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ビョークと世界を周ったcobaが語る、変と笑われた楽器への執念

ビョークと世界を周ったcobaが語る、変と笑われた楽器への執念

coba『coba?』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:高見知香 編集:山元翔一
2017/01/18

カレーはインド発祥で、ヨーロッパを経由して日本に入ってきた。つまり、ものすごく旅をしてきたからこそ、日本のカレーは他のどの国にもない特別なものになっている。

―文化は旅をするほど成熟する、というのはどういうことでしょう?

coba:例えば、カレーはインド発祥で、一度ヨーロッパに渡ってから日本に入ってきた。つまり、かなりの距離を旅しながら日本に入ってきたわけです。だからこそ、日本のカレーは、他のどの国にもない特別なものになっている。それは、音楽、食、ファッションなど、どんな文化に関しても言えることです。

―なるほど。

coba:そう考えると、「cobaのアコーディオン」も同じです。僕がもしヨーロッパに生まれていたら、アコーディオンなんかやっていなかったかもしれない。僕の感性は、アコーディオンを取り巻く日本の独特なカルチャーの中で育まれたものであって、アコーディオンが1万キロの旅をしたからこそ生まれ得たミュータント。そこが世界の他のアコーディオン弾きと一番違うところだと思うんです。

coba

―cobaさん自身も高校卒業後、イタリアに留学をされたんですよね。

coba:そうです。僕が留学したことには大きく2つの理由がありました。日本の音大にはアコーディオン科がなかったし、本場できちんとアコーディオンを学びたかった、というのが1つ。

もう1つは、アコーディオンが生まれたヨーロッパに行けば、僕のようにこの楽器で何か新しいことを、それこそ当時最先端のプログレみたいな音楽をやっている人が必ずいるはずだと思ったこと。そんな音楽を聴いてみたい、そういう存在に会ってみたい、そんな思いを胸にイタリアに行きました。

―実際にイタリアに行かれたことで、「cobaのアコーディオン」はどういうふうに熟されていきましたか?

coba:1つ目の目的は、なんとか果たせました。ヴェネチアのルチアーノ・ファンチェルリ音楽院という、アコーディオンの頂点を目指す学生が世界各地から留学する名門校に入学することができた。ただ、2つ目の目的は果たせずでした。残念ながら本場にもアコーディオンで革新的なことをやっている人は存在しなかった。

タンゴやポルカ、ワルツといったような既存のものではなく、アコーディオンのために生み出された革新的なオリジナルジャンルと呼べるものは、本場にもなかった。そんなわけでイタリア留学の4年間は徹底的にクラシック音楽を学ぶ時間となりました。アコーディオンを変えると豪語している人間が古典を知らないなんて論外ですよね。まずは同じ業界の中で、誰からも文句を言われないような技や音楽性を身につけてから、コンクールに出場する。そうやって箔をつけて日本に帰ってこようと(笑)。そこから猛勉強と猛練習の日々が始まったんです。

coba

―そして、実際に世界コンクールで見事優勝して、日本に帰ってくると。

coba:もちろんみんな驚きました。東洋人初ですから(笑)。それに僕より巧みな演奏者はヨーロッパにはウヨウヨいる。実際、僕の学校の教諭の一人もそのコンクールに出場していたわけですから。未だに僕の何が他よりよかったのかわかりません。ただ、世界1位になって帰国しても、まったく関係ない。日本におけるアコーディオンをめぐる状況は一切変わっていなかった。

―アコーディオンに対する世間の目は簡単に変わらないと。

coba:帰国してまず最初に某新聞社のインタビューを受けたんですけど、その記者の方が最初に発した質問が衝撃的で……「世界コンクールで優勝されたそうですが、どうしてまたこんな楽器を」とおっしゃった。

