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人生を少し輝かせる、下司尚実の演劇とスズキタカユキの服の話

人生を少し輝かせる、下司尚実の演劇とスズキタカユキの服の話

シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.9 泥棒対策ライト◎11号機設置公演『ドラマティック横丁』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:野村由芽、宮原朋之

泥棒対策ライト、という一風変わった名前の集団がいる。演出家でパフォーマーの下司尚実が主宰する同集団は、パントマイムや演劇の要素を使いながら、誰もが共感する生の感覚や記憶に関わる作品を数多く手がけてきた。

そんな彼女たちの公演が、まもなくシアタートラムで幕を開ける。代表作『ドラマティック横丁』の再演となる今回、衣装にファッションデザイナーのスズキタカユキを招いて、より大きな挑戦に取り組む。

スズキタカユキは自身のブランド「suzuki takayuki」を主宰するだけでなく、「マームとジプシー」などの人気劇団にも衣装を提供し、音楽家×裁縫師×照明作家がコラボレーションする「仕立て屋のサーカス」としても活動する。下司とスズキは、本作においてどんな試みを行うのだろうか。

スズキさんの衣装を着ていると、自分の中のドSの部分とドMの部分が混ざる。(下司)

―今回、シアタートラムで再演する『ドラマティック横丁』は2014年初演の作品ですね。世田谷パブリックシアターの劇団公募企画である『シアタートラム ネクスト・ジェネレーション』に同作をぶつけてきたこと、加えて衣装にスズキさんを起用したところに下司さんの大きな覚悟を感じます。

下司:2年前の『ドラマティック横丁』は、自分の代表作になるものを作ろうと思って挑んだ作品で、上演後も個人的にとても大事に温めていたんですね。温めると言いつつ、放置していた感もある(笑)。それで『シアタートラム ネクスト・ジェネレーション』の公募が始まったときに、初演した会場のspace EDGEと今回のシアタートラムの空間の印象がかなり近かったのでこの作品で応募したんです。

もちろん再演するならもっと大きな作品に育てたいし、俳優も含めた新しい人たちと取り組みたかった。『ドラマティック横丁』自体、いろんな人の人生を主題にしたものですから、上演ごとにまったく違う人たちと関わるのは自然なことなんです。

『ドラマティック横丁』 撮影:buu otsuka
『ドラマティック横丁』 撮影:buu otsuka

―今年4月に上演した『一寸先ワルツ』でもスズキさんが衣装を担当されていますが、最初にお二人が出会ったのは?

スズキ:たしか3年前の『仕立て屋のサーカス』だよね。

左から:スズキタカユキ、下司尚実
左から:スズキタカユキ、下司尚実

下司:そうそう。『仕立て屋のサーカス』を企画してる曽我大穂さん(CINEMA dub MONKSを主宰する音楽家)を通じてだったんですけど、その2週間後の公演にいきなり私がダンサーとして参加することになって、完全な即興で始まり、着るし踊るし、衣装を切られるしで……スズキさんとちゃんとご挨拶する前にステージ上で遭遇するという(笑)。

スズキ:楽しかったですね~。

下司:私も本当に楽しかった。それでいつか、スズキさんに衣装をお願いしたいと思いつつ、やっとお互いのタイミングが合ったのが『一寸先ワルツ』だったんです。

スズキタカユキが衣装を手がけた『一寸先ワルツ』 撮影:buu otsuka
スズキタカユキが衣装を手がけた『一寸先ワルツ』 撮影:buu otsuka

『一寸先ワルツ』 撮影:buu otsuka
『一寸先ワルツ』 撮影:buu otsuka

―衣装を着てみていかがでしたか?

下司:「小細工なんてするなよ!」と奮い立たされているようで、着る人が嘘を付くことを許してくれない衣装なんですよ。自分の中のドSの部分と、ドMの部分が混ざる感じ。

スズキ:服が下司さんをしんどくさせたんですね(笑)。

下司はスズキタカユキの服を着て取材に臨んだ
下司はスズキタカユキの服を着て取材に臨んだ

下司:その厳しめなのがいいなあと思ったんですよ。衣装合わせの段階からつば迫り合いの勝負が始まってる感じです。今回の『ドラマティック横丁』は私にとってまさに勝負のタイミングなので、ここは絶対にスズキさんにお願いしたい、と!

