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もっと流行ってもいい。想像を超えるコンテンポラリーダンス入門

もっと流行ってもいい。想像を超えるコンテンポラリーダンス入門

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:永峰拓也

川村さんの「動き」があまりにもすごいので、撮影の最後に「一発踊ってください」とお願いしたところ、「裸で踊っていいですか?」と。(本山)

―本山さんが監督されたamazarashiのMV“スピードと摩擦”は、川村さんがトイレの中で激しく踊るダンスを振り付けて大きな話題となりました。どのような経緯から、川村さんへのオファーが実現したのでしょうか?

本山:“スピードと摩擦”は、「焦燥感」がテーマだとamazarashiの秋田さんに説明されて。歌詞が捉えづらい曲なので、焦燥感だけは残したいと考えました。学校という他者の視線があふれる中で、唯一孤独になれるトイレという空間で、女子高生が「自分だけが足りない、置いていかれてるんじゃないか……」「アーッ!」って暴れることで、焦燥感を表現できるかな、と。動きはなるべくカオスで強度あるものがいいと思い、コンテンポラリーダンスで今一番やばい人を探してたら、川村さんに辿り着きました。

―たしかに川村さんのダンスは、スピードがものすごく速いですし、細かい痙攣のような動きが入っていたり、焦燥感をイメージする部分もありますね。

本山:当初は川村さんは振付だけで、出演する予定はなかったんです。女子高生ではないので(笑)。ただ、現場で目にした川村さんの「動き」があまりにもすごいので、撮影の最後に「一発踊ってください」とお願いしたところ、「裸で踊っていいですか?」と(笑)。一応、世に出すかもだったので「ダメです」と言って、急遽衣装を購入してきてもらいました。

川村:朝5時にドンキホーテを駆けずり回ったんですよ。

本山:で、帰ってきたら、全身網タイツで頭に花輪を着けていたんです。それで「最後なのでトイレを壊してもらっていいです」と、一発撮り。すさまじいオーラを放つ踊りでした。それまで40時間くらい撮影を続けていたので現場も疲れきっていたんですが、川村さんが踊りはじめた途端、スタッフみんなもあっけに取られ、最後は「最高の現場だったよね!」と、元気に帰って行きました(笑)。

―(笑)。それで本編にも使われることになったんですね。

本山:ただ「ダンサーのすごさ」って、映像には残らない部分もあります。例えば、川村さんが踊る前にストレッチをしているときも、背中から「ゴォォォー」と、生命力のようなエネルギーが出ているのを明らかに感じるのですが、そういうのはさすがに映像には映らないんですよね。

本山敬一

―川村さんはPVの振付や、自身の公演ではダンスだけでなく歌も唄ったりと、さまざまな活動をしていますが、自分の表現に共通するものは何だと思いますか?

川村:うーん……自分を表現している、という意識はあまりないですね。

―ということは、何かを「表現している」という意図も薄い?

川村:観てくれる人によっては、「自分を表現している」と見られている部分もあるのかもしれません。あっ、コンテンポラリーダンスの魅力って何かを考えたとき、今日すごくお見せしたいものがあって……(カバンからおもむろに骨を取り出す)。

川村美紀子が持ってきた骨

―これは……。

川村:豚の大腿骨ですね。肉屋の娘から「間違えて発注しちゃったからあげる」と言われて、もらったんです。何か月か土の中に埋めておくと、綺麗な真っ白の骨になると聞いてやってみたんですが、逆に土がこびりついてしまって真っ黒になってしまって……。そこで、バケツの水につけて地方公演に行き、帰ってきてベランダを開けたら何万匹もの蛆虫がついていたんです。すごい死臭がしていました。

―えっと……。

本山:肉はついていたの?

川村:表面には土がついていたんですが、中には肉が残っていたみたいです。それで骨をよく観察してみたら、土を蛆虫が一生懸命食べていて、ベランダに散らばった土からは植物が芽を出していた。すごく愛おしい気持ちになりました。「生きてるってすごいなー」って気持ちを実感して、そんな体験ができたことに感謝をしたんです。これがコンテポラリーダンスの魅力とどうつながるかよくわからないんですが……。

川村美紀子

―……今のお話をまとめると、先ほどのノイズミュージックの話のように、表現の多様性やおもしろさにつながる話だと思いました。それこそ蛆虫は「気持ち悪い生き物」としてステレオタイプに処理されてしまいがちですが、見つめ直してみれば「生きているのこと素晴らしさ」だって実感できる。コンテンポラリーダンスにも、川村さんのように激しく踊るものから、暗黒舞踏のようにゆっくりとした動きのもの、あるいはまったく動きのないものまであって、それらは「よくわからないもの」として一般的には認知されています。

