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岩井俊二監督が切実に訴えかける「日本はガラパゴスじゃない」

岩井俊二監督が切実に訴えかける「日本はガラパゴスじゃない」

『ラスト・ナイツ』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:中村ナリコ
2015/11/12

紀里谷和明監督のハリウッド進出作『ラスト・ナイツ』。これまでの日本人監督ではあり得なかったような豪華キャストとスケール感で生み出された本作には、横綱・白鵬をはじめ、江口洋介、GACKT、戸田奈津子、武論尊など、紀里谷監督の交流関係をうかがわせる各界の著名人たちが、惜しみない賛辞のコメントを寄せている。その中で一人、ともすれば意外にも思える人物がいた。映画監督・岩井俊二である。あらゆる意味で対照的な作風を持ちながら、実は旧知の間柄であるという二人。岩井監督は、いつ頃どんなふうに紀里谷監督と出会い、親交を温めて来たのだろうか。そして岩井監督は、紀里谷監督の『ラスト・ナイツ』を、どのように観たのだろうか? 岩井監督に話を聞いた。

紀里谷監督は生き様が武闘派ですよね(笑)。でも「僕は違うんですけど」というわけでもなく、一致する思いも大きいんです。

―ちょっと意外に思う人がいるかもしれないので、改めて岩井監督と紀里谷監督のご関係からお聞かせいただけますか?

岩井:彼からはときどき「先輩!」と呼ばれますが、基本的には友達ですね。監督同士って会う機会が多くないのですが、海外で活動する日本の監督同士というのもあって意外と仲が良い仲間です。アメリカの大学で映画の勉強をして、そのまま向こうでやっている人は結構いるんですけど、僕らみたいにいったん日本でプロとして確立した状態からアメリカに渡る人は、あんまりいないんです。少なくとも、僕のまわりには、紀里谷さんと北村龍平監督(『あずみ』『ルパン三世』など)ぐらいしかいなかった。で、みんなロサンゼルスに住んでいたので、現地で仲良くなりました。ときどき電話して「暇? 飯でも食おうか?」っていうような間柄です。

―岩井監督がロスに拠点を移されていたのって、いつ頃の話でしたっけ?

岩井:僕は東日本大震災のときに日本に戻ってきたので、それまでの5年間ぐらいはロスに住んでいました。

―紀里谷監督や北村監督は、その頃に親しくしていた「監督仲間」みたいな感じであると。

岩井:そうそう。ロスにいる日本人同士って、割によく会うんですよ。向こうに住んでいる役者さん……真田広之さんや桃井かおりさんも含めて、「ロスコミュニティー」みたいなものがあって。

―ということは、紀里谷監督とは、ロスで初めて会ったのですか?

岩井:いや、初めて会ったのは日本です。たまたま違う現場を見に行ったら、そのとなりで『GOEMON』(2009年)の撮影をやっていて。江口(洋介)くんや大沢(たかお)くんと友達だったので、ちょっと激励に行ったときに、紀里谷さんを紹介されました。そのときはホント挨拶程度で、その後ロスに行ってから、だんだん仲良くなっていった感じです。

岩井俊二
岩井俊二

―紀里谷監督も北村監督も、割とアグレッシブなタイプの監督というか、岩井さんとは対照的な印象ですが、意外にウマが合ったりするんですか?

岩井:ウマが合うっていうと、ちょっとあれですけど……まあ二人とも生き様が武闘派ですよね(笑)。でも「僕は違うんですけど」っていうわけでもなく、同じ業界で生きているので、作風の違いはあれど、それよりも一致する思いのほうが大きいんですよね。特に外国に行くと、そこでやることの苦労もあるので、その部分を理解し合える仲間というか。

―岩井監督から見た紀里谷監督って、どんな感じの人なんですか?

岩井:まあ、非常に個性的というか、濃い個性を持った人ですよね(笑)。最初は本当に言動が……何て言うのかな、しゃべりっぷりは男なんですけど、言っていること自体は、オネエ系の人がしゃべるような感じというか。

―どういうことでしょう?

岩井:言いたい放題っていうのかな。オネエ言葉だと聞き流せるけど、彼は男言葉でしゃべるから、最初は「何だ、こいつ?」って感じでした(笑)。ただ、悪気があって言っているわけじゃないってことがわかってきたので、そこはだんだん慣れました。まあ、そういう性格だからこそ、ここまで来れたんだろうし。一番驚いたのは、昔から映画監督を目指していたわけではなくて、いろんなキャリアを積み上げていく中で、途中から映画監督をやろうと志したというところですね。

『ラスト・ナイツ』 ©2015 Luka Productions
『ラスト・ナイツ』 ©2015 Luka Productions

―もともとは、プロの写真家として、キャリアのある方でしたよね。

岩井:映画監督になって、1本目が『CASSHERN』で、2本目が『GOEMON』で、3本目が『ラスト・ナイツ』でしょ? スケールといい、世界観といい、常人には実現不可能な企画だったと思うんです。そこには才能もバイタリティーも必要だし、まわりの雰囲気を見て、いろいろと気を遣いながらキャリアを積み上げようとすると、永遠に達成できない企画だらけだったと思う。そこを一気に駆け上がったのは、非常に正しかったんじゃないかと感じるし、そこには彼の性格が幸いしていたような気もします。もちろん、彼一人の力だけではないでしょうけど、彼を応援してくれた人たちも含めて、そこまでやり遂げたのは、本当にすごいことだと思います。

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作品情報

『ラスト・ナイツ』

2015年11月14日(土)からTOHOシネマズスカラ座ほか全国公開
監督:紀里谷和明
出演:
クライヴ・オーウェン
モーガン・フリーマン
クリフ・カーティス
アクセル・ヘニー
ペイマン・モアディ
アイェレット・ゾラー
ショーレ・アグダシュルー
伊原剛志
アン・ソンギ
配給:KIRIYA PICTURES、ギャガ

プロフィール

岩井俊二(いわい しゅんじ)

1963 年、宮城県仙台市生まれ。1988年よりドラマやミュージックビデオ、CF等、多方面の映像世界で活動を続け、その独特な映像は「岩井美学」と称され注目を浴びる。1993年、フジテレビのオムニバスドラマ『if もしも』の一作品として放送された『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』はテレビドラマとしては異例の『日本映画監督協会新人賞』を受賞。1995年『Love Letter』で映画監督としてのキャリアをスタート後、数々の作品を発表。代表作に1996年『スワロウテイル』、2001年『リリイ・シュシュのすべて』、2004年『花とアリス』、2010年『New York, I Love You』、2012年『ヴァンパイア』。NHK「明日へ」復興支援ソング『花は咲く』の作詞を手がけ、岩谷時子賞特別賞を受賞。2013年、音楽ユニット“ヘクとパスカル”(メンバー:岩井俊二 / 桑原まこ / 椎名琴音)を結成。2015年2月には初の長編アニメーション『花とアリス殺人事件』が公開。最新作映画が来年公開予定。

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