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吉澤嘉代子×文月悠光が新宿の若手文壇バーで語る「言葉」の力

吉澤嘉代子×文月悠光が新宿の若手文壇バーで語る「言葉」の力

ISETAN PARK net
インタビュー・テキスト
冨手公嘉
撮影:西田香織 編集:野村由芽、飯嶋藍子

「言葉」の表現には今、どんな力があるのだろうか。井上陽水や松任谷由実などのニューミュージックの影響を吸い上げ、アルバム『東京絶景』『屋根裏獣』など、人々の日常を物語性の強い歌世界でもって作品に昇華させるシンガーソングライターの吉澤嘉代子。18歳で『中原中也賞』を受賞し鮮烈なデビューをした詩人・文月悠光。最近では、エッセイ集『洗礼ダイアリー』を発売するなど、詩というフィールドに留まらない書き手としても評判になっている。

言葉に対して並々ならぬ情熱を燃やす者同士、数年前から深い親交があるという二人。今回、伊勢丹新宿店のウェブメディア「ISETAN PARK net」とCINRA.NETのコラボレーション企画で、そんな二人に新宿の街を1日かけて巡ってもらい、そのしめくくりに「歌」や「詩」を通じて言葉に託すものとはどんなものなのかを語ってもらった。ゴールデン街で日本一敷居の低い文壇バー「月に吠える」に腰を落ち着け、マスター・肥沼和之さんを迎え入れて対話が始まった。

私のことを睨むように見ている女の子がいて、それが文月さんだった。(吉澤)

―お二人が知り合ったのはいつ頃ですか?

文月:私が吉澤さんのことを知ったのは、2013年の春頃ですね。渋谷のモヤイ像のあたりを歩いていたら、吉澤さんが路上で歌っていらっしゃるのを目撃して。

吉澤:まだ私がストリートライブをしていた頃ですね。そのときのことは私も覚えています。私のことを睨むように見ている女の子がいたのを記憶していて、それが文月さんだったんですよね。そのときは「この子は私の底の浅さを見透かしている!」と邪推して(笑)。

文月:まったくそんなつもりはなかったんですけど(笑)。睨んで見えたのは、吉澤さんが発する言葉を聞き漏らしてはいけない気がして、とにかく真剣だったのでしょうね。

左から:吉澤嘉代子、文月悠光
左から:吉澤嘉代子、文月悠光(『ISETAN PARK net』「新宿と文芸」を読む

吉澤:そのときは私も負けるまいと視線を送り返していました。そしてライブのあとすぐに、文月さんがTwitterで私のことを書いて下さったのを拝見したんです。そこから、文月さんが詩人として活躍されていると知り、書かれる言葉に惹かれました。自分も良いなと思える方に見つけてもらって幸せだなと思いましたね。

文月:当時、自分の詩を紙の上ではなく歌で表現するならどういう声が魅力的かを考えていて、吉澤さんの歌にピンときたんです。

吉澤:そこから文月さんは『魔女図鑑』(2013年発売のアルバム)のリリースライブにも来てくれて、4年前の『シブカル祭。』でコラボレーションしたんですよね。

文月:そう。私の詩の一部に吉澤さんが曲をつけて歌ってくれたり、朗読してくださったり。そのときから交流が続いています。

―もうお付き合いは長いのですね。今日、お二人には新宿を巡ってもらって、さらに新宿にまつわる本も選んでもらいました。

文月:落合のエリアに作家の林芙美子さんが住んでいたこともあって、『放浪記』を読んでは街の様子に思いを馳せていました。金井美恵子さんの『小春日和』でも描かれていた、新宿のバーで夜な夜な遊びに繰り出す様子など、いかにも東京らしいなと思っていて、北海道で過ごしていた10代の頃、憧れを抱いていましたね。

林芙美子『放浪記』。林芙美子が放浪生活を送っていたときの日記をもとに書いた自伝的小説
林芙美子『放浪記』。林芙美子が放浪生活を送っていたときの日記をもとに書いた自伝的小説

金井美恵子『小春日和』。小説家の叔母のマンションに居候する大学生・桃子を主人公にした物語で「少女小説」と言われている
金井美恵子『小春日和』。小説家の叔母のマンションに居候する大学生・桃子を主人公にした物語で「少女小説」と言われている

―思いを馳せる対象だったのですね。文月さんにとって、上京してからの新宿の印象はどういうものですか?