―スズキさんは初めて会った時の下司さんの印象はいかがでしたか?

スズキ:下司さんが参加した時の『仕立て屋のサーカス』のパフォーマンスは、すごく楽しめたんですよ。うちのメインメンバーは5人いるんですけど、下司さんが6人目のメンバーと言っても過言ではないくらいでした。だから前回と今回ご一緒するのも自然でした。

下司:ふふふ(笑)。

『仕立て屋のサーカス』
『仕立て屋のサーカス』

―やりとりはどんな風に進んでいますか?

スズキ:まだふんわりした感じで、稽古を拝見しながら進めています。だから実際のデザインや縫製もこれからです。ただ稽古の様子を見ていると下司さんは人の活かし方がすごく上手だなあっていつも思う。人や場に漂うエネルギーをちゃんと同じ方向に導いていて、それはお客さん目線で見た時に、心地よい流れや抑揚になっているのがわかる。だから洋服を作る側としてはすごくやりやすい。

スズキタカユキ

―デザイナーにとって「やりやすい / やりにくい」の基準ってどういうものでしょう?

スズキ:断言するのは難しいですけど、演出家本人の中で伝えたいこと、目的がはっきりしている、ってことでしょうか。つまり本人が何に興味があって、何を見せたいと思っているかが明確ってことです。

下司:実際、衣装合わせでも、本当にぴったりくるものを提案してくれるから、いったいスズキさんはいつの間にこんなに理解してるんだろう、って驚きます。

下司尚実

スズキ:しっかり見てないとだめだけど、細かく見ればいいわけではないんだよね。全体としてどうなのか、どういう関係性と人間模様がそこにあるのか、それを掴みたいんです。

さっき「人生」って言葉が出たけれど、下司さんは本当に人間一人ひとりが日々を生きていくことを大切にしているのが稽古からわかるんです。まず個を大切にするっていう原則があるから、その集まりである全体にもしっかりとした筋道がある。そのことがやりやすさに繋がっていると思います。

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イベント情報

泥棒対策ライト◎11号機設置公演『ドラマティック横丁』
シアタートラム ネクスト・ジェネレーション vol.9
泥棒対策ライト◎11号機設置公演『ドラマティック横丁』

2016年12月22日(木)~12月24日(土)全3公演
会場:東京都 三軒茶屋 シアタートラム
作・演出・振付:下司尚実
出演:
佐々木富貴子
鈴木美奈子
傳川光留
長尾純子
丸山和彰
若松力
渡辺芳博
下司尚実
料金:一般3,500円 U24チケット2,500円 小・中・高校生1,000円 友の会会員割引3,000円 せたがやアーツカード会員割引3,200円 未就学児500円
※チケット詳細は公式サイトまで
※12月23日終演後はスズキタカユキがゲストのポストトークあり

プロフィール

下司尚実(しもつかさ なおみ)

振付家・演出家・ダンサー。自由形ユニット「泥棒対策ライト」主宰。個性を活かしたぬくもりのある時間創りを得意とする。振付・演出助手・出演での参加作品に、小野寺修二『空白に落ちた男』、NODA・MAP『エッグ』、『逆鱗』、野田秀樹演出オペラ『フィガロの結婚』、近藤良平『山羊ボー走』、康本雅子『絶交わる子、ポンッ』ほか多数。彩の国さいたま芸術劇場日本昔ばなしのダンス『いっすんぼうし』では演出を手がけた。ダンス、芝居などジャンルを問わず幅広く活動している。

スズキタカユキ

1975年愛知生まれ。東京造形大学在学中に友人と開いた展示会をきっかけに映画、ダンス、ミュージシャンなどの衣装を手掛けるようになる。2002-03A/Wから「suzuki takayuki」として自身ブランドを立ち上げる。舞台衣装なども数多く手がけ、自身も現代サーカスグループの「仕立て屋のサーカス」で、金沢21世紀美術館など国内外で多数の公演を行っている。次回は2017年1月に新宿 LUMINE0にて公演を予定している。

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