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インスタントな表現と時代への警鐘 YJYゆう姫×ショウダユキヒロ

インスタントな表現と時代への警鐘 YJYゆう姫×ショウダユキヒロ

『KAMUY』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:高見知香 編集:山元翔一

今回はいまの社会を前提に考えるというより、もっと根本的に、人の生や愛について考えたり、表現してみたかった。(ゆう姫)

―僕たち人間同士や、人間と社会は、目には見えないレベルでも影響を与え合っている。……感覚的にはわかる気がしますが、具体的にはどういうことでしょうか?

ショウダユキヒロ:たとえば、人間は生まれてから経験するいろんな因果関係の中で、自分を形成していくものだと思うんです。それを突き詰めて考えると、こうして人がひとつの空間に集まって話していることも、お互いに作用しあっているわけですよね。

―会話ひとつとっても、そこで得たものがその人の人格に影響を与えることはありえるし、そもそもひとつの空間を共有することでもお互いに何かしらの影響は生じると。そしてそれは、音楽や映像、表現全般と人の関係について言えることでもありますよね。

ショウダユキヒロ:ほかにも僕たちは、空気をはじめとした自然環境からも影響を受けている。それを人は普段、「社会的影響」などと簡単に言っていますが、その実態はなかなか捉えられないじゃないですか。それをあえてビジュアルで表現したら、面白いと思ったんですね。

ゆう姫:今回のコラボレーションは、まさにその影響関係の具体例。このメンバーでなければこの作品にならなかった、というものになっています。でも、「影響」は目に見えないものだから、「映像的にどう表現するんだ?」と途中で気がつきました(笑)。

左から:ゆう姫、ショウダユキヒロ

ショウダユキヒロ:ひとしきり話が盛り上がったあと、「あれ?」ってね(笑)。それを感じさせる仕掛けとして、虹郎が演じる兵士は、閃光や爆弾で目が見えなくなっている、という設定にしました。見ることができないゆえに、目に見えないものを敏感に感じ取ってしまう。虹郎には、そんな僕たち人間の象徴としての存在を演じてもらいました。

―「目には見えない何か」を描くというコンセプトを反映させた設定だったと。

ショウダユキヒロ:『KAMUY』の映像は、兵士がお腹に宿した赤ちゃんの視点で進んでいくんです。その視線が、岐阜県の神岡町にあるニュートリノ(素粒子の一種)の観測施設「カミオカンデ」など、目に見えないエネルギーを象徴する場所を辿っていくことで、その力の存在をあらためて表現しています。

―普段意識しないような影響の存在に、いまあらためて目を向けるのはなぜですか?

ショウダユキヒロ:今回の作品は、何か具体的な社会の状況に対するアクションではないんです。ただ、自分の振る舞いや発言が、他人のお腹の赤ちゃんにまで影響を与えうるという、想像力や責任感を持つこと。それは大事なことだと思います。社会の一員としての責任というものが、具体的にあるということ。そういったことを感じてもらえたらな、とは思います。

ショウダユキヒロ

―社会で生きるための「想像力」や「責任感」を意識させる。そういったメッセージも忍ばせていると。ゆう姫さんはいかがでしょう?

ゆう姫:私の場合、今回はいまの社会を前提に考えるというより、もっと根本的に、人の生や愛について考えたり、表現してみたかった。でもそれらは結局、社会の基礎になっていることでもあるので、そこからいまの社会を考えることもできると思うんです。

―個人の生き方や愛を表現することが、結果的にいまの社会に目を向けることにもなる。

ゆう姫:そうですね。じつを言うと私自身も、撮影当日になるまで、これがどんな映像になるかわからなかったんです。いまのお話もそうですが、ショウダさんの発想は常人じゃないから(笑)。でも、撮影現場を過ごしている間に、こういうことだったんだと、どんどん辻褄が合ってきて。

―ショウダさんの頭にとりあえず飛び込むと、あとから全貌が見えるみたいな。

ゆう姫:うん。監督はそれくらい、奇想天外なことばかり言っているんです(笑)。

社会に生きていれば、誰もが感じているような見えない空気――その見過ごしてしまいがちなものを、ビジュアルに落とし込みたい。(ショウダ)

―ただ、『KAMUY』に使われたメインの楽曲“A Way Out”の歌詞は、いまのお話とも響き合います。<Make me a cause to be with you>、つまり「あなたがいないと私は存在しない」という一節もありました。

ゆう姫:この曲は、もともと作っていた楽曲に、あとから少し歌詞を足したものなんです。『KAMUY』とこの曲の歌詞の世界観が合っていたので、「こんな曲があります」と。

ゆう姫

ショウダユキヒロ:教えてもらって、「ばっちりじゃん」と思いました。

―もともとあった詞なんですか。あまりに作品に合っているので、てっきりこのために書いたものものかと。「あなたになりたい」と「私を見つけて」という、一見、矛盾した感情が綴られていて、興味深く聴きました。最初に書かれたときの思いとは?