文月:私はいつもノートを持ち歩いていて、そのときの感情や目にとまったものから感じたことを書き留めるようにしているんです。今日1日の街巡りは「数年前にここに誰と来たな」といった記憶と結びついて、色々なことを思い出しました。

高円寺や下北沢といった街のカラーがはっきりした場所を歩いていると、ここに居ていいのかなと疎外感を意識するんですけど、新宿はあまりそういう感じがない。普段は出会わないような、違うジャンルの人と顔を合わせてもあまり違和感がない街だなと思います。

吉澤:わかります。私は高校が新宿区だったこともあって、昔はゴールデン街とか歌舞伎町を歩いていたら誰かにとって喰われてしまいそう、などと考えていたのですが(笑)。大人になってまた楽しみ方を覚えてきた感じです。

月に吠えるの店主・肥沼和之
月に吠えるの店主・肥沼和之

―肥沼さんも新宿のゴールデン街に魅了されてお店を出しているんですものね。

肥沼:そうですね。人を惹き付ける磁場のある、本当に魅力的なエリアだと思います。戦後から錚々たる文化人たちが飲み歩いていたエリアでお店をやるというのはチャレンジングではあったんですけど、どうしてもここでやりたいなと思って。

最近は観光地化されてしまってきているのですが、少しでもこの土地特有のドロドロしたものやカルチャーを残せたらいいなと思っています。ゴールデン街には280軒くらいお店があるので、うちはもちろんですけど、色々と散策してもらえたらお気に入りに出会える気がします。

文月:ゴールデン街を舞台に朗読イベントを企画した際には肥沼さんにお世話になりました。隣の席になったお客さんが、文学や詩が好きな方だったりして、そういう偶然から繋がっていく出会いも面白いですよね。

―街を歩きながら創作のインスピレーションを受けることはありますか?

吉澤:ありますね。“東京絶景”も街の情景から切り取った楽曲ですし、新しいアルバムに含まれている“地獄タクシー”も、タクシーの運転手さんとの会話の中で聞こえた空耳から生まれています。

文月:面白いですね。私の場合、さっき言ったノートなどをたまに見返すと、当時の記憶が蘇ってきて……。街というより、そのときそのときに見て感じたものの記憶が創作に生きていると思います。

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サイト情報

『ISETAN PARK net』

日本最大級のファッション発信基地である伊勢丹新宿店の「今」と「これから」がわかるウェブメディア。ファッション、アート、音楽、カルチャーなどを切り口に、週ごとに新宿店で繰り広げられるイベント情報を紹介しています。

リリース情報

吉澤嘉代子『屋根裏獣』ジャケット
吉澤嘉代子
『屋根裏獣』初回限定盤(CD+DVD)

2017年3月15日(水)発売
価格:3,500円(税込)
CRCP-40497

[CD]
1. ユートピア
2. 人魚
3. カフェテリア
4. ねえ中学生
5. 屋根裏
6. えらばれし子供たちの密話
7. 地獄タクシー
8. 麻婆
9. ぶらんこ乗り
10. 一角獣
[DVD]
1. 地獄タクシー MUSIC VIDEO
2. アボカド feat.伊澤一葉(live at 東京キネマ倶楽部 2016.10.16)
3. 東京絶景 feat.曽我部恵一(live at 東京キネマ倶楽部 2016.10.16)

吉澤嘉代子
『屋根裏獣』通常盤(CD)

2017年3月15日(水)発売
価格:3,000円(税込)
CRCP-40498

1. ユートピア
2. 人魚
3. カフェテリア
4. ねえ中学生
5. 屋根裏
6. えらばれし子供たちの密話
7. 地獄タクシー
8. 麻婆
9. ぶらんこ乗り
10. 一角獣

イベント情報情報

『吉澤嘉代子 獣ツアー 2017』

2017年4月29日(土・祝)
会場:岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月4日(木・祝)
会場:宮城県 仙台 darwin
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月7日(日)
会場:東京都 有楽町 国際フォーラム ホールC
料金:4,500円

2017年5月13日(土)
会場:福岡県 BEAT STATION
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月14日(日)
会場:大阪府 なんばHatch
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月19日(金)
会場:愛知県 名古屋市芸術創造センター
料金:4,500円

書籍情報

『洗礼ダイアリー』
『洗礼ダイアリー』

2016年9月5日(月)発売
著者:文月悠光
価格:1,512円(税込)
発行:ポプラ社

『わたしたちの猫』
『わたしたちの猫』

2016年10月31日(月)発売
著者:文月悠光
価格:1,512円(税込)
発行:ナナロク社

プロフィール

吉澤嘉代子(よしざわ かよこ)

1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街育ち。父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。ヤマハ主催『“The 4th Music Revolution” JAPAN FINAL』にてグランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2016年、『ROCK IN JAPAN FES 2016』、『SWEET LOVE SHOWER』など大型フェスヘ出演。2017年、3rdアルバム『屋根裏獣』をリリース。5月7日、東京国際フォーラム ホールCを含む「獣ツアー 2017」開催決定。4月放送バカリズム主演ドラマ「架空OL日記」主題歌起用も決定している。また、私立恵比寿中学、南波志帆らへの楽曲提供も行う。

文月悠光(ふづき ゆみ)

1991年北海道生まれ、東京在住。中学時代から雑誌に詩を投稿し始め、16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年時に出した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞。早稲田大学在学中に、第2詩集『屋根よりも深々と』を刊行。2016年秋、初のエッセイ集『洗礼ダイアリー』、第3詩集『わたしたちの猫』を刊行する。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読、書評の執筆など広く活動中。

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