インタビュー

minus(-)藤井インタビュー 急逝した森岡賢への想いと今後を語る

minus(-)藤井インタビュー 急逝した森岡賢への想いと今後を語る

インタビュー・テキスト
小野島大
編集:矢島由佳子

minus(-)の森岡賢の訃報が伝えられたのは去る6月7日のことだった。ニューアルバムの完成を間近に控え、ツアーのチケット売り出しが始まる矢先の、あまりにも唐突な死。ネット上ではファンだけでなく、彼を身近で知るミュージシャン仲間の追悼の書き込みが溢れ、故人の人柄を偲ばせた。

残されたminus(-)のメンバーである藤井麻輝にインタビューする機会を得た。1983年、18歳の時に1歳年下の森岡と出会い、遠藤遼一(Vo)とともにSOFT BALLETを結成。以降30年以上もの間、「腐れ縁」(藤井談)であり続けた唯一無二の盟友は、今なにを考えているのか。ニューアルバム『O』の仕上げと、森岡抜きのminus(-)のライブの仕込みに忙殺される中、話を訊いた。

2時間近くにも及んだインタビュー、そして終了後の酒席に於いても、ついに藤井は「悲しい」「寂しい」「辛い」といった感情的な言葉を一切漏らすことがなかった。だが彼は何度も何度も、minus(-)に感じていた強い手応えと充実感を語り、本当にもったいないし悔しい、残念だと繰り返していたのが印象的だった。

(森岡が)「いなくても見える」と思うんですよ。音を聴いて、イメージが喚起されれば、腰振ってクネクネしてる人が見えちゃうと思うんです。

―森岡さんが亡くなったのは、ちょうどminus(-)のアルバム作りが佳境に差し掛かっている時だったんですよね。

藤井:はい。本来なら昨日(6月16日)がマスタリングの日でした。

森岡賢
森岡賢

―作業は中断してるんですか?

藤井:いや、進んでます。一旦分解して、そこから始めてるところです。今までだったら、リリースして、ライブでそれをアップデートして、というスタンスだったんですけど、「次」がなくなっちゃったから、アルバムで完成、完結させなきゃいけない。つまり、以前はアルバムの段階では、あえて作り込まない状態で出していたんです。ライブという「次」があるから。でも「次」はもうない。だからアルバムの段階で、この時点でのminus(-)の完成形だよ、というものを作らなきゃいけない。そのために、もう一回ハサミを入れ始めているわけです。

―なるほど。森岡さんの訃報を受けて、予定されていたツアーのほとんどが中止になったわけですが、8月13日の赤坂BLITZ公演だけが開催される方向だとお聞きしています。これはどうしてですか?

藤井:BLITZは去年から決まっていて、その時既にminus(-)の音でやりたいステージングがあって。僕としても確固たるビジョンがあって、それはやってみたいステージのひとつなんで、1公演は残しておきたかった。

―なるほど。しかしminus(-)の大事なパートナーが不在の状態でのライブになるわけですよね。

藤井:ビジュアル面で確かに彼がいないのは大きい。ただ人間の脳って意外に面白い働きをするもので、「いなくても見える」と思うんですよ。音を聴いて、それによってイメージが喚起されれば、たぶん腰振ってクネクネしてる人が見えちゃうと思うんです。それぐらいで十分なのかなと。だから……けっこう本気で企画してたんで。これは飛ばせないんですよ。僕の節目としても飛ばしたくないライブだった。もちろんツアーもそうなんですが、さすがに全公演やるのは難しいので……。

5月29日に公開された、ツアーの予告映像

―あとは11月19日に恵比寿LIQUIDROOMで、Jとの対バンが予定されています。

藤井:もう発表されたあとでしたからね。こちらの事情はどうあれ、先方に迷惑かけるわけにはいかないし。もちろんこちらの事情を説明して、先方の意思を確認して、出ることにしました。

―そのあとは制作中の新作『O』が出て、そこでminus(-)としての活動は一段落でしょうか。

藤井:実はあと1回決まっていて。昨年12月28日に新宿Renyでワンマンをやったんですけど、その時毎年決まった日に同じ場所でライブをやろうということになって、もう会場も押さえてたんですよ。minus(-)として決まっていた予定はできる範囲で粛々とやりたい、というのもありまして、そのライブはやろうと思ってます。

藤井麻輝
藤井麻輝

―なるほど。森岡さんがいなくなって、藤井さんの中でminus(-)というものの位置づけはどう変わってきましたか?

藤井:そもそもminus(-)は、僕が音楽活動に復帰して(2011年~2014年、藤井は音楽活動から離れていた)(minus(-)藤井、震災後に建築現場で働くことを選んだ表現者の想い)、とにかくライブがやりたいというところからスタートしたんです。でも一人じゃなんだから、ということで思い浮かんだのが森岡だった。「手持ちの素材で曲になってないようなものがあれば、僕が曲にするから、とりあえずやろうよ」って声をかけたんですよ。

それで2年前の5月に高円寺HIGHで初ライブをやったんですけど、そもそもその高円寺HIGHのライブのためのユニットであって、そのあとの長期的なビジョンがあって始めたわけじゃない。それがなんだかんだ気がついたらミニアルバムが2枚出て、フルアルバムまで決まって。

2014年5月に行われたライブのダイジェスト映像

―求められるままやっていたという感じなんですか。

藤井:いや、僕も楽しんでたんですよ。まるでアマチュアバンドがCDを出すまでの過程を体験してるような新鮮な気持ちでやれていた。このぐらいのキャリアがあると、予めいろいろ決まった上で動くじゃないですか。

―事前に計画を立てて。

藤井:はい。でもminus(-)はある意味そうじゃない。僕らとしてはその過程がいちいち新鮮で楽しかった。このままどんどん大きくなっていけばいいなあと思ってましたね。

―楽しんでいたし、手応えを感じてもいた。それは睡蓮やSCHAFTの我が身を削るようなしんどさとは違っていたわけですよね。

藤井:minus(-)もかなりしんどいですよ(笑)。違った意味の苦労が数百倍あったんで。でも……なんて言うんだろうなあ……僕と森岡の関係性ってかなり独特なんで。それはたぶん外からはわからないと思うんですけど……ガンガン貶しながら積み重ねていける感じ?

―付き合い長いわけじゃないですか。

藤井:32年ですからね。

―お互いのことは十分知り尽くして……。

藤井:いや……接触のない期間も長かったですからね。うーん……なんとも言えない関係性ですね。

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イベント情報

『minus(-) TOUR 2016 summer“Voltaire”』

2016年8月13日(土)
会場:東京都 赤坂BLITZ
※7月16日10:00からチケット販売再開

『J 2016 LIVE <10 days of GLORY -10 Counts for Destruction->』

2016年11月19日(土)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:
J
minus(-)(スペシャルゲスト)
※7月30日10:00からチケット一般発売開始

プロフィール

minus(-)
minus(-)(まいなす)

元SOFT BALLETの藤井麻輝と森岡賢によるユニット。2014年5月に結成。ニューウェイブ、エレクトロニカ、ノイズという要素を交え、他にはないオリジナリティに溢れたサウンドを構築。10月22日に1stミニアルバム『D』をリリースし、その後、LUNA SEA主催のフェスを始め、ヒカシュー、BELLRING少女ハート、石野卓球、SUGIZO、THE NOVEMBERSといった幅広い相手との対バンを行なう。2015年12月9日には2ndミニアルバム『G』をリリース。12月28日には新宿ReNYでのワンマンライヴを成功させた。

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