ゆう姫:私の中に寂しさや、「誰かが私のことを助けてくれたらいいな」という、すごくわがままな気持ちがずっとあって、それを歌詞に書いていたんです。自分の秘密もすべて教えるから、求めてほしい。そんなデスパレートな、愛の渇望の歌。でもその愛は、誰かがいないと満たされないもので、それがこの映像と、とても合致したんですよね。

―ショウダさんがお話されていた“Animation”のMVの世界観にも、どこか通じていますよね。この映像では、ゆう姫さんの顔がさまざまに変形しますが、「私」というものは自明なものではないと感じさせる。世界との交感の中で、作られていると。

ゆう姫:基本的に自分が考えることは、どんな人でも考えることなんじゃないか、という思いで歌詞を書いているんです。そうした姿勢で日々を過ごしているから、私があなたになったり、あなたが私になったりという世界観は身近にある。それが、自分のテーマのひとつになっていると思います。

よく、「他人は自分の鏡」と言うじゃないですか。それは本当だと思う。世界が憎く思えたら、じつは自分の方が、世界をそう見ているのかもしれない。すべてのものは表裏一体で、つながっているのではないかと思います。

ショウダユキヒロ:そうした思いは、僕にもあります。僕はやっぱり、社会から離れて、山奥で小さなコミュニティーを作って、作品制作をしたいとは思わないんです。社会に生きていれば、誰もが感じているような見えない空気――その見過ごしてしまいがちなものを、ビジュアルに落とし込みたいというのが、これまでの作品にも共通することだと思う。

ショウダユキヒロ

ゆう姫:すべてがエフェクトするなら、あらゆることと無関係ではいられないということ。今回はそうした思いから、実際の映像の上映方法にもとてもこだわっているんです。

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作品情報

『KAMUY』

2016年10月29日(土)、10月30(日)に代官山ヒルサイドプラザCで上映
監督:ショウダユキヒロ
主題歌:Young Juvenile Youth“A Way Out”
音楽:JEMAPUR(Young Juvenile Youth)、小野雄紀
出演:
村上虹郎
ゆう姫(Young Juvenile Youth)
配給:NION

リリース情報

Young Juvenile Youth『Youth / A Way Out』
Young Juvenile Youth
『Youth / A Way Out』

2016年10月28日(金)からiTunes Storeで配信リリース
価格:750円(税込)

1. Youth
2. A Way Out
3. Youth(Tropical Cold Flip)

Young Juvenile Youth『Youth / A Way Out』数量限定
Young Juvenile Youth
『Youth / A Way Out』数量限定(カセットテープ)

U/M/A/A Storeで予約受付中
価格:1,620円(税込)

[SIDE-A]
1. Youth
2. A Way Out
3. Youth (Tropical Cold Flip)
4. A Way Out (Deconstruct Dub)
[SIDE-B]
5. Hive (Stretch)
※オリジナルDropcard(DLカード)付き

プロフィール

ゆう姫
ゆう姫(ゆうき)

Young Juvenile Youthのボーカルとして電子音楽家のJEMAPURとともに2012年に活動を開始。15年にはiTunesが世界中のニューカマーの中から厳選する「NEW ARTIST スポットライト」に選出された。同年リリースされたミニ・アルバム「Animation」は、iTunesエレクトロニック・チャートにおいて最高7週1位を獲得。Taicoclub、朝霧JAM、EMAF TOKYOなどへ出演や、2016年初頭にはMETAFIVEのオープニングアクトをつとめるなど、精力的にライブ活動も行っている。

ショウダユキヒロ
ショウダユキヒロ

1980年生まれ。大阪市出身。サカナクションやRADWIMPS、androp等のMVや、CM、ショートフィルム、ドキュメンタリー等ジャンルに縛られず活動中。特に2011年発表の『blind』「SOCIAL 0.0 LAB」や翌12年のTOWER RECORDS「LIVE LIVEFULL!」等で話題を集める。近年ではTOYOTAのワールドCP「Get Going」や国内外のディレクター達で制作プロダクションNION(ナイオン)をたちあげるなど、海外展開も広げている。

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