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渋谷慶一郎×VERBAL対談 ネットが音楽家に与えた変化を問う

渋谷慶一郎×VERBAL対談 ネットが音楽家に与えた変化を問う

インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:渡部幸和

聴き手の聴覚を挑発する作品で日本の電子音楽シーンを牽引しながらも、2012年にはボーカロイド「初音ミク」をフィーチャーしたオペラ『THE END』を発表、近年はパリと東京を往復しながら新作を準備する渋谷慶一郎。かたや、m-floやTERIYAKI BOYZ®、最近ではPKCZ®などの人気ユニットで日本の音楽シーンの可能性を追求しつつ、自身のファッションブランド「AMBUSH®」やクリエイティブエージェンシー「WHATIF」を運営し、経営者としての顔も持つVERBAL。一見、意外な組み合わせにも思えるこの二人の音楽家が、オンラインサービス「Dropbox」を使ったプロジェクト「New Meets, New Creation」でコラボレーション楽曲を制作した。

同プロジェクトでは、音楽制作における素材データの受け渡しからマスタリングデータの納品に至るまでが、すべてDropbox上のファイル共有を通して行われた。2000年代後半以降、Dropboxはもちろん、SoundCloud、USTREAMなど様々なオンラインサービスが生まれ、これまでの「CD」「ライブ」という形にとらわれない音楽の生まれ方・受容のされ方が一般化してきている。最新のテクノロジーを積極的に活動に取り入れてきた二人の眼に、このようなネット環境の変化はどのように映っているのだろうか。また、SNSで日常的に受け手とのコミュニケーションが可能になった状況の中、すでに長い活動歴を持つ彼らはどのようなことを感じているのか。渋谷がパリから一時帰国したタイミングに合わせ、音楽家の二人から見たネットにまつわる環境の変化について話を訊いた。

今は、SNSに投稿するために現実の行動を変えることもありますよね。そのおかしな状況を少しデトックスしたいと思ったんです。(VERBAL)

―渋谷さんとVERBALさんは今回が初めてのコラボレーションとのことですが、以前から交友をお持ちだったそうですね?

渋谷:共通の知人がいるので、以前からホームパーティーなどで顔を合わせていたんですよね。音楽家同士の場合、そうした場所でよく「いつか一緒に何かやりましょう」とか話すのですが、実現することはほとんどない(笑)。でも今回のお話をいただいたとき、VERBALくんとやるのが面白いんじゃないかと思い、直感的に「うまくいく」と感じました。リリックの可能性を追求しているのと同時にマルチなプロデュース力、コミュニケーション力が高いという印象を持っていたので、今回のプロジェクトにぴったりだったんです。それで僕からLINEでメッセージを送ったんだよね。

VERBAL:「面白い企画あるけどどう?」とだけ送られてきて驚きました(笑)。だけど僕も、詳細を聞かず「ぜひ!」と即答したんです。以前は渋谷さんに対して「アート的で実験的な音楽家」というイメージを持っていました。ですが、初音ミクをフューチャーした『THE END』を作られていることを知って、意外に思うと同時に、以前持っていたイメージが更新されたんです。今回の制作中も、EDMのようなある意味で大衆的な音楽に関する話題も多く、独自の視点でポップを解釈されているのだと感じました。

―今回の楽曲のテーマは「ソーシャルメディア・デトックス」と聞きました。どのような意味が込められているのでしょうか?

VERBAL:僕はいくつかのSNSを使っていて、四六時中スマホをいじっているんですね。でもSNSって、自分の考えを伝えるのには優れているけど、そればかりやっている状況には疑問があるんです。今は、SNSに投稿するために現実の行動を変えることもありますよね。本来はメッセージがあって、それを伝えるためにメディアがあるべきなのに、関係が逆転してしまっている。そんな状況を少しデトックスしてみれば、新しいSNSとの付き合い方が見えるかもしれないと思ったんです。

渋谷:僕はちょうどその頃、リアルに断食とヨガ、デトックスをしていたので、彼から「デトックス」という言葉が届いたとき妙な符合を感じました(笑)。それに、オンライン上のコミュニケーションだけで楽曲制作する企画で、現代のネット環境に再考を迫る「ソーシャルメディア・デトックス」という表現を使うことは、とてもクリティカルでいいなと思いました。現代はとにかくメッセージ過多ですよね。SNSには常に誰かのメッセージが上がってくるので、物理的には1人でも、実際には1人になれない状況が多発しています。で、アーティストはそこから吸収することもあれば、そうした状況を絶つことも必要になってきている。

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インフォメーション

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リリース情報

Keiichiro Shibuya
『ATAK022 Live In Paris Keiichiro Shibuya』(CD)

2015年7月15日発売
価格:未定

『The End』

2015年6月4日(水)、6月5日(木)START 20:00
会場:オランダ Dutch National Opera & Ballet
出演:Keiichiro Shibuya + Hatsune Miku

イベント情報

『OTO_MATSURI 2015』

2015年7月31日(金)START 17:30
会場:東京都 原宿 国立代々木競技場第一体育館
出演:
PKCZ®
DOBERMAN INFINITY
GENERATIONS from EXILE TRIBE
and more
料金:スタンディング・ブロック指定 7,800円 一般指定席7,800円

プロフィール

渋谷慶一郎(しぶや けいいちろう)

音楽家。東京芸術大学作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。代表作に『ATAK000+』、『ATAK010 filmachine phonics』など。2012年、世界初の映像とコンピュータ音響による人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』を山口情報芸術センター[YCAM]で初演。東京、パリでも上演され、大きな話題を呼ぶ。同作品は2015年6月にオランダ最大のアートフェスティバル『ホランド・フェスティバル』でトップライナーで再演されることが決定している。この夏にはソニークラシカルより新作のアルバムの発表も決定、コンサートも予定されている。

VERBAL(ばーばる)

m-floでの活動の他、独自のコネクションを活かして数多くのアーティストとコラボレーション。超豪華ラップグループTERIYAKI BOYZ®、そして最近ではEXILE HIRO、DJ MAKIDAI、DJ DARUMAとのユニットPKCZ®のメンバーとしても活躍しており、Pharrell、Kanye West、will.i.am(BLACK EYED PEAS)など、海外のアーティストとも交流が深い。近年はDJとしても飛躍を遂げ、そのスタイルはファッション界からの注目も熱く、ジュエリーブランド「ANTONIO MURPHY & ASTRO®」、そして「AMBUSH®」のデザインも手掛ける。また、初の映画監督にも挑戦しており、今後もミックスな感性を武器にあらゆるフィールドでの活躍に期待が集まる。新たに立ち上げた「WHATIF」の代表として、3Dプロジェクションマッピングやモーションキャプチャースーツ等の最新技術の提供も始める。

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