroってフリッパーズ・ギターの影響は大きいですか?

橋本:僕はすごく好きです。ただ、今はフリッパーズの音楽的な部分というよりは、いろいろ取り入れていく姿勢に共感していて、そこまで直接的な影響は受けてない……と言いつつ、今回収録した“DRIFTIN’”のデモを提出したとき、エンジニアの得能さんに「フリッパーズみたいだね」って言われました(笑)。

橋本翼

荒内:フリッパーズって、1990年代に特権的に昔のアーカイブにアクセスできる環境にいたけど、今はネットで誰でも簡単にフリッパーズ並のアーカイブにアクセスできるから、全国民が渋谷系みたいになってるんじゃないですかね(笑)。

高城:全国総渋谷系化(笑)。

―“ticktack”は小沢健二さんへのオマージュだったりするんですか?

高城:え? そんな感じしました?

―あれ? <そんで何処かダンスパーティーに出かける 磨いたシューズに紐を通して>とか<偽りの喧騒 溶けた会話 すなわち… Life?>みたいな歌詞って、小沢健二さんを意識してるのかなって。

高城:ああ、なるほど……僕、小沢健二さんは『Eclectic』しか聴いたことがないんです。はしもっちゃん(橋本)とかアラピーは全部聴いてるんですけど。

―でも、『Eclectic』からはすごく影響を受けている?

高城:そうです。あのアルバムが出たとき、僕らは高校2~3年生くらいで、NUMBER GIRLとかくるりとか、エッジのあるものがちゃんと評価されて売れていて、それを同時代性として受け取って、共感を持っていた中で、わからないものとして投下されたのが『Eclectic』だったんですよね。当時は戸惑いもあったんですけど、わからないなりに衝撃も受けて、当時買ったばかりのMTRで、影響を受けた曲を作ったりしてたんです。で、ここ2~3年であのアルバムのすごさに再び気づいたっていうか。後継者がいるようでいない、フリッパーズの文脈とも違うし、小沢健二っていう人の活動からもちょっと切り離されてて、点になってる作品だなって思ったんですよね。

―“ticktack”と小沢健二さんは直接関係ないにしても、この曲はアルバムの主軸となる曲かなと思ったのですが。

高城:主題のひとつではあると思います。前作に入ってた“Contemporary Tokyo Cruise”っていう曲では、<巻き戻しして>ってフレーズを繰り返してるんですけど、このアルバムには巻き戻しが完了した世界の違和感みたいなものがあると思ってて。何かあったんだけど、何もなかったかのようなところに引き戻されて、でも何かあったようなデジャブを感じながらみんなが生きてるような世界を作れたのかなって。“ticktack”は間奏で“Contemporary Tokyo Cruise”の逆再生の音が幻聴的に聴こえたりするんですけど、前作のスペクタクルな世界の記憶が一瞬デジャブとして起きるような、そういう仕掛けの曲にしたかったんです。

―前作はそういうスペクタクル、架空の世界を描いていたけど、今作はそことのリンクもありつつ、もっと現実というか、都市での生活が描かれていて、ただこの生活も現実なのかわからないっていう揺らぎがありますよね。

高城:何か起きてそうで何も起きていないっていうのが、今回のアルバムの特徴なんです。1stアルバムに入ってる“exotic penguin night”とかは、実際にペンギンが飛んだり、そういうマジックが目に見える形で起こってたんですけど、今回は全部予感だけに留まっていて、何か違和感を感じるんだけど、結局パーティーに出かけたり、喧噪の中の会話で、その違和感も曖昧になって忘れられていく。どの曲もそういう一瞬の気づきと忘却みたいなものが内包されてると思います。

―それって今の現実社会とのリンクもあるわけですよね?

高城:何に対しても言えることですけど、大きいことで言うと、3.11の地震があって、いろいろ言ってたのに、結局忘れて生きている。特に東京では、実際に巻き戻ったように生きれちゃってるわけですよね。でも、なんか違和感とかしこりは残ったまま暮らしてる。


普段忘却してることとか、ふと思い出しても、思い出したことすら忘れてしまうようなことが、人生にはたくさんある。そういうものが復元される装置として機能すればいいなって。(高城)

―荒内さんとしては、作品全体におけるポイントはどんな部分にありましたか?

