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砂原良徳×山口一郎 捨て身でシーンを変えた電気グルーヴを語る

砂原良徳×山口一郎 捨て身でシーンを変えた電気グルーヴを語る

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ―石野卓球とピエール瀧―』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:永峰拓也

若い子が最初に触れる遊びとしての「音楽」に、もっといろんなカルチャーにつながる多様性があってもいいんじゃないかと思うんです。(山口)

―もし電気グルーヴがデビューしていなかったとしたら、今のテクノやエレクトロミュージックのシーンはどうなっていたと思いますか?

砂原:やっぱりちょっと違う感じなんじゃないかな。メインストリームなものにはならず、もっとアンダーグラウンドな扱いだったかもしれないとも思いますね。

山口:よりアナーキーなものになっていたかもしれないですね。

―1980年代以前は冨田勲さんやYMOがいたにせよ、電気グルーヴは、日本のテクノやエレクトロミュージックの歴史の中でも特殊な存在になっている。

砂原:まぁ特殊ですよね。漫才ブームや『ひょうきん族』の影響も受けていたと思いますし、そういうものとYMOとかがごっちゃになっている。

―当時のいろんなサブカルチャーにつながっている。

砂原:そうですね。そのことはすごく大きいと思いますよ。音楽だけじゃなくて、そこに映像やファッションがくっついてきたりしている。昔は音楽産業が強かったから他のカルチャーを引きつける力があったと思うんですけど、そういうのをひっくるめて、いろんな文化がごっちゃになっていると思いますね。

左から:山口一郎、砂原良徳

―今、サカナクションはファッションや映像といった他の分野のクリエイターと結びついて面白い動きを起こそうとしていますよね。それはどういうところを意識しているんでしょうか。

山口:きっかけは、ライブハウスで音楽を楽しむ人たちと、クラブで音楽を楽しむ人たちの遊び方が、全然違うと思ったことですね。

―その両方の遊び方をできる場がなかなかない。

山口:そうなんです。僕はロックフォーマットの中で、クラブミュージックとロックの両方を分け隔てなく楽しめる空間を作りたいと思っていて。最近になって音楽以外の仕事をしている人と知り合うことが多くなったんですけれど、話をするとみんな音楽が大好きなんですよね。クラブに遊びに行ってた人や、ロックを聴いてた人が、今は違う仕事をしている。それがわかったときに、若い子が最初に触れる遊びとしての音楽に、もっといろんなカルチャーにつながる多様性があってもいいんじゃないかと思ったんです。そう考えてやっていますね。

電気グルーヴから受け継いでいるものもあるし、今の時代の電気グルーヴになりたいという気持ちもある。(山口)

―映画にも出てきますが、電気グルーヴは97年に初開催された『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演していますよね。あそこでフェスという場所が生まれたことは、日本のロックシーン、音楽シーン全体にとってのターニングポイントだったと思うんです。そのあたりはどんな記憶がありますか。

砂原:最初の『フジロック』は今と場所も違いますよね。あと台風が直撃して、すごかったですよ。具合が悪くなる人もたくさんいたり。

山口:あのときはまだみんなフェスという場での遊び方を知らなかったのかな。

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT

―僕は当時大学生で、ずぶ濡れになって近隣の人に車で駅まで送ってもらった記憶があります。

砂原:『フジロック』がフェスの遊び方を作ったっていうことなんでしょうね。

山口:サカナクションで、今、ホールツアーをやっているんです。そうすると、みんなロックのライブしか観たことがないんですよ。だから歌がない音楽だと、どうノッていいか最初はわからない。だけど大きい音で自分たちが誘導しながら聴いてもらえるようにすると、みんな踊り出すんですよね。しかも初めてのダンスなので、本能なんですよ。四国でやると阿波踊りになったりしてそれがすごく面白い。音楽の原点ってこういうことなんだなと思います。

砂原:ライブでインストもやるんだね。

山口:やります。あと、年配の方が今まで見たこともないような踊り方をしたりするんです。全身をのけぞらせたり。そういうのを見ると感動しますよね。

―エレクトロミュージックの本能的な快感は確実にあるけれど、多くの人は入口がないとなかなかそこまで辿り着かない。山口さんはリスナーが初めてエレクトロミュージックと出会う光景を見てきているわけですね。

山口:それこそ電気グルーヴってそういう景色の連続だったんじゃないかなと思うんですけど。

砂原:今の話を聞いて、四国でやったときのライブを思い出しちゃった。エプロンをしているようなオバさんがいて、「うわー、すげえところ来ちゃったなぁ」ってその状況を面白がってたら、瀧が客席の一番後ろで女の子を小脇に抱えていて……。本当にめちゃくちゃでした。俺、ステージで弁当食ってたりしたから(笑)。

