
cero、OGRE、D.A.N.の担当者たちが語る、日本インディー15年史
『TOKYO MUSIC ODYSSEY』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:永峰拓也
メジャーからインディーズにいくというと、昔は「メジャー落ち」みたいな言葉があったじゃないですか? でも、(OGREは)そういう認識は全然ないですね。(柴崎)
―さきほど柴崎さんから「邦楽のインディーで『DIYでやっていくんだ』という意識のある人たちと出会って、自分もそういう価値観になっていった」というお話がありましたが、特に誰との出会いが大きかったのでしょうか?
柴崎:それはトクマル(シューゴ)さんが一番大きいかもしれないです。クリエイティブな作業はもちろん、いろんな面でDIYなスタンスで面白いことをしよう、という意識がありますよね。
―OGRE YOU ASSHOLE(以下、OGRE)とトクマルさんは、それぞれの道を歩みつつも、時代感としては並走してきたような印象があります。
柴崎:OGREは逆にメジャーからインディーに来たわけですが、まず第一に彼らの創作性をいい形で高めるための環境作りについて相談を重ねる中で、P-VINEと一緒にやってくれることになったんです。メジャーからインディーズにいくというと、昔は「メジャー落ち」みたいな言葉があったじゃないですか? でも、そういう認識は全然ないですね。
―おそらく外側の多くの人も同じ感覚だと思います。それは「OGREだからこそ」という部分もあると思いますし。
角張:僕はOGREのことはUKプロジェクト(2007年頃に所属していたレーベル)のときから知ってるんです。キセル(カクバリズム所属)のことをすごく好きだと言ってくれて、よく一緒にライブをやってくれていて。で、P-VINEに移籍する前に、「P-VINEってどうですか?」って相談してくれて、「柴ちゃんのところだったら絶対いいよ」と話した記憶があります。OGREはすでに圧倒的な存在だし、このまま続いていったら半端ないバンドになるだろうなって思いますね。
北澤:OGREって、メンバーの地元が長野県じゃないですか? D.A.N.のサポートをやってる小林うてなちゃんも、出戸さん(OGRE YOU ASSHOLEのボーカル)と同じ長野県の原村出身なんですよ。
柴崎:出戸くんが「うてなちゃんは赤ちゃんの頃から知ってる」って言ってました(笑)。
―OGREは、今も地元の長野県を生活の拠点にしていることも、オルタナティブなスタンスに影響を与えてそうですよね。
柴崎:それこそ携帯の電波が入らないところもあるような村で、いい意味でシーンと隔絶してるというか、閉じこもってるわけじゃないんだけど、あまり雑音が入ってこない環境なので、それは音楽や活動スタンスにも影響してるんじゃないかと思いますね。
まず現場での発信力があって、それがSNSと合致すると、よりパワーを増す。(角張)
―2010年前後のOGREはサカナクションやthe telephonesと一緒に大きなイベントに出る一方で、「ネスト系」(渋谷O-nestを中心とした動き)と呼ばれたライブハウスシーンにもいて、トクマルさんやgroup_inouなどと近いところにもいました。そして、今は落ち着くべき場所としてP-VINEに来たような印象があります。こうした変遷というのは、ネットによって音楽のあり方が変わる流れとどこかシンクロしていたような気もするのですが、みなさんはどのような印象をお持ちですか?
柴崎:シーンというものは後付けだと思うんですけど、それが仮にあるとするなら、ライブハウスの発信力というのは大きいと思います。
角張:まずネストとかWWW、レコードショップのJET SET、ココナッツディスクなどでの現場での発信力があって、それがSNSと合致すると、よりパワーを増すというか。『Shimokitazawa Indie Fanclub』(下北沢の複数会場で開催されるライブサーキットイベント)とかだと、ネット上でちょっと話題に上がったバンドって、すぐ入場規制になるんですよね。ライブ2、3回目にも関わらず、「とりあえず観ておこう」みたいなお客さんが集まるから。ただ、「シーンなのか?」というと、これはまだわからないというか……バンドの知名度が広がるスピードは速くなっていると感じますけどね。
北澤:SoundCloudとかYouTubeで、音源を直接ユーザーに届ける機会がここ数年で格段に増えていて、うちのバンドは特にそのタイミングで出てきているので、ネットからの発信力は感じていますね。デモの音源をSoundCloudにあげたりすると、すぐ反応があったりする。僕らの時代からすると、遠回りしなくてもユーザーに直で届けられるというのは、プロモーションとしてすごく有効に活かせる便利な時代だなって思いますね。
―D.A.N.はまさに今おっしゃったSoundCloudやYouTube、そしてその前に角張さんがおっしゃったライブハウスの発信力とSNSの合致によって、2015年を代表する新人になったと思います。まだフルアルバムも出していないのに、一気に名前が広まりましたよね。
北澤:まだEPと配信しか出してなくて、4月にようやく1stフルアルバムを出すところですね。結成から数えてもまだ1年半で、リミックスを除けば、世に発表してるのは4曲だけ。一番新しい“POOL”に関しては、EPを出してからアルバムができるまでに時間が空いてしまうけど、そのあいだに何かアクションを起こしたくて、ライブで評判がよかった“POOL”をあえて配信のみで出したんです。音源でガラッとアレンジが変わりましたけど。
角張:D.A.N.は2014年の10月に法政大学の学園祭でユアソンの前くらいに出てたんですよ。メンバーが「かっこいいバンドがいる」って言ってて、「へー」と思ってたら、北澤さんから「今度出すんですよ」と聞いて、「早いな!」って(笑)。
―最近30代半ばくらいのミュージシャンにインタビューをすると、「D.A.N.いいよね」という話になることが多いです。
北澤:実際、30代から40代の業界関係者とミュージシャンからの評判はいいですね。
柴崎:僕もD.A.N.はめちゃめちゃかっこいいと思っていて。音楽オタクっぽいところが好きなのかも。自分もそういう気質があるので(笑)。「この人たちとにかく音楽が好きなんだろうな」っていうのがわかるし、それが小手先じゃなくて、ちゃんと肉体的なバンドサウンドになってる。僕も「D.A.N.かっこいいよね」っていろんな人と話をしました。
イベント情報
- 『TOKYO MUSIC ODYSSEY』
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「TOKYO MUSIC ODYSSEY」とは、スペースシャワーTVがプロデュースする、音楽を中心に音楽と親和性の高いカルチャーも巻き込んで開催する複合イベントです。素晴らしい音楽の発信、新しい才能の発掘を通して、音楽の感動を多くの人に伝え、体験できるリアルスペースを提供します。私たちの心を揺らし、人生を豊かにしてくれるアーティスト、クリエイターが最高に輝く場所を創ることを目指します。そして、未来へ続く音楽文化の発展へ貢献していきます。「TOKYO MUSIC ODYSSEY」は5つのコンテンツで構成、イベントを開催いたします。(オフィシャルサイトより)
- 『SPACE SHOWER NEW FORCE』
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2016年2月16日(火)OPEN 16:30 / START 17:30
会場:東京都 渋谷WWW
出演:
Suchmos
DAOKO
never young beach
Mrs. GREEN APPLE
LILI LIMIT
あいみょん
- 『SPACE SHOWER ALTERNATIVE ACADEMY』
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2016年2月23日(火)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 渋谷WWW
出演:
OGRE YOU ASSHOLE
D.A.N.
Albino Sound
Qrion
※ceroは出演キャンセルになりました
- 『SPACE SHOWER MUSIC AWARDS』
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2016年2月28日(日)
会場:東京都 国際フォーラム ホールA
イベント情報
- 『SPACE SHOWER MUSIC ART EXHIBITION』
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2016年3月4日(金)~3月6日(日)
会場:東京都 渋谷 space EDGE
時間:11:00~19:00(3月5日は20:00まで)
『ART EXHIBITION』参加作家:
植本一子
オオクボリュウ
太田好治
上岡拓也
児玉裕一
谷端実
cherry chill will
本秀康
山根慶丈
鷲尾友公
ほか
料金:無料『CREATOR'S SESSION』
2016年3月5日(土)17:00~18:00
トーク:
福田哲丸(快速東京)
富永勇亮(dot by dot inc.)2016年3月6日(日)15:00~16:00
トーク:
evala
YKBX2016年3月6日(日)17:00~18:00
トーク:
コムアイ(水曜日のカンパネラ)
児玉裕一
山田智和※トークは予約制
プロフィール