荒内:前作を出したときは、僕らは27~28歳とかで、20代前半に作った曲も多かったんです。でも今は30歳になって、30歳が家とかで普段何気なく聴けるような音楽を作りたかったんですよね。そうなると、あんまりスペクタクルなものではなく、地に足のついたものになるっていうか。もちろん、今までceroがやってきたフィクショナルなものも引き継いでますから、“ticktack”とかはそこが合致した感じが顕著に出てるかもしれない。

橋本:ちょっと落ち着いた感じの音楽が聴きたいっていうのは僕も思っていて。じゃあ、どういう風にしたら気持ちいい感じに作れるのかを考えたときに、一定のテンポ感が大事だと思って、今回はアルバム全体においてあんまり速くなったり遅くなったりしてないんですよね。

橋本翼、高城晶平、荒内佑

―“Roji”っていう曲があるのは、日常感を表していると言えそうですよね。この「Roji」は、あの「Roji」(高城が経営する阿佐ヶ谷のバー)を描いているようで、そうではない感じもしますが。

高城:まさにそうですね。今生きてる現実の世界に寄せたいとは思いつつ、実際に存在する舞台を使ってフィクションを描くのも面白いなと思って。小説とかドラマでも、実際の地名が出てくると変な立体感が増すから、そういう仕掛けを作りたかったんです。あと今回アルバムを作っていて、普段意識もしないぐらいのことが実は有限で、いつなくなるかわからないものだというのもすごく感じて。例えば、Rojiのすっごいダラダラした空気、友達が来てビール1杯だけ飲んで携帯ゲームずっとやってるみたいな、楽しいような退屈なようなムードって、もしRojiが閉店することになったら、永遠に失われるじゃないですか。そう思ったときに、音楽っていう形だったら残すことができるなって。別に、Rojiはなくならないですけど(笑)。

―はい、そうであってほしいです(笑)。

高城:普段忘却してることとか、あるときふと思い出しても、思い出したことすら忘れてしまうようなことが人生にはたくさんあって、そういうものがこのアルバムを再生してる間だけ復元される。そういう装置として機能すれば、この作品はいいんじゃないかなって。ながら聴きとかでも、聴いている間に何かの記憶と直結したり、未来の予感が訪れたり、どちらにしろ「Obscure」なものに一瞬ピントが合う。そういうものであってくれればいいなと思います。

Page 3
前へ

リリース情報

cero 『Obscure Ride』初回限定盤(CD+DVD)
cero
『Obscure Ride』初回限定盤(CD+DVD)

2015年5月27日(水)発売
価格:3,400円(税込)
カクバリズム / DDCK-9005

[CD]
1. C.E.R.O
2. Yellow Magus(Obscure)
3. Elephant Ghost
4. Summer Soul
5. Rewind Interlude
6. ticktack
7. Orphans
8. Roji
9. DRIFTIN'
10. 夜去
11. Wayang Park Banquet
12. Narcolepsy Driver
13. FALLIN'
[DVD]
・2014年12月にEx-Theater Roppongiで開催したワンマン2days『Wayang Paradise』のライブ映像を収録

cero 『Obscure Ride』通常盤(CD)
cero
『Obscure Ride』通常盤(CD)

1. C.E.R.O
2. Yellow Magus(Obscure)
3. Elephant Ghost
4. Summer Soul
5. Rewind Interlude
6. ticktack
7. Orphans
8. Roji
9. DRIFTIN'
10. 夜去
11. Wayang Park Banquet
12. Narcolepsy Driver
13. FALLIN'

イベント情報

『「Obscure Ride」Release TOUR』

2015年6月7日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:北海道 札幌 PENNY LANE24
料金:前売3,800円

2015年6月9日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:岩手県 盛岡 Change WAVE
料金:前売3,800円

2015年6月10日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:宮城県 仙台 darwin
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月13日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:長野県 松本 Sound Hall a.C
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月14日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:石川県 金沢 AZ
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月18日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:兵庫県 神戸 VARIT
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月20日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:京都府 MUSE
料金:前売3,800円(ドリンク別)
※チケットは完売

