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世界的に活躍するバリー・マッギーと、2畳の小屋で語り合った

世界的に活躍するバリー・マッギーと、2畳の小屋で語り合った

『Reborn-Art Festival』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:関口佳代 通訳・編集:矢島由佳子

「何事も『一人』は退屈だよ。『一人』は、この世でいちばん最悪なこと!」

「じつは紹介したい友だちがいるんだ」。そう言って小屋に招き入れたのは、川田諒一と渡辺羅須の男子二名。彼らはユニットを組んで、オリジナルの小屋を作るプロジェクトを進めているという。

バリー:今回の作品を作るにあたって、まず、漠然とだけれど小屋を建てたいというイメージがあったんだ。それで、コーイチさんにお願いして、素敵な小屋を作ってくれるアーティストを紹介してもらった。それがこの二人なんだ。僕は「NIPPON BOYS」と呼んでいるよ(笑)。

左から:川田諒一、バリー・マッギー、デレック・ジェームス・マーシャル、渡辺羅須
左から:川田諒一、バリー・マッギー、デレック・ジェームス・マーシャル、渡辺羅須

石巻にバリーがやって来るまでのあいだ、NIPPON BOYSの二人が小屋を作り、合流してからは一緒に細かいところを手直ししたり、本格的にドローイングを描き始めたりしているらしい。ということは、今回の作品は「バリーの個人作品」ではないということだろうか?

バリー:そのとおり。何事も「一人」なんて退屈だよ。「一人」は、この世でいちばん最悪なこと! 生きていてやることのすべてが「誰かと一緒に」でしょ。そう思わない?

こうやって僕もドローイングはするけれど、ここにやって来るみんなにも描いてほしいんだ。作りたかったのは、完全にフリーダムなスペース。みんなで作品を作っていくんだよ。完成したら、畳や枕を入れて、居心地のいいスペースにできるといいね。

インタビューを受けながら、小屋のなかの壁や床に絵を描き始めた

インタビューを受けながら、小屋のなかの壁や床に絵を描き始めた
インタビューを受けながら、小屋のなかの壁や床に絵を描き始めた

「一人は、この世でいちばん最悪なこと!」というバリーの声はとても力強く響く。たしかに、これまでの彼の話や、彼が周囲に醸し出しているゆるやかな空気が、人と手を取り合いながら互いの「自由」を尊重し合うことこそ自然であるという感覚を与えてくれるからだ。

バリー:本当はこの下にあるビーチに小屋を置きたかったんだけどね……そうだ、NIPPON BOYS! 小屋を持ち運びできるようにして、毎日下に持っていくことはできないかな?

ルールはもちろんあるけれど、行政が僕らを支配しているわけじゃないからね。行政がやるべきなのは、僕らみたいになにかを変えようとしている人たちにストップをかけるのではなくて、砂浜や海に散乱してるプラスティックやゴミ対策について考えることだよ。

とにかく、僕たちはみんなフリーなんだ。ルールに従って生きていくわけじゃない。だから小屋の壁や屋根にもたくさんの余白を残していくつもり。時間の経過とともに、作品は変わっていくべきだし、いろんなライフがここに宿ったほうがいいと思うんだ。

バリーとNIPPON BOYS、そしてプロジェクトに関わるスタッフが作ろうとしている小屋は、かたちも大きさも素朴で控えめなものだ。でも、だからこそ、そこには誰もが共有できる未来へのビジョン、願いが宿っているように感じられた。

さらに会話が深まると、今のアメリカの政治に対する意見を語り始めてくれた

現在、バリーは『RAF』以外にもいくつかのプロジェクトを進めている。そのひとつが、ワタリウム美術館で、彼の奥さんと共に開催中の『バリー・マッギー+クレア・ロハス Big Sky Little Moon』展だ。2007年に同館で開催された個展のワイルドさ、尖った実験精神に比べると、今回は少し穏やかな空気が流れている印象があるが、なにか心境の変化があったのだろうか?

バリー:アメリカでは、政治がアウト・オブ・コントロールになっている。もう、彼の名前すら言いたくない。「My President」ではなくて「The President」と呼ぶよ。僕は彼を選んでないんだからさ。彼がみんなを神経過敏みたいな状態にさせてるし、反対運動もたくさん起きている。

だから展覧会のタイトルは、「World(=世界)」的なことではなくて、「People(=人)」に寄せたものにしたかったんだ。「Big Sky Little Moon(大きな空、小さな月)」というのは、この星にいる人全員が共有するものでしょう。どんなことが起きていてもね。

バリー・マッギー

ネイティブアメリカンの人たちは「大きいもの」と「小さいもの」など、逆の意味を持つ単語をくっつけて言葉にすることがあるのだ、と彼は教えてくれた。それは調和をもたらすための言葉であり、アメリカで起こっている反トランプの運動のなかにその可能性を見出しているのだという。

バリー:僕は未来をポジティブに考えている。それはたしかだ。いくら政治がダメでも関係ない。変えていくのは「人」だからね。

僕は今、「人」に対してすごく気持ちが向いているんだよね。すごく「人」とつながりたい。だからこうやって日本に来られて、みんなとつながれて、経験や文化を共有できることがとても嬉しいよ。

政治がなにをやってるかなんて、興味がない。もちろん、関心を持たなきゃいけないんだけど、政治のあり方が人のあり方を象徴するわけではないんだから。そう思わない?