結局、子どものころから散々言われ続けて悔しい思いをしたことを、世界の舞台で優勝して帰ってきても、まだ言われるわけです。そのとき、アコーディオンの世界で日本人の僕が優勝しようとも、世間は関心を持ってくれないんだと気づくわけです。それよりも、新しいものを作って、一般社会の常識を変えていかないと、何も始まらないんだと。それに改めて気づかされてから、苦節の10年に突入していくんです(笑)。

ガラガラの会場で、一番後ろにいた2人だけ妙に盛り上がっていたんですよね。それが、ビョークとハウィー・Bだったんです。

―世界コンクールで1位を獲って順風満帆、とはいかずそこからまた下積み期間が10年も。

coba:22歳で帰国してから10年くらい、いろいろもがいて試行錯誤しましたけど、結局何も変えられなかった。よくあの10年を生き延びたと自分でも思います。ただ、その最後の3年くらいで、ちょっと雲行きが変わってきた……まず、「ランバダ」という音楽が、ものすごく流行り始めたんですよね。

―南米発祥のダンス音楽ですよね、1990年前後に流行っていました。

coba:いわゆる「ワールドミュージック」というものが、大流行した。そのころから僕はスタジオミュージシャンの仕事を始めるのですが、アドリブができて、場合によっては譜面も必要ないというプレイヤーはそれまでのアコーディオン業界には皆無だったこともあって、アレンジャーからものすごく重宝がられたんですよね。1年後ぐらいには、「イントロも間奏も、全部お任せします」みたいなケースも増えて、スタジオミュージシャンとして生計を立てられるようになりました。

coba

―そして、1991年には『シチリアの月の下で』というアルバムでメジャーデビューを果たすんですよね。

coba:そう、そのころに初めてメジャーのレコード会社から、「アコーディオン、面白いじゃないですか。アルバム出しましょうよ」って言われたんです。相当驚きましたよ。それまで「こんな楽器」と散々なことを言っていたのに、今更どういうことだって(笑)。

―厳しい時代を経てのメジャーデビューということで、いろいろ考えるところもあったのでは?

coba:そうですね。メジャーデビューを果たしたら、人生が大きく変わるだろうと思っていましたが、うちの近所にあった小さなCD屋には、もちろん僕のCDなんて置いてないわけですよ。そこでまた、現実は甘くないと思い知ることになります。

―ただ、その後もコンスタントにアルバムを出し続けて……95年からは、先ほどちらりと名前の出たビョークのワールドツアーにいきなり参加なさっていますよね。これは、どういういきさつだったのでしょう?

coba:それも偶然ですが。その当時から僕は、毎年ヨーロッパでコンサートツアーをやっていて……というのも、日本だけでは食えなかったから(笑)。コネクションのあったイタリアをベースにして、フランスやスペインなどのラテン圏でコンサートをやっていました。

それで、あるときイギリスのプロモーターからも声がかかって、300人ぐらいの会場でライブをすることになったんです。でも実際は、ガラガラで10人くらいしかお客さんがいなかった。ただ、一番後ろにいた2人だけ妙に盛り上がっていたんです。その2人というのが、ビョークとハウィー・B(ビョークやU2のプロデューサーとしても知られる音楽家)でした。

coba

―そんなことがあるんですね。

coba:ロンドンの情報誌に僕のコンサート情報が記載されて、それをビョークが見て興味を持ったようですね。楽屋で少し話すと、すぐに意気投合。きっとお互い感じるところがあったんでしょうね。95年から97年のあいだ、彼女のワールドツアーに参加することになるわけです。一緒に回っていてつくづく感じたのは、良くも悪くも似た者同士ということ。彼女と僕は、音楽以外のこともとても趣味が似ていて、ケータリングの好みから訪れるお店まで、ことごとく同じなんですよ。1日10回ぐらいツアー先の街角で会うもんだから、最後は2人で大笑いしちゃいましたけど(笑)。