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~』 ©2015 DENKI GROOVE THE MOVIE? PROJECT

山口:僕らは、ライブの後にグリーティングイベントといって、ファンの人たちと交流する機会を設けてるんですよ。

砂原:えーっ、ライブが終わったあとにやるの? 真面目ですねぇ……。俺なんか、終わったあとはすぐに帰りたいのに(笑)。

―(笑)。

山口:そうすると、年配の方で、電気グルーヴがすごく好きだった方がたくさんいるんですよ。「電気グルーヴ以来、やっと聴く音楽を見つけました」とか「頑張ってください。なかなか難しいと思いますけどダンスミュージックを広げてください」みたいなことを言ってくれてる人が何人もいて。

―世代を超えてつながっているんですね。

山口:リスナーに電気グルーヴと僕らを比較してもらえるのも光栄だし、今の時代の電気グルーヴになりたいという気持ちも自分たちにはあるから。担っているものも、勝手に背負いこんでる部分もあると思いますね。

山口一郎

―電気グルーヴから受け継いでいるものはあるし、時代の中でバトンを渡されているみたいな感覚も持っている。

山口:電気グルーヴを引き継ごうとしてサカナクションを始めたわけじゃないですけど、シーンの中の立ち位置として、共通する要素があるとは思っています。もちろん時代も環境も違うんですけど、映画を見て、今自分がやっていることとリンクしていると改めて感じましたね。

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作品情報

『DENKI GROOVE THE MOVIE? ―石野卓球とピエール瀧―』
『DENKI GROOVE THE MOVIE? ―石野卓球とピエール瀧―』

2015年12月26日(土)から全国で2週間限定公開
監督:大根仁
出演:
電気グルーヴ
天久聖一
Andi Absolon
ANI(スチャダラパー)
Bose(スチャダラパー)
CMJK
DJ TASAKA
日高正博(株式会社スマッシュ代表取締役)
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
道下善之(株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ)
中山道彦(株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ代表取締役)
小山田圭吾
SHINCO(スチャダラパー)
砂原良徳
山口一郎(サカナクション)
山根克巳(LIQUIDROOM)
山崎洋一郎(『ROCKIN'ON JAPAN』総編集長)
WESTBAM
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン

プロフィール

砂原良徳(すなはら よしのり)

1969年9月13日生まれ。北海道出身。電気グルーヴに91年に加入し、99年に脱退。電気グルーヴの活動と平行して行っていたソロ活動では、95年にアルバム『Crossover』、98年にはアルバム『TAKE OFF AND LANDING』、『THE SOUND OF ‘70s』を2作連続リリース。01年に電気グルーヴ脱退後初となるアルバム『LOVEBEAT』をリリース。02年には幕張メッセで行われたフェスティバル“ELECTRAGRIDE”でキャリア初となるソロライブを披露。その他にもACOのシングル「悦びに咲く花」、映画「ピンポン」の主題歌となったスーパーカーのシングル「YUMEGIWA LAST BOY」などのプロデュースや数多くのCM音楽などを手掛ける。09年には映画「ノーボーイズ、ノークライ」(主演:妻夫木聡/ハ・ジョンウ)のサウンドトラック『No Boys, No Cry Original Sound Track』をリリース。2010年には元スーパーカーのいしわたり淳治とのユニット<いしわたり淳治&砂原良徳>を結成し、相対性理論のやくしまるえつこをボーカリストに迎えてシングル「神様のいうとおり」をリリース。2011年4月には10年振りのオリジナルアルバム『liminal』をリリース。2015年には高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、ゴンドウトモヒコ、LEO今井とともにMETAFIVEを結成し、2016年1月にアルバム『META』をリリースした。

山口一郎(やまぐち いちろう)

1980年生まれ。北海道出身。サカナクションのボーカリスト兼ギタリスト。2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。日本語を巧みに扱う歌詞とフォーキーなメロディーを土台にロックバンドフォーマットからクラブミュージックアプローチまで様々な表現方法を持つ5人組のバンドとして活動を行う。2015年、クリエイター・アーティストと共に音楽に関わる音楽以外の新しい形を提案するプロジェクト「NF」を恵比寿LIQUIDROOMで定期開催。10月には11thシングル『新宝島』がリリースされた。リリースとほぼ同時に全国ツアー『SAKANAQUARIUM2015-2016 "NF Records launch tour"』がスタート。2016年3月まで各地をまわる。

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