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arko lemmingが静かに問う「こういう奴がいた方が面白くない?」

arko lemmingが静かに問う「こういう奴がいた方が面白くない?」

arko lemming『S P A C E』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:高見知香 編集:山元翔一

2016年は知り合いとか身内の訃報が多くて。でも、僕は死をそこまでネガティブに捉えていない。

―今おっしゃった「ふたつを合わせてひとつになる」というのは、アルバム全体のテーマでもあって、“dual-O”“dual-I”の歌詞でも言い表していますね。

有島:そうですね。「ふたつでひとつ」というアルバムのテーマと照らし合わせつつ、陰と陽のどちらも肯定して、結局はひとつのものだ、ということを言っているんです。発していることは同じなんだけど、聴こえ方が変わるように作りました。

―たとえば、“dual-O”では「全快」という言葉を使っているところが、“dual-I”だと「全壊」と歌っていたりします。

有島:そうです。“dual-O”だとポジティブに聴こえて、“dual-I”だとネガティブに聴こえる。

―<全然もう答えは出ず 本当は間違っている でも延々と続いてゆく それだけのことでしょう>という歌詞からはある種の「諦念」が感じられます。ただ、「諦念」というのも、そのままネガティブに捉えることもできるし、「何かを諦めることで、何かを手に入れられる」というポジティブな解釈をすることも可能ですよね。

有島:2016年は知り合いとか身内の訃報が多くて、その影響もちょっと出ていると思います。妙な達観というか。前回の映画のインタビューでも言ったんですけど(樹海で彷徨う生を描く『追憶の森』に見るガス・ヴァン・サント節)、僕は死をそこまでネガティブに捉えていないこともあって、その感じが出ているのかな。

有島コレスケ

―どこか客観視しているような視点も、有島さんらしさであり、「転勤族の一人っ子」的な視点と言えるかもしれないですね。

有島:わりと自分を観察する癖がありますね。身内の不幸を目の当たりにしたときに、自分がどう思うのかを観察している自分もいるというか。妙に冷静な自分もいて、その視線や考え方が歌詞に出てるのかなって思います。

僕が言いたいのは「もっと自由であれ!」ってことですね(笑)。

―「OUTER」と「INNER」には、「OUTER」が「想像上の、外の世界」、「INNER」が「本当の、外の世界」という裏設定もあるそうですね。

有島:前作では自分の思っていることがそのまま歌詞になっていたんですけど、今回はフィクションの歌詞を創作したかったんです。結局、完全に創作というわけではなく、自分が思っていることが混ざったりもしているんですけど、まずはストーリーや世界観を創作したうえで、その中の人の暮らしをイメージして、アレンジや作曲をしていきました。

―どこかSF的というか、ディストピア的な世界観が印象的です。

有島:架空の人間の暮らしている世界を思いながら作っていたんですけど、途中で「どうやらこの世界にはこの人しかいないぞ」と、自分の中で気づいて。そこから、「その人、一人しかいない世界」というのが裏設定になったので、自然音を入れてみたりしました。

―ディストピア的な設定に、なぜ自然音を?

有島:自然音を入れることで、人がいない感じを出したかったという意図があります。でもその自然音は、実際に録ってきた音ではなくて、PCやシンセに入っているプリセットの音を使っているので、妙な無機質さも出せるんじゃないかという狙いがあったんです。

有島コレスケ

―少し話を大きくすると、いわゆるSF的なテーマ性、「利便性を求めすぎる現代社会に対するアンチテーゼ」みたいな部分もあったりするのでしょうか?

有島:そうとも言えるかもしれないですけど、そこまでメッセージ性を込めたわけではないです。ただ設定として、そういう世界観でいこうって決めただけなので。ディストピア的な世界観は好きだし、バッドエンドが好きな人間ではあるんですけど、そこまで痛烈なメッセージはないですね。まずは作品として、サラッと聴いてもらえたらそれがいちばんいいかな。

―最初に「今も部活の延長」という話もありましたが、やはりメッセージ性というよりも、シンプルにいい作品、自分が面白いと思う作品を作ることが重要?

有島:根本はそうです。ただ、「こういう奴がいた方が面白くない?」っていう、世の中にプレゼンする気持ちもゼロではないので、それがメッセージと言えばメッセージですかね。もっと自由になって当然というか、そういう意味で僕の存在自体がメッセージ……って言うと、かっこつけた感じですけど(笑)、ひとつのロールモデルみたいになれればいいなと思います。

有島コレスケ

―じゃあ、今後もいろいろな活動を並行して行っていくと。

有島:今のところはそうですね。ありがたいことに、「手伝って」と声をかけてもらったものもあるし、能動的に関わっているものもあるし、そのときどきで……こう言うと、すげえ適当な奴に思われそうだけど(笑)。

―いや、既存の枠組みにハマらない活動の仕方というのは、「多様性」という観点において、とても重要なことだと思います。逆に言うと、周りのバンドマンを見ていて、「窮屈そうだな」って思うこともありますか?

有島:うーん……たまにあります。だって、オマー・ロドリゲス・ロペス(At The Drive-Inなどの活動で知られるアメリカのギタリスト)なんて、今年12枚もアルバムを出してるんですよ(笑)。あの人もバンドめっちゃかけ持ちしてて、他の人の作品に参加もしてるし、それが普通だと思うんですよ。なので、僕が言いたいのは「もっと自由であれ!」ってことですね(笑)。

有島コレスケ

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リリース情報

arko lemming『S P A C E』
arko lemming
『S P A C E』(2CD)

2017年1月11日(水)発売
価格:2,800円(税込)
XSCL-23/4

[CD1]
1. dual-O
2. ニューニュー
3. かなしみはそばに
4. Avéc
5. P.S.
6. Marvellous
7. 傍観者
[CD2]
1. dual-TRACK
2. NO
3. アロウ
4. 水槽の脳
5. weather report
6. at last
7. 夢の中でも
8. dual-I

イベント情報

CINRA×Eggs presents
『exPoP!!!!! volume93』

2017年1月26日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
arko lemming
馬喰町バンド
For Tracy Hyde
トレモノ
and more
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール

arko lemming
arko lemming(あるこ れみんぐ)

有島コレスケが全ての作詞作曲・演奏をこなす一人バンド「arko lemming」。2015年11月に1stアルバム『PLANKTON』をリリース。2017年1月11日には2枚組の2ndアルバム『S P A C E』のリリースを控える。自身が所属するバンド・toldのベースとして活動する一方、ドレスコーズではベースとして0.8秒と衝撃。ではドラムとしてサポート活動を行う。曾祖父は白樺派の文豪、有島武郎。祖父は黒澤明監督『羅生門』で知られる名優、森雅之。

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