- cero(せろ)
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Contemporary Exotica Rock Orchestra 略してcero。様々な感情、情景を広く『エキゾチカ』と捉え、ポップミュージックへと昇華させる。2015年5月27日に、3rd Album『Obscure Ride』をリリース。オリコンアルバムチャート8位を記録し、現在もロングセールスを記録中。2016年5月21日には日比谷野外音楽堂にて、7月10日には大阪城野外音楽堂にて、ワンマンライブ『Outdoors』を開催。角張渉は、ceroが所属するレーベル・マネージメント会社「カクバリズム」の代表。

- OGRE YOU ASSHOLE(おうが ゆー あすほーる)
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メンバーは出戸学(Vo,Gt)、馬渕啓(Gt)、勝浦隆嗣(Drs)、清水隆史(Ba)の4人。2005年にセルフタイトルの1stアルバムをリリース。2009年3月にバップへ移籍し、シングル『ピンホール』でメジャーデビュー。2014年10月には、P-VINE RECORDS より6thアルバム『ペーパークラフト』をリリース。柴崎祐二は、P-VINE RECORDSにてOGRE YOU ASSHOLEのA&Rディレクターを務める。

- D.A.N.(だん)
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2014年8月に、櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人で活動開始。様々なアーティストの音楽に対する姿勢や洗練されたサウンドを吸収しようと邁進し、いつの時代でも聴ける、ジャパニーズ・ミニマル・メロウをクラブサウンドで追求したニュージェネレーション。『FUJI ROCK FESTIVAL '15《Rookie A Go Go》』に出演。北澤学は、D.A.N.が所属するレーベル「BAYON PRODUCTION」の代表。