川村:私自身も多様性という意味では、私とは違う人々や表現を認められないと自分も認められないと思っています。以前、あるフェスティバルにクマの着ぐるみを頭に被って、貝殻ブラジャーとふんどしという衣装で出演したんです。子どもたちは「わー、ふんどしのクマがいる!」ってワイワイ喜んでくれたんですが、あるおじさんからは「なにやってんだ! やめろ!」って怒られてしまいました……。

―川村さんの表現が「多様性」として認められなかったんですね。

川村:彼にとっては「わからない」「不快」なものだったんでしょう。その経験から「多様性」ってなんだろう? って考えるようになりました。自分のダンスから「多様である可能性」を示すことができないかなとは思っています。

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イベント情報

『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2015』

2015年8月1日(土)~10月4日(日)
会場:神奈川県 横浜市内全域

クラシックバレエ、コンテンポラリーダンス、ストリートダンス、社交ダンス、チア、日本舞踊などジャンルを横断した200以上のダンスプログラムが横浜市で展開。国内外のアーティストによる公演に加え、ダンスパレードやワークショップなど参加型プログラムも数多く用意されている。

『カンパニー マリー・シュイナール 日本ツアー2015』

2015年10月24日(土)~10月25日(日)全2公演
会場:神奈川県 日本大通り KAAT神奈川芸術劇場
料金:一般7,000円 U24 3,500円 セット券10,000円(デボラ・コルカー公演と2演目セット券)

デボラ・コルカー・カンパニー
『Belle』

2015年10月31日(土)~2015年11月01日(日)
会場:神奈川県 日本大通り KAAT神奈川芸術劇場
料金:一般7,000円 U24 3,500円 セット券10,000円(カンパニー マリー・シュイナール公演と2演目セット券)

イベント情報

『ダンス映画特集@シネマ・ジャック&ベティ』

2015年10月31日(土)
会場:神奈川県 シネマ・ジャック&ベティ
料金:一般1,800円 大専1,500円 小中高シニア1,000円(各作品、入れ替え制)

プロフィール

長谷川達也(はせがわ たつや)

DAZZLE主宰・ダンサー・演出家。SMAP、V6、Mr.Children、ケツメイシ、TRF、BoA、東方神起などのライブ出演・振付の他、振付日本一を決めるLegendTokyo、TheatriKA‘lコンテストのW優勝。また、国内演劇祭での最優秀作品賞、若手演出家優秀賞を始め、海外では韓国:アジア演劇祭、ルーマニア:シビウ国際演劇祭の他、中東最大のファジル国際演劇祭からの招聘、4部門ノミネート、2部門において受賞。本年3月には歌舞伎界の立女形にして人間国宝である坂東玉三郎氏演出舞台『バラーレ』(東京・赤坂ACTシアター)にDAZZLEとして主演。振付も担当。現在は来年秋に予定しているDAZZLE結成20周年舞台公演に向け鋭意制作中。11月7日(土)に東京・東銀座にある東劇にて「DVD『二重ノ裁ク者』発売記念プレミアム上映会」が開催決定。イープラスにてチケット発売中。

川村美紀子(かわむら みきこ)

1990年生まれ、16歳からダンスを始める。日本女子体育大学(舞踊学専攻)卒業。2011年より本格的に作品を発表し、2012年初演の『へびの心臓』は、国内外で上演を重ねている。その活動は、劇場にとどまらず、屋外やライブイベントでのパフォーマンス、映像制作、弾き語りライブ、自作品の音楽制作、レース編みなど、表現活動を多彩に展開。2014年『インナーマミー』初演、トヨタコレオグラフィーアワード 2014「次代を担う振付家賞」及び「オーディエンス賞」、横浜ダンスコレクション EX 2015「審査員賞」及び「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞。

本山敬一(もとやま けいいち)

1977年倉敷生まれ。SIX所属。クリエイティブディレクター。"A Fusion of Technology with Humanity"をテーマに、メディアを問わず人の心に残る体験をつくる。代表作にPokémon GOのトレーラ―、amazarashiのMV『季節は次々死んでいく』、Nexus 7のCM、Google Chrome 初音ミクなど。カンヌをはじめとした国内外のアワードで受賞多数。

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サニーデイ・サービス “Tシャツ”

6月にストリーミング配信オンリーでリリースされたアルバム『Popcorn Ballads』から“Tシャツ”のPVが公開。約1分のロックチューンに合わせた、スピード感ある清々しい映像。劇中で強制着用させられる「サニーデイサービス」TシャツはROSE RECORDSのオンラインショップで予約販売中。曽我部恵一の愛犬・コハルちゃんが送る眼差し、においを嗅ぐ姿に悶絶。(川浦)