2015年6月21日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:香川県 高松 DIME
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月23日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:熊本県 Django
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月24日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:鹿児島県 SR HALL
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月26日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:長崎県 Studio Do!
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月27日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:福岡県 BEAT STATION
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月28日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年6月30日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:岡山県 YEBISU YA PRO
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2015年7月4日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:愛知県 名古屋 Diamond HALL
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2015年7月5日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:大阪府 BIG CAT
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2015年7月12日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 お台場 Zepp Tokyo
料金:前売4,000円(ドリンク別)

プロフィール

cero(せろ)

Contemporary Exotica Rock Orchestra 略してcero(セロ)。様々な感情、情景を広く『エキゾチカ』と捉え、ポップミュージックへと昇華させる。2011年1月にリリースした1stアルバム『WORLD RECORD』は各地で好評を博し、現在もロングセールスを記録。2012年には2ndアルバム『My Lost City』をリリース。 2012年を代表する1枚との呼び声も高く各地で大絶賛、大好評を呼んだ。2013年12月に1st single+DVD『Yellow Magus』をリリース。2014年12月に2nd 両A面 Single『Orphans / 夜去』をリリースし、2014年12月21日、22日のEX-THEATER ROPPONGIでの2DAYSワンマンライブ『Wayang Paradise』も両日完売、大盛況にて終了。2015年1月より初のラジオレギュラー番組InterFM『Night Drifter』が放送開始となった。そんな中、まさに待望の3rd Album『Obscure Ride』を2015年5月27日にリリースする。さらには『FUJI ROCK 2015』にも出演が決定している。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

君島大空“遠視のコントラルト”

屈折したイノセンスが爆発するような、君島大空の“遠視のコントラルト”のMV。『The Bends』の頃のRadioheadのようなギターとセンシティブに揺ぐボーカルが描き出す、ピュアでまばゆい楽曲世界にクラっとくる。松永つぐみが手がけた映像も素晴らしく、実験映像的なカットを重ね、儚く消え入りそうな繊細で美しい才能を見事に切り取っている。爆音で凝視してほしい。
(山元)

  1. NUMBER GIRLがオリジナルメンバーで再結成、向井秀徳のコメントも 1

    NUMBER GIRLがオリジナルメンバーで再結成、向井秀徳のコメントも

  2. あいみょんから年下の子たち&大人へ 直感と瞬間の大切さを語る 2

    あいみょんから年下の子たち&大人へ 直感と瞬間の大切さを語る

  3. 『RISING SUN ROCK FES』第1弾でナンバガ、スカパラ、King Gnuら8組 3

    『RISING SUN ROCK FES』第1弾でナンバガ、スカパラ、King Gnuら8組

  4. Eveとは何者か? MVの総再生回数2億2千万回を誇る彼の歩みを考察 4

    Eveとは何者か? MVの総再生回数2億2千万回を誇る彼の歩みを考察

  5. 奥山由之が新たな手法で小松菜奈を撮影『SWITCH』特集 森山大道と対談も 5

    奥山由之が新たな手法で小松菜奈を撮影『SWITCH』特集 森山大道と対談も

  6. 映画『蜜蜂と遠雷』公開日が決定、参加ピアニスト発表&演奏場面の写真も 6

    映画『蜜蜂と遠雷』公開日が決定、参加ピアニスト発表&演奏場面の写真も

  7. 『君の名は。』ハリウッド版実写映画の監督はマーク・ウェブに決定 7

    『君の名は。』ハリウッド版実写映画の監督はマーク・ウェブに決定

  8. 多部未華子が猫の「にゃらん」と妄想旅 「じゃらん」新CM 8

    多部未華子が猫の「にゃらん」と妄想旅 「じゃらん」新CM

  9. 椿昇がバッサリ斬る、社会とアートの関係「京都の街に革命を」 9

    椿昇がバッサリ斬る、社会とアートの関係「京都の街に革命を」

  10. 劇団☆新感線『髑髏城の七人』6作がゲキ×シネに 第1弾は小栗旬主演の「花」 10

    劇団☆新感線『髑髏城の七人』6作がゲキ×シネに 第1弾は小栗旬主演の「花」