撮影をお願いすると、バリーが率先して、「君たちも入ろうよ」とNIPPON BOYSやアシスタントに声をかけた
撮影をお願いすると、バリーが率先して、「君たちも入ろうよ」とNIPPON BOYSやアシスタントに声をかけた

バリー・マッギーを、美術史的な位置付けで語るとすれば、冒頭で述べたようにコンテンポラリーアートとストリートアートを行き来する領域横断性を体現する存在だ。しかし、キース・ヘリングやバスキアのように、既に先行していた1980年世代のアーティストたちは少なくない。だから、バリーの本当の意味での革新性は、「横断」ではなく「異なる世界の調和」にあったのではないだろうか?

1999年に行われた彼の個展『ザ・バディー・システム』は、ニューヨークにあるDeitch Projectsというアート専門の有名ギャラリーで行われた。しかし、そのオープニングには、普段美術館に出入りするようなタイプではない若者たちが大勢押し寄せ、バリーにタグやドローイングのサインをせがんだという(作品管理が重要なアートの世界にあって、バリーの気軽さはとても特別なことだ)。そして、その風景は一晩中続いたそうだ。

バリー・マッギーであり、同時にTWISTでもある。そのような両面性を保ちつつ、人と人が結ばれる自由を望んできたアーティストが、震災から6年を経た東北にやって来たことの意味。それを改めて考える、不思議な共話の時間を私たちは過ごし、石巻を後にした。

完成した作品(撮影:相川舜)
完成した作品(撮影:相川舜)

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イベント情報

『Reborn-Art Festival』

2017年7月22日(土)~9月10日(日)
会場:宮城県 石巻市(牡鹿半島、市内中心部)、松島湾(塩竈市、東松島市、松島町)、女川町
参加作家:
宮永愛子
ハスラー・アキラ
バリー・マッギー
ブルース・ナウマン
カールステン・ニコライ
カオス*ラウンジ
キュンチョメ
草間彌生
Chim↑Pom
コンタクトゴンゾ
デビッド・ハモンズ
ファブリス・イベール
ギャレス・ムーア
齋藤陽道
Zakkubalan
さわひらき
インサイドアウト・プロジェクト
クー・ジュンガ
ヨーゼフ・ボイス
JR
有馬かおる
名和晃平
岩井優

ナムジュン・パイク
パルコキノシタ
皆川明(minä perhonen)
ルドルフ・シュタイナー
青木陵子+伊藤存
増田セバスチャン
増田拓史
島袋道浩
SIDE CORE
八木隆行
宮島達男
金氏徹平
鈴木康広
Yotta

参加シェフ・生産者:
渡邉篤史(ISOLA)
岩永歩(LE SUCRÉ-COEUR)
楠田裕彦(METZGEREI KUSUDA)
目黒浩敬(AL FIORE)
手島純也(オテル・ド・ヨシノ)
小林寛司(villa AiDA)
藤巻一臣(サローネグループ)
松本圭介(OSPITALITA DA HORI-NO)
今村正輝(四季彩食 いまむら)
奥田政行(アル・ケッチァーノ)
緒方稔(nacrée)
小野寺望(イブキアントール)
堀野真一(OSPITALITA DA HORI-NO)
生江史伸(L'Effervescence)
石井真介(Sincére)
今村太一(シェフズガーデン エコファームアサノ GOEN)
佐藤達矢(nacrée)
安齊朋大(La Selvatica)
成瀬正憲(日知舎)
川手寛康(Florilèges)
菊池博文(もうひとつのdaidokoro)
ジェローム・ワーグ(RichSoil &Co.)
原川慎一郎(RichSoil &Co.)

『Reborn-Art Festival 2017 × ap bank fes』

2017年7月28日(金)~7月30日(日)
会場:宮城県 国営みちのく杜の湖畔公園
7月28日出演:
Bank Band
エレファントカシマシ
Awesome City Club
大森靖子
KICK THE CAN CREW
水曜日のカンパネラ
スガシカオ
秦基博
back number
Mr.Children

7月29日出演:
Bank Band
ART-SCHOOL
ACIDMAN
きのこ帝国
ゲスの極み乙女。
TK(凛として時雨)
Chara
藤巻亮太
ぼくのりりっくのぼうよみ
Mr.Children
LOVE PSYCHEDELICO

7月30日出演:
Bank Band
銀杏BOYZ
Salyu
竹原ピストル
七尾旅人
NOKKO
ペトロールズ
Mr.Children
Mrs. GREEN APPLE
WANIMA

プロフィール

バリー・マッギー

1966年アメリカ生まれ。1991年、サンフランシスコ芸術院卒業。1992〜97年、サンフランシスコ芸術基金、その他のコミッションワークとして、市内各所にて壁画制作を行なう。1998年、サンフランシスコ近代美術館で巨大な壁画を制作し、同館のパーマネントコレクションに選定された。同年、ミネアポリス、ウォーカー・アート・センターで、初の個展を開催。全米のアートシーンに衝撃を与えた。2001年ベニス・ビエンナーレに史上最大のインスタレーション作品を出品。近年では2012年、ユーシーバークレー・アートミュージアムにて90年代からのキャリアの集大成とも言える大展示を行なう。

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