―何か感性みたいなものが近かったのでしょうか。

coba:1つ言えるのは、僕も彼女も、まだ見たことがないもの、聴いたことがないものに、とにかく惹かれるんだと思います。あの当時は、とても影響を与え合っていたというか、僕が新しい作品を作ると、彼女はそれを奪い取るようにして聴いてくれたし、僕が彼女のツアーで出会った人たちと一緒に何か別の仕事をしようとすると、ものすごくやきもちを焼いたし……。バンクーバーオリンピック(2010年)でフィギュアスケートの高橋大輔くんが演技をしてくれた“eye”という僕の楽曲は、彼女と共に切磋琢磨しているころにできた1曲です。

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リリース情報

coba『coba?』
coba
『coba?』(CD)

2016年12月21日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCB-54196

1. Great Britain
2. Purpose ballad
3. She loves you
4. スウェーデンの森
5. 華麗なるお伽噺~花市場へのオマージュ~
6. Your eyes~君のまなざし~
7. 昭和キネマラヴ
8. Moon Gigue
9. Wicked Apple
10. Portafoglio
11. 再会
12. Back to the Birth

イベント情報

『coba tour 2017 25周年記念』

2017年1月12日(木)
会場:愛知県 ウインクあいち

2017年1月15日(日)
会場:新潟県 新潟市音楽文化会館

2017年1月21日(土)
会場:東京都 日本橋三井ホール

2017年2月8日(水)
会場:大阪府 BIG CAT

2017年2月10日(金)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2017年2月11日(土・祝)
会場:山口県 Jazz Club BILLIE

2017年2月17日(金)
会場:高知県 高知市文化プラザかるぽーと 小ホール

2017年2月18日(土)
会場:香川県 高松オリーブホール

2017年2月19日(日)
会場:愛媛県 松山WstudioRED

2017年3月18日(土)
会場:宮崎県 宮崎WEATHER KING

2017年3月19日(日)
会場:鹿児島県 鹿児島CAPARVO Hall

2017年3月20日(月・祝)
会場:熊本県 熊本B.9

2017年3月24日(金)
会場:大分県 大分DRUM Be-0

2017年3月25日(土)
会場:福岡県 電気ビルみらいホール

2017年6月23日(金)
会場:北海道 札幌cube garden

2017年6月24日(土)
会場:北海道 小樽GOLD STONE

2017年7月1日(土)
会場:長野県 まつもと市民芸術館 小ホール

2017年8月22日(火)
会場:秋田県 秋田県児童会館

2017年8月23日(水)
会場:岩手県 北上さくらホール 中ホール

2017年8月25日(金)
会場:宮城県 七ヶ浜国際村

2017年8月26日(土)
会場:山形県 シベールアリーナ

2017年8月27日(日)
会場:福島県 福島県文化センター 小ホール

プロフィール

coba
coba(こば)

アコーディオニスト・作曲家、数々の国際コンクールで優勝。以来、ヨーロッパ各国でのCDリリース、チャート1位獲得など、「coba」の名前と音楽は国境を越え世界の音楽シーンに影響を与え続けている。20年以上にわたり恒例化しているヨーロッパツアー、更にはアイスランド出身の歌姫ビョークのオファーによるワールドツアー参加など、今や日本を代表するアーティストとしてその名を世界に轟かせている。バンクーバーオリンピックの男子フィギュアスケートにて、cobaの“eye”でプログラムに臨んだ高橋大輔がメダルを獲得し、またロンドンオリンピックでは体操の寺本明日香選手が“時の扉”を使用。冬夏2シーズンに渡り、cobaの楽曲が世界の舞台で金字塔を打ち立てた。また、今日までプロデュースしてきた映画、舞台、テレビ、CM音楽は500作品を超える。その他演奏家やオーケストラへの委嘱作品を手がけるなど、作曲家としても多くの作品を生み出している。2016年11月デビュー25周年を迎え、12月21日、通算37枚目のオリジナルアルバム『coba?』をリリース。2017年1月より全国ツアー『coba tour 2017 25周年記念』